筑本氏は生え抜きで、副社長職にあたる現在のポストに昇格し、石油化学事業などのベーシックマテリアルズ事業の責任者を務める。筑本氏は会見で「石化事業を切り離すという発想でない。連携する競合他社とのフェアネス(公平さ)を大切にしながら、強い形にして独立させたい」と説明した。

石化再編は他の事業も含め24年秋に戦略を公表する考え。今年12月末までの発表予定だったギルソン氏の再編構想を事実上取りやめた。石化プラントの再編は川上の素材であるエチレンから派生品である川中の樹脂まで関係する企業が多い。筑本氏は「非常に複雑な業界であり、丁寧な会話を進めていく」と述べた。

足元では中国企業などの増産によって石化製品の市況が一段と悪化している。三菱ケミのベーシックマテリアルズ事業のコア営業損益は24年3月期に50億円の赤字(前期は121億円の黒字)になる見通しだ。筑本氏は「石化再編は喫緊の課題だ」とする。

21年12月に石化事業分離と同時に公表した製鉄原料のコークスなどを製造する炭素事業の分離策も、他社との交渉は難航している。筑本氏は同事業について、「24年3月末には戦略をつくりたい」と話し、早急に事業構造改革に乗り出す姿勢も見せた。