【数土直志の「月刊アニメビジネス」】「ベイブレードバースト」がTV放送を止めてYouTubeを選ぶ時代
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動画配信のYouTubeが、2019年の日本アニメ業界に大きな衝撃を巻き起こしている。
きっかけは、4月からスタートした新作アニメシリーズ「ベイブレードバースト ガチ」だ。
 「ベイブレードバースト」は1997年にスタートした「ベイブレード」につながるキッズアニメで、「メタルファイト ベイブレード」を経て、2015年より現在の第3世代「ベイブレードバースト」となった。
20年以上の歴史を持つがテレビアニメの放送、雑誌でのコミック連載、そしてタカラトミー(当初はタカラ)から発売する関連玩具といったメディアミックスのビジネス構造は変わらない。

ところが「ベイブレードバースト」第4シーズンとなった最新作「ベイブレードバースト ガチ」は、テレビ放送をしていない。その代わりが動画配信である。
 YouTube「タカラトミーチャンネル」やOfficial BEYBLADE Channel、さらに中心となるのが小学館「コロコロコミック」編集部が運営する同じYouTubeの「コロコロチャンネル」。
35万人を超える「コロコロチャンネル」の登録者が武器だ。
前3作はいずれもテレビ東京系列で平日夕方に全国放送されていたから大きな変更である。

シリーズアニメにとってテレビ放送は長年、必要不可欠だった。
それはビジネスの仕組みが異なって見えるコアファン向けの深夜アニメ、日中に放送するキッズ向けアニメ両方に共通する。
 テレビ放送の役割は番組の認知度と人気をあげることで、放送自体からの収益は期待しない。
深夜アニメでは作品に満足してもらい、DVD・ブルーレイの購入につなげる。
キッズアニメはそれが玩具などのキャラクター商品になる。
無料で提供され、短期間で多くの視聴者に届けるテレビは他に代えがたいメディアと考えられていた。
ところが「ベイブレードバースト ガチ」第1話の視聴再生回数は「コロコロチャンネル」だけで1カ月あまりで100万回を超える。
視聴率に換算しても相当な数字だろう。

そこにはYouTubeを積極的に活用するキッズたちの存在がある。
インターネットは大人のツールと思いがちだが、最近は小さな子どもこそがYouTubeの熱心な利用者とわかってきた。
子どもたちはテレビを見ずにタブレットなどで、自分で好きな番組を探し出す。
 「ベイブレードバースト ガチ」は、そこに注目したわけだ。
自分たちの視聴ターゲットはテレビでなく、インターネットにいる。
さらに配信番組はテレビの放送枠を確保するのに比べてコストを低く抑えられる利点がある。
玩具連動型のキッズアニメのメディアミックスに不可欠と思われていたテレビだが、どうも違うらしい。
 今後も同様の試みは増えそうだ。
実際に同じ4月からスタートした「トランスフォーマー」の新作アニメシリーズ「トランスフォーマー サイバーバース」もテレビ放送はなく、YouTubeの「ボンボンTV」(登録者数180万人)、「タカラトミーチャンネル」などの配信だけである。
キッズアニメにおけるテレビの存在感は次第に低下していくのかもしれない。