ゴーン氏再々逮捕は、検察による「権力の私物化」ではないのか
郷原信郎 | 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
12/21(金) 17:22
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20181221-00108526/
以下、ところどころ抜粋

再々逮捕容疑に関する疑問
しかしこれらの特別背任の刑事立件には、多くの疑問がある。

 (1)の事実は、行為から10年を経過しており、通常であれば、特別背任の時効が完成している。
海外にいる期間は公訴時効が停止するが、ゴーン氏の場合、海外にいた期間が3年以上あったということで、
一応、時効は完成していないとは言えても、経理書類の保存期間が原則7年、
「会計帳簿及びその事業に関する重要な資料」等の保存期間が10年間と定められていることもあって、
通常は、犯人の海外渡航期間があったからと言って、10年も前の事件を刑事事件として立件することはしない。

 しかも、多額の損失が生じた契約の権利をゴーン氏の資産管理会社から日産に移すことで、
日産が損失を被る危険性はあったことは確かだが、実際は、その後、契約は元に戻されているので、損失は発生していない。
損失が発生していないのに、特別背任で刑事立件された例というのは、聞いたことがない。

 また、その話は、そもそも、銀行側が、担保不足を解消するための措置を要求したことが発端で、
それに対応する措置として行われたものだと考えられる。しかもそこには社内手続や取締役会での承認等、様々な経緯があり、
それによって、仮に、背任に当たる余地があるとしても、そこに関係する人間の範囲は無限に拡大する。
決して、ゴーン氏が一人で行えるような行為ではないはずだ。

上記のような捜査の経緯から、特別背任での刑事立件には問題があり、再逮捕は予定されていなかったが、
勾留延長請求却下、準抗告棄却で、ゴーン氏の保釈が不可避となり、追い詰められた検察が、急遽、「無理筋」を承知で、
しかも、捜査班の年末年始休暇をも犠牲にして、特別背任による再逮捕に踏み切ったということだと考えられる。

上記のとおり、今回の、ゴーン氏の再々逮捕は、検察組織内での判断だけで行える「逮捕権」を、
検察が「組織防衛」の目的で使ったとすれば、「権力者ゴーンが日産を私物化している」と批判している検察こそ、
「権力を私物化」したことになる。