1987年11月、神宮球場で開催されたスーパークロス大会を見た吉田は、あることに気付いた。
会場では、唸るようなエンジン音を轟かせながら、
バイクがジャンプを繰り返しているにもかかわらず、音が外に漏れていないのだ。
――すり鉢状のスタジアムであるが故に、音が上へと拡散しているんだ――。
そう気付いた瞬間、吉田の脳裏には、候補地の一つである茂木の風景が浮かび上がった。
――そうだ、山々に囲まれた茂木なら、同じ効果が得られるに違いない――。
吉田はそう確信した。

ロードコースの場合、観客席にいる自分の目の前を、
レースマシンが通過するのはほんの一瞬の出来事である。
それに比べ、NASCARが行われていたオーバルコースでは、
観客席からコース全体が一望でき、
ひいきの選手の走りをスタートからゴールまで、すべて把握することができるのだ。

そして、数十人に及ぶ関係者らにインタビューを行い、
十分なスピード感、オーバルならではの独特な味わいを楽しむには、
全長1.5マイル(約2.4km)のコースが最適であることも知った。
そして何よりも、オーバルコースに象徴されるモータースポーツの在り方、
楽しみ方といった、その精神や概念こそが、
今までの日本にはない新しいものだと確信した。

http://www.honda.co.jp/50years-history/challenge/1997twinringmotegi/img/pho_02.jpg
ツインリンクもてぎでは、すり鉢状の造型とするため、
山々を切り崩し、最大65mの盛り土を行い、稀に見る大規模な工事が行われた。
だが、その一方で、敷地の65%に当たる森林を残すなど、
環境保全には細心の注意が払われた

http://www.honda.co.jp/50years-history/challenge/1997twinringmotegi/index.html