遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」が数多く存在する近未来。
知力体力に非常に優れる「適正者」たちは当然、教育課程においても、社会においても優位だった。
一方、自然妊娠で生まれた「不適正者」たちは「適正者」に劣る存在だった。両者の間には社会レベルでも個人レベルでも大きな隔たりがあった。

主人公マドリーンは、両親の軽はずみな性交渉により「不適正者」として産まれた。妹は「適正者」だった。
マドリーンは、子供のころから「適正者」の能力を目の当たりにし、妹を含め「適正者」たちには決して勝つことができなかった。
そんな彼女が小さな胸に抱いた夢はアイドルになることだった。しかし、アイドルは「適正者」のみに許された仕事で、「不適正者」には夢のまた夢、なれる可能性など少しもなかった。

大人になっても夢を忘れないマドリーンに転機が訪れる。DNAブローカーの仲介で、「適正者」の生体IDを入手することができたのだ。
その「適正者」は元大女優シンシアで、舞台の花形だったが事故により脚の自由を失い、アイドル生命を絶たれたのだった。
マドリーンはシンシアの生体ID(血液や指紋など)を買い取り、違法な生体偽装をしてシンシアになりすまし、晴れて劇場「ミリオン座」の劇団員となった。
マドリーンはたびたび行われる生体認証をシンシアのDNAで切り抜け、数々の訓練でも「適正者」に劣らないよう必死の努力を重ね、その結果ついに念願の新作舞の主演女優に選ばれた。