高藤が選んだ道が間違いでなかったことを結果で証明した。初戦から4試合を平均試合時間1分で一本勝ちすると、準決勝では序盤に左膝を痛めながら、
強烈なライバル意識を持つ永山に勝利。決勝はロシア選手に優勢勝ちして3度目の世界王者に輝いたが、「優勝が近づくにつれて逃げていた部分がある。
僕が求められているのは普通の優勝じゃなく、もっと圧倒的な優勝」と、喜びは控えめだった。
大胆な挑戦を続けた1年だった。昨年の世界選手権とグランドスラム(GS)東京を制し、全柔連が新たに導入した選考方式によって今大会の代表に内定すると、
長い調整期間を活用して、3月のヨーロッパオープン・プラハ大会に異例ともいえる1階級上の66キロ級で出場。「孤独との闘い」をテーマに、本来はスタッフが
行う選手登録などの事務手続きまで1人でこなしながら優勝した。
孤独との闘い 昨年のGS東京では急激な体重減が響いて体がつるアクシデントを経験した。苦手な野菜を鍋の具材にして食べるなど食事を工夫し、今大会直前には
都内で“減量合宿”も敢行。「年も年だし、妻や子供も2人いる。そういう部分では柔道に人生をささげていると常に思っている」。細部まで準備を怠らない姿勢を、井上康生監督も
「世界一の準備をした男」と称賛する。
16年リオ五輪で金メダルを逃した。試合直前の記憶がないほど、舞い上がっていたと自覚する。苦い敗戦から学んだのは平常心の大切さ。試合前に体を叩いて
気合を入れる儀式も、「ギラギラする必要はない」と控えた。世界選手権出発当日も愛犬を散歩に連れて行くなど、普段と変わらない生活を貫いた。「本当に欲しいのは
東京五輪の金メダル。僕にとってはいつもの国際大会と変わらない」。そう言い切れる精神面の充実が、2連覇につながった。

高藤、男子60キロ級V2 実を結んだ「孤独との闘い」
https://www.hochi.co.jp/sports/etc/20180921-OHT1T50011.html

男子の井上康生監督は「世界一の準備ができていた」と賛辞を惜しまない。多彩な技を駆使し、2連覇を果たした男子60キロ級の高藤は「(世界一の称号である)赤ゼッケンを
手放さなくてよかった」と満足感に酔った。
「大勝負」と位置づけた準決勝。東海大の後輩でもある永山との一戦は序盤に左膝を痛めるアクシデントに見舞われた。開始1分の背負い投げには一瞬裏返ったものの、
頭を軸に反転して腹ばいに。驚嘆の体さばきで事なきを得た。
延長の開始早々、永山の足が流れた一瞬の隙を突く小内刈りで技あり。流れるような展開から仕留め、井上監督を「必然的」とうならせている。昨年の世界王者返り咲き
から無敗の25歳が、実力を存分に見せつけた。
2連覇に挑んだ14年大会も、今回同様に前評判は高かった。しかし、準決勝の終盤、自らのポイントが取り消されたことに気づかず、優勢負け。ふてくされてチームの集合に
遅刻を繰り返し、強化ランクを降格される失態を演じた。
「4年前は『なんだかんだ言っても勝てるでしょ』って感じでやって失敗した。二度と同じ失敗をしないためにも準備を怠らなかった」
柔道スタイルは随分と変わった。攻撃一辺倒だった当時と比べ、寝技も防御もうまくなった。勝負を急ぐこともなく、確実に勝機を見いだせる場面で仕掛ける。
内心では、永山と2人での代表入りが不満だった。「60キロ級は僕1人で大丈夫でしょう」。説得力のある王座防衛だった。

【柔道】男子60キロ級「王者」の高藤が世界ランク1位の永山を下し、東京五輪争いをリード
https://www.sankei.com/sports/news/180921/spo1809210003-n1.html