STAP細胞から10年 減らぬ研究不正、「調査の仕組みに限界」
2024年4月9日 朝日新聞 https://digital.asahi.com/articles/ASS431PK5S43PLBJ001M.html
「STAP(スタップ)細胞はあります」
10年前の4月9日、理化学研究所の研究者はこう述べた。英科学誌ネイチャーに発表した論文の捏造(ねつぞう)が認定されたことに対し、会見で細胞の存在を主張したのだった。その後、論文は撤回された。研究不正に対する注目は集まったが、改善策には結びつかなかった。そう言い切るお茶の水女子大の白楽ロックビル名誉教授は、海外の研究不正事例を調べて情報発信し続けてきた。
――研究不正の発覚が続いています。
研究不正とされるデータの「捏造」、「改ざん」、他人の文章の「盗用」について、大学や研究所が発表したものを私が集計すると、2010年代前半は10件前後、14年から20件以上、21年は45件と増えています。これは氷山の一角だと思います。
――研究不正が減らないのはなぜですか。
コツコツ研究しても成果はなかなか出ない。不正をしたほうが、楽で得だからです。論文を出版しないと研究費は得られず、昇進もできず、肩身が狭い。大学院生は論文を出版しないと博士号を取得できない。就職できない。行き詰まってストレスが高まります。
そこで、研究不正をしたのは、プレシャーが高かったためとか、研究費が欲しかった、職が欲しかったという人がいるかもしれませんが、そのまま受け取るわけにはいきません。それは、自分は悪くない、環境が悪いんだという言い訳です。同じ環境で苦しくても、不正をしない人はしません。
ずるをしても見つかる確率が低い。簡単に論文を掲載してくれる学術誌はたくさんあるので、論文数を増やすために、ちょっとずるをする。味をしめて、どんどん似たような不正を続けたとみられるケースがあります。