刑法においては、1.で前述したように、おもに(A)主として、訴追して事実を明るみに出すことにより、かえって被害者の不利益になるおそれがある場合や、(B)被害が軽微で、被害者の意思を無視してまでも訴追する必要性がない場合について、親告罪を採用している。
 類型化すると以下の通りになる。

(A) 主として、訴追して事実を明るみに出すことにより、かえって被害者の不利益になるおそれがある場合
・ 信書開封罪(1年以下の懲役又は20万円以下の罰金)【刑法133条】
・ 秘密漏示罪(6月以下の懲役又は10万円以下の罰金)【刑法134条】
・ 単独犯による強制わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)【刑法176条】
・ 強姦罪(3年以上の有期懲役)【刑法177条】
・ 未成年者略取・誘拐罪(3月以上7年以下の懲役)【刑法224条】
・ わいせつ目的・結婚目的略取・誘拐罪等(1年以上10年以下の懲役)【刑法225条】
・ 名誉毀損罪(3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)【刑法230条】
・ 侮辱罪(拘留又は科料)【刑法231条】

(B) 被害が軽微で、被害者の意思を無視してまでも訴追する必要性がない場合
・ 過失傷害罪(30万円以下の罰金又は科料)【刑法209条】
・ 私用文書毀棄罪(5年以下の懲役)【刑法259条】
・ 器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料)【刑法261条】
・ 信書隠匿罪(6月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金若しくは科料)【刑法263条】

5. 諸外国法制の状況