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【リレー小説】TPパニック 〜 殺し屋達の絆 〜

レス数が900を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。
2020/04/07(火) 17:25:09.11ID:nh+CTxFo
また恥ずかしくなってしまわないよう、ヤーヤはすぐに歌い始めた。

曲名は「保持你信念在心中(心に信念を持ち続けて)」だった。

♪通りを歩きながら あなたは何を考えるの
人々は流されて行く 見知らぬ場所へ
どこに辿り着くのだろう 何を残して行くのだろう
混沌の中で日々を過ごしている

疲労困憊
欲求不満
信念不在

もしも
全てが最悪のほうに転んで
間違いが繰り返され
私達を実現するために
何度も何度も血が流されても

太陽はまた昇る
星はまた輝く
希望は止まない
昼も夜も
そう
心に信念を持ち続けていれば

心に信念を持ち続けていれば
2020/04/07(火) 17:29:38.40ID:nh+CTxFo
「わぁ……」
曲が終わるとムーリンは肩を揺らして拍手をした。
ギターを掻き鳴らしながら全身で歌うヤーヤは違う人に見えた。
音楽にあまり興味のなかったムーリンだったが、ヤーヤの歌には心から感動していた。
「へへ……」ヤーヤは頭を掻きながら白い歯を見せて笑った。「照れるね」
2020/04/07(火) 17:32:57.88ID:nh+CTxFo
「今のはどういう歌なの?」
ムーリンは正直に質問した。

「この国のことを歌ったものでもあるし」
ヤーヤは自作を解説した。
「何かに挫折した人や、失恋した人を励ます歌でもある」

「カッコいい」
ムーリンは目をキラキラさせた。

「でね、ムーリンを励ます歌でもあるんだよ」
ヤーヤはそう言うと、優しく微笑んだ。
2020/04/07(火) 17:38:47.04ID:nh+CTxFo
「あたしを……?」
「お姉さん亡くなって、ムーリン悲しいよね?」
「……うん」
「この世で一番慕ってた人だったんでしょ?」
「……ん」
「でもほら、お姉さんが残してくれたものはあるはず。ムーリンはきっとお姉さんから何か大事なものを受け継いでるでしょ?」
「んー……」ムーリンの頭にはこけししか浮かばなかったが、とりあえず頷いた。「うん」
2020/04/07(火) 17:43:01.40ID:nh+CTxFo
「信じるものがあれば生きて行ける……そうでしょ?」
そう言ってヤーヤはまた優しい笑顔を見せた。
自分よりも強く、明るく、頼もしく微笑むヤーヤを見ていると、自然とムーリンも笑顔になった。
「……うん!」
世界で一番信じられるものを目の前にするように目を輝かせ、ムーリンは強く頷いた。
2020/04/07(火) 18:08:05.49ID:nh+CTxFo
「くっさいのぅ」
自室でモニターを覗き込みながら、タオ・パイパイは呟いた。
「わっかいのぅ」
モニターの中にはムーリンが今見ているのと同じヤーヤの笑顔があった。
「お友達が出来たんじゃなぁ、ムーリン」
タオ・パイパイは面白くなさそうに言った。
「わしのムーリンに……そんなものは要らんのぅ……」
そして部屋の隅に座っている妻のオリビアを振り返る。
「なぁ、オリビア? お前の娘に友達なんか要らんじゃろ?」
オリビアは涎を垂らしてケタケタと笑った。
2020/04/08(水) 08:48:13.45ID:PMqTA6zf
オリビア「お、おでお前を殺す!」
オリビアはいきなりタオ・パイパイの首を絞めた。
ゴキィッ!
タオ・パイパイは首の骨を折られて死んでしまった。
オリビア「つ、次はムーリンを殺す!」
2020/04/08(水) 10:47:22.03ID:ddbFz5WC
「ヴヴッ……ヴヴヴヴッ……!」
ガンリーは病室のベッドで震えが止まらずにいた。
頭が悪いぶん発達している彼の本能が告げていた。
「ムッ……ムーリンを甘く見てたッ! アレはヤバいっ……!」

「ヴヴーーッ!」
隣のベッドでは全身包帯だらけのヴェントゥスも震えていた。
「光の守護者たるこの俺がッ……! ここまで怯えるとはッ……! あの小娘、何者ッ……!?」
2020/04/08(水) 10:59:54.68ID:ddbFz5WC
「ママ!」
どこかへ出て行こうとするオリビアを、廊下の向こうからキンバリーが呼び止めた。
「喜んで! アイツの弱点を突き止められそうなの」
そう言うとゆっくりと近づき、その柔らかな胸の中に母親の顔を埋め、抱き締めた。

自分と前夫の間に出来た最愛の娘に抱き締められ、オリビアは一瞬正気を取り戻したように穏やかに笑った。
2020/04/08(水) 11:04:47.60ID:ddbFz5WC
薄暗い部屋で5人の男達がパソコンの画面を見つめていた。
5人ともが真っ黒なスーツに身を固めているので、この部屋はパソコンモニターの明かり以外真っ黒だ。

「ふむ」
5人のうちの1人が言った。
「なるほど。履いている靴が武器だというわけか」

「この靴さえ奪ってしまえば」
他の1人が言った。
「我々の勝利だ」
2020/04/08(水) 11:08:41.93ID:ddbFz5WC
「黒色悪夢はどうする?」
3人目が言った。
「もう本土から呼び寄せてしまったぞ」

「必要なかったようだな」
4人目が嘲笑うように言った。
「中国1の殺し屋か知らんが、我々だけで充分だったということだ」

「顔だけでも拝んでおきたいところだが……」
残る1人が言った。
「どうせまた終始秘密なのだろうな」
2020/04/08(水) 11:14:19.01ID:ddbFz5WC
桃園国際空港に白いワンピース姿の少女が降り立った。
「わぁ」白い帽子の庇を手で持ち上げ、空を仰ぐ。「さすが台湾、あったかいね」
「日焼けに注意しろよ」少女の口を動かして別の声が言った。「ララは色白なのとおっぱいがデカイのだけが取り柄なんだから」
「メイ」ララと呼ばれた少女は自分の中に住む声の主に言った。「どこ遊びに行く?」
「仕事だろ」メイと呼ばれた声の主はあどけない調子で答えた。「遊びに来たんじゃない」
2020/04/08(水) 11:17:01.23ID:ddbFz5WC
「……けど」

「けど、まずはピンチーリン食おうぜ!」

「それでこそメイ!」
ララははしゃいで跳び跳ねた。

「あとレガシィ台北で宇宙人(バンドの名前)のライブ見んぞ!」

「オー!」
白い少女は2つの声で独り言を叫びながら駆け出した。
2020/04/08(水) 11:18:44.41ID:ddbFz5WC
「これこれ。このジャン・ウーを置いて行くな」

遅れて歩いて来た白髭に酒徳利を下げた老人が呟いた。

「……なんか改行できない」
2020/04/08(水) 11:52:38.41ID:ddbFz5WC
「ラン・ラーラァさんですね?」
空港のロビーに出ると、すぐに白いブレザー姿の女性が声をかけて来た。
「ようこそ台湾へ。私はキンバリー・タオと申します」

「ラン・ラーラァです。ララと呼んでください」
ララはキンバリーと握手をしながら言った。
「さすが台湾は美人どころですね。お姉さん、綺麗」

「ララさんもとても可愛くてびっくり」
そう言ってキンバリーはにっこりと笑った。
2020/04/08(水) 11:58:07.80ID:ddbFz5WC
「ところで黒色悪夢さんは?」

キンバリーが聞くと、ララはバシバシとまばたきしながら答えた。

「あの、えっと。もう来てるんですけど、先にホテルに行っちゃって……」

「素早いんですね」

遅れてやって来たジャン・ウーがオーイと大声を上げている。

「あの方は?」

どう紹介しようかとララが迷っていると、追いついて来たジャン・ウーはキンバリーの美しい顔に見とれながら自己紹介をした。

「どうも。福山雅治です」
2020/04/08(水) 12:20:02.98ID:ddbFz5WC
「その優しく泣いた後のようなお目目が素敵」
「お姉さんの髪はまるでシルクで編んだ装飾のよう」

カフェで向かい合って座りながら、キンバリーとララはずっとお互いの容姿を褒め合い続けていた。

「白い肌は雪の精のようだわ」
「お姉さんだって、まるで玉山の頂上を写したような美しさ」

「なんじゃこりゃ」
ジャン・ウーは同席しながら居心地の悪さに貧乏揺すりを始めた。
2020/04/08(水) 12:21:31.83ID:ddbFz5WC
「仕事の話をしろ!」

ついララの中から別の声が出てしまった。

「?」
キンバリーが怪訝そうな顔をする。
「今の声は?」
2020/04/08(水) 15:15:24.27ID:ddbFz5WC
「いいからくだらんお喋りはやめて仕事の話をしてくれ」

「……わかったわ」
急にララの調子が変わったことに釈然としないながらも、キンバリーは本題に入った。
「殲滅してほしいの、台湾1と呼ばれる殺し屋ファミリー、タオ一家を」
2020/04/08(水) 15:23:12.84ID:ddbFz5WC
キンバリーから父タオ・パイパイ、長男ジェイコブ、長女バーバラ、次男ガンリー、三男マルコム、四男、
ターゲットとして指定された6人の殺し屋の情報を聞き終わると、ララの中の声は言った。
「フン。それで? お前もタオ一家の次女なのだろう? なぜ自分の家を滅ぼそうとする?」

「答える必要があるかしら?」

「フン。確かに、仕事とは無関係だな」

「あなたが黒色悪夢さんなの?」
キンバリーはララの目の中を覗き込み、中の人を探すように言った。

「いいえ。あたしはララよ」

「ふぅん」
キンバリーは皮肉っぽく笑った。
「雪の精のようかと思ったらあなた、まるでキリマンジャロの山頂で氷漬けになった黒豹ね」
2020/04/08(水) 15:39:25.39ID:ddbFz5WC
「ところで」ララが明るい声で言った。「このお店って、ピンチーリン(台湾式ソフトクリーム)あります?」

突然また元に戻ったララに戸惑いながら、キンバリーは笑った。
「カフェにピンチーリンはないわね。外に専門店があるわよ」

「わぁい♪ じゃ、お仕事のお話、終わりですよねっ?」

「面白い娘ね」
キンバリーはくすっと笑う。
「ねぇララちゃん、よかったら今夜、バーで飲まない? 仕事の話は抜きで」

「あたし、弱いんですよぉ、お酒」

「あら。幾つなの?」

「もうすぐ二十歳になるんですけどぉ。16歳の妹のほうが強いぐらいで……」

「妹さんがいるの?」

「あっ。ええっ……!」ララは何故かやたらと狼狽えた。「ほっ……、本国に」

「わしは底無しじゃぞい」
横からジャン・ウーが言った。
「綺麗な姉ちゃん、今夜、一緒に飲まへんけ?」
2020/04/08(水) 15:45:28.37ID:ddbFz5WC
キンバリーのストーカーをしていたジェイコブが遠くのビルの窓から覗いていた双眼鏡を下ろした。

「誰だ? あの老人と……美しい少女」

そう呟いて、舌なめずりをする。

「嫁にするならキンバリーだが……弄ぶならあの美少女だな」
2020/04/08(水) 17:20:29.41ID:ddbFz5WC
「ふん!」
首を折られたフリをしていたタオ・パイパイは起き上がった。
「オリビアめ。相変わらず可愛い奴よ。伝説の殺し屋と呼ばれるこのわしがお前に殺られるとでも……」

起き上がったところへ部下から連絡が入った。

「どうした? 陳氏を見つけたのか?」

自分を裏切り、モーリンを罠に嵌めて殺した憎っくき陳氏をパイパイは探させていたのだった。
しかし部下の報告はそのことではなかった。
中国から最強の殺し屋『黒色悪夢』が来台したらしいとのことだった。
2020/04/08(水) 17:25:08.96ID:ddbFz5WC
「ふ。最強の殺し屋と呼ばれる黒色悪夢か」
タオ・パイパイは鼻で笑った。
「伝説の殺し屋と呼ばれるこのわしとどちらが強いか、勝負してみるか」

そう呟いておいて、パイパイは考え込んだ。

「いや。わしはもう引退しておる……」

そして机の上のモニターのほうを振り返ると、今ムーリンが見ているのと同じ川の景色を見た。

「わしの最高傑作タオ・ムーリンとお前、どちらが強いか勝負じゃ」
2020/04/08(水) 17:30:52.66ID:ddbFz5WC
川辺の公園でムーリンは、ヤーヤとウー・ユージェと談笑していた。

「あたし、音楽に興味なかったんだ」

ムーリンが告白すると、ヤーヤとユージェが揃って驚きの声を上げた。

「まじで? そんなキンキラの髪してるからバリバリのロッカーかと思ったぜ!」
ユージェの言葉に、ヤーヤは笑いながら同意した。
「うんうん」
2020/04/08(水) 17:34:16.32ID:ddbFz5WC
「滅火器.EXぐらいは知ってるだろ?」
ユージェは台湾で大人気のロックバンドの名前を挙げた。

「それはさすがに誰でも……」
ヤーヤがユージェの頭を小突いてツッコミを入れる。

「えっ? 消火器が何?」

「えっ?」
ユージェとヤーヤが揃って呆気にとられた。

「何? 音楽やる人の名前なの? ……知らない」
ムーリンは恥ずかしそうに項垂れた。
2020/04/08(水) 17:44:52.84ID:ddbFz5WC
「滅火器.EX 知らないなんて」
「本当に台湾人?」
「本当に若者?」
「本当に人間?」

二人はふざけてからかっているだけだった。
しかしムーリンは恥ずかしさから逃げ場を失い、追い詰められ、どんどんと余裕がなくなっていた。
何より大好きなヤーヤに馬鹿にされているらしいことがショックで、だんだんと意識が遠ざかって行くほどのストレスに襲われた。
2020/04/08(水) 17:49:42.67ID:ddbFz5WC
ムーリンは言った。
「どぁっ……」

「ん?」
ヤーヤが面白そうに、伏せているムーリンの顔を覗き込む。
「どした?」

「どぁっ……どぁれ、ぐぁっ……!」
ムーリンの口からは別人のような声が出た。

「ハハハ! コイツ面白ぇー!」
ユージェが小馬鹿にするように笑う。
もちろんただからかっているだけだが……。

「どぅあどどどど、じぇじぇじぇじぇっ!!!!」
ムーリンの顔が笑いながらひび割れはじめる。
2020/04/08(水) 17:50:18.64ID:ddbFz5WC
「よし、殺せムーリン」

モニターを見ながらタオ・パイパイが言った。
2020/04/08(水) 18:36:32.48ID:q0j7wJKt
「嫌だね」
聞こえるはずのないムーリンの声がモニターから聞こえた。

「ん!?」
これにはパイパイパパもビックリ。
2020/04/08(水) 21:14:51.85ID:jYPmaZVT
「そうか……」

タオ・パイパイは呟いた。

「屋外では発動しないんだったな……」

自分が操作して友達二人を殺そうとコントローラーに手をかけたが、パイパイはつまらなそうにその手を離した。

「……改良が必要だ」
2020/04/08(水) 22:02:39.87ID:tTGewDei
「どぅっ、どぅどぅっ……」

気が狂ったように笑いはじめたムーリンのことを、ヤーヤとユージェはさすがに心配そうに見つめ始めていた。

「どぅっ……どぅっ……ぱあっ!」

水から上がって息をするようにムーリンが戻って来ると、二人は安心して笑顔を見せた。

「なんだよ、それ」
ユージェが笑う。
「日本のお笑い芸人の真似かなんかか?」

「もぉ〜! 心配するじゃん!」
ヤーヤがムーリンの首を抱き締めた。
「おふざけが過ぎるわボケッ!」
2020/04/08(水) 22:03:57.90ID:eXMbu+Bc
「なんだこれは…!?」
ムーリンは驚愕した。風景が止まっていた。
ユージェとヤーヤが笑ったままの表情で一時停止のように止まっていた。
2020/04/08(水) 22:06:17.72ID:tTGewDei
「じゃ、俺、バンドの練習あるから」
そう言ってウー・ユージェはスクーターに乗って帰って行った。

