諸葛孔明の兵法(守屋 洋 編・訳より)

将帥の器(将器)

将の器(うつわ)は、その用大小同じからず。
すなわちその姦(かん)を察し、その禍を伺い、衆の服すところとなるがごときは、これ十夫の将なり。
夙(つと)に興(お)き夜寐(おそくね)、言詞密察(みつさつ)なるは、これ百夫の将なり。
直にして慮(おもんぱかり)あり、勇にしてよく闘うは、これ千夫の将なり。
外貌桓々(かんかん)、中情烈烈にして人の勤労を知り、人の饑寒を悉(つまびらか)にするは、これ万夫の将なり。
賢を進め能を進め、日に一日を慎み、誠信寛大にして理乱に閑たるは、これ十万人の将なり。
仁愛下に洽(あまね)き、信義隣国を服し、上は天文を知り、中は人事を察し、下は地理を識り、四海の内、視ること宝家のごときは、これ天下の将なり。

一口に将帥といっても、その器量には大小の違いがある。
腹黒い人物を見分け、危機を未然に察知し、よく部下を統制することができる。これだけなら、十人の将にすぎない。
朝早くから夜おそくまで軍務に精励し、ことば遣いもいたって慎重である。これはまだ百人の将にすぎない。
曲がったことがきらいでしかも思慮に富み、勇敢かつ戦闘意欲が旺盛である。これは千人の将といえる。
見るからに威たけく、内には満々たる闘志をひめ、しかも部下将兵の労苦、飢寒を思いやる心をもっている。これなら一万人の将といえる。
有能な人材を登用するとともに、みずからは毎日、怠りなく修養につとめる。信義に篤く寛容性に富み、治乱に心をみだされない。これなら十万人の将といえる。
人民に仁愛をたれ、信義をもって近隣諸国を心服させる。天文、地理、人事の万般に通じ、全人民から敬慕される。これなら天下万民に将たるの器である。

約二千年前の話ですね。私は努力が足りませぬな(笑)