7/15 - 7/21 isuta

虚実を開いて

透明感のある時間帯

今週のおうし座は、「夕月に七月の蝶のぼりけり」(原石鼎)という句という句のごとし。
あるいは、"実”の隙間に開けた"虚”に目を開いていくような星回り。
夕暮れどきの紫色の空に白い月がかかって、そこに一羽の蝶がのぼっていった。
普通、蝶は多少の抑揚を持ちながらも水平に飛んでまわっていくものですが、
垂直方向に空へとのぼっていく光景は、どこか宗教画のような趣きさえあります。
生きるという営みは虚と実の織りなしから出来ており、これは呼吸でいうからだを
弛緩させる働きとしての呼気と、緊張させる働きとしての吸気にも対応させることができますが、
一日の折り返しである夕暮れ時もまた虚の時間と言えます。
そしてすでに月が出ているにも関わらず、そこに向かってのぼる蝶がありありと見える
夏野夕暮れというのは、それだけの透明感のある特別なタイミングなのでしょう。
そんな瞬間を捉えた掲句は、作者が亡くなる前年つまり最晩年に詠まれた一句であり、
さりげない描写ながら、どこか日常から脱け出して月へ帰っていこうとする憧れが
思いがけない形で現れたもののように感じられます。
17日におうし座から数えて9番目のやぎ座で満月を迎えていく今週は、
あなたにもまたそうした憧れがどこか力の抜けた形で湧き出てくるはずです。