「もうすぐ合同ライブがあるんだって」
ヤーヤがムーリンに教えた。
「都合よければ一緒に見に行ってやろ?」

「うん!」
ムーリンは元気よく返事をした。

「後ろ、乗る?」
ヤーヤは原付スクーターの狭いシートの後ろにスペースを空け、聞いた。
2020/04/08(水) 22:11:42.12ID:tTGewDei
ヤーヤのヘルメットを被り、彼女の少し逞しい腰に手を回しながら、ムーリンは考えていた。

さっき……記憶が飛んだ。
唯一覚えているのは、一時停止したような二人の笑顔だけ。
それはジッターノイズがかかったように歪んでいた。

ムーリンは中学2年の夏を思い出す。

憧れていたクラスメイトの顔が甦る。

最後の記憶は彼女の一時停止した笑顔だった。
猿のように歯を見せて、ジッターノイズがかかったかのように、その笑顔が止まっていた。
2020/04/08(水) 23:04:17.78ID:sqeLRLVj
(…今日は楽しかったなぁ。)
ムーリンは今日を振り返りながら自室の扉を開けた。
2020/04/08(水) 23:22:06.00ID:eXMbu+Bc
タオ・パイパイ「やぁ」

ムーリン「」
2020/04/08(水) 23:26:36.65ID:i4g26v0i
タオ・パイパイ「ただいまダルルォ!?」
2020/04/08(水) 23:47:18.14ID:tTGewDei
タオ・パイパイ「しかしムーリン。よくぞママを殺した」

ムーリン「えっ?」

タオ・パイパイ「フフフ……。記憶がないんじゃな? 可愛いのぅ」

ムーリンは必死に自分の記憶を辿った。
確かに夕方の数分だけ、記憶が飛んでいる。
2020/04/08(水) 23:47:40.83ID:Wd+KYppH
「出たな妖怪クソ親父」
ムーリンは義父タオ・パイパイの股間を蹴りあげたが空を虚しく空を切るだけだった。

「ふん、殺し屋でもないお前がワシに一撃与えようとは百年早いわ」
パイパイはムーリンの背後に回り込むと彼女の脇手をいれくすぐり始めた
2020/04/08(水) 23:50:48.98ID:tTGewDei
ヤーヤのスクーターの後ろに乗りながら、ムーリンは中学の頃のあの1日を思い出そうとしているのだった。

可愛くて、スタイルがよくて、明るいクラスメイトの女の子がいたのだった。
名前は確かインリンだった。

あれは誰にでも優しいと思っていたインリンが、実は自分をいじめている奴らの親玉だと知った日だった。

その日、初めてムーリンの記憶が飛んだ。
2020/04/08(水) 23:56:30.99ID:tTGewDei
そのことは後でニュースを見て知った。

密閉されているわけでもない教室で、自分は43人のクラスメイト達を一瞬にして皆殺しにしたのだ。

記憶が飛ぶ前のことは少しだけ憶えている。

インリンが歪んだ笑顔を近づけながら、言ったのだった。

──アンタなんか好きになる人間、いるはずないじゃない

クラスメイトが全員、インリンに同調するように笑っていた。

──死ねよ、ドブス

──暗いよ、見てるだけで鬱陶しくなるわ

──気持ち悪い
2020/04/08(水) 23:59:21.51ID:tTGewDei
「ヤーヤ」
ムーリンは風の音に負けそうな声で言った。

「ん?」
ヤーヤはそれを聞き取り、返事をする。

「あたし達……もう、会わないほうがいいかもしれない」

思わずヤーヤはスクーターを止め、怒ったような顔で振り向いた。
「何それ。何でよ?」
2020/04/09(木) 00:00:44.04ID:82f385C3
ムーリン「なっなっなっ」 
ムーリンは心に不快感と怒りがこみ上げてきた。この変態クソ親父を振り払おうとしたが離れない。

パイパイ「うーむ、お前は顔はイマイチじゃがこちらはなかなかじゃないかな」

気がつけばムーリンは下着姿だ

ムーリン「〜っ!」
2020/04/09(木) 00:06:51.99ID:QQKRk1sB
「あたし……」
ムーリンは俯き、ようやく振り絞るように言った。
「ヤーヤにもしかしたら……ひどいことをしてしまうかも……」

「あたしのこと……嫌いなの?」

ヤーヤの言葉にムーリンは慌てて顔を上げた。
ヤーヤは悲しそうに、傷ついたような顔でこちらを見つめていた。
しかしそれは決して怒ったようではなく、ムーリンの言葉次第では泣いちゃうぞといった弱々しい顔つきだった。

「やだよ」
ヤーヤは言った。
「あたし、ムーリンのこと大好きになっちゃったのに……」
2020/04/09(木) 00:12:11.33ID:QQKRk1sB
「自信がないの……」
ムーリンはまた顔を伏せ、言った。
「あたし……ヤーヤの友達でいられる自信が……」

それきり黙ったムーリンのつむじを、ヤーヤは『ハァ?』というような顔で見つめていた。

バン! とヤーヤの温かい掌がそのつむじを叩いた。

「いてっ!」

思わず顔を上げたムーリンに、ヤーヤが言った。
「こないだ歌で伝えたばっかじゃん」

「え?」

「『心に信念を』だよ」
ヤーヤはそう言うと、笑った。
「自分を信じて」
2020/04/09(木) 00:15:54.63ID:QQKRk1sB
「やっぱりこのまま遊びに行かない?」
ヤーヤが言った。
「夜市行って、エリンギ食って、麺線も食おうぜ」

「うん」
ムーリンは笑った。
「行きたい!」

「ついでに可愛いバッグあったら欲しいな」

「あれ?」
ムーリンは通りの向こうからヘラヘラと笑いながらフラフラとやって来る人影を見つけた。
「ママだ」
2020/04/09(木) 00:21:43.40ID:QQKRk1sB
「えっ? ムーリンのママなの? 挨拶しなくちゃ」
そう言いながらスクーターを降りようとしたヤーヤの足が止まった。

「ごめん……。ね? 見ての通り」
ムーリンは恥ずかしそうに言った。
「ママはキチガイなの」

涎を垂らしながらやって来るオリビアに、怯んだようにヤーヤはまたスクーターに跨がった。

「ママのこと、見てあげて」
そう言いながらヤーヤは見てはいけないものから目を逸らすようにバイクを翻した。

「うん。付き合えなくてごめん」

「いいよ。また今度、遊ぼう」
2020/04/09(木) 00:26:41.87ID:QQKRk1sB
ヤーヤが走り去った後、ムーリンはオリビアを迎えるように歩き出した。

辺りに人は誰もいない裏通りだった。
オリビアはニタニタとムーリンを目で捉えながらまっすぐにフラフラと歩いて来た。

「ママ……。外に出たら危ないよ。帰ろ?」
ムーリンが片手を伸ばす。

「キョホホ! ムーリン!」
オリビアはいきなりこちらへ向けて駆け出し、懐から金槌を取り出した。
2020/04/09(木) 00:28:54.11ID:QQKRk1sB
「なんだ」

タオ・パイパイはモニターを見ながら呟いた。

「屋外でもちゃんと発動するではないか」

真っ赤に染まったモニターを消すと、パイパイは部下に命じた。

「ムーリンがB-22地点で気を失って倒れておる。連れ帰れ」
2020/04/09(木) 00:52:13.11ID:QQKRk1sB
【主な登場人物まとめ】

◎タオ・パイパイ……タオ一家の父であり、伝説の殺し屋と呼ばれる台湾1の悪党。

◎ジェイコブ……タオ一家長男。前妻エレナの子。31歳。小柄で陰気な顔つきの毒殺のプロ。キンバリーのことが好き。

◎バーバラ……長女。29歳。エレナの子。美人でナイスバディ。お金と自分にしか興味がない。暗器とハニートラップを得意とする。

◎ガンリー……次男。28歳。エレナの子。大柄で短い金髪頭。素手で人体をバラバラに出来る。頭はとんでもなくバカ。ジェイコブの犬。

◎マルコム……三男。27歳。エレナの子。長身でイケメン。お洒落。愛靴スーパージェット・リーガルを武器とし、一撃必殺を得意とする。キンバリーを愛している。

◎キンバリー……次女。25歳。オリビアと前夫の子。長身で長髪。太陽のように明るく、バーバラ以外の家族皆から愛されている。

◎サムソン……四男。19歳。タオ・パイパイとオリビアの子。デブ。影が非常に薄く、助手席に乗っていても運転手に気付かれない能力の持ち主。

◎ムーリン……四女。17歳。タオ・パイパイとオリビアの子。金髪でぶさいく。普段は殺し屋でもない普通の女の子だが、キレると一家1の攻撃力を爆発させる。

◎ヤーヤ……ムーリンが友達になった17歳の女子高生。

◎ユージェ……ヤーヤが思いを寄せる年上のロック・アーティストを目指す青年。

◎黒色悪夢……中国からやって来た最強の殺し屋。未だ正体は不明。

◎ララ……黒色悪夢の手配をする19歳の色白の少女。

◎ジャン・ウー……ララの手伝いをする白ヒゲの老人。
2020/04/09(木) 00:57:44.58ID:QQKRk1sB
「……と、いうわけで」
下着姿にされたムーリンはタオ・パイパイに向かって言った。
「あたし、パパの『実の子』なんだけど。どうするつもり?」
2020/04/09(木) 06:03:16.39ID:wvCwZ1KR
しかし、パイパイはムーリンを無視するように下着を剥ぎ取った。 
これで手を止めるほどパイパイが善良ならば、
実の娘を怪物にしてはいないし、そもそも台湾最強のアウトローになっていなかっただろう。

「…汚らわしい」
腐れ外道タオ・パイパイは、娘の裸を見てそう吐き捨てた。

「お前、何をしているか分かっているのか?」
ムーリンの声は恐怖と怒りで震えていた。
2020/04/09(木) 06:15:11.54ID:H9a1J9l+
父タオ・パイパイは実の娘の胸に手をかける。
同年代よりも大きく豊かに育ったそれを揉み始めた。
2020/04/09(木) 06:46:54.44ID:vaDgdVA3
「うおーっ、私は主人公だーっ!!」
ムーリンの怒りは頂点に達した。彼女が体に力を込めると筋肉が大きく膨らみ、先ほどの少女の体つきから、悪鬼を思わせるフォルムに変貌していく。

あっやべと、思いタオパイパイはコントローラーを取り出した。しかし、

「あれ?」
彼の表情に戸惑いと焦りが浮かび始めた。コントローラーを操作したが反応がないのだ。

「あっ」
次の瞬間彼の胴体は『暴れ牛』の腕に貫いていた。
2020/04/09(木) 07:54:11.64ID:rObv5GO5
「……と、でも思ったか?」
タオ・パイパイは得意の幻影を見せたのだった。
現役の頃、彼が無敵だったのはこれゆえである。
彼は相手の攻撃を先読み出来る。そして相手の脳を撹乱し、ありもしない光景を見せるのである。
2020/04/09(木) 07:58:23.79ID:e5reZJ4S
「素晴らしい」
タオ・パイパイは重傷を負いながらも
娘の成長に驚き感激した。
2020/04/09(木) 07:58:50.17ID:rObv5GO5
「そしてコントローラーなど使わなくとも、いつでもこれがここにある」
タオ・パイパイは自分の乳首をつねった。するとムーリンの暴走状態が嘘のように止まった。
「お前を操作するのはコントローラーでなければ出来んが、お前を止めるのはコレでいつでも出来る」
大人しくなり、泣き出したムーリンを部屋の隅に追い詰め、タオ・パイパイは見下した。
「あとはお前の暴走さえコントロール出来れば……完璧なんだがなあ」
2020/04/09(木) 08:05:04.24ID:rObv5GO5
「ムーリン」パイパイは言った。「わしはお前を最後に子を作るのをやめた。なぜだと思う?」
ムーリンは泣くばかりで答えない。
「お前が最高傑作になり得ると確信したからじゃ。そして、お前は期待に答えてくれた」
パイパイはしゃがみこむと、ムーリンの涙に濡れた頬を撫でた。
「わしはお前が可愛いんじゃよ。お前だけいてくれれば、あとのゴミクズどもは本当は要らんほどじゃ」
パイパイはムーリンの腕を引いて立たせると、全裸の娘を抱き締めた。
「わしの言うことを完璧に聞き、わしの予想を上回る仕事をするお前だけいれば、わしは満足なんじゃ」
パイパイは娘の背中をいやらしい手つきで撫で回した。
「可愛いのぅ、可愛いのぅ、わしのムーリンよ」
2020/04/09(木) 10:42:19.03ID:R05qWjbb
「子供の頃のようにチューしておくれ」

タオ・パイパイは唇を尖らせた。

「『パパだいちゅき!』って笑いながら。……さぁムーリン!」
2020/04/09(木) 12:21:05.35ID:e5reZJ4S
ムーリン「パパだいちゅき…ッッ!」

タオ・パイパイ「え゛っ!?」

ムーリン「隙アリッ!」
ムーリンは手刀を繰り出した。それは普段のか弱い娘のそれではなく暴れ牛と同じだ

愛娘の奇襲にタオ・パイパイはさっと攻撃を受け流し、素早い身のこなしで窓から飛び降りた。そして言った。

「ははっ、面白い。普段に戻ったと思わせて奇襲とはなかなかじゃ。ますます素晴らしい」
2020/04/09(木) 13:19:22.12ID:R05qWjbb
ムーリンは窓に駆け寄り、下を見下ろした。そこに父の姿はなかった。

「パパは?」

「ここでぇーす」

突然、背後からした声に慌てて振り返る。
今、飛び降りた筈のタオ・パイパイの姿をそこに認めるや否や、ムーリンの身体は宙を舞った。

着地した先はベッドだった。
着床するとすぐに、自動的に手枷と足枷が嵌められ、ムーリンは自由を奪われる。

「お前は身体が弱いだろぉ〜?」
タオ・パイパイはそう言って麻酔を注射した。
「さぁ、いつもの定期点検しようねぇ〜」
2020/04/09(木) 13:24:58.18ID:R05qWjbb
パイパイはそう言いながらこれで31回目の改造手術に取りかかった。
まずは両眼球に埋め込んである超小型カメラの点検。
「ウム。異常なし」
次に脳に埋め込んだコントローラー受信部及び内部の点検。
「これも異常なしじゃ。さすがワシ」
次にパイパイはボディーの点検と新たな改造にかかる。
既に手術痕だらけのムーリンの肌に新たなメスの傷が入れられた。
2020/04/09(木) 13:34:05.94ID:R05qWjbb
タオ・パイパイは誰かに解説するように独り言を呟きはじめた。

「ムーリンの『暴れ牛』の能力はこの子が産まれ持ったものじゃ。ワシが与えたものではない」

そう言いながらあばら骨をノコギリで切断し、人口の強化骨格に換装する。

「ムーリンが初めてその能力に目覚めたのは中学2年の夏。暴れた後、腕の骨はバラバラになっておった。
 ワシはその時からムーリンの素晴らしい才能に気づき、改造を始めた。まずは粉々になった腕の骨を人口強化骨格に換装した」
2020/04/09(木) 13:36:02.20ID:R05qWjbb
「しかしまだまだ改造が必要じゃ」

パイパイは傷痕を縫合しながら言った。

「いずれは全身を強化骨格に換装する予定じゃが、いきなり全部は出来ん。下手をすると拒否反応で死んでしまうしの」
2020/04/09(木) 13:41:14.79ID:R05qWjbb
「何より、改良すべき大きな点が3つありまーす」

タオ・パイパイは学校の先生のように語り出した。 

「まずは起動時間でーす。今のままではまるで昔のパソコンじゃ。発動するまでに時間がかかりすぎる」

「第二に発動のきっかけがムーリン次第なことでーす。いずれはワシの命令次第でいつでも暴れ牛になれるよう、改良したい」

「何より最大の問題点は、発動終了後に気絶してしまうことでーす。この間はコントローラーで操縦することも出来ず、隙だらけじゃ」
2020/04/09(木) 13:47:51.90ID:R05qWjbb
「まぁ、ぼちぼちと完成に向かって改造を重ねるしかないの」

