で、よく晴れた日だったから、もう一度あの山に行ってみようと思ったわけ。
俺が落ちた穴がどうなってるか? 確認したかったし、
もしできるなら、穴にまた入って、秘密を探ってやろうと考えたのよ。
下からは行く道がわからなかったから、こないだと同じように裏山に登って・・・
ところが、どうやってもあの横道が見つからなかった。それで、あの日のように、
いったん頂上に出て、道を見つけようと思ったわけ。
そしたら・・・頂上にある倒木に、大人が2人座ってた。
その人らは田舎では葬式でしか着ない黒い背広の上下で、
顔にでっかいサングラスを掛けてたんだよ。あと、一人が手に、やはり黒い
大きなバッグを持ってたんだ。俺は大人の姿を見て、なんとなくバツが悪くて、
さりげなく下りて行こうとしたら、一人から声をかけられた。

「坊や、道を探してるのかい?」 「い・・・え、そういうわけじゃ」
「隣の山に行ったかい?」 「いえ」 「ふーん、機械触らなかった?」
「いえ」 「変だなあ? 坊やだと思うんだけどなあ」一人がそう言うと、
薄笑いを浮かべながら、「でもね、大丈夫。機械はなんとか直したから。
それと、もしかして、猫探してるんじゃないの?」 「いえ、その」
男はバッグを開け、ぐったりして目をつぶった猫を持ち上げてみせたんだ。
家の猫にそっくりだったけど、垂れ下がった四肢の他に、腹のところに
もう一本足がついてたんだ。「坊や、もう2度とあの山に行かないでくれる。
世界が狂っちゃうから。坊やも、こうはなりたくないだろ。あと、このことは
人に言わないで。まあ、しゃべっても、誰も信じちゃくれないだろうけど」
それから、2人は狂ったように笑い始めたんだよ。