祖母は不美人でお見合いを何回か断られた経験があり、会ったこともない従兄との結婚を親に決められて
きわめてしぶしぶ北海道に渡ったらしいです

そこで初めて祖父と出会ったのですが、祖父は昔の人にしては高身長で顔も男前の方だったので、一目で気に入ったらしいです
その後4男3女をもうけるくらい体の相性も良かったようなのですが、60年以上北海道でおおむね幸せに暮らしたはずなのに、
それとこれとは別なのか「北海道に来たくなかった」という恨み言をしばしば繰り返していました
思い出し怒りというやつで、その時のリアルタイムの感情がぶり返すだけで、総じて恨んでいるわけではなさそうですが

祖父はあるクリスマスイブの夜に仏壇の方に頭を向けて眠るように老衰で亡くなった人で、
死にざまが生き方を表すという言説そのものの人でした。誰にも迷惑をかけず長患いもせず、寡黙で実直な農夫として一生を終えました。

顔とスタイルの良さで祖母を一目ぼれさせた祖父ですが、隣に暮らしていた祖父の義兄(昭和の酔っ払い。DVは日常茶飯事)が
「うちのかかあを匿っているだろう! 出せ!」って乗り込んできたときに、無言のパンチ一撃で酔っ払いを気絶させたというエピソードがあります
そのとき酔っ払いは包丁を持っていたらしく、祖母は恐怖に震え上がったらしいのですが、当然のごとく夫に惚れ直したようです
(そのエピソードを15回以上は聞かされました)