あばら骨の強化を完了し、タオ・パイパイは眠るムーリンの顔をじっと見た。

「ワシに似てチンケでぶさいくじゃのぅ。そこがまた可愛いんじゃが……」

器具を片付けながら、パイパイは独り言を続けた。

「さて、手術のご褒美に、ムーリンの好きな……はて? この子は何のお菓子が好きじゃったかな?」

テキトーなお菓子をテーブルに置くと、タオ・パイパイは部屋の扉を開け、出て行った。

「何しろ昔は『要らん子』だと思っとったからのぅ。覚えとらんわ」
2020/04/09(木) 18:42:13.98ID:R05qWjbb
ララに振られたキンバリーは今夜もマルコムとベッドを共にしていた。

本当はもう彼に抱かれたくはなかった。
もうじき殺されることが確定している彼になど……。

マルコムはキンバリーを信じきって眠っていた。

ベッドの脇にはスーパージェット・リーガルシューズが綺麗に揃えて脱いである。

ビンロウ店の緑色のネオンがホテルの窓から入り、マルコムの寝顔を照らした。

キンバリーは困ったような目をして、その頬を撫で回していた。
2020/04/09(木) 18:46:57.80ID:R05qWjbb
「よーしピンチーリンも食べたことだし」
ララは夜の台北の街を一人で歩いていた。
「次は夜市だねっ♪」

「ララ……」
ララの口が勝手に動き、別の声がララに命令した。
「ホテルに帰れ」

「は? なんで!?」

「いいから」

「嫌〜よ! これからが旅のお楽しみ……はっ!?」
ララは恐る恐る聞いてみた。
「もしかして…尾けられてるの……?」
2020/04/09(木) 18:51:49.33ID:R05qWjbb
「いや……。その、荷物を置きに帰れ」

「荷物はジャン爺が預かってくれたじゃん! 今持ってる荷物って中古CD三枚だけじゃん!」

「CD三枚、重いだろ」

「そこまでひ弱じゃないし! 本当のこと言ってよ! 尾けられてるのね!? 危険が迫ってるのね!?」

「……」

「……メイファン?」

「……」

「……メイファンさん?」

「さん付けすな!」
2020/04/09(木) 19:01:07.82ID:R05qWjbb
「しょうがねぇ。教えてやる」
メイファンと呼ばれた声の主は言った。
「尾けられてる。ただし、どうにも妙だ。こんな変な『気』は見たことがない」

「殺気……じゃないの?」

「ああ」

「じゃあ……何気?」

「うーん」
メイファンは考え込むと、すぐに言った。
「わからん。まぁ、ホテルに帰れ」

「うっ、うん」
ララは夜の街の人だかりを縫ってまっすぐ歩きはじめた。
「ホテルに誘うのね?」

「ああ」
メイファンは低い声で言った。
「そこで迎え撃つ」
2020/04/09(木) 19:10:09.82ID:R05qWjbb
ホテルの部屋の鍵を開け、中に入るとララは聞いた。

「追って来てる?」

「ああ。……だが、遠い所で止まった」

「ホテルの外?」

「一応……中だが、遠い」

ララは生唾を飲み込むと、部屋の中を見渡した。
ジャン・ウーはホテルは好かんと言って外で寝ているので一人きりだ。
テーブルの脇にウサギがいっぱい入った自分の旅行バッグが置いてある。
静寂に耐えられず、ララは自分の中のメイファンに聞いた。
「テレビ……つけていい?」

「ダメだ」
メイファンは厳しい口調で言った。

「じゃあ……紅茶飲んでいい?」

「いいぞ」
2020/04/09(木) 19:15:11.22ID:R05qWjbb
ララはホテルの水棚からカップとティーバッグを取り出すと、備え付けのポットのお湯で紅茶を淹れた。
砂糖とミルクをどっさり入れるとテーブルへ持って行き、椅子に腰掛けた。

「……毒とか、入って、ないよね?」
念のためメイファンに聞いてみた。

「この部屋に誰かが入った形跡はない。大丈夫だ」

「ありがと」
そう言って紅茶を口に含み、喉に流し込むなり、ララはカップを落とし、喉を押さえて苦しみはじめた。
2020/04/09(木) 19:21:58.10ID:R05qWjbb
「ウウッ!?」
ララの苦痛は身体を共有するメイファンも味わうこととなった。
「……バカな!? 一体どこで……毒を!?」

ララは全身をひきつらせ、椅子の上で固まった。

玄関の扉がいきなり開き、陰気な顔つきの小柄な男が入って来た。

「おや、お嬢さん。どうしました?」
入って来た男はニヤニヤと笑いながら言った。
「私の名前はジェイコブ・タオ。ご存知……ですよね?」
2020/04/09(木) 19:28:36.60ID:R05qWjbb
「私は毒薬だけではなく、痺れ薬、媚薬、自白剤と、何でも使いましてね」
ジェイコブはララの隣に悠々と腰掛けると、愛を語るように言った。
「お嬢さんに飲ませたのは今言った3つを調合したものだ」

白い手で喉を押さえて痙攣しているララの横顔を見つめて、ジェイコブはうっとりした声で言った。
「あなたを弄びたかった。……昼間の夢がその日の夜に叶うとは……」

「今は動けないでしょう? そのうち嫌でも自分から服を脱ぎはじめ、私にあられもない姿を見せてくれることになります」
2020/04/09(木) 19:39:46.84ID:R05qWjbb
「そして次には私に犯されながら『黒色悪夢』の居場所と正体を喘ぎ声とともに教えてくれる」
ジェイコブは痙攣するララの頬を短い指で愛撫した。
「最後には絶命した貴女の口の中に私が射精し、証拠隠滅のため、貴女の首を斬り落とし、お土産とさせていただきます」

ララは苦しみながら自分の首に自分の掌を当て、じっとそれを動かさずにいた。
普通この毒を注入された相手は首をかきむしって苦しむものだ。
変わった苦しみ方だなとは思いながら、ジェイコブは気にしなかった。

「しかし……何故だ?」
ジェイコブは苦しむララに問い正すように呟いた。
「何故、昼間……『黒色悪夢』の部下であるお前が、キンバリーと一緒にいた?」
2020/04/10(金) 05:25:14.51ID:+B9GCsp1
すると痙攣していたララが突然、振り向いた。その清潔な口がガサツな声を出す。
「バーカ」

驚いて腰が浮いたジェイコブの襟元を掴むと、ララの身体を使ってメイファンは床に押し倒した。
馬乗りになって動きを拘束すると、天井から見下して嘲笑う。

「バッ……バカな!」
ジェイコブは周章狼狽した。
「どっ……毒は……!?」

「解毒した」
メイファンはバカにするように言った。

「どっ……どうやって……!?」

「解毒した」

一匹の蚊が飛んで来た。
有機毒を注射しようとする寸前、メイファンは両手でパンと叩き潰した。
2020/04/10(金) 05:33:24.36ID:+B9GCsp1
メイファンは予めテーブルの上に出しておいたクローゼットのワイヤーハンガーを取ると、言った。

「これでお前をグチャグチャにしてやる。黒色悪夢の部下なめんなよ」

「誰が『部下』だよ、このやろー!」
同じ口がララの声で怒り狂った声を出した。

「は!? は!?」
わけがわからず狼狽えるジェイコブの目の前で、ララの白い顔がみるみる黒に染まって行く。

ララはあっという間に真っ黒に変身した。
優しく泣いた後のようだった目は肉食獣のような鋭い目に変わり、口からは血に飢えた牙が覗いた。
2020/04/10(金) 05:39:15.34ID:+B9GCsp1
「お前の『気』……やっと何だかわかったぜ」
メイファンは言った。
「殺気というより『陰気』だ。こんなジトジトした『気』は初めて見た」

そう言っているうちに、メイファンが手にしたハンガーがみるみるうちに手斧に変わる。

「メイ、首切った後でちんぽ切ろう」
ララの声が言った。
「そんで口にちんぽ突っ込んで街角でさらし首にしてやろう。キャハハ!」
361創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/10(金) 06:28:21.54ID:H8Y8pt3O
「クソ、こんなガキにやられるなんて俺も焼きが回ったなぁ」
ジェイコブは自嘲するように呟いた。

直後、ジェイコブの首に向かって斧の刃が食い込み、彼の首は胴体から切り離された。
2020/04/10(金) 06:40:20.46ID:4CIm21Vr
筈だった。

先程までジェイコブだった物は彼の服を着た
人形だった。

「あ?」
突然のことにメイファンは混乱したが、
背後にジェイコブの気を察知し振り向くと
パンツ一丁の彼が部屋から出て行くのが見えた。

「はぁ…はぁ…、俺はまだ死にたくない、俺にはまだやりたいことがたくさんあるんだ!」

ジェイコブは必死に逃げた。
2020/04/10(金) 07:42:20.35ID:+B9GCsp1
「いやいや」
メイファンは大爆笑した。
「お前の特異な『気』は壁越しにでもよく見えるぜ」

そしてメイファンが壁を突き破って手斧を投げようとした時、背後でけたたましい音がして窓が粉々に割れた。
窓だけではない。窓の周りの壁までをガラガラと崩し、無数の銃弾が撃ち込まれたのだ。

「アギャーーッ!!?」

咄嗟に飛び退いたメイファンの足を銃弾が一発かすった。
2020/04/10(金) 07:49:55.32ID:+B9GCsp1
向かいのビルの一室で、窓の外に向かって構えたガトリン銃の先から煙を立たせながら、レザースーツに身を包んだバーバラが呟いた。

「くそ兄。だからさっさと殺ってしまえばいいのに」

標的が椅子の向こうに身を隠したので、バーバラは立ち上がり、部屋の中にあったバイクに跨がった。

「それにしてもさすがは黒色悪夢ね」
バーバラはスロットルを捻る。
「部下であのレベルとは驚異的だわ」

そう言うと窓から飛び出し、向かいのホテルの窓へと飛び込んだ。
2020/04/10(金) 08:13:12.87ID:+B9GCsp1
ホテルの部屋に舞い降りたバーバラはすぐさまロケットランチャーを取り出すと、椅子に向かって至近距離から発射した。
横へひらりと回って爆風を避けると、椅子の裏を確認する。

「……いない?」

メイファンはヤモリに身体を変えて天井にくっついていた。
2020/04/10(金) 08:47:22.06ID:AOeQycVj
ポタリ…

傷を受けたメイファンの足から、

バーバラの側へ血の滴が落ちた。
2020/04/10(金) 08:50:40.17ID:+B9GCsp1
「そこかーーッ!!!」

バーバラは髪の中から拳銃を2丁、取り出すと天井めがけて乱射した。

「ギャーー!!!!」

メイファンはカサカサとゴキブリのように逃げ回った。
2020/04/10(金) 09:17:02.27ID:C+HDqqYa
そこへ背後の窓に空いた大穴からジャン・ウーが飛び込んで来た。
ジャン・ウーはバーバラの背中に子泣きじじいのようにへばりつくと、その胸を揉んだ。
「姉ちゃん! ええ乳しとるのぅ! 今夜乳繰り合いながら一緒に飲まんか!?」
「ギャーー!!」
バーバラは思わず悲鳴を上げると、袖から長ナイフを取り出した。
2020/04/10(金) 12:08:41.40ID:tt0K5f7Y
そして物語は数年後へ───・・・!
2020/04/10(金) 12:35:40.13ID:GQyHEJ5Q
「なわけないでしょ!」
バーバラは>>369の喉笛をナイフで掻き斬ると、背中の老人を投げ飛ばした。

目の前に立った老人はどう見てもジャッキー・チェンの「酔拳」に出て来る蘇化子だ。
赤い頬にボロボロの拳法着、頭にはヘンテコな帽子を被っている。

「……もしかして、あなたが『黒色悪夢』?」

「そうじゃ!」
2020/04/10(金) 12:48:03.01ID:GQyHEJ5Q
ジェイコブは全力で逃げていた。
夜の街をパンツ一丁で走り、ホテルを出て300mほど走ったところで息を切らして止まった。

「ゼエッ……! ゼエッ……! ハァハァ……」

ふと、息を整えているジェイコブの前に立つ人影があった。

恐る恐る顔を上げてみると、色の黒い獣のような少女が自分を見下ろしている。

「お前、フィジカル弱いなぁ。弱すぎだろ」

メイファンにバカにするようにそう言われ、ジェイコブは小さく悲鳴を上げた。

「ヒイッ…!」
2020/04/10(金) 12:53:52.65ID:GQyHEJ5Q
「ララを怖い目に遭わせた罰だ」
メイファンは手に持ったハンガーを一直線に解きはじめた。
「お前は特別に残酷な殺し方をしてやる」

どんどん悪魔のような顔になって行くメイファンの前でカエルのように動けなくなっているジェイコブを庇い、立ち塞がる者があった。

「おっ……、お前は……!」
ジェイコブは思わず声を上げる。
「……だっ、誰だ?」

光に包まれてその男は名乗った。
「俺の名はヴェントゥス」
そしてカッコいいポーズを決めた。
「我が友ガンリーの依頼を受け、アンタを助けに来た!」
2020/04/10(金) 13:01:38.22ID:GQyHEJ5Q
メイファン「また弱っちそうなのが出て来たよ……」
ヴェントゥス「フッ。俺は『光の守護者』だぞ」
メイファン「そういうのいいから」
ヴェントゥス「お前の国、中国を守る光の守護者の名を知っているか?」
メイファン「知るわけねーだろ」
ヴェントゥス「リウ・パイロンだ」
ジェイコブ「何っ!? あの……散打王の!?」
ヴェントゥス「あぁ。彼は光の守護者No.3だ。そして自分で言うのも何だが、俺はNo.2。つまり、俺はリウ・パイロンよりも強いぞ」
2020/04/10(金) 17:29:04.03ID:lzH9m26R
「どーでもいーよ。中二病」
メイファンは機嫌の悪そうな声で言うと、手に持ったハンガーを槍に変えた。
「邪魔するならお前も殺すまでだ」

メイファンは槍に全力の『気』を込め、ヴェントゥスとその後ろのジェイコブをまとめて粉々にするつもりで無数の突きを放った。

しかしそれよりも早く、ヴェントゥスの奥義が発動していた。

「ライトニング・ハンド・オブ・ミロクボサツ」

ヴェントゥスがそう呟いただけで、メイファンを眩い光が包んだ。
メイファンを突きを放つ格好のままその場に固まり、マネキンのように倒れた。
2020/04/10(金) 17:32:05.05ID:lzH9m26R
「や……殺ったのか!」
ジェイコブが嬉しそうな声を上げる。

「俺は殺しはしない」
ヴェントゥスは言った。
「『光の守護者』はただ世界の光を守るだけだ」

「死んでないのか。じゃ、俺が……」

懐からピストルを取り出そうとしたジェイコブの頬をヴェントゥスはピシャリと叩いた。
2020/04/10(金) 17:38:19.38ID:lzH9m26R
「愚かな真似はやめるんだ」
ヴェントゥスはキリストのような顔で言った。

「なっ、何言いやがる! これが俺の仕事だ!」
ジェイコブは頬を押さえながら喚いた。
「この女を……っていうかあれ? いつの間にこいつ黒くなった?」

「彼女はこの俺が保護する」
ヴェントゥスはそう言うと、気を失ったメイファンをお姫様抱っこで持ち上げた。

「は? そいつ、あの凶悪な殺し屋『黒色悪夢』の部下だぞ? 悪者だぞ?」

「善だの悪だのはお前が決めることではない。神の使者であるこの俺が決めるのだ」
377創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/10(金) 18:06:45.87ID:H8Y8pt3O
ヴェントゥスがジェイコブおじさんと口論をしていると
メイファンの体が徐々に白くなっていき顔つきも先ほどのものに変化しているのに
二人は気付いていなかった。

そして、

「何がマルだ、光の守護者だ、私は主人公だーっ!」

目を覚ましたララは奇声を上げながら、ヴェントゥスの顎に頭突きを敢行したのだ。
2020/04/10(金) 18:16:03.48ID:4CIm21Vr
ララの奇襲にヴェントゥスはちょっと痛そうに俯き顔をしかめた。

「くぅ〜、リウの言う通りの怪獣娘だ…」

ララはその隙に彼の腕から降り、更に金的に追撃をかました。
2020/04/10(金) 18:24:18.01ID:4CIm21Vr
ララ「み、見たか三下どもっ!し、し、真の主人公、ララ様を舐めるなよぉっ!!」

