3月から4月は欧州主要国で都市封鎖(ロックダウン)が実施され、
食品スーパーや薬局を除くほぼすべての商店が営業を禁止されるなど経済活動の大半が止まった。
それにもかかわらず失業率が急上昇しなかったのは、欧州各国が雇用維持制度を導入したためだ。
英国では新型コロナウイルス雇用維持制度という名称で、企業に対し、
新型コロナの影響で一時帰休となった従業員の賃金の80%を、1人当たり月額2500ポンド(約33万円)を上限として補助する。期限は10月末までだ。
特に雇用維持制度は低所得者層に導入されているようだ。
英シンクタンクのレゾリューション財団が5月上旬に実施した調査では、
新型コロナ危機以降、英国で収入が下位5分の1に分類される労働者のうち25%が帰休の状態にあり、5%が解雇されていたと分かった。
一方、収入が上位5分の1に入る労働者では一時帰休が6%、解雇が3%だった。
イタリアは2月23日以降の解雇・免職手続きを凍結。
賃金保障制度で企業の従業員の賃金の80%を保障する制度を導入した。
イタリアは4月の失業率は6.3%と1月の9.4%から段階的に下がっている。
ロックダウン期間中に求職登録が滞るなどして正確な統計が取れなかった可能性があるが、賃金保障制度の支えもあったようだ。

欧州労働組合研究所によると、EU諸国全体で2020年4月末に短時間労働制度の利用者数は4200万人に上った。
だが、この雇用維持策は膨大な予算が必要なため、いつまでも続けられない。
そのため欧州主要国ではこの制度の有効期間が切れる秋に、企業の従業員解雇が続出し、失業率が跳ね上がる事態が恐れられている。
また秋以降に新型コロナの流行の第2波が起き、失業率の悪化に拍車をかけることが懸念されている。
オランダING銀行シニア・アナリストのバート・コレイン氏はこう指摘する。

「労働市場に深刻で短いショックがあったときには、雇用維持制度はメリットがあるが、
景気後退と回復の過程で失業率が大幅に上昇するのを防ぐことはできない。
ユーロ圏の失業率は上昇に転じたばかりで、雇用維持制度の終了に伴って急上昇する可能性が高い」

経済協力開発機構(OECD)の予想によると、欧州各国で20年10〜12月の失業率が急上昇する。
ユーロ圏の同期間の失業率は12.6%になり、特に英国とスペインの上昇幅が大きい。