2020年東京五輪・パラリンピックで飛躍が期待される選手たちが競技の枠を超えて語り合う「Promises 2020への約束」は今回、1997年に生まれた
20歳の有望株が顔を合わせた。今年の柔道世界選手権男子66キロ級金メダリストの阿部一二三(日体大)と、フェンシング世界選手権男子フルーレ
個人で銀メダルを獲得した西藤俊哉(法大)は、ともに初出場ながら世界の強豪に鮮烈な印象を与えた。「東京で頂点に立つ」という思いは同じ。
初対面ながら同い年の競技者はすぐに打ち解けた。柔道の阿部とフェンシングの西藤による「1997年生まれ対談」は、西藤が「阿部に注目していた」
と切り出してから一気に打ち解ける展開に。体調管理の方法に遠征の必需品など、20年東京五輪での活躍が期待されるホープ同士の会話が
尽きることはなかった。
個人的に阿部選手に注目していた
今年の世界選手権でお互い好成績を収めました。
阿部 リオデジャネイロ五輪に出られず悔しい思いはあったのですが、代表選考を勝ち抜けなかった自分の弱さを感じました。だからこそ、
今回世界一になったことで、「東京五輪に向けてやっとスタートを切れた」という感じですね。
西藤 リオ五輪当時は現実的に出場が難しい立ち位置でした。ただ、今季は日本代表の団体戦でメンバー入りするなど結果を残せる自信もあった。
世界選手権の準決勝でリオで金メダルのガロッツォ選手(イタリア)に勝利したことで、「実力がついてきた」という手応えもあります。今後は外国選手に
研究されると思いますが、五輪に向けてはいい経験ができたとは思っています。
同い年の選手を意識することはありますか。
西藤 本当に偶然なんですけど、個人的に阿部選手に注目していました。うそじゃないですよ(笑い)。僕が出場権を逃した14年ユース五輪(中国)で
阿部選手が(66キロ級で)優勝したことがきっかけです。圧倒的な強さで勝ち上がったと聞いて、その後も活躍をニュースなどで見ていました。
今回、聞きたいことがあって……。世界選手権で僕は決勝で気負ってしまい、銀メダルでした。阿部選手はどのような気持ちでしたか。
阿部 世界選手権ではすごく落ち着いていて、決勝戦の前も「どうやって相手を投げてやろうかな」ということだけをずっと考えていました。勝ち進んでも
あまり意識をしないようにするうちに、緊張しなくなりました。いつもと同じように試合をする、という思いですかね。
阿部選手は同年代で意識する選手は。
阿部 バドミントンの山口茜選手とは接点も何回かありますね。クライマーの野中生萌選手とも知り合いです。でも、各競技ともこれから世界で
トップに立つ選手が多いのが現状なので、同い年の選手を意識することはあまりないですね。
互いの競技についてどういう印象を持っていますか。
阿部 フェンシングって「剣がいつ当たったんや?」と思うくらい、動きが速い。でも、会場で試合を見たらすごく楽しいだろうな。剣が当たって痛くないですか。
西藤 痛いです(笑い)。フランスの選手と以前対戦した時に、剣をしならせて突く攻撃を受けました。試合中にめちゃくちゃ痛くて、その後に病院でエコー写真を
撮ってもらったら、あばら骨が折れていたことがありました。
阿部 柔道だったら受け身があるから、思いっきり投げられても多少は痛みを防げる。フェンシングだと剣で思い切り突かれるから痛いですよね……。
西藤 組んだときに予想以上に相手の気迫を感じて「やばい」と思う時はありますか。
阿部 組み合った時には、相手の力がずっしりと伝わってきます。「この選手、強いな」と。勝てるか勝てないか、この時点で分かる場合もありますね。
ともに体のバランスが重要な競技です。
阿部 重心が低ければ低いほどいいわけではなく、高いほどいいわけでもない。自分の中で一番いい具合の膝の曲げ方とか重心の落とし方とか、
一番踏ん張りが利く体勢があります。相手が右組みなのか、左組みなのかに合わせて、効果的な重心の置き方があるんです。その感覚は稽古(けいこ)
で養ってきました。