彼女はジェイコブおじさんを突き飛ばすとそのままジェイコブおじさんを踏みつけながら走り去っていった。
2020/04/10(金) 18:29:48.49ID:lzH9m26R
中山区にあるお洒落なBARのカウンターで、ジャン・ウーとバーバラは肩を並べていた。

「光栄だわ。あの最強の殺し屋『黒色悪夢』さんとお酒が飲めるなんて」

「わしも光栄じゃ。こんな色っぽいボインのお姉ちゃんと酒が飲めるとはな」

「ウフフ」
艶かしく笑うと、バーバラは赤い口紅をつけた唇をジャン・ウーの耳元に寄せた。
「朝まで付き合って……ね?」
2020/04/10(金) 21:51:45.98ID:lzH9m26R
『あの(黒色悪夢)と面と向かって闘って、アタシが勝てるわけない』

バーバラは考えていた。

『酒に酔わせ、SEXで骨抜きにし、ベッドの上で殺してやるわ』
2020/04/10(金) 22:07:06.20ID:6cESEmHI
その頃ララはトイレに隠れていた。

「私は今、窮地に立たされている。メイは未だに目を覚ます気配がない。ジャン爺ともはぐれてしまった…」

洋式トイレの便座にこしかけ、ララはこの世の終わりのような顔をしていた。

「すぅ…はぁ、大丈夫。私は主人公なんだ。きっと名案が浮かぶはずだ。」
彼女はどうにか気を落ち着かせ、目を閉じ思考を張り巡らせるが名にも思いつかない
2020/04/11(土) 01:31:03.87ID:MXrBU4Gi
トイレのドアをノックする音がした。

「はっ…? 入ってますっ!」
びくっと身体を震わせながら、ララは反射的に声を出してしまった。

『しまった! ジェイコブおじさんだったらどうしよう!』

しかしドアの外から聞こえて来たのは優しい女性の声だった。
「ララちゃん?」

「キンバリーさん!?」
2020/04/11(土) 01:35:33.71ID:MXrBU4Gi
「あなたが走って行くのを見かけたの。何だか追われるように……」

「お姉さん! 怖かった! 怖かったよう〜!」

ララはキンバリーに飛びついて泣きじゃくった。

「ええ。中国人のお友達なの。名前はララちゃんよ」

キンバリーが誰かに言った。

「大丈夫か? 怖い思いをしたようだね」
2020/04/11(土) 01:40:21.06ID:MXrBU4Gi
ララが顔を上げると、目の前に男の顔があった。
俳優のワン・リーホンに少し似ているイケメンだった。

「彼は私の義兄さんよ」
キンバリーは紹介した。

「マルコム・タオだ」
男は名乗った。
「台北は治安の良い街だが、悪い奴も多い。大変な目に遭ったようで申し訳ない、ララさん」
2020/04/11(土) 01:42:38.59ID:MXrBU4Gi
その時キンバリーは自分のスマートフォンにメールが入っていることに気づいた。
メールを読んだ彼女の顔色が変わる。

「どうした? 何かあったか?」

マルコムの言葉にキンバリーは答えた。

「ママが……死んだわ」
2020/04/11(土) 01:47:18.26ID:MXrBU4Gi
キンバリーはタクシーで急いで帰って行った。

「ララさんは僕が送って行こう」
マルコムは紳士らしくエスコートするようにララに聞いた。
「宿泊しているホテルはどこ?」

メイファンの殺しの標的に入っている男と二人きりにされ、ララはオロオロしながら答えた。
「その……ホテルが火事になって……それで……モゴモゴ」
2020/04/11(土) 01:57:01.83ID:MXrBU4Gi
「危なかったな、兄貴!」
帰って来たジェイコブにガンリーがハグをしながら言った。
「ヴェンに頼んで正解だったぜ! 俺はまだ傷が治ってないからな!」

「なぜ俺がピンチだとわかった?」
ジェイコブはあまり興味なさそうに、しかし聞いた。

「は? あったり前だろ! ナマズのヒゲが動いたらそりゃ地震来るだろ!」
ガンリーは頭がとても悪いぶん、動物的な超感覚を持っているのだ。
2020/04/11(土) 02:03:39.96ID:MXrBU4Gi
「しかしあの娘……」
ジェイコブは思い出しながら顔をしかめた。
「ララちゃん……。あの白い頬をまた今度、絶対に紫色に染めてやる」

「それよりムーリン早く殺そうぜ、兄貴!」

「声がでかい、ガンリー」

「あいつヤバいって! 早く殺しとかねーとヤバいよヤバいよ、絶対ヤバいよー!」

「……そっちは後でいい。まずはララちゃんだ」

「あいつ実のママを殺したんだぜ? 腐れ外道だぜ? 早く殺さねーと俺も殺される!」

「俺はパパと一緒の屋敷に住んでいるから関係ない。とにかくそっちは後だ」
2020/04/11(土) 02:08:25.55ID:MXrBU4Gi
ムーリンは自分の部屋で、自分のこめかみにピストルをあてがっていた。
これで何度目にあてがうのだろう。そのたびに自分の手が勝手にピストルを放り投げてしまう。
自分の中の汚ならしい卑怯さが自殺を拒否しているのだと思い込み、ムーリンは激しい自己嫌悪にまた浸る。
ドアが外からノックされた。
ムーリンが返事をせずにただ泣いていると、ドアを開けてキンバリーが入って来た。
2020/04/11(土) 02:13:42.63ID:MXrBU4Gi
「ムーちゃん!」
キンバリーは入って来るなりムーリンからピストルを取り上げた。

「キム姉……」
ムーリンは号泣しながら、しかしキンバリーの胸には飛び込まなかった。
「あたし……ママを……殺したらしいの」

「記憶がないのね?」
胸に飛び込んで来ないムーリンをキンバリーは自分から抱き締めた。
「……大丈夫!」

「大丈夫くない!」
ムーリンは激しく泣きながら、自分を責めて欲しそうに叫んだ。
「だいじょばない!」

「いいの。わかってるの」
キンバリーはその頭を優しく撫でる。
「私が憎むべきなのは貴女じゃない」

そしてムーリンの顔を上げさせると、顔を近づけ言った。
「貴女の中の『暴れ牛』よ」
2020/04/11(土) 02:17:09.58ID:MXrBU4Gi
モニターの中にドアップのキンバリーの顔を見ながら、タオ・パイパイはうっとりと呟いた。

「ええのぅ。キムは美しく成長したのぅ」

そして血の繋がりのまったくない娘の顔を凝視しながらスボンの中に手を入れ、激しく動かしながら、言った。

「よし決めた! 次のワシの妻はキンバリーにしよう」
2020/04/11(土) 06:55:49.91ID:DO1ghJTl
しかし、ズボンの中のモノは発射されることはなく萎びたままだ。

「・・・はぁ、年かな」
2020/04/11(土) 08:47:47.80ID:MXrBU4Gi
「しかしバラは何をしとるんじゃ……」

タオ・パイパイはカメラを切り替えた。
そこには現在バーバラが見ているものが映し出されていた。
汚ならしいジジイのキス顔がドアップで近づいて来たので、急いでまたカメラを切り替える。

「そのジジイはどう見ても『黒色悪夢』ではない。それよりも……」

パイパイはジェイコブの見た映像の録画を再生する。
白い少女の顔がみるみる黒く変わる様子を再生しながら、言った。

「間違いない。『黒色悪夢』は、こいつだ!」
2020/04/11(土) 08:50:14.45ID:MXrBU4Gi
ふと画面下の小さなウィンドウに映し出されている映像が気になった。
それはマルコムが今現在見ているものを映していた。
カーソルを合わせ、アップにし、パイパイはあっと声を上げた。

「そいつじゃ! マル! そいつが『黒色悪夢』じゃ!」
2020/04/11(土) 08:54:39.98ID:MXrBU4Gi
マルコムはララのために新しいホテルの部屋を取り、部屋まで丁寧にエスコートすると、言った。
「それじゃ、僕は失礼するよ。お休み、ララちゃん」

その時、スマートフォンの着信音が鳴った。
画面を見ると父からだ。

「失礼。父から電話だ」

電話を取ると、すぐさま押し殺した父の声が聞こえた。

「マル。四男にお前を監視させておる」

「えっ?」

「今、お前と一緒におるその小娘……。そやつが『黒色悪夢』じゃ。殺せ」
2020/04/11(土) 08:57:35.07ID:MXrBU4Gi
電話を切ると、マルコムはララのほうを見ないようにしながら考えた。

『こんな少女が最強の殺し屋だって……? あり得ない』

そしてチラリとララのほうを見る。
ララはちっとも気づかずにミルク砂糖どっさり入り紅茶を飲んでいる。

『何より……。だって彼女はキムの友達だ。どういうことだ?』
2020/04/11(土) 12:11:52.61ID:MXrBU4Gi
ララは紅茶を飲みながら、落ち着かずにいた。

(お休みとか言っといてまだ戸口んとこいるよ……。早く出てってくれないかな……)

ララは格好つけたイケメンが好きではなかった。
彼女は『ブサ専』と呼ばれるほどにダサくてアホっぽい男が好きである。
自分がいないと何も出来ないような情けない男のお世話をするのが夢だった。
そういう男ほど自分に一途になってくれると信じていた。その上で命を懸けて自分を守ってくれる男なら最高だ。

ふと『父からの電話』と言ったのが気になった。

(あれっ? このひとのお父さんって……標的のボスだよね?)

(まさか……メイファンのことバレた……?)

(メイファンまだ気を失ってるし……。こ、殺される……?)
2020/04/11(土) 12:21:41.42ID:MXrBU4Gi
「ララちゃん、ごめん」

そう言うとマルコムは足に力を入れた。
ジェット噴射は使わず、純粋な蹴りを放つ。靴の先から飛び出したナイフがララの眉間に深く突き刺さる。
実際にはその一連の動作を予感させただけだが、殺し屋ならば誰でも何らかの反応をする筈だった。
しかしララは頭に?マークを乗せてビクビクしながら紅茶に口をつけていた。
一家で最も鈍いジェイコブですら反応するような殺気を見せたのに、目の前の女の子はそれに気づいてすらいなかった。
気づかないフリである筈はなかった。マルコムは本気で殺す気を見せたのだから。

(パパでも見間違うことはある)

マルコムは笑顔を見せると、ララに言った。
「じゃあ、お休み。……ゆっくり休んで」
2020/04/11(土) 12:29:21.22ID:MXrBU4Gi
ホテルの部屋を出るとすぐさま父からまた電話がかかって来た。

『何をしとる! マル! 殺せと言ったじゃろう!』

マルコムは歩きながら答えた。
「何かの間違いだ、パパ。あの子が『黒色悪夢』である筈がない」

『バカもん! お前はワシの命令に従えばいい! 今すぐ戻って殺せ!』

「オレは悪い奴しか殺さない。あの子を殺すのはオレの美学に反する」

『何が美学じゃ!』
タオ・パイパイは電話の向こうで激怒した。
『教えた筈じゃ! 殺し屋の仕事は破壊すること、それのみじゃ! その後のことや殺す理由などは考えんでよい! 美学など要らん!』
2020/04/11(土) 12:34:36.17ID:MXrBU4Gi
「とにかくオレにはあの子は殺せない」

マルコムがそう言うと、電話の向こうから諦めたような父の声が返って来た。

「ようし、わかった。マル、早く帰って来い」
2020/04/11(土) 12:37:26.30ID:MXrBU4Gi
電話を切ると、タオ・パイパイはスマートフォンをベッドに叩きつけた。

「マルめ! 帰って来たら折檻じゃ!」

そして怒り狂った顔で改造道具を用意し始めた。

「アイツも改造してやる! ワシの言うことを何でも聞くようにな!」
2020/04/11(土) 15:40:15.60ID:nvcd/sqR
マルコムが出て行き、ララがほっとすると、メイファンが喋り出した。
「今の……誰だ?」

「メイ! 気がついた!?」

「そりゃあんなのされりゃ……な。誰だありゃ? ……イケメンだったが」

「今のひと? ターゲットの中にあったでしょ?」

「ああ……そういやカッコいいの1人いたな」
2020/04/11(土) 15:47:12.74ID:nvcd/sqR
「ところでまた姉ちゃんに救われたな」
メイファンはララに言った。
「ありがとう」

「何言ってんの」
ララは目を瞑って紅茶を一口飲むと、言った。
「あたしメイがいないと何も出来ないよ?」

「ララが『白い手』で解毒してくれなかったら、あのキモい男の言う通りにされてた」
ララの頭が勝手にぺこりと下がった。
「私はまだまだ未熟だ。だってメイはまだ16だから」

「メイが未熟とか言ってたら他の殺し屋さん達の立つ瀬がないよ」 
ララは言った。
「あんたは最強の殺し屋『黒色悪夢』でしょ」
2020/04/11(土) 18:28:15.95ID:4C/1yfkm
「…ありがとう」
メイは微笑みながら感謝を述べた。

ところが
「でもあの光を浴びてから調子が悪いんで、すまないが、姉ちゃんにはしばらく時間を稼いでほしい。」
といって再び眠りに就いてしまった。
2020/04/11(土) 19:58:35.12ID:nvcd/sqR
「は?」

ララは紅茶に口をつけ目をかっ開いたまま、暫く停止していた。

「はあああああ???!!!」

そして何故か慌てた動作でクローゼットの中へ入り込んだ。
2020/04/11(土) 21:44:08.84ID:RXUHRDLV
その頃ジャン・ウーは、バーバラをホテルのベッドでヒィヒィ言わせていた。

ジャン・ウー「もう6回イッたか? ほりゃ、7回目イかせてやるぞいっ!」

バーバラ「こっ、こんなにお酒もSEXも強いひと、初めてェェッ!」
2020/04/11(土) 22:40:43.39ID:nZdg2s7F
【主な登場人物まとめ】

◎タオ・パイパイ……タオ一家の父であり、伝説の殺し屋と呼ばれる台湾1の悪党。

◎ジェイコブ……タオ一家長男。前妻エレナの子。31歳。小柄で陰気な顔つきの毒殺のプロ。キンバリーのことが好き。

◎バーバラ……長女。29歳。エレナの子。美人でナイスバディ。お金と自分にしか興味がない。暗器とハニートラップを得意とする。

◎ガンリー……次男。28歳。エレナの子。大柄で短い金髪頭。素手で人体をバラバラに出来る。頭はとんでもなくバカ。ジェイコブの犬。

◎マルコム……三男。27歳。エレナの子。長身でイケメン。お洒落。愛靴スーパージェット・リーガルを武器とし、一撃必殺を得意とする。キンバリーを愛している。

◎キンバリー……次女。25歳。オリビアと前夫の子。長身で長髪。太陽のように明るく、バーバラ以外の家族皆から愛されている。

◎サムソン……四男。19歳。タオ・パイパイとオリビアの子。デブ。影が非常に薄く、助手席に乗っていても運転手に気付かれない能力の持ち主。

◎ムーリン……四女。17歳。タオ・パイパイとオリビアの子。金髪でぶさいく。普段は殺し屋でもない普通の女の子だが、キレると一家1の攻撃力を無差別に爆発させてしまう。

◎ヤーヤ……ムーリンが友達になった17歳の女子高生。

◎ユージェ……ヤーヤが思いを寄せる年上のロック・アーティストを目指す青年。

◎メイファン……中国からやって来た最強の殺し屋。通り名は黒色悪夢。まだ16歳の少女だが、『気』を操り何でも武器に変えてしまう能力を持つ。

◎ララ……19歳の色白の少女。メイファンと身体を共有しているメイファンの姉。強力な治癒能力を持つが、戦闘能力はウサギ並み。この物語の真の主人公?

