西藤 フェンシングは選手によってプレースタイルがまったく違います。僕は攻める側が多くて、攻める時に前がかりになるとすぐ重心が落ちてしまうので、
できればちょっと重心を後ろに置いて、いつでも勢いよく出られるようにしておく。下がる時は重心を前に置いておいて切り返せるようにします。
お互いの競技で気になる点はありますか。
西藤 学校の授業で柔道はやりましたが、どうやって大きな相手を倒せるか気になります。組んで、駆け引きを考えたりしますか? 相手の癖を読むとか……。
阿部 大きな選手とやる時は、力も自分より強いから相手の重心を崩して、足を払います。大きい選手は振り回されるのが嫌なので。足を出して、懐が深いか
担ぎ技で投げに行くのが基本。相手の重心を崩すのが一番重要かなと思う。
体調管理で気にかけているのは。
阿部 普段はあまり食べる物を気にしないし、何でも食べます。ただ、減量中はすごい栄養を気にして、高たんぱく低カロリーにしないといけない。
それが一番体重が落ちるので。ベストの体重はある? 僕は66キロ級ですが、68〜69キロぐらいが一番体が動くけど……。
西藤 ベスト体重は特に設定しないけど、素早く動きたい。シーズンオフで食事量が増えて運動量が減って、そこからフェンシングを再開すると、
3キロぐらい増えただけで重くて変な感じになる。それがすごく嫌で。日本オリンピック委員会(JOC)のエリートアカデミーで5年間、栄養指導を厳しく
受けてきたので、最低限の乳製品を取るとかは勝手に意識するようになりました。フェンシングには体重の上限がないけど、友達と焼き肉に行ったら
「次の日は気をつけよう」などという気持ちが自然に浮かびます。
遠征に欠かせないスピーカーと勝負パンツ
遠征に必ず持って行く物は。
阿部 BOSE社製のスピーカーを持って行くと聞いたけど?
西藤 音楽鑑賞が好きなので、スピーカーにはこだわっています。あとは(非常食でもある)アルファ米を持って行く。
阿部 僕も海外ではご飯や缶詰やおかゆを持って行きますね。おかゆは必ず。減量があるので、一発目に固形物を入れたら胃がびっくりしてダメになるので、
おかゆから入れておなかを落ち着かせる。あとは赤パンツ。
西藤 勝負パンツですね(笑い)。
目標とする選手は誰ですか。
西藤 (08年北京、12年ロンドン両五輪銀メダリストの)太田雄貴さんの存在が大きいです。初めて会ったのが小学3年。「太田選手と試合をしよう」という
イベントに参加して、対戦したくて手を挙げました。五輪選手の存在を間近に感じて、そこから憧れになりました。「五輪で金を取りたい」という夢が
芽生えたのも、その当時です。ただ、フェンシングをまねしようとかではなくて、人として、アスリートとして尊敬しているという感じですね。フェンシングの
普及に動いたり、五輪の招致活動をしたり……。8月には日本フェンシング協会の会長にも就任するなど、全国のフェンシング選手にいろいろな道を
示してくれています。
阿部 僕は60キロ級で五輪3連覇した野村忠宏さん。ずっと野村さんの試合を見てきました。こんな選手になりたいという憧れが強くて。野村さんといえば、
五輪でも攻め続けて頂点に立った印象がありますよね。僕も五輪に出たら一本勝ちを重ねたい。徐々に「一本を取りに行く柔道が阿部のスタイル」という
イメージができあがってきたかなと思います。
20年に向けた思いを聞かせてください。
西藤 五輪で金メダルを取るのは、そんなに簡単ではないのは分かっています。事実、世界選手権でも銀メダルだったので。何より、東京五輪の
出場権を取るためにこの3年でどう結果を出すかを考えなければなりません。20年までは時間がないとも思います。団体戦のメンバーにしても、
日本代表のオレグ・マツェイチュク・コーチから「結果やランキングで選ばない。そのときに一番調子がいい選手を選ぶ。全員にチャンスがある」と
言われています。今季の成績が良くても、ものすごい危機感を持って競技に取り組んでいる。「今」をしっかり見つめなければ、という意識が強いですね。
「先を見すぎない」ということも大切です。