夜のカイロ、月明かりの下にそびえ立つピラミッド。その頂上で、ルパン三世が満面の笑みで「賢者の石」を掲げた。
「いやーん、さすがルパン、素敵ぃ〜!」
不二子の歓声を背に、ルパンは高らかに笑った。
だが次の瞬間——。
空が裂け、雷が走る。時間と空間がねじれる中、ドスン!という音と共に、何か巨大な影がピラミッドの上に降ってきた。
「ぬおっ!ここはどこでゴワス!? さっきまでワシ、土俵で勝負しておったはず…!」
現れたのは、ふんどし姿に立派なチョンマゲ、鍛え抜かれた肉体に不思議な気配を纏う、異世界の力士——ハッケヨイ!
「ちょ…ちょっと待って? なにこのヤバいの…!?」
「えぇー…マジで何者だこのデカブツ!?」
ルパンと不二子があっけに取られている中、銃声が響いた。
バン!
マモーの部下たちが現れ、石を狙って襲撃してきたのだ。
「ヒャハハ!こいつは頂くぜ! ルパン三世!」
「ちょっと待ったでゴワス!」
ハッケヨイが一歩前に出た瞬間、地面がめり込んだ。圧倒的な質量が、砂の大地を揺らす。
「秘技、超次元張り手・無限連打でゴワショォォッ!!」
ブワァッ!!
空気が割れ、光の帯のような張り手がマモーの部下たちを吹き飛ばす。まるで物理法則がねじ曲がったかのような一撃に、敵はたちまち壊滅。
「こ、こいつ……やべえ……!!」
「うっわ、惚れる……って、いやそうじゃない!」
ルパンは大汗をかきながら石を抱え、ハッケヨイを振り返る。
「おいデカブツ、あんた何者だよ?」
「ワシは異世界の相撲武神、ハッケヨイ。悪を張り倒すため転生してきたでゴワス!」
「なるほどねぇ……ま、面白いヤツが来たもんだ。だったら、マモーってやつに一発かましてやるとするか!」
こうして始まった——
ルパン三世と異世界相撲武神・ハッケヨイの奇妙な共闘!
不老不死を求めるマモーの陰謀に、張り手とトリックで立ち向かう!
舞台はカリブ海の孤島。そこにある巨大地下要塞こそ、マモーの本拠地。
ルパン一味+ハッケヨイは、偽の賢者の石を手に、潜入作戦を開始していた。
「さーて、ここからはオレの得意分野だ。セキュリティ?そんなもん屁でもねぇ」
と、いつもの調子で壁をよじ登るルパン。
だがその横で、不二子がぴたりとハッケヨイに寄り添ってきた。
「ねえ、ハッケヨイちゃん……私たち、しばらく二人っきりね……ふふっ」
「ぬおおおっ!? な、なにをするでゴワスか不二子殿っ!!」
不二子は胸をわざと押しつけ、ハッケヨイの腕に絡みつくようにしてささやく。
「お願い、私を守って……頼りにしてるのよ、ハッケヨイちゃん」
「う、うううう……わ、ワシはっ、女体には……耐性が……ないでゴワショォォ!」
ブシューーー!
ハッケヨイの鼻から、マンガのような勢いで鼻血が噴き出した。
「ちょっとアンタ!この場面で鼻血とか、古典すぎるわよ!」
「うぅぅ……不純な気持ちはないでゴワス……ただ……大地の女神のような……」
「だー!落ち着け落ち着けって!バレたらマモーの餌食だぞ!」
ルパンが慌ててハッケヨイの鼻にティッシュを突っ込む。
だがその直後——。
「待っていたぞ、ルパン三世……それに見慣れぬ巨漢も」
場の空気が一変した。
マモーの声が、どこからともなく響いてくる。壁がせり開き、禍々しいオーラを放つ巨大な脳髄が浮かび上がった。
「こいつが……マモー……!?」
「そうだ。私は神に成る存在。貴様ら愚か者どもには理解できまい」
だが、ハッケヨイは拳を握りしめた。
「神じゃと? 命を弄ぶ者に、神の資格などないでゴワス! 見せてやる、力士魂!」
「ふっふっふ……来るがいい。お前の肉体も、私の“複製”技術に組み込んでやろう……!」