◎ジャン・ウー……ララの手伝いをする白ヒゲの老人。ジャッキー・チェンの「酔拳」に出て来る蘇化子にそっくり。

◎ヴェントゥス……世界に7人いる『光の守護者』の1人。その中でもNo.2の実力を持つと言われているが、意外と弱い。金髪の七三分け。
2020/04/12(日) 00:19:17.39ID:bXsHliE2
タオ・パイパイはGPSを使ってマルコムが黒色悪夢といたホテルを突き止めた。

「今、動けるのはジェイコブとガンリーだけか……」

そう呟くと、その二人に早速出動命令を出した。
2020/04/12(日) 03:48:54.98ID:Xw/jeJmS
(頭がぼんやりとする。私は…)
ララは目を覚ます。
彼女はいままでの情報から
標的の手下達が自分たちを始末しに来ると踏んでクローゼットに隠れたのだ。

「そうだった、でもあれ」
全てを思い出しつつあったララは違和感に気が付いた。
(クローゼットの中ってこんなに明るかったっけ)
2020/04/12(日) 04:42:55.75ID:bXsHliE2
「やぁ、お嬢さん」

誰もいない筈のクローゼットの中で声がした。

金色の七三分けを手でサッと撫でて、さっきの光の守護者とかいう男が、光を纏ってそこにいた。

「俺の名はヴェントゥス。ヴェンって呼んでくれ」

パニックを起こしたララは火事場のバカ力でヴェントゥスの股間を蹴り上げると、ホテルの部屋から全力で走って逃げ出した。
2020/04/12(日) 04:50:24.65ID:bXsHliE2
夜の街を家へ向かって帰りながら、マルコムは黒いホンダロゴがすれ違って行くのを目で確認した。

ジェイコブの車だ。助手席にはガンリーの姿もうっすら見えた。

予想通りの展開だったがマルコムは追わなかった。そのまま家へ向かって愛車テスラを進めた。

ララを殺すことは出来ないが、ララを守ることはしない。
2020/04/12(日) 04:53:55.62ID:bXsHliE2
「クククク! お嬢さぁん! また会えた……!」

ジェイコブが狂喜しながらホテルの部屋に踊り込むと、股間を押さえてヴェントゥスが苦しんでいた。

「ターゲットだね、兄貴!?」

続いて入って来たガンリーがヴェントゥスに襲いかかった。
2020/04/12(日) 06:05:20.08ID:zZmgqA3R
「ファーック、何だよどいつもこいつも!」
ホテルを飛び出したララは、険しい表情を浮かべ半泣きで夜道を走っていた。

後ろからは追っ手が迫ってきている。
肥満体のその男はその姿からは想像できないほどの高速で、ララとの瞬く間に距離を詰め、追い越すとララの前に立ちはだかった。

「待ちたまえよ黒色悪夢。どこへいくというんだね」
2020/04/12(日) 06:22:40.18ID:Xw/jeJmS
ララは急ブレーキをかけて立ち止まろうとしたが間に合わず、タオ・サムソンの大きなお腹にめり込み、その弾力で弾かれ尻餅をついた。

「…父さんから兄さんの監視を頼まれていたが、トイレに行っていたら置いてかれてね。連絡も取れないしとりあえず″君達″の監視をすることにした。」

目の前のララはサムソンを睨んでいる。

(なんだこのおっさん!?)
ララは急に現れたサムソンと、彼が妹と体を共有していることを知っているかのような口ぶりに驚き、混乱していた。
2020/04/12(日) 07:24:36.50ID:zZmgqA3R
「ガンリー参上!」
かけ声とともにサムソンの頭部にガンリーの跳び蹴りが命中
サムソンは昏倒した。

「あ」
ララは突然のことだらけで頭が追いつかず、ただその風景を見ていることしか出来なかった。ガンリーは彼女のこめかみに軽く手刀を打ち込み失神させた。

「・・・人違いだったらすまんね」

ガンリーはまだ黒色悪夢の顔を知らない。
2020/04/12(日) 07:25:25.94ID:nyBGB3PX
タオ・パイパイはモニターを見つめる。
そこにはマルコムが今見ているものが映っている。
『四男に監視させておる』と言ったのは嘘である。
マルコムの目に超小型カメラが仕込んである。パイパイはそれを見ていたのだ。
カメラはキンバリーと四男を除く兄弟すべてに仕込んである。彼らはそのことを知らない。
カメラの映像はマルコムが屋敷の廊下を通り、もうすぐ父の部屋の扉の前に立つことを報せていた。
マルコムがセキュリティーの声紋認証装置を解除する前からタオ・パイパイは麻酔銃を手に待ち構えていた。
入って来たら麻酔銃を撃ち、眠らせ、自分の言うことを聞くように改造するつもりだ。
2020/04/12(日) 07:30:30.95ID:nyBGB3PX
「パパ……」

扉の前で立ち止まり、マルコムは小さな声で呟いた。
彼は父親が思っている以上に成長していた。中で父が銃口をこちらに向けて待ち構えていることに気づいていた。

絶望したように顔を背けると、マルコムは父の部屋に顔を出さずに去って行った。
2020/04/12(日) 07:35:08.03ID:nyBGB3PX
「確かに父さんの言う通り、最近の僕ら兄弟はおかしいよ。互いに命を狙い合ったり、ただの快楽殺人鬼に成り果てていたり……」

マルコムは自分の部屋のある別邸へ向かって歩きながら、呟いた。

「でも……自分で気づいているか? 一番おかしくなっているのは父さんだ!」

立ち止まり、父の屋敷を振り返った。

「引退してから、あの威厳あるゴッドファーザーでなくなってしまった! 今の父さんはまるで腐れ外道だ!」
2020/04/12(日) 07:37:07.00ID:nyBGB3PX
その声はマルコムの目に仕掛けたカメラに内臓のマイクでタオ・パイパイに聞こえていた。

「は? ワシが腐れ外道じゃと……?」
2020/04/12(日) 07:40:48.48ID:nyBGB3PX
キンバリーはムーリンと二人だけで母の葬式を挙げていた。
葬式と言っても中庭に花を手向け、線香を上げただけの簡単なものだ。
母の遺体はない。ムーリンの『暴れ牛』によってミンチになっていた。

「ママ……」
ムーリンはぼろぼろ泣きながら手を合わせた。
「あっ……ぐっ……あたしを……許しちゃダメだよ?」

「ママはムーちゃんを許すわ」
隣でキンバリーが手を合わせながら言った。
「許してはいけない奴は……他にいる」
2020/04/12(日) 07:47:14.08ID:nyBGB3PX
ガンリーは自分の部屋にララを連れ込むと、床に寝かせ、その顔を眺めた。

「かわいいなぁー」

ガンリーにとって美少女は、子犬や子猫のように可愛がるものであり、性欲の対象ではなかった。
彼は28歳だが童貞である。
2020/04/12(日) 07:49:15.98ID:MBINmvgD
その頃ララは、ガンリーの部屋にいた。

「すいません、許して」
ガンリーに胸ぐらを掴まれたララは、泣きながら命乞いをした。


「やはり黒色悪夢の関係者なんだな、さっさとこたえるんだよあくしろよ」
ガンリーはララにすごむように言った。

(…そういえばジェイコブの兄貴遅いぜ、何処行ったんだ?)
2020/04/12(日) 07:49:50.18ID:nyBGB3PX
ふと目を覚ましたララは、寝ぼけた目でガンリーの目を見た。
目の中に何か異物があるのを天性の癒し気質で感じ取る。

「あら? あなた、目の中に何か入ってますよ?」

そう言ってガンリーの目に白い手を当てる。

ガンリーの目にタオ・パイパイが仕込んでいた超小型カメラが排除された。
2020/04/12(日) 08:09:49.57ID:nyBGB3PX
ジャン・ウーはバーバラを10回イかせると、ようやく疲れて眠った。

いびきをかきはじめたジャン爺の隣で、バーバラはヘトヘトになりながらも起き上がると、クソ爺の寝顔を見つめた。
全裸の背中に手を回し、マシンガンを2機取り出すと、躊躇いひとつなく乱射した。

「悔しい! こんな汚ならしいジジイに10回もイかされるなんて!」

涙を流しながら怒り狂うバーバラの眼前で、ジャン・ウーは血飛沫を上げながら蜂の巣にされた。
2020/04/12(日) 08:19:49.85ID:nyBGB3PX
マシンガンを仕舞うとバーバラは父に電話で報告する。

「黒色悪夢を殺ったわ、パパ」

『バカモン! そいつはニセモノじゃ! 本物の黒色悪夢はあの少女のほうじゃ!』

「なんですって!?」

『今、ジェイコブとガンリーが追っておる! お前も早く探せ!』

「ラジャー」
バーバラは電話を切りかけて、改めてひとつだけ質問をした。
「何故あたしがこのジジイといること知ってるの?」

『四男に監視させておる』

「ユェンライ(なるほど)。ラジャー!」

バーバラは血を求めて駆け出した。
2020/04/12(日) 08:21:29.42ID:nyBGB3PX
電話を切り、タオ・パイパイはモニターを見て「おや?」と声を上げた。

ガンリーのモニターが真っ黒だ。消えている。

「故障か。はよ直さんとな」
2020/04/12(日) 08:32:32.20ID:zZmgqA3R
その頃、ジェイコブは病院に搬送されていた。

ララとの初対面時に、彼女が逃げる際突き飛ばされ脳に損傷を負っていたのだ。

「ありがとう、見知らぬ人」
病室のベッドのジェイコブが感謝を述べた相手はヴェントゥスだった。

「いいさ、当然のことをしたまで」
2020/04/12(日) 08:39:31.57ID:MBINmvgD
ジェイコブ「俺は誰だろう、思い出せない」
2020/04/12(日) 08:47:26.78ID:nyBGB3PX
ヴェントゥスはフッと微笑むと、ジェイコブに教えた。

「君は光の子だよ。今産まれたばかりの神の子さ。さぁ、善良になるんだ」
2020/04/12(日) 08:49:57.33ID:nyBGB3PX
そこへタオ・パイパイから電話がかかって来た。
ジェイコブはよくわからないながらも電話に出てみた。
2020/04/12(日) 08:52:58.57ID:nyBGB3PX
父 「ジェイ! 何しとるんじゃ! 黒色悪夢を見失ったのか!」
ジェイコブ 「は?」
父「もうよい! 戻って来い! ワシはここを動けん! 代わりに頼みがある!」
ジェイコブ 「は?」
父「お前、マルを殺したがってたろう? 許す! 殺せ!」
ジェイコブ 「は?」
2020/04/12(日) 09:11:29.90ID:MBINmvgD
ジェイコブ「この人は…俺を知っている?ジェイコブ?俺の名前…いや、そうとも限らないのか」
2020/04/12(日) 09:36:57.20ID:nyBGB3PX
マルコムは気づいていた。
2つ隣のガンリーの部屋に彼女がいる。
しかし何もしなかった。
彼女はキンバリーの友達だが、同時に『黒色悪夢』の疑いをかけられ、標的となっている。
彼はそれを間違いだと思っていた。
しかし兄達は父の命令に忠実に従っているだけだ。
家族の仕事の邪魔は出来ない。
マルコムは放っておくのが殺し屋として当然の選択だと頭ではわかっていた。
しかしソファーに身を埋めて赤ワインを飲む彼の腰はソワソワと動き、足がイライラするように動いていた。
2020/04/12(日) 11:05:27.04ID:L1Ax7VlI
その頃ララはガンリーに襲われる直前だった。
「この匂い、この感じ。なにかヘンな気分だぁ」
ガンリーはララを見て呟いた。
一方のララも
(うひぃ〜っ、コイツはタオ・ガンリー。何で目の前にコイツがいるんだよ〜っ)
ララはパニック状態だ。
2020/04/12(日) 11:06:02.76ID:MtdXVNWb
ジェイコブはヴェントゥスに聞いてみた。

「ぼくのなまえはジェイコブなのか?」

「いや、お前の名前はエンジェルだ」
2020/04/12(日) 11:12:09.86ID:MtdXVNWb
ガンリーはララにあまり優しくはない感じで言った。
「大丈夫だ。安心しろ。俺は動物は殺さない」

「どどどどうぶつ!?」

「だって、お前、ウサギだろ?」

「ううううウサギじゃない!」

ガンリーの顔が険しくなった。
「ウサギじゃ……ないのか」
2020/04/12(日) 11:24:21.61ID:zZmgqA3R
ララはどうにか冷静になろうとし、目の前の問題に対処するための分析を始めた。
(この男の気、まるで人ではないようだが、)

気分が落ち着いてくるとララはふと違和感に気がついた

「はうあッ?」

ララもガンリーも獣のように何も身につけていない全裸だ。
2020/04/12(日) 11:40:31.04ID:nyBGB3PX
ジェイコブ「ぼくのなまえはそんなんじゃなかった気がする……」

ヴェントゥス「よくわかったね。君の本当の名前は『ウンコ』だ」
2020/04/12(日) 11:44:08.88ID:L1Ax7VlI
ガンリーの体をよく見てみると褌こそ身につけているが、その他は何も身につけていないボディペイントではないかっ!

(…血圧上がってきた)
ララは羞恥心と性的興奮で体温が上がるのを感じた。
(ああ、見られてる)
緊張で肩が震え、それに合わせてGカップの白い双丘がプルルと波打った。

(ダメだ、恐怖とHな気分で頭が働かないもの)
桜色の乳首が硬く尖り赤みを帯び
何も生えていない秘貝が湿り気を帯び始めた。
2020/04/12(日) 11:44:37.61ID:nyBGB3PX
(『ウンコ』か……。ほんとうだ。ぼくはそんななまえだった気がする……)

ジェイコブがそんなことを考えていると、病室にボインの美人が駆け込んで来た。バーバラだ。

「クソ兄! なんで病院にいんのよ!?」

(『クソ兄』……? やっぱりぼくのなまえは……)

「クソ兄!」
バーバラはジェイコブに詰め寄った。
「黒色悪夢は? どこよ? 即ぶっ殺しに行くんだから!」
2020/04/12(日) 12:02:44.37ID:HqheNful
「うおーっ中国神話だーっ!」
ララは雄叫びを上げ、ガンリーの目の前ですくっと立ち上がった。

「うわっなんだなんだぁ!?」
これにはガンリーもびっくり。

「かっ兜合わせで勝負だ」
ララは緊張で正常な判断ができなくなっていた。

「…いやでも」
ガンリーは戸惑う。
2020/04/12(日) 12:12:05.52ID:nyBGB3PX
マルコムはワイングラスを持つ手が震えていた。

2つ隣のガンリーの部屋から、よく聞き取れないが少女が何か叫ぶ声が聞こえて来る。

ひどいことをされているに違いない……!

