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ワイの作った小説を批評してくれ

1創る名無しに見る名無し
垢版 |
2024/10/25(金) 04:46:32.93ID:XtXyz/Rm
意見求む
2創る名無しに見る名無し
垢版 |
2024/10/25(金) 04:46:48.33ID:XtXyz/Rm
「七夕伝説」

 織姫と彦星による運命的神話的な出会いから、一時間と二十分が経過した。それは超新星爆発を一瞬に固めたような逢瀬であり、冷たい銀河が燃え尽きてしまう程危険な出会いだった。彼らの愛は銀河の秩序を乱しかねない。銀河を統べる神は直ぐに巨大な壁を創り出し、二人が再び会うことを禁じた。
 宇宙に横たわる真っ黒な壁を挟んだ両者は、向こう側に確実に存在する相手に向かって言った。
「会いたい!」
 その青々しく身勝手な叫び声を、神はあくまで無表情に聞いていた。織姫は神の娘だった。

 約束の日は七月七日。二人は二人の世界それぞれにおいて、それぞれのやり方で行動を開始した。彦星は母の住む庵へ戻り、織姫は神の居る宮殿へ向かった。

 木星を包む円環の上、ガスが充満する貧しい庵に彦星と母は住んでいた。母は彦星を、決して入ってはならぬと言い聞かせてあった部屋へと案内した。そこにはモビルスーツが置いてあり、酸化したワインのような色をしている。
「これはお父様が遺したもの。或いは壁を壊せるかもしれません。」
彦星は木星を満たすヘリウムを集めて燃料とし、モビルスーツに乗り込んだ。遥か遠くでありながらしかし巨大である真っ黒な壁へ標準を合わせ、ヘリウムガスを噴射して彦星は飛び立った。スーツが消えて伽藍とした暗い部屋には、彦星の母と父の写真がぽつんと一つ残されている。しかし、彦星は父の名を知らない。

 一筋の煌めきが銀河を高速移動しているその最中、織姫は神の居る玉座へ向かって深々と頭を下げていた。
「彦星様に…会わせてください…」
さざ波立つ湖のような瞳が形を崩し、液体が零れ落ちて宮殿の絨毯を濡らした。
「いいかげん嘘泣きはやめろ」
神は無表情に言った。織姫は驚いたように顔を上げ、その後神を睨んだ。
「彦星は私の息子だ。お前と母は違うがな。」
織姫は再び驚いた。
「それでも関係ありません。私は彦星様に逢いたいのです。好きなのです。」
神は無表情に続けた。
「私がただの人間だった頃、私の庵に神が来て言った。お前は選ばれたのだ、と。妻を捨てて宮殿に来いと、これは命令だと言われた。私は怒りに震え神に抗おうとした、しかし神は宇宙の秩序の為だと言った。私は銀河の安寧を選んだ。そして新たな神となった。」
神は小刻みに肩を震わせながら一息に言った。織姫は、父が泣こうとしているのだと思った。しかし神は悲しい程に無表情だった。
「神は秩序を守らなければならない。銀河の為に、お前たちは逢ってはならない。」
3創る名無しに見る名無し
垢版 |
2024/10/25(金) 04:47:14.33ID:XtXyz/Rm
織姫は今まで燃え上がっていた炎が、理性の冷たさによって急速に消え去っていくのを感じた。巨大な力が織姫を捉え、銀河の歯車が定まった方向へと動き出すように促している。脳の神経回路が、あらゆるやり方で織姫の激情を否定する。目の前の、震えながらも無表情な父の背後には、銀河を埋め尽くす巨大な生命が何も知らないままに蠢いている。幾億幾兆の粒子の間に、赤く燃える二つの煌めきが苦しそうに佇んでいるが、あくまでもそれはただの光だ。しかし織姫は、その煌めきを必死で見つめた。その光は今にも消えそうでありながら、織姫の瞳を斬りつけて、根深く絡まった脳みその奥深くをほじくり回す。瞳の中にもう一つの瞳を取り込んだような柔らかく苦しい痛みが沸き上がり、雫となって溢れ出した。織姫は懐からバズーカを取り出して、ぼろぼろにかすんだ視界を思い切り撃ち抜いた。弾丸は宮殿の天井を貫通し、その空洞から星々の煌めきが降りそそいだ。どこまでも続く銀河の果てには壁があったが、織姫は真っ黒な壁に穴が開いていることに気づいた。続いて、その穴から一直線に伸びる赤い光を認めた。その煌めきは視界を覆う涙を通り越して織姫に届き、彼女は決意を持って神を睨んだ。

 壁を破壊し光の速度で進む彦星が捉えたのは、宮殿に空いた大きな穴だった。彦星は織姫がそこに居ることを直感した。ビームサーベルを起動して、上段に構えつつ宮殿に侵入する。そこには神と織姫が居た。バズーカを抱えた織姫は彦星を見て微笑み、一瞬の間があってから神を指さし「殺して」と言った。限りなく美しい織姫は歌うようにそう言った。彦星はビームサーベルを下段に構えて獣のようにかがみ込み、ヘリウムガスを噴射して神に突撃していった。そして一秒の後、死んだ。

 「私が神になったのは、怖かったからだ。あの女が好きだったからではない。」
呆気にとられる織姫と活動を停止したモビルスーツを前にして、神は右手を突き出しながら言った。神の右掌から発せられた閃光は、正確に彦星の胴体を貫いている。
 織姫は神を睨む気力を失くしたまま、彦星の亡骸を伴って宮殿を去った。その後姿を、神はやはり無表情に見つめていた。

 織姫と彦星による運命的神話的な出会いから、四時間と十六分が経過した。織姫は無我夢中で銀河を駆け抜け、壁へと至った。織姫はモビルスーツの中に入って、物言わぬ彦星の死体にキスをした。その時、織姫は操縦桿の裏にある黄色いボタンに気がついた。彦星の手を握り、繋いだ手のまま虚ろな瞳でそのボタンを押す。織姫の意識はそこで途切れた。

 無表情な神は、宮殿の穴から銀河を見渡している。秩序を保った平和な銀河だ。そして遥か遠くの壁へと目を凝らしたその時、吹き抜ける爆風が神の瞳を襲った。同時に、すさまじい閃光が銀河全体を包み込んだ。それは古の超新星爆発を想起させるほど暴力的で、過激な美しさに富んでいた。神は光に包まれながらも無表情であったが、決して瞬きすることなく光の中心を見据えていた。その瞳からは、感情を伴わない涙が溢れて銀河の彼方へ消え去った。光の渦は10秒ほど銀河を満たしていたが、やがて元の平穏な姿へと戻った。しかし一つだけ違うのは、今まで壁のあった一面を、きらきらと煌めく粒子が川のように埋め尽くしていることだった。僅かに赤いその集積は、銀河の形を少しだけ変えてしまった。それは殆ど意味がない変化であり、ただ美しいというだけである。織姫と彦星による運命的神話的な出会いから四時間と二十分が経過しており、時刻はちょうど12時を回った。七月七日、銀河は意味のない美しさに包まれてその日を迎えた。相変わらず神は無表情なまま、銀河の秩序を保っている。
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