超純愛小説「長老と北川景子」
10
「さあさあ買い物カゴ持って。ね?」
分かるでしょ?というように目配せした。だが、買い物カゴがなぜ必要か皆目分からない俺。亜佐美はそれを察して、
「これから、二人でたーくさん運動するんだから、腹ごしらえしなくちゃ。昔から腹が減っては戦は出来ぬっていうじゃない?」
明るく優しく誘導してくれている亜佐美には、男として非常に感謝しなきゃいけないのに、どうしても本人を前にすると良心の呵責が襲う。
「ねえ、行くんでしょ?」亜佐美の問いかけに何とも答えられない情けない俺。
「もう、困った人だな〜。いくら肉食系の私でもここまで過剰サービスしないんだからね。」
俺は亜佐美からではなく強烈にエホバ神から責め立てられいるようで、本音を云うとこの場から消えてなくなりたかった。
「じゃあ、ビールでも買っておいたら?」さすがに賢い亜佐美。自分の心情など全部お見通しだった。
酒が最後の拠り所かとは前から計画していた。「でも、俺、車だよ?」というと「だったら、泊まっていけばいいじゃない。
私はお泊りOKだよ?」もうここまで亜佐美に言わせておいて引き下がる訳にはいかない。明日は集会だが、休む他ない。
俺はヤケになったかのように買い物カゴ一杯に酒を買い、もう一つのカゴには、食糧を手当たり次第に乱暴に詰め込んだ。
亜佐美は「無理しなくていいんだよ?」といきなり優しい「姉妹」となった。「いや、俺は今日亜佐美を抱きたいんだ。」
と力の限りの強がりの一言を口にした。車に戻ると、私の心情を知ってか知らずか、亜佐美も無口になり、
ただ湘南の山ほどあるラブホテルの中で一番おしゃれなホテルをナビしてくれた。
ホテルに入るとしばらく二人は一切会話を交わさなかった。