次に目が覚めたとき、俺は固いベッドの上にいた。一瞬どこだか分らなかったがすぐに病院のベッドだとわかった。
さっきとは打って変わって目がさえていたからすぐに近くにいた看護師に声をかけた。
「すみません、あの、会社に電話したいんですが…」
看護師は落ち着いて痛みはないか等の質問やライトを目に当てるなどの確認作業を始めた。
会社へ連絡したいという俺の意思は無視された。
一通り処置や検査が終わると病室に移された。
やべー監査先に迷惑かけちゃったかなーとか考えていると、カーテンの外から看護師に声を掛けられた。
看護師がカーテンを開けるとそこには背広姿の男が2人立っていた。看護師は立ち去り、男2人が残った。
男の一人が言った。「警察です。○○さん。あなたはどうしてここにいるか、なぜケガをしたかわかりますか?」
俺は階段から落ちたと思う旨を話すと、「よく思い出してください。ほんとに階段から落ちたのですか?」と帰ってきた。
ほんとも何も記憶のとおりだ。そもそもなんで警察がいる?ただ階段から落ちただけだろ?派手に一階まで落ちるとは思わなかったが。
警察が言う。「あなたは中野区の公園で倒れていました。」
中野区!?公園!?俺は渋谷区の監査先にいたはずだ。俺は必死に業務中に足を滑らせた旨、会社に電話したい事を伝えたが外相による記憶の混乱で片づけられてしまった。
そして警察官がこう告げた。「あなたが内ポケットに入れていた保険証の保険者番号を検索するとあなたと違う名前が出てきました。心当たりはありますか?」
数日前に風邪っぽくて医者にかかったときカードケースにしまい忘れていた保険証。その時は確かに使えた。なぜ今は使えない?
でも何かの間違いだと思い会計士の登録番号、本籍地、現住所、実家の連絡先、勤務先住所等々、伝えられるものはすべて伝えた。
だが、確かに会計士の登録番号は存在した。だが出てきたのは別人だった。確かに実家の連絡先は存在した。だが俺の名前を伝えても知らないというそうだ。
勤務先は存在した。だが俺の名前は知らないという。
俺はわけが分からなかった。なんで俺の情報が無い?
警察は俺をかなり怪しんでいた。当然事件性を疑っていただろう。長々と質問をされたが、混乱していてよく記憶にない。


とりあえずここまで。質問あれば答えます。