マルコムはグラスを置くと、すっくと立ち上がった。
2020/04/12(日) 12:30:47.82ID:slwiAd+5
「あなたのそれとは比べものにならならないかも知れないが、わわ私にも付いているよ」

ララは己の股間を示す。よく見るとたしかにガンリーのよりも遥に小さいがそれはそそり立っていた。

「あっ、ほんとだ。ならいけるかも」
とガンリーは褌を脱ぎ下半身を露出させた。

2人は近づいて、互いの陰茎の先を擦り始めた。

 
2020/04/12(日) 12:30:48.07ID:slwiAd+5
「あなたのそれとは比べものにならならないかも知れないが、わわ私にも付いているよ」

ララは己の股間を示す。よく見るとたしかにガンリーのよりも遥に小さいがそれはそそり立っていた。

「あっ、ほんとだ。ならいけるかも」
とガンリーは褌を脱ぎ下半身を露出させた。

2人は近づいて、互いの陰茎の先を擦り始めた。

 
2020/04/12(日) 13:00:25.79ID:nyBGB3PX
その不快な刺激でメイファンが目を覚ました。

「発狂するのもいい加減にしろ、ララ!」

そう口が動くとララの身体はみるみる黒くなり、手刀がガンリーの逸物を切断した。
2020/04/12(日) 13:41:15.87ID:jqlKWgZA
「えっ?」

ガンリーは自分の股間を見つめた。
ピューピューと血を噴いている。

「結局お前が黒色悪夢なのかよ?」

恨みのこもった目でメイファンを見つめる。

「信じてたのに! 信じてたのに!」

激怒したガンリーの股間から新たに肉棒が生え、そそり立った。
2020/04/12(日) 16:38:19.71ID:D+FJK5ld
「トカゲか、お前は?」

「うるせぇ! 殺す!」

ガンリーはそう言うと高速のジャブを連打しながら間合いを詰める。
素手喧嘩(ステゴロ)ならタオ一家最強の力を持つガンリーの攻撃は凄まじかった。

しかし、メイファンとは相性が最悪だった。
2020/04/12(日) 16:43:17.95ID:D+FJK5ld
相手の『気』を読むメイファンにはガンリーの攻撃が数瞬も前から丸わかりだった。
どこへどういうタイミングで攻撃が来るか、予めわかりきっているので、かわすのもカウンターを入れるのも容易かった。
ただし捕まったら首の骨を折られ、首をひっこ抜かれ、手足をもぎ取られ、バラバラにされるであろうことも見えていた。
メイファンは細心の注意を払って避けながら、表向きには相手をムカつかせるほどの余裕を見せつけた。

「凄い攻撃だな」と言いながら、鼻をほじる。

「ウガアアア!!!」
ガンリーの形相がだんだんと獣のようになって行く。
2020/04/13(月) 06:26:35.16ID:ePsF6VGp
飛びかかって来たガンリーの通り道にメイファンはただ手刀を置いた。

ガンリーは自分の突進する勢いで自滅した。

ガンリーの首が飛んだ。
2020/04/13(月) 06:28:26.68ID:ePsF6VGp
「ララちゃん!」

扉を蹴破ってそこへマルコムが飛び込んで来た。

ララを助けるはずだったマルコムは意外なものを見ることになる。
2020/04/13(月) 12:56:54.73ID:ttMcIva2
マルコムが見たのは床に転がる実兄ガンリーの首だった。
その向こうには見知らぬ真っ黒な少女が全裸で立っている。

「次はお前か、イケメン」

そう言うなり黒い少女は腕を刀に変え、襲いかかって来た。
2020/04/13(月) 13:01:19.23ID:ttMcIva2
考える暇などなかった。
マルコムは咄嗟に靴をジェット噴射させた。

メイファンにはマルコムの首をはねる未来が見えていた。
しかしそれは敵の予想外の動きで外れることとなった。

マルコムは身体を動かすことなく横へ瞬間移動した。
メイファンの手刀は空を斬り、体勢を崩す。

「うぉっ!?」と驚き叫んだメイファンのこめかみ目掛け、靴の先から出たナイフが襲いかかった。
2020/04/13(月) 13:04:40.17ID:ttMcIva2
相手の動きには『気』が伴わなかった。
まるで意思のないもののように死角から襲いかかって来た靴先のナイフをメイファンは避けることが出来なかった。
ナイフは急所のこめかみを正確に捉え、突き刺さった。
2020/04/13(月) 13:11:10.87ID:ttMcIva2
「お前……」
マルコムは着地すると、言った。
「何者だ!?」

ナイフは折れていた。
メイファンは咄嗟に『気』の盾を作り、防いでいた。

「私の名は……」
メイファンは名乗った。
「黒色悪夢」

「やはりか」
マルコムは予想通りの答えに眉ひとつ動かすことはなかった。
「ところでララちゃんはどこだ?」

「私の姿を見たお前を生かしておくことは出来ん」
メイファンはそれには答えず言った。
「今、ここで必ず殺す」

「オレのスーパージェット・リーガルを見た者は生かしておけない」
マルコムも言った。
「逃げないでくれて感謝する。必ずここで仕留める」
2020/04/13(月) 18:47:57.84ID:sdFQgqMf
メイファンは気を逸らさないようにしながら武器にするものを探した。
床に転がるガンリーの首を見た。

マルコムの靴の後ろからジェット噴射が始まるなり、両足のサマーソルトキックが飛んで来た。
攻撃を放つ前にマルコムが微かながらも予備動作を見せたので避けられた。

避けながらメイファンはガンリーの首を拾うと、それに『気』を込めて爆弾を作り始める。
これを爆発させて大ダメージを与え、動きを止めてやる。
こちらも爆発のダメージは食らうだろうが、『気』の鎧を作って最小限で済ませる。
計算が狂って少々ダメージが大きくてもララがいる。
ララのことは守る。ララがいれば回復が出来る。
2020/04/13(月) 18:51:38.34ID:sdFQgqMf
しかし爆弾を作る暇は与えられなかった。

マルコムは外れたサマーソルトで天井を向いた足に、今度は靴底からジェットを噴射させた。
瞬時に床に倒立の姿勢で着地するなり、横からのジェット噴射で首を斬りにかかって来た。

「メチャクチャだ!」
メイファンはかろうじて避けながら叫んだ。
「人間の動きじゃねーぞ、それ!」
2020/04/13(月) 18:59:04.92ID:sdFQgqMf
かろうじて避けられるのはジェットを噴射する直前になんとなく勘が働くからだ。
ガンリーのように丸見えではないが、どこかに次の攻撃を予測させるポイントは感じていた。
実際、ジェットがマルコムの身体の一部になっているわけはなく、どこかで何かの操作をしているのだろう。
口の中か、それとも手か、まったくわからないが、どこかで操作をしているような『気』の動きはあった。
しかしそれを感じた瞬間ジェットの速さで攻撃が来る。狙って来る場所も読めない。
まるでロボットを相手にしているようだ。
2020/04/13(月) 19:05:34.40ID:sdFQgqMf
「すげーな、お前」
メイファンは時間を稼ごうと、相手を誉めた。
「ずいぶん苦労して身につけたんだろーな、それ」

「そう。コイツはオレにしか履きこなせない」
そう言いながらマルコムの姿が消えた。

メイファンには本当に見えなかった。

しかし勘が働き、小さくジャンプすると、アキレス腱を正確に狙っていたマルコムの背後からのローキックは空を切った。
2020/04/13(月) 19:10:37.05ID:sdFQgqMf
『コイツ天敵だ!』
メイファンは手に持ったガンリーの首を苦し紛れに投げつけた。
『何もさせて貰えねー!』

首を避けるかと思いきやマルコムはキャッチした。
そしてそっと床に置く。

マルコムに隙が出来た。
しかしメイファンはそれを逃げるために使った。
何よりこの部屋に向かってもうひとつ、バケモノのような『気』が向かって来ているのを感じていた。
2020/04/13(月) 19:14:28.37ID:sdFQgqMf
「チクショーッ!」

メイファンは回転を加えながら、渾身の『気』を背後の窓にぶつけた。
窓は予想通りの強化ガラスだったが、なんとか割れ、そこから急いで逃げ出した。

「大失態だ!」
2020/04/13(月) 19:20:52.77ID:sdFQgqMf
「愚かな……。この屋敷から逃げられると思うか」
マルコムは余裕ある動作で窓に近寄り、見下ろす。
「父さんが自室でお前を見ている。遠隔操作のセキュリティシステムを使い、お前を逃がさない」

そこへタオ・パイパイが飛び込んで来た。

「ハハハハ! 黒色悪夢め! ここが貴様の墓場じゃ!」

「父さん……」
マルコムは手で顔を覆った。
「逃げられてしまったよ。自室にいなきゃ駄目じゃないか」
2020/04/13(月) 19:25:33.03ID:sdFQgqMf
「すまん」
タオ・パイパイは素直に謝った。
「しかし、これでわかったじゃろう。あの小娘が黒色悪夢だということが」

「いや、初めて見る奴だったよ」
マルコムは言った。
「ララちゃんじゃない。別人だ」

「だーかーらー! 化けておるんじゃ!」

「何事なの?」
そう言って父の後からキンバリーが入って来た。
2020/04/13(月) 19:29:38.19ID:sdFQgqMf
キンバリーは床に転がるガンリーの首を見て悲鳴を上げた。

「キャーッ! ガンリーお兄さん!」

マルコムは惨たらしいものを見せないよう、それを後ろへ隠す。

「キム。君は見るな。見ちゃいけない」

マルコムは父に言われてもまだ信じていなかった。
黒色悪夢とララちゃんは別人だ。
だって、そうでなければ、ララちゃんと友達だというキンバリーは……
2020/04/13(月) 19:31:55.19ID:sdFQgqMf
キンバリーは泣きながら一人部屋を出た。

部屋を出ると、思わず顔が笑いで歪む。

そして誰にも聞こえない声で呟いた。

「まず……1人」
2020/04/13(月) 19:34:26.83ID:sdFQgqMf
そして長い1日が終わった。
2020/04/13(月) 19:51:48.13ID:sdFQgqMf
「もう、中国帰る!」

朝、公園のベンチに座って胡椒餅を食べながら、ララはカンカンだった。
着ている化繊の服は夜市で買ったものだ。

「こんな危ない仕事だとは思わなかったわ! 今までサッと片付けてサッと帰ってたじゃない!」

「ララ……」

「何よ、メイ!?」

「言いにくいんだが……」

「んっ?」

「昨夜の闘いで非常に疲れた。おまけにあの光を浴びたせいか、ムチャムチャ眠い……」
2020/04/13(月) 19:56:27.94ID:sdFQgqMf
「ちょーーっ! 待ーーーっ!」

呼び止めるのも虚しく、ララの中でメイファンは深く眠ってしまった。

「まーーーっ!!」

何も答えはなくなってしまった。

「まーー……っ」

ララは辺りをきょろきょろと見回すと、コソコソと逃げ出すように動き出した。
2020/04/14(火) 05:48:06.51ID:KYyXFIi/
「はぁ、がまんできない」
ララは周囲をキョロキョロし人が来ないことを確認すると草むらに入る。
「はぁ・・・はぁ・・・ふぅ」
そして、スカートをまくり己の股間に手を当てまさぐり始めた。

しかし、背後から気配がしてドキッとして彼女は動きを止めた。

「つ か ま え た。」

その声とともに目の前が大きな手で覆い隠され暗くなる
2020/04/14(火) 06:38:36.95ID:KbqDNCFT
(ううっ、こんな状況なのにとめられないよぅ…っ!!)
だが、股間をなぞる指の動きは止まらない。
恐怖と緊張感に羞恥心が合わさり、ララの性的興奮は更なる高まりを見せるのだ。
2020/04/14(火) 08:19:48.79ID:KYyXFIi/
ジャン「ララ、お前・・・」
2020/04/14(火) 10:41:41.19ID:ZZ8mB9HS
「無礼者っ!」
ララは誰だかわからない背後の男を振り払った。
そして習家の家紋の入った印籠を取り出すと、叫んだ。
「この印籠が目に入らぬかーっ! 私は習近平中国国家首席の養女、ラン・ラーラァだぞーっ!」

「そんなもんあったんか」
ジャン・ウーは軽く流した。
「ワシじゃよ、ワシ」

「この私にハレンチなことしたら、中国からものすごい軍隊が押し寄せるんだからーっ!」

「だからワシだって」

「あれっ? ジャン爺?」
2020/04/14(火) 10:45:19.68ID:ZZ8mB9HS
「あっ。そうだ!」

ララはいいことを思いついた。
自分の旅行バッグはバーバラのロケットランチャーに燃やされてしまったが、幸いスマホと財布と印籠だけは身につけていて無事だった。

ララはスマホを出すと国際電話をかけた。

「忙しいかな……。出るかな」

しかし習近平はすぐに電話に出た。

『メイファンか?』
2020/04/14(火) 10:50:15.00ID:ZZ8mB9HS
「あっ! あたし、ララ!」

『なんだララか……。メイファンに替われ』

「メ、メイは今、くたびれて眠ってて……」

『じゃあ電話して来るな。……一応聞くが何の用だ』

「あ、あのっ……! おと、おと、おとうさん」

『お前にお父さんと呼ばれる謂れはない』
電話の向こうで習近平は冷たく言った。
『私が養女にしたのはメイファンだ。お前は中にくっついてただけだ』

「あたし……中国に帰りたい」

『またメイファンの仕事の邪魔をしているのか。何の役にも立たんならせめて邪魔だけはするな』
2020/04/14(火) 10:58:14.52ID:ZZ8mB9HS
「でもメイ……。今回の仕事ムリだって。メイも中国帰りたいって」

『嘘をつくな』
習近平は不機嫌な声で言った。
『あれはころ……ゲフン、仕事においては完璧だ。お前が中に入っていなければより完璧なんだがな』

「……」

『台湾猿が盗聴しているかもしれん。切るぞ』

「待って! ……習近平」

『呼び捨てにすな』

「……習近平さん」

『なんだ。早くしろ』

「メイのこと、愛してる?」

『くだらんことを聞くな!』
習近平はうんざりした口調で吐き捨てた。
『あいつを私の養女にしているのはひとえにころ……エフン! ゲフン! ……切るぞ』

そう言うと習近平は本当に電話を切った。
2020/04/14(火) 11:04:49.65ID:ZZ8mB9HS
「こうなったら……」
ララは暫くしょぼくれていたが、やがて顔を上げた。
「自力で帰ったるわ!」

「ララちゃん」
背後から優しい女性の声がした。

「キンバリーさん! どうしてここが?」

「ワシが教えたんじゃ」
ジャン・ウーが白いヒゲを撫でながら言った。
2020/04/14(火) 11:09:17.22ID:ZZ8mB9HS
「昨日はご苦労様」
キンバリーは美しい長い髪を手で揺らしながら言った。
「あと五人よ」

「それが、その……」
ララは言いにくそうに言った。
「黒色悪夢が……昨夜のマルコムさんとの闘いで傷ついて……寝込んじゃって……」

「黒色悪夢が? 傷を負ったの?」
キンバリーは驚き、次にはなぜか誇らしそうな表情で笑った。
「そう……。マルの攻撃が……。あの黒色悪夢に……傷を?」
2020/04/14(火) 11:51:18.35ID:ZZ8mB9HS
キンバリーはララを連れて黒いベンツの後部座席に乗った。

「その女の子は?」
助手席の黒いサングラスの男がキンバリーに日本語で聞いた。

「中国側の仲介者よ」
キンバリーは流暢な日本語でララを紹介した。
479創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/14(火) 12:10:23.50ID:KYyXFIi/
タクシードライバーの名はことぶきひでぞう
2020/04/14(火) 12:30:39.29ID:ZZ8mB9HS
グラサン「ひでぞう、出せ」 

ひでぞう「へい!」

ひでぞうの運転でベンツはやがて高級ホテルの前に着いた。

グラサン「よし、ひでぞう、もう帰っていいぞ。お前は別に名前もなくてよかったキャラだ」

ひでぞう「そんなぁ……」
2020/04/14(火) 12:48:15.13ID:ZZ8mB9HS
「よし……。こうなったら俺が主人公になってやる」
ひでぞうはホテルに入って行く3人を見送りながら、天に誓った。
「俺が主人公になって、お前ら皆殺しだァーッ!」

そう言って勢いよく振った手が誰かに当たった。

「痛ぇのぅ」

その声にひでぞうが振り返ると、見慣れぬ男二人がいつの間にか後ろに立っていた。
1人はサングラスをかけた顔面が傷まみれ、もう1人は坊主頭で鬼のような目つきをしている。
どう見てもヤクザだ。

いや、よく見ると、サングラスのほうの男のことはひでぞうでも知っていた。

「ス……ステゴロの鬼……茨木 敬!?」
482創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/14(火) 13:03:55.71ID:KYyXFIi/
ひでぞうの顔が青ざめる。

ひでぞう「・・・すいません」


茨木「・・・気をつけろって、お前寿じゃねえか」

茨木とひでぞう、二人は知り合いだった。
2020/04/14(火) 15:49:01.36ID:ZZ8mB9HS
坊主頭のほうは名前を鬼頭 洋といった。
鉄砲玉から上り詰め、若くしてハラグチ組のNo.1戦闘員となった男である。

「おい、茨木よォ」
鬼頭は言った。
「そいつ、殺してみせろや」

「いえ、こいつは、知り合いで」

「知り合いだったら殺せねェのかァ!? アア!!!?」
2020/04/14(火) 16:31:16.23ID:gIne9Pam
茨木は寿を殺せないわけがあった。
ステゴロの鬼というのは表の顔、
本職は公安警察のスパイ…つまりカタギである。
2020/04/14(火) 18:39:13.92ID:WfLo+Mpu
「そいつ俺のこと殴りやがったんだぜェ?」
鬼頭はしつこく絡んだ。
「お前、そいつの知り合いなら極道のお前が代わりに指詰めて詫びするか、お前がそいつ殺すかすんのが筋ってもんじゃねェのか? ア??!!」

茨木は黙った。
鬼頭はさらに続ける。

「っていうかよォ、見てみてェんだわ。イバラキケイっつったら有名な喧嘩師だけどよ、本当に強ェかどうか見たいからよ、そいつ殺せ、な?」

「……小物が!」
茨木は小さく吐き捨てた。
2020/04/14(火) 23:49:19.53ID:z6uIGusU
得体の知れない恐怖で(^3^)/
2020/04/15(水) 03:01:23.12ID:GtD5nFHs
ララがキンバリーについてホテルの広い一室に入ると、中にいた6人の男達がこっちを見た。
ヤクザばっかりの部屋になぜ自分がいるのかわからなくなって、ララはキンバリーに小声で言った。
「あの……。あたし、帰ります」

