超純愛小説「長老と北川景子」
11
「隼人兄弟も大変な人生よね。」沈黙を破ったのは亜佐美だった。「私とここにいる事に罪悪感を感じてるんでしょ?」
ずばり核心を突かれ何も言いい返せなかった。「私とホテルに居て罪悪感感じる人なんて、きっと兄弟だけだよ。」と軽く
笑ったが、俺は暗い顔を崩さなかった。「そうだよね。私って昔から強引な所があるから、いけないのよね。本当にごめんなさい。」
「謝るべきなのは俺のほうだよ」というと「私はね、隼人兄弟の事が本当に好きになっちゃったの、けど、隼人兄弟のことを
何も知らなかった。隼人兄弟は誘っちゃいけなかった人だったかな。私は大学2年の時に離れたのだけど、噂では不倫している
長老や、若い子と代わるかわるセックスしてる長老とか色々聞いてきたんだよね。私に散々近寄ってセクハラしてきた
スケベな巡回監督もいたし、そしてね、この組織の腐敗を知ったらビックリするはずだよ。隼人兄弟と再会する前は
は、兄弟にはもうてっきりセクフレの一人や二人はいると思ってたんだ。」
組織の腐敗については良く判らなかったので、軽く聞き流したが、「僕は、そんなタイプじゃないんだ。」「そうだよね。誘った私が
本当に悪かったよ。」「いいから謝らないでくれ。」俺は暗く小さな声で必死に応答した。「私はね、隼人兄弟の苦しみ分かるよ
だって私も一応、姉妹だったんだもん。私がライン送ってから、ずっと苦しんでいたんじゃないの?兄弟ったら可哀想に。」
苦しんで苦しんで、頭がどうかするほど悩み抜いて、自分はここにいる。最高の女を前にして俺は一体何やっているのだろう
急になんだか泣けてきた。頭が混乱し、年下の亜佐美の存在など憚らず大声で泣いた、涙が止まらない。男泣きとは違う、
慟哭というものであったろう。亜佐美との事だけではなく、様々な感情、悲しみ、苦しみ、怒りや腹立ちや絶望、
小さかった頃の暗黒の少年時代、バプテスマの時の感動、厳しく嫌がらせをしてくる会衆の長老達。長老に任命された時の喜び・・・
俺のJWの全人生が頭の中で滅茶苦茶に交錯し、もう精神が崩壊しそうになっていた。
「僕はどうしていいか分からないんだ。」と大声で率直な気持ちを震えながら亜佐美にぶつけた。