東京地裁は2日、東京都荒川区のネットカフェ(事件後閉店)で滞在していた男性に「風呂に入って洗え。臭い」などと因縁をつけて暴行して怪我をさせたとして、傷害などの罪に問われていた住所職業不詳の伊藤誠被告(38)=求刑懲役4年と、伊藤被告に口裏合わせを命じられていたネットカフェのアルバイト店員だった元大学生の宮本こと崔卓和被告(22)=求刑懲役2年6ケ月、同じくアルバイト店員の宮野真守被告(20)=求刑懲役1年の二人について、伊藤被告には求刑通り懲役4年、崔被告、宮野被告の二人に無罪の判決を言い渡した。
伊藤被告は2021年4月にネットカフェに滞在していた山口俊雄さん(当時40)に「お前のせいで臭い。風呂に入って体洗え」などと因縁をつけ、顔を殴るなどの傷害罪や暴行罪などの罪に問われていた。また伊藤被告の暴力行為を隠蔽するように口裏合わせをした宮本こと崔卓和被告や店長に虚偽の報告をしていた宮野被告も共謀罪で起訴されていた。
陳黒斉裁判長は「伊藤被告の山口さんへの暴力は被告人の身勝手な言い分であり、結果山口さんはネットカフェから追い出されホームレス生活を余儀なくされた苦痛はあまりにも大きい。
逮捕後の供述や公判でも自己保身に走り反省の態度を見せず、被害者への謝罪もなく、人格的に崩壊しており適用しうる最大限の厳罰を持ってのぞむしかない」と糾弾した。
一方で元店員の宮本こと崔被告と宮野被告の二人については「伊藤被告から隠蔽を命じられており、被告に同調する部分はあったが、直接暴行に関わってはおらず、暴行罪や傷害罪を立件するには難しい」として無罪判決を言い渡した。
伊藤被告から暴力を受けネットカフェから追い出された山口さんはホームレス生活の中、NPO法人に助けを求め、被害届を出したことで事件が発覚した。
事件のあったネットカフェは都の条例で定められている本人確認を行わないままいわゆるネットカフェ難民を多数滞在させていたことが明らかになり、事件後に閉店。当時の店長は懲戒解雇、宮本こと崔被告と宮野被告も解雇され、宮本こと崔被告は大学も退学処分になったという。
被害を受けた山口さんはNPO法人の支援を受け、現在は関東地域の工場に勤務しており、今日の判決を受け会見を開き、
「伊藤被告に殴られたことや店員二人の対応は絶対に許せない。こんな事件は自分で最後にしてほしい。ネットカフェ難民を無くし、全てのネットカフェを利用者が安心して使える環境にしてくれるよう国会議員の皆さんに立法をお願いします」と語った。