文息

まったく意識を使わない呼吸で、下腹の緊張も肛門の括約筋の締め上げも行なわない。ただ、静かに吸う。
吐くを繰り返すだけである。下腹は、吸う、吐くに伴って前後に軽く動くが、ほとんど緊張がない。
一見すると武息よりやさしそうだが、実はこちらのほうがむずかしい。というのは、意識をまったく呼吸にかけずに腹式呼吸がなされていなければならないからだ。
普通、我々が意識をかけないでおくと、呼吸は胸だけの胸式呼吸になってしまう。これでは気などまったくはっせいしない。
文息とは瞑想の段階がうんと深くなったときに出てくる腹式呼吸のことをいっているのだ。長くゆったりした呼吸法で、
完全にリラックスしているときにしか出ない特殊な呼吸だ。そういうわけだから、普通の人がすぐにやれる代物ではないのである。

もっともそんなことをいっていたら誰も文息など出来なくなるから、昔のひとは意識的にやれる半文息というのを考え出した。これを著者は調息と呼んでいる。