待っているといつまでも出てきませんので、そこから声をかけました。
「あのベランダに出たんだけど」
するとサッシのすぐ後ろから「今行く。準備してるんだよ」と声がして、
隣の女が両手に頑丈そうな白の布袋をひきずって出てきました。
相変わらずボサボサの髪でジャージの上下でした。
「あんたに迷惑かけたようだから猫を始末するよ・・・どっちの袋に猫入ってると思う」
わけがわからず黙っていると、
「早く選べよ、この2つの袋には猫とお前の赤ちゃんがはいってるんだよ」
「嘘!!そんなことありえない」

「・・・お前が最後に赤ちゃんを見たのはいつだよ?
さっきこの仕切りを乗り越えて袋に入れたんだよ」
袋は下に置かれていましたが、よく見ると どちらも布を突っ張るようにして中で動いてるものがあります。
私は思わず赤ちゃんを見に部屋へ戻ろうとしましたが、
「動くな!動くとガキを入れたほうを下に放り投げるよ!」
「早く選びな。3つ数えるうちに選びな、1・2・・・」
私は仕切りにとびついて乗り越えようとしました。でも足が上がりません。
女は片方の袋を持ってベランダの向こうの仕切りまで後じさりすると、
高笑いしながら、両手で袋を外への手すりの下のコンクリの柱に叩きつけ出しました。
「アハハハハハハハ、さあ、死ね、死ね」