「何を馬鹿なことを云ってるんだ?お前、自分じゃ家に帰れないって云うから、
 おれが迎えに来てやったんだろう?それともお前は今日から俺の息子じゃないのか?」

「あの家は貰えないんですよね?」

「何をまた馬鹿なことを云ってる。やるもやらないもお前が決める事じゃない。
 俺がふさわしいと思ったらやるかもしれないが、お前はまだ、やることも決めてないだろ?
 それからだ。なにをやる?お前がもし、この家を守ってくれる人間だと思えば、俺のほうでも
 それを考えていい。だが、何をやる?それによっては、この家もやらないかもしれないし、
 いつまでもこの家に住んでいいとは云わないかもしれない。どうする?」

「いや、俺は取り敢えず、一人で住みたいんだ。金、貸してくれるかな?」

「金か。幾らだ。取り敢えず、一人で住めるようにして欲しいのか?」

「うん。わかった。だったら、まず、この家で少し家族というものに馴染め。
 嫌いでもな。それから誰とも喧嘩をしないようになったら考える。いいな。」

「うん。ありがとう。」

─ 家の中には、声をかけてくれる人達がいた。

「初めまして。」

「あなたからすれば初めましてかもしれないけれど、こちらはあなたを知ってるよ。そういう時、なんて言う?」

「私はあなたを知らないんですけど・・。」

「だったら、知ろうとすればいいさ。何か話しかけてくれるか?」