男子60キロ級決勝の八割方を押していたのは永山だが、勝ったのは高藤。結果を分けたのは経験の差だろう。序盤で膝を痛めた高藤だが、
このアクシデントにより集中力を増した感があった。自分から先に仕掛けるそれまでの戦法を切り替え、永山の動きを誘い、延長戦では
捨て身技の隅返しを警戒して後ろに引いた永山に対して小内刈り。膝を痛がっていたが、本当はさほどでもなく、逆にそれを利用して心理戦を
仕掛けたのではないか、と思うほどの試合巧者ぶりだった。2度目の世界選手権の後輩に対し、自身は4度目で過去に優勝2度。リオ五輪も
経験している。準決勝以外も隙のない戦いぶりが光り、立ち技から寝技への移行がスムーズになった。円熟期を迎えたとも言える強さだった。
実績面では両者の差がまた広がったが、実力的にはまだ拮抗している。それは高藤本人が一番分かっているはず。そのため休めないし、
永山も追い続ける。これは日本の男子60キロ級にとっては非常にいい構図で、東京五輪へ向けてさらに切磋琢磨してほしい。
女子48キロ級のビロディドは長い手足を利用して間合いを取り、技を掛けられない安全圏に身を置く。そこから技を仕掛け、相手が警戒して
引いたところを大内刈りや大外刈りで仕留める。渡名喜もこのパターンにはまってしまった。こういう状況では常道よりも奇策を練ることが重要で、
例えば組み負けたら懐に飛び込み、大内や大外の返し技を狙ってみるのはどうか。初戦から決勝までを通じて女王を脅かした選手がいない状況で、
彼女がいる限り、今後も日本にとって大きな脅威となるのは間違いないだろう。

【上水研一朗氏の目】高藤と永山 実力的にはまだ拮抗 結果を分けたのは経験の差
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2018/09/21/kiji/20180921s00006000309000c.html

60キロ級に関しては、高藤直寿選手(25=パーク24)と永山竜樹選手(22=東海大)の2人を今回の世界選手権に選出したことは東京五輪の選考に
深く関わっていると思います。永山選手は世界ランク1位で、高藤選手は去年の王者。60キロ級には東京五輪の代表争いという、他の階級にはない
緊迫したものがありました。
そうした中で勝ったのは高藤選手。クジ運が良くない中で勝ち上がった。小内刈りがすごくうまかったですね。足技はすぐ練習してできるものではなく、
一番難しい技。その小内刈りができるのは大きな武器です。相手の返し技にも合わせることができるし、フェイントにも裏の技としても使えますからね。
あとは寝技を完璧にして、確実に押さえ込む感じにすることですね。昔の山下(泰裕)先生の試合を見てもらえばわかるんですが、相手が下に
なったら絶対に押さえ込むか、絞めるんです。これが確実になったら、まさに鬼に金棒、小川直也にSTOですよ〜。
ただ今回見て思ったのは、高藤選手が一歩リードした感じですが、準決勝で永山選手が高藤選手をきれいに背負い投げで投げた。ビデオ判定で
ポイントなしとなりましたが、僕は(ポイントと)取っても良かったかなと。しっかり持って投げる技があるのは伸びしろがあるということなので、
これから地力がギャンギャン上がってくるんじゃないですか。だからこの2人の戦いからはまだまだ目が離せませんよ。

【柔道世界選手権】まだまだ目を離せない「高藤VS永山」2人の戦い
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/othersports/1132993/