とはいえ放送局にとって、視聴率は営業の生命線である。ゴールデンタイム全体の平均視聴率が下がると、CM枠の単価が下がる。
これは避けたい。そこで妥協の産物として、視聴率に合った放送時間として土曜日の夕方との結論がでたのかもしれない。
 今回はテレビ朝日だが、この問題は多かれ少なかれ他の地上波放送局に共通する。
ゴールデンタイムこそないが、テレビ東京や日本テレビ、フジテレビは午後5時から7時までの夕方帯や土・日の朝帯にアニメ放送枠を持つ。
視聴率と番組から生まれる二次展開のビジネスのバランスに頭を悩ましているに違いない。

放送局それぞれの経営も重要だが、全日帯でのアニメ放送の減少はアニメ業界全体にとって大きな問題だ。
ファミリー・キッズ作品は、ヒットすれば国内だけでなく世界から大きな売上げをもたらす。
 もちろん日常系からギャグ、SF、ファンタジー、ラブロマンス、アイドル系まで、多様性に溢れるコアファンに向けの深夜アニメも重要だ。
しかし長く続き、大きな収入をもたらす可能性がより大きいのはファミリー・キッズだ。ここが弱くなれば、2つの柱のひとつがなくなる。
 すでに問題は表れはじめている。全日帯の放送枠減少で、ファミリー・キッズ向けの大型作品が生まれ難くなっている。
今このジャンルで人気が高いのは、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」「ワンピース」「ポケットモンスター」、さらに「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」、いずれも20年から50年もの長い歴史を持つ。
比較的新しく感じる「NARUTO」シリーズすら、テレビアニメスタートから18年目だ。このラインに新しく加わるのは至難の業だ。
 「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の放送時間移動は、日本のアニメが置かれた厳しい状況も垣間見える出来事なのだ。