警察が帰ったあと一人になってみると頭の中にいろいろなことが巡り始めた。
本当に俺の記憶は正しいのか、この先どうなるのだろうか、入院費は払えるのだろうか、と。
2週間ほど入院した後、退院となった。そのあとはすぐ警察で取調べ。改めて個人情報のを聞かれたが正直に答えても俺という人物は存在するという情報は出てこなかった。
そのあと警察は俺にこの後どうするかと尋ねた。記憶が混乱している上に身を寄せる当てもないなら身元不明者として保護し情報公開することを勧められた。
どうするも何も俺にはそれしかなかった。
そのあとは区の福祉事務所を頼って一時的に住処を提供してもらい仕事を探した。
最初は保証人もいらない日雇い、そのあと長く働けるところを探してたまたま見つけた会計事務所で税理士さんのお手伝いとして働いている。。
素性の知れない俺でも1,2カ月働いてスキルが認められれば採用ということで何とか採用された。
学歴も職歴も資格もパーだから昔とは考えられないくらい貧乏だけど何とかやってます。

あんまり歴史には詳しい方ではなかったけど少しわかったことがある。
それは過程や人物が違っても結果が同じであることが多いこと。
例えば、俺がいた世界では山本五十六なんていなかったしそもそも真珠湾を空襲なんてしてない。でもアメリカと戦争はしたし敗戦もしている。
身近なところでは、俺がいた監査法人は存在するけど問い合わせても俺と同じ名前の人間はいなかった。
何でも同じように見えて少しだけ違う世界に飛ばされたということ。
俺が発見された場所に行ってみたけど、考えてみたら俺が通ったであろう点は空中だろうから元の世界には戻れなかった。
今はその点にたどり着くためにどうすればいいか思案中。