「どこへ?」キンバリーは不思議そうに聞いた。

「……中国へ」

「ダメよ。仕事が済むまでは帰して貰えないわよ」

「いや、帰りたい……」

「大体、地下鉄の乗り方もわからなかった子が1人で飛行機に乗れないでしょ?」

「……」
2020/04/15(水) 03:09:17.17ID:GtD5nFHs
「やぁ、キンバリーさん」
一番偉そうな、しかし穏やかそうな痩身のヤクザが立ち上がって挨拶をして来た。
兵藤 直樹という名の花山組幹部である。

「兵藤さん、お久しぶりです」
キンバリーは明るく微笑み、日本語で挨拶をした。

「その少女が……例の?」
兵藤はララを一瞥しながら言った。

「ええ。『黒色悪夢』の部下のララちゃん」

「いや……。これは……ちょっと……」
兵藤はララをチラチラと見ながら苦笑した。
「務まるのかな、こんな娘に……」
2020/04/15(水) 03:15:17.04ID:GtD5nFHs
「いや、うまいと思うなァ」

ソファーのど真ん中で四肢をいっぱいに広げて寛いでいた男が少し離れたところから言った。

「完璧なカモフラージュだ。こんな可愛い娘がまさか殺し屋の手配者とは誰も思わないよ〜」

それを言うその男も、この部屋には場違いだった。
いかにもヤクザといった高そうなスーツは着ているが、童顔に高い声は、まるで普通の高校生のようだ。
2020/04/15(水) 03:19:35.17ID:GtD5nFHs
「……この子が?」
キンバリーが兵藤に聞く。

「えぇ」
兵藤は頷いた。
「飛島 優太。最強かつ最凶のヒットマンと呼ばれる男です」

「そうは見えないわね」

「まだ18歳の高校生なんですが、既に48人の同業者を殺しています」
2020/04/15(水) 03:22:29.28ID:GtD5nFHs
「よろしく! キンバリーさん」
飛島は手を上げ、フレンドリーな笑顔を見せた。
「ところで『黒色悪夢』がしくじったらしいね」

「1人殺ったわ」
キンバリーはそう言って可笑しそうに笑った。
「でも、マルコム・タオには歯が立たずにみっともなく負けたのよ」

ララは日本語がわからないので持たされたジュースを居心地悪そうに飲んでいた。
2020/04/15(水) 03:33:50.57ID:GtD5nFHs
飛島は飛び上がるように立ち上がると、ララのところへやって来た。

「君、可愛いなぁ。同い年ぐらい?」

ララは答えた。
「ティンブットン、リーワン、ぶはぉいーすぅ(ごめん日本語わからん)」

飛島はそれを聞くとにっこり笑って言った。
「俺さ、俺の世界はさ、喧嘩が5割、あとの5割は性欲で出来てんだよね〜」

「?」

「ねぇ、黒色悪夢より先に俺がマルコムって奴殺したらヤラせてくれない?」

「?」

「ほら、こうやって返事して」
飛島はそう言いながら何度も頷き、ララにも真似るよう促した。

「?」
意味がわからないながらもララは真似して何回も頷いた。

「やったぁ!」
飛島は握手をしながらララに言った。
「約束だよ? 破ったらてめぇコンクリート詰めにして東京湾に沈めるからな?」

笑顔の飛島につられてララもにっこり笑った。

「俺、名前、ゆーた。ユータ」
飛島は自分を指差しながら言った。

「ゆ、ゆーた」

「ララちゃん、よろしくね」
2020/04/15(水) 03:40:58.68ID:GtD5nFHs
そこへノックの音がし、「失礼します」と言って茨木が入って来た。

飛島が急につまらなそうな顔になって茨木を見る。

「お久しぶりです、兵藤さん」
茨木は膝に手をついて頭を下げ、兵藤に挨拶をした。

「彼の名前はイバラキケイ。最強の喧嘩師だよ。飛島だけではと思い、日本からもう二人呼んだんだ」
兵藤はキンバリーにそう紹介すると、不思議そうに茨木のほうを見た。
「あれ? もう1人は? 鬼頭 洋と一緒に来た筈だろう?」

「すんません、兵藤さん」
茨木は答えた。
「あんまり無礼な奴なんで、食っちまいました」
2020/04/15(水) 06:44:32.17ID:eYiojqzZ
正しくはパクったのである
2020/04/15(水) 07:20:30.17ID:ie8dM0S/
場面はタオ・パイパイの研究室に移る。
「そうか、まさかキンバリーが裏切るとは」
手術台に腰かけたタオ・パイパイが誰かと連絡を取っている。

「うんうん…いや、まだ手を出さなくてもいい。」
2020/04/15(水) 09:06:01.41ID:GtD5nFHs
タオ・パイパイがなぜそのことを知ったか。
彼は昨夜のマルコムの目に仕掛けたカメラの映像をもう一度観ていたのである。

「これが黒色悪夢か……」

その動きを観察し、ニヤリと笑う。

「なるほどな。奇妙な手品を使う奴じゃ」

そしてふいに気になった。その数時間前、マルコムがどうして黒く変わる前の黒色悪夢と一緒にいたのか。

そして時間を戻して再生すると、映っていた。

キンバリーがマルコムに言った。

「ええ。中国人のお友達なの。名前はララちゃんよ」
2020/04/15(水) 09:17:18.75ID:QbzczbJp
場面は再びホテルへ。
「はぁ、やっとおわった。」
ララはベッドへ大の字にして横たわった。

「メイはまだおきんのか」
相部屋のジャンが尋ねた。

「うん」
2020/04/15(水) 10:17:31.73ID:GtD5nFHs
ララにはキンバリーの気持ちがわからなかった。

あの部屋には5人の日本人に混じって1人、台湾人もいた。
「陳氏」としかわからないが、ニコニコと笑顔の柔らかな白髪の老人だった。

陳氏はキンバリーとは顔馴染みのようで、親しげに中国語で会話をしていた。
それを横から聞いた限りでは、陳氏は殺し屋を使ってキンバリーの実の妹を殺したらしいのだ。
2020/04/15(水) 10:20:23.22ID:GtD5nFHs
「ポクを恨んでおるかね、キンバリー?」
陳氏は笑顔を崩さずに言った。
「父親が違うとはいえ、モーリンは君の実の妹だ」

「いいえ、おじさま」
キンバリーはサバサバとした笑顔を返したのだった。
「モーリンも、弟(四男)も、標的リストに入っていますのよ」
2020/04/15(水) 10:22:43.42ID:GtD5nFHs
実の弟妹を殺すなんて、ララには考えられなかった。

妹のメイファンを殺したいほど憎んだことは、確かに自分にもある。

しかし本当に殺してしまったら、恐らく自分もすぐに後を追うことだろう。
2020/04/15(水) 10:25:47.85ID:GtD5nFHs
このホテルにいれば安全だ、とキンバリーはララに言ってくれた。
タオ・パイパイが裏切り者の陳氏を血眼で探しているが、見つけられていない。
それがこのホテルの安全性を物語っている、と。

安全なのは嬉しい、いいことだ。
その反面、ララは退屈だった。

ララはベッドに身を投げると、呟いた。

「楽しい旅になるはずだったのにな……」
2020/04/15(水) 10:31:05.59ID:GtD5nFHs
「あーあ。お外に出たいな」

ララが呟くと、すぐ側で男の声がした。

「へい!」

ビクッとしてララが飛び起きて見ると、いつの間にかベッドの脇の椅子に座り、飛島 優太がニコニコしながらこちらを見つめていた。

「ララちゃん! レッツゴー、アウトサイド、ウィズ・ミー。OK?」

下手な英語はなんとか伝わったが、ララは中国語で答えた。
「いや、キンバリーさんから、外出はするなと、固く言われてる……し」
2020/04/15(水) 10:40:48.79ID:GtD5nFHs
タオ・パイパイにとってキンバリーがどれだけ可愛かったか、他人にはわかるまい。

血の繋がらない自分をパパと呼んでくれ、小さい時から側にずっといてくれ、太陽のように明るい笑顔をいつも見せてくれた。
殺し屋の修行で殺気の籠った目に育った実の子達と違い、キンバリーは愛に溢れた子だった。

マルコムの目に映っていた映像だけでは地獄のタオ・パイパイですら信じられなかった。信じたくなかった。

確定的な証拠がない限りは──

「……こういう時こそ、アイツじゃ」
タオ・パイパイは呟くと、四男の部屋に繋がるインターホンのボタンを押した。
「通称カメレオン・ホンフー(デブ)。同じ部屋にいても相手に気づかれない天性のスパイ。名前は忘れたが四男を使ってキンバリーを探るのじゃ」
2020/04/15(水) 10:45:29.28ID:GtD5nFHs
しかし四男は部屋にいないようだった。
いや、もしかしたらいるのに気づかないだけかもしれないが、返事がないからにはどうやらいないようだった。

「外出しておるのか」

スマホに電話をかけると、すぐに四男は出た。

「やあ、パパ。何か用?」

「仕事じゃ。どこにおる? すぐに帰って来い」

「無理だよ」

「なんじゃと?」

「今、台北から500km以上離れた台東の山ん中にいるんだ」

「なぜそんなところに」

「僕、原住民のパイワン族にスカウトされてさ。原住民になったんだ」
2020/04/15(水) 10:53:04.55ID:GtD5nFHs
「アホか! 帰って来い!」

「やだよ。もうこれから一生ここで暮らすって決めたんだから。名前も『メヴレヴ』って原住民名を貰ったんだぜ」

「ハアァ!?」

「それに昨日、結婚したんだ。ヒーミートゥって名前のエキゾチックな美少女でさ。いやぁ兄弟の中で自分が一番早く結婚できるなんて思ってもなかったよ」

「ふざけるな! 今すぐ帰って来い!」

「えー……やだ」

「お前の中に実は自爆装置を埋め込んでおる」
タオ・パイパイは嘘をついた。
「押すぞ」

「え〜。じゃ、妻も一緒に連れて帰っていい?」

「いいから」

「新幹線でも高雄から3時間ぐらいかかるけど、山から高雄まで出るまでもたぶん3時間かかるから……」

「いいから!」
タオ・パイパイはキレた。
「待つから!」
2020/04/15(水) 11:02:09.83ID:GtD5nFHs
「僕、帰らなきゃ」
電話を切ると、四男サムソンは妻に言った。
「一緒に来てくれる?」

「部落の掟がある」
若き妻ヒーミートゥは言った。
「町へ出るなら猪を一頭、土産に持って行く」

赤や黄色や白に彩られた色鮮やかな部族衣裳に身を包んだヒーミートゥは槍を手に持つと、猪を狩りに山へ入って行った。
それを見送りながら、サムソンは呟いた。
「いや、今時こんな原住民いないだろ」
2020/04/15(水) 11:20:02.65ID:7kmoNqEc
ジャン「外出はやめなされとキンバリーさんに言われておるから無理じゃよ」

優太「ああっ、誰だよてめぇは!?俺はララちゃんとしゃべってるんだ。ジジイは黙ってろ!」
2020/04/15(水) 11:26:11.56ID:GtD5nFHs
「わーい! マンゴーかき氷!」

ララは優太と並んで西門町の若者通りを歩いた。

「タピオカミルクティー! QQ(もちもち)ゥ〜!」

羽根を伸ばすように腕を広げて跳び跳ねるように歩くララを、優太はエロい目をして見守った。
2020/04/15(水) 13:27:54.77ID:GtD5nFHs
黒いレザースーツを着た女が二人を尾けていた。

「見〜つけた」
バーバラは舌なめずりをする。

いつもならすぐに銃火器を取り出すところだが、
一般の若者が大勢歩いているストリートではさすがにそれは出来ない。

ララが人気のないところへ行ってくれるのを待っている。
それが叶わないならナイフを心臓に当たるまでメッタ突きにするつもりだ。
2020/04/15(水) 13:30:59.19ID:GtD5nFHs
優太はバーバラ・タオの尾行にまったく気がついていなかった。

ララの露出した白い太ももに気を奪われまくっていた。
2020/04/15(水) 15:46:32.27ID:4+GMnS5+
浮かれている優太に1人と男がやって来た。
「飛島優太、お前ホテルにいるんじゃなかったのか」
優太は振り向いた。
「あっ、茨木…の兄さん」

男は茨木だった。
2020/04/15(水) 17:51:39.69ID:GtD5nFHs
「死ねや! オッサン!」
優太はいきなり茨木に殴りかかった。

「ハァ!!?」
いきなりすぎる攻撃に茨木は防御するのが精一杯だ。

「男が離れたわ」
バーバラは少し後ろを人混みに紛れてついて歩きながら、袖の中のナイフの束を握った。
「チャ〜ンス♪」
2020/04/15(水) 17:57:51.46ID:GtD5nFHs
──今日、一緒にどっか遊びに行こうよ

スマートフォンの待ち受けにヤーヤからのメッセージが表示された。
ムーリンはLINEの画面を開かなかった。メッセージは相手から見れば未読のままだ。

「あたしは……誰からも愛される資格ないし……」
ムーリンは天井から吊った縄に自分の首をかけた。
「ヤーヤの友達でいる資格なんかないし……」
涙がぽろぽろと床にこぼれた。
2020/04/15(水) 18:02:53.36ID:GtD5nFHs
あとは踏み台を蹴るだけでよかった。
それだけでママやお姉ちゃんのところへ行ける。

しかし震える手が縄に入れた自分の首を遠ざけた。
踏み台が倒れ、ムーリンは床に尻餅をつく。

「なんで……死ねないの?」

ムーリンは捨てられた子供のようにその場で泣き続けた。

何度死のうとしても、脳に埋め込まれた自殺防止装置が働き、阻止されてしまう。
ムーリンはそんなことなど知らず、自分の卑怯さに底のない自己嫌悪に陥って行った。
2020/04/15(水) 19:35:47.58ID:QbzczbJp
「・・・あれ、黒色悪夢・・・は?」
バーバラは目をキョロキョロさせる。黒色悪夢だと近づいてみたら別人だったからだ。

「あの私に何か?」
黒色悪夢だと思っていた人が尋ねた。後ろ姿こそ似ているが全く知らないおばさんだった。

だがそれは茨木と優太たちも同じだ。
「あれぇ!?」

優太と茨木は先ほどのことを忘れたように慌てて人混みを探し始めた
2020/04/15(水) 22:19:17.78ID:eYiojqzZ
「ムカつく!!」

バーバラはおばさんの胸をナイフでメッタ突きにした
2020/04/16(木) 00:40:08.48ID:cxLnjbT7
歩いていたら突然、自分の口が「走れ」と命令したのだった。
ララは反射的に走り出し、意味もわからないまま優太とはぐれたのだった。
別にそれはどうでもよかった。
舗道のベンチに座ってQQなタピオカミルクティーを飲んだ。

「さっき、なんか危なかったの、メイ?」

しかしメイファンの返事はなかった。
また眠ってしまったようだ。
2020/04/16(木) 00:48:51.61ID:cxLnjbT7
ララは賑やかな西門の町を眺めた。
同じ中国語を話す国なのに、自分の育った北京や現在住んでいる西安とはまったく空気が違っていた。
奇妙な髪型に黒縁眼鏡をかけた「文青」の若者達、南方系の大きな男の人、イスラム風ファッションの女性、様々な人が歩いている。
日本語の看板を掲げたアニメの専門店、ライブハウス、何やらいかがわしい感じの何かの店が色鮮やかに立ち並ぶ。
中国では耳にすることのないヒップホップが聞こえて来た。
空気は緩く穏やかで、自由という言葉がララの頭に浮かんで来た。
2020/04/16(木) 00:51:43.41ID:cxLnjbT7
どこかからララも知っている台湾のヒット曲が聞こえて来た。
ララはふんふんと合わせて歌った。
でも、なんだか楽しくなかった。

