しかし全てのキッズアニメが配信に置き代われるわけではない。
YouTubeの配信プラットフォームとしての役割はNetflixやAmazon Prime Videoとかなり異なる。
NetflixやAmazon Prime Videoは独占配信タイトルを筆頭に、製作者に配信ライセンス料を支払う。これが製作者の収入になる。
 ところがYouTubeはあくまでもツールで、場所貸しに過ぎない。
配信は製作者が自らするから配信権の購入やライセンスの支払いはない。
番組にコマーシャルをつければ広告収入はあるが、それはYouTubeと分配するし、アニメーション製作をカバーする金額には十分でない。

YouTubeでの配信に向いた作品はかなり限定的だ。次のような条件をクリアすることが必要となるだろう。

(1)配信自体が収益の中心でないこと
(2)配信がマーチャンダイジングにつながること
(3)関連商品が多く発売されていること
(4)視聴ターゲットが20歳以下、とりわけキッズ層

こうした条件は「Netflixオリジナルアニメ」が、メディアの特長にあった作品を選ぶ傾向があるのと似ている。
しかし求められる作品は対照的だ。同じようにNetflixの条件をあげるとこんな感じなるだろうか。

(1)番組自体で完結すること (メディアミックスは必ずしも必要でない)
(2)映像作品として高いクオリティ
(3)視聴ターゲットはヤングアダルトをコアに、それより高い年齢層もカバーする

これはYouTubeとはかなり異なる。そもそも作品そのものにお金を投じないYouTubeと、作品に大きな資金を投じるNetflixは対照的だ。
実は両者は異なるセグメントで、ある意味で相互補完関係にある。
 近年、アニメビジネスにおける動画配信の躍進が指摘されることが多い。
しかしそのかたちは実は多様だ。
そのなかでYouTubeは、定額課金見放題サービスとは別のかたちで大きな可能性をもっている。
そしてこれまでのテレビ放送のあり方に挑戦をしている。