11/11 - 11/17 isuta

自分で自分を癒していくこと

もう一人のマリア像

今週のおうし座は、「マリヤの胸にくれなゐの乳頭点じたるかなしみふかき絵をさりかねつ」(葛原妙子)という歌のごとし。
あるいは、心のどこかで感じていた妖しい感触が、ふいに具現化されていくような星回り。

昭和28年の作。キリスト教では、聖母マリアを性的に見ることはタブーであり、絵の場合、一般的には乳房は衣に包まれていなければならないとされています。
ただ、「授乳のマリア」という題材自体は16世紀にはよく描かれていたようで、作者もそのうちの一枚を目にしたのかも知れません。

作者は絵の前を「去りがたい」と感じるほどに、そこに自身のかなしみを重ねている訳ですが、何がそんなに悲しいのか。
それはマリアが‟性的である”という人間としての在るべき本性さえ禁じられ、<聖母>という記号の枠内に押し込められているからに他ならないでしょう。

前衛短歌の雄・塚本邦雄をして、「幻視の女王」と言わしめた作者には、おそらく目の前に描かれてあるマリアの奥に、もう一人の人間・マリアの像が浮かんでいたはず。
12日(火)におうし座で満月を迎えていく今週のあなたもまた、今年の5月5日のおうし座新月からの半年間を振り返りつつ、自身がどれだけ人間としての在るべき本性を解禁しつつあるのか、改めて実感していくことになりそうです。