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亜佐美との再会と情事以来、また亜佐美と会えると思うと胸が高まった。男の性というべきか。何もかも活力が出た。
仕事はJWの長老が経営するリフォーム会社であったが、いつもの苦痛な仕事も楽に思え、人一倍働いた。
公開講演の演壇からも自分で言うのもなんだか、話が冴えまくり、エホバへの信仰と感動と活力に満ちていた。
演壇から降りると皆から賛辞の嵐で絶好調の自分は長老という特権意識に酔いしれていた。
思い返せば、高校卒業後、大学へも進学せず、ただ純粋にひたすらに長老を目指すべく開拓を続け、
横暴な長老のパワハラにも我慢し続け、心が折れそうな時もあった。
大嫌いな長老と長老婦人達へ媚びを売り続け、謙遜さを売りにし、さんざんのいやがらせにも耐えてきた。
要するに長老となるために青春全てを捧げたのだ。30歳で長老とはなかなかにして若いほうであって、
苦労が大きく報われたのだ。毎日祈りの中へ特権を与えて頂いたエホバへの感謝を欠かさなかった。
独り車で運転していると、誰にも聞こえないので「俺は長老様である!」「長老様は果てしなく偉い!誰よりも偉いんだ!」
「俺は若き選ばれしエリートなんだ!」「会衆の皆の集、平信徒は下へ下へ!長老様のお通りだあ!」
などと鼻歌まじりでヒットラーのごとく絶叫し独り歓喜し、長老である自己を賛美していた。
もちろん会衆内では謙遜さが自分の最大の売りであって、誰よりも謙虚で爽やかで、スマートな長老と見られているに違いない。