それでもソフトのことは諦めてなくて、雪道を下りながら「貸せよ」と言ってきました。
当分返ってこないとわかっていても「うん」と言うしかありませんでした。
もうすぐ下の道に出るというところで、パトカーのサイレンの音が聞こえました。
松山はもう神社であったことを忘れて興味津々の様子でした。
自分たちの家に近づくとサイレンはどんどん大きくなって聞こえ、
パトカーが数台、松山の家の近くに停まっているのが見えました。
向こうから車が一台近づいてきて自分らの前で止まると、
大人が出てきて「こっちゃ来い」と言って松山の手を引いて車に乗せました。

松山にカバンを渡そうとしたとき、
ジャンバーの背中にピタリとおみくじが貼りついているのに気がつきました。
目をこらしてよく見ると、「大凶」と書かれているようでした。
後で聞いたところによると、松山の父親が架空取引詐欺でつかまったということで、
そのまま松山もどこかに転校していってしまいましたよ。

終わり