2020年東京五輪開幕まで、28日であと1000日。今夏のブダペスト世界選手権男子66キロ級で金メダルに輝いた日本男子柔道界のホープ、
阿部一二三(20)=日体大=が本紙のインタビューに応じ、東京五輪に向けて「圧倒的に勝つ」と抱負を語った。豪快に相手を畳にたたきつける投げ技、
精悍(せいかん)な顔つき、大胆不敵な言動。1964年東京大会から五輪種目となった日本のお家芸で、金メダルが期待される逸材の本音に迫った。
世界選手権で世界王者になった。あらためて世界一になった心境は。
「やっと獲ったな。ここからがスタートやなという感じですね」
東京五輪開幕まであと1000日。高校2年生だった14年講道館杯で優勝して衝撃デビューを飾ってから約1000日。この1000日はどうだったか。
「濃かったですね。長かったようで短かったかな。世界チャンピオンにやっとなれた。負けも勝ちも経験して、すごく自分を成長させてくれた1000日でした」
リオデジャネイロ五輪の代表から落選も経験したが、一番成長した部分は。
「技術もあるけど、気持ちの面が一番。絶対勝たなあかん、と気負ってしまう部分があったが、最近は落ち着いて自分の柔道を出せるようになってきた」
これからの1000日への抱負は。
「東京五輪では圧倒的に勝って金メダルを取りたい。そのための準備を一つずつやっていきたいですね」
自身の強みは何か。
「努力はすごく大事だなと思う。小学生の頃も練習していたけど、伸びてきたのは(練習量が増えた)中学に入ってからなので、すごく大事だなと思った」
妹の詩は天才で、一二三は不器用だという話もある。
「でも詩も決して天才じゃないと思いますよ。いっぱい練習して努力していると思うし」
「天才」じゃない
阿部選手自身は周りから「天才」「怪物」と言われることについてはどう思うか。
「天才だとは思ってないですね。練習あってこその自分だと」
逆に自分の泥くさい部分を評価してほしいと思うことは。
「いや〜それも全然ないですね。人から見て天才だと思うんだったらそれでいい。自分が天才じゃないと思ってさえいれば…。ちゃんと練習はするので、
そう(天才と)捉えてくれる人がいるのもうれしいですしね」
体も強い。
「大学に入ってから熱を出したことがない。昔からあんまり風邪もひかへんし」
試合だと練習以上に強くなる。
「技のキレは増すかもしれないですね。集中力も増すので。試合前は意外と雑念があるんですけど、試合で礼をしたら『どうやって相手を投げよう』しか
考えない」
雑念とは。
「『この試合勝ったらどうなるんやろ』とか『ご飯食べすぎて胸やけしとうな』とか。でも柔道って集中するのもいいけど、周りを見る余裕もあった方が
いいじゃないですか。今回の世界選手権はその余裕がありました」
目指すべき柔道家像はあるか。
「一番は野村忠宏さんですよね。憧れの人なので」
過去の柔道家の試合は見たりするのか。
「結構見ますね。野村さんの映像が多いですけど。あとは井上康生監督の試合とか、吉田(秀彦)さんとか篠原(信一)さんとか」
自分の映像は。
「たまに見たりするけど、毎日見て『カッコイイな〜』とかはないですよ(笑)」
阿部一二三の考える「強さ」とは何か。
「強いって表現は勝ってでしかできないと思う。あとは内容。大野(将平)選手でいうと(リオデジャネイロ)五輪(男子73キロ級)で圧倒的に勝った。
野村さんもそうだし、井上監督もシドニー五輪の決勝で一本勝ちした。そういう印象はすごく大事だと思う。相手を豪快に投げて優勝すると『強いな〜』って
なると思う」
五輪の決勝で一本勝ちするとテレビで何回も映像が使われるが。
「そういうのはありますよね。内容を含めて圧倒的に勝つのが一番デカいと思います」
柔道がヒーロー
子供の頃のヒーローは。
「特にいないですね。ウルトラマンとかもなかった。やっぱり僕にとっては柔道でしたね」
神戸市出身。ちなみに講道館柔道の創始者・嘉納治五郎も出生地は神戸。阿部選手は神戸代表という気持ちはあるか。
「それは恐れ多いので難しいですね(笑)。でも地元は大好きですよ。ただ、今は神戸を代表してというよりも日本の期待を背負うっていう方が
一番大事かなと思っています」

阿部一二三 圧倒的に勝つ!東京五輪での金に向け抱負を語る
https://www.daily.co.jp/general/2017/10/28/0010682792.shtml