「メイ」

ララは自分の中に声を投げた。

「メイ!」

返事はなかった。

「1人じゃ楽しくないよ。起きてよ、メイ……」
2020/04/16(木) 00:56:43.28ID:cxLnjbT7
「たまにはオッサンとのデートもいいもんだね」
茨木と向かい合ってテーブルに座りながら優太が言った。
「緊張しなくていいや」

「お前が緊張するのは下半身だけだろ」

牛肉麺が二椀、運ばれて来た。
茨木は箸を取り、柔らかく煮込まれた牛肉を割ると、口に運ぶ。
2020/04/16(木) 01:00:27.87ID:cxLnjbT7
「ララちゃん、見失っちゃったなぁ」
優太が麺をズルズル啜りながら言った。

「別に俺達はあの娘のボディーガードじゃない」
茨木は静かに麺を口に運びながら言った。
「あの娘が殺されたってどうでもいい」

「んだと!? オッサン! 俺はすごく困んだよ!」
優太は出かけた拳を引っ込めながら言った。
2020/04/16(木) 01:03:23.02ID:cxLnjbT7
「あの娘に惚れたのか?」
茨木は青春のお裾分けを期待するような笑顔で聞いた。

「チャイニーズガールの綺麗な娘は現実離れしてるぐらい綺麗だって聞いてたけどさ」

「うんうん」

「あの娘はそこまではないけど」

「ないんかい」

「でもさァ、なんか、物凄いいい匂いがするんだよなァ……。甘くて、エロくて。たまんねぇよ」
2020/04/16(木) 03:15:04.31ID:yEkZSjZq
ホテルに帰るとララはキンバリーやジャン・ウーにこってり絞られ、
そのまま疲れたような足取りで自室に戻った。

「…あ〜、ちかれたぁ」
ララはつまらなそうな顔で溜息を付いた。
「ねぇ、起きてよメイ」
「…」
メイファンからの返事はない。しかし、気持ちよさそうに眠っているのがなんとなく分かった。

「なんだコイツ、クッソムカつく」
苛立つララはベッドの上に寝そべると布団を被って寝た。
2020/04/16(木) 12:18:32.37ID:cxLnjbT7
「あれ、買ってみようか」

茨木はタピオカミルクティーの店の前に出来ている短い行列を指して言った。

「オッサンがタピるの?w いいよ、俺のも買って来て」

18歳の優太にパシり扱いされても機嫌を損ねることなく、茨木は立ち上がった。

「タピるのはギャルだけのもんじゃねぇ。俺は甘いものが大好きなんだ」
2020/04/16(木) 12:22:39.34ID:cxLnjbT7
茨木が行儀よく行列に並んでいると、後ろから背中を指で突っついて来る者がいる。

振り向いて見ると、ネイビーのTシャツにグレーの短パン姿の少女だった。

茨木の顔をまっすぐ見て中国語で何か言っている。
ショートカットに丸顔の少女を見るなり、茨木は恋に落ちてしまった。
2020/04/16(木) 12:28:48.99ID:cxLnjbT7
ヤーヤがタピオカミルクティーを買おうといつもの店に行くと、短い行列の一番後ろにスーツ姿のおじさんが立っていた。
あまりにタピオカミルクティーに似合わないそのおじさんを見るなり、ヤーヤはその背中を突っついた。
振り向いたおじさんの顔は傷だらけだったので、これは間違いなくお客じゃないと確信し、ヤーヤは言った。

「ちょっとおじさん。ここはお店の行列だよ。邪魔だからちょっと退いてくれないかな」

するとおじさんはいきなり挙動不審になり、気持ち悪い笑顔で「どうぞ」という手つきとともに退いてくれた。

ヤーヤが商品を買い、くるりと振り返るとおじさんはまだそこにいて、チラチラと盗むようにヤーヤの姿を見ていた。

ヤーヤは急いで走り去った。
2020/04/16(木) 12:35:40.36ID:cxLnjbT7
パンパンに充填されたカップのビニール蓋に太いストローを刺し、吸い込むと、
脳天まで突き抜けるような茶葉の爽やかな香りとともに、大粒のタピオカがこれでもかと流れ込んで来た。

「おほっ!」
茨木は思わず涙を流し、言った。
「この世にまだこんな美味いものがあったとは……!」

だらけた格好で座っていた優太も、吸い込むなり笑顔になった。
「日本のコンビニで飲んだのとは大違いだわ。タピオカがもっちもち」

「台湾ではもちもちのことをQQって言うらしいぞ」

「キュッキュッって言うより、やっぱもっちもちだな」
2020/04/16(木) 12:37:50.91ID:HzPMkgGz
ベッドの上で眠るララは目を覚ました。
「ん〜、どれくらい眠っていたんだろう」
起き上がって、ホテルの窓をみるともう夕暮れだ。

「・・・寝るか、やることもないし」
2020/04/16(木) 12:38:10.19ID:cxLnjbT7
「それにしても台湾の女の子は可愛い……」
突然、茨木が言い出した。
「ナチュラルで、健康的で……」

「何? オッサン、恋でもしたの?」
優太はそう言ってすぐに大笑いした。
「まさかなぁ」
2020/04/16(木) 13:35:06.84ID:S6avAkGp
「ジャン爺?」
ララは眠りに落ちる直前、ドアが開く音で目をを上げその方を見た。

「お前がラン・メイファンだな?」

そこには知らない男が立っていた。
「うわっなんだなんだ!?」
恐怖を感じたララは、部屋の隅へ逃げた。

「あ、おれハリー・キャラハン。光の守護者の1人だ。ヴェントゥス兄貴に頼まれてきたんだ。」

目の前の白人男性はそう言うと、ララに近づいてきた。

「くっくるな、メイはここにはいないぞ!」
「俺はお前の1人遊びに付き合うつもりはないぞ、メイファン。」
2020/04/16(木) 14:57:32.45ID:cxLnjbT7
『……な、わけないか』

ララは夢から覚めるとまた眠った。

タオ・パイパイですら突き止められないこのホテルに、
しかもヤクザの厳重な警戒の中を潜り抜けて部屋に入って来られる者などいる筈がなかった。
2020/04/16(木) 15:02:20.03ID:cxLnjbT7
ヤーヤはLINEを開いた。
今日、ムーリンに送った4通のメッセージはすべて未読のままだった。
電話しても、出ない。

『何かあったの? ムーリン……』

これだけ面倒臭い子、いつもならこっちから縁を切るところだ。
しかしムーリンのことは放っておけなかった。

同性婚が法的に認められた昨今の社会のムードに乗せられているつもりはなかった。
しかしヤーヤはムーリンのことを守ってやりたいという、男らしい気持ちに包まれていた。
2020/04/16(木) 15:05:54.47ID:cxLnjbT7
「ララ、起きろ」
眠っているララの口を動かしてメイファンが言った。

「ムニャ!?」
ララは半分だけ目を開けた。

「起きろよ! いつまで寝てるつもりだ? 今、何時だと思ってんだ!」

枕元のスマホを取り、時間を見た。夜の10時半だった。

「呼ばれたらサッサと起きろよな。……ったく! このねぼすけが!」

「すいませーん」
棒読みで謝った。
2020/04/16(木) 15:14:05.21ID:cxLnjbT7
「……ったく、妙な技をかけられちまったぜ。昼間は眠くてどうしようもない」

「あっそう」
ララは身体を起こすとサイドテーブルから飴を取り、口に入れた。

「しかし夜になるとどうやら意識がはっきりするようだ」

「ふーん……」

「ララ、お前、昼の間はずっと寝てろ」

「ええ!?」
ララは思わず飴を吐いた。
「断る!」

「なんでだよ」

「昼夜逆転はやだ!」
2020/04/16(木) 15:18:42.83ID:HzPMkgGz
「ここどこ?」
見渡すととそこはホテルではなかった。

「こっちが聞きてーよ!」
メイは声を荒げるように言った。

「今までの方が夢だったりして」
2020/04/16(木) 15:18:46.58ID:cxLnjbT7
「しょーがないだろ。私は昼間は眠くて起きてられないんだ」

「昼間メイが起きてればいいじゃん」

「起きてられねーんだってば」

「勝手言うな!」

「どうしようもねーんだってば」

「じゃあ昼間メイが寝て、夜はあたし寝てるわ!」

「身体が休まらんだろ。ずっと起きてることになる。それにお前が寝てたら私が傷ついた時、誰が治すんだ」

「そん時起こしゃいーじゃん!」

「呼んでもサッサと起きねーねぼすけが何を言う」

「お前だろ!」
2020/04/16(木) 15:25:50.67ID:cxLnjbT7
「それにな、私達は黒白揃っての『黒色悪夢』なんだぞ」

「だったら『灰色悪夢』じゃん!」

「それじゃなんか語感が嫌だから黒にしてるんだよ」

「じゃあやっぱ白いらないじゃん!」

「何怒ってんだよ。お前は必要なんだ。お前がいなけりゃ……」

「嬉しくないから! フン! だ」
2020/04/16(木) 15:29:48.65ID:cxLnjbT7
「とりあえず今から作戦会議を行う」

「作戦会議? そんなの今までしたことないじゃん」

「今回の敵は手強い。おまけに私が妙な技をかけられてこの状態だ。今までの仕事とは勝手が違う」

「ねぇ……メイ」

「何だ」

「中国に……帰ろ?」

「アホ言うな」
2020/04/16(木) 15:33:18.18ID:cxLnjbT7
ララはベッドに寝転ぶと、拗ねたように言った。
「つまんないんだもん。それに怖いし……」

「お子ちゃまか」

「あーあ。サクッと殺して、あと観光して、帰れると思ってたのに」

「おいおい。サクッと殺すとか、物騒なこと言うようになったもんだな。あの優しかった姉ちゃんが」

「誰の影響だよ!?」

「大体お前、他人様の命を何だと思ってんだ」

「お前に言われたくないわ!」
2020/04/16(木) 15:37:47.55ID:cxLnjbT7
「まぁ、とりあえず黙って聞け。作戦会議だ」
メイファンはそう言うと、仕切りはじめた。
「今回、標的6人のうち4人と接触。1人を始末した」

ララは何も言わずに新たな飴を口に入れた。

「始末出来なかった3人だが、これがいずれも厄介だ」

ララは口の中で飴を転がしカランコロンと音を立てた。

「真面目に聞け!」

「カラン……コロン」
2020/04/16(木) 15:44:35.91ID:cxLnjbT7
「まず、最初に接触した毒使いだ」

ララは思い出してしまい、鳥肌が立った。

「正直あいつがいつ毒を盛ったか、未だにさっぱりわからん。わからんからには防ぎようがない。何も飲み食いするなとも言えんし……」

「カラン……コロン……」

「その飴大丈夫か」

「カラン……コロン……」

「まぁ、しかしあいつはフィジカルが弱すぎる。そこが弱点だ」

「カラン……コロン……」

「『攻撃は最大の防御』というのは単なる基本に過ぎないが、その基本があいつには大いに通用する」

「カラン……コロン……」

「もし私が寝ている時にあいつを発見したら、お前が闘え」

「ブーーッ!?」
2020/04/16(木) 15:49:13.96ID:rWxpTqET
(…こんな彼女″ら″が黒色悪夢だとはねぇ、仕事なんでね、死んで貰う。)

この部屋に標的の1人、タオ・サムソンが潜んでいることに
メイファンとララは気が付いていなかった。
2020/04/16(木) 15:55:37.39ID:cxLnjbT7
「大丈夫だ。私の見立てではお前レベルでもあいつなら殺せる」

「何を言う!!!」

「まぁ、任せたぞ。次は銃火器ぶっ放すボインの姉ちゃんだ。あれもヤバい」

ララは口を尖らせながら新しい飴の袋を開けた。

「あいつ、狙いも定めずに乱れ撃ちして来る。ああいうのは苦手だ。『気』を読む暇がない」

ララは新しい飴を口の中に放り込んだ。

「今日の昼、あいつがお前を殺しに来てたが……」

「そうなの!?」ララは口に入れたばかりの飴を吹き出した。

「さすがのあいつも大勢人がいる場所では銃火器は使えんようだ。ところで……」
メイファンはサムソンのほうを見た。
「お前、何?」
2020/04/16(木) 16:00:05.96ID:cxLnjbT7
「えっ? えっ?」
サムソンはびっくりして武器を落とした。
「僕が見えるの!?」

「てめーが幽霊なわけねーだろ」
メイファンはララの姿のまま言った。
「そんな濃い『気』を暑苦しくムンムン出しといてよ。目で物を見る奴にはどうか知らんが、『気』で物を見る私には丸見えだ」
2020/04/16(木) 16:02:52.43ID:cxLnjbT7
メイファンはサムソンを縄で縛ると、ララに言った。
「このデブ盾に使え。あいつが撃ちまくって来たらこのデブ前に出せ」

「わかった」
ララは頷いた。
2020/04/16(木) 16:08:04.12ID:cxLnjbT7
「残るはあのイケメンだが……」
メイファンは眉間に険しい皺を寄せて言った。
「アイツは私がなんとかする」

「天敵なんでしょ」
ララは白けたように言った。
「メイには勝てない相手だよ。諦めて中国、帰ろ?」

「バカ言え」
メイファンは笑った。
「天敵だからこそ、乗り越えるんだ。こんな楽しいことはない」
2020/04/16(木) 16:18:21.58ID:cxLnjbT7
「そしてサクッと全員殺したら、私が観たかった宇宙人のライブだけ観て、サッと帰ろう」

勝手なことばかり言うメイファンに、ララは発狂寸前だった。
2020/04/16(木) 17:14:55.43ID:rWxpTqET
「…すごいな、ほんとに気だけの人がいるなんて」
サムソンはメイファンの目を覗きながらいった。縛っていたはずの縄は切られていた。

「…暑苦しい顔をちかづけるんじゃねぇ」
メイファンはサムソンを張り飛ばした。
2020/04/17(金) 06:41:31.65ID:I2LUuoA7
新しい朝がきた。
「おっす、おはよう!」
ゆーたとかいう男の大声でララは目を覚ました。

「うぅっ、朝からうるさいなぁ」
ララは不機嫌そうな顔でベッドから起き上がる。
2020/04/17(金) 07:15:19.07ID:jy1CC5Zg
時計を見るとまだ5時にもなっていない。
「まだ寝よう」
と布団を再び被り眠りに就こうとしたが、
汗っぽい感じが不快だったので入浴するためベッドから上体を起こしながらベットから降りた。
2020/04/17(金) 09:49:20.02ID:83tzwoT/
昨夜は最悪だった。
眠れなくなったメイファンが夜通し話しかけて来たのだ。
ようやくまた眠ってくれたのは朝陽の昇った4時過ぎのことだった。

『あぁ……あたし、今、すごくメイファンを殺したいなぁっ……』

ララはユニットバスのシャワーを浴びながら、思った。

『キンバリーさんもこんな気持ちなのかなぁ……』
2020/04/17(金) 09:58:34.76ID:I2LUuoA7
「ヒエッ」
ララが部屋に備えてあるはずのバスタオルを棚から取り出していると
誰かがお尻をわしづかんできたので、振り向くと優太がいた。
「あ〜たまらねえぜ」
彼の顔は紅潮していた。酒の匂いが鼻を突く。どうやら酔っ払っているようだ。
「ちょ、やめて」
ララは拒絶し抵抗したが、中国語なので彼には通用しないし、
酔っ払ってるのでやめようとしない。

「ララちゃんごめんね、俺もう」
2020/04/17(金) 10:16:55.31ID:fum5Xed9
優太はララのおしりに顔を埋め、その秘貝に舌を這わせた。

「えっ、やめ、あっ、くっ」
ララは不快を感じ小さく悲鳴をあげ、身をよじる。
2020/04/17(金) 10:30:06.48ID:I2LUuoA7
ララは自身の呼吸が荒くなり、体温が上昇するのを感じた。
(メイぃーーーーッ、はやくおきてくれー!)
メイファンは起きなかった。

「はうあッ!?」
体の中心から甘いしびれが全身を駆け巡る。
熱いモノがこみ上げる。
2020/04/17(金) 10:45:57.72ID:fum5Xed9
「あーっ!」
ララはとうとう絶頂に達してしまった。
彼女は股間から体液をもらし、痙攣しながら膝をつくと、優太に寄りかかるように倒れた。
2020/04/17(金) 12:20:08.29ID:83tzwoT/
「すげー」
優太は口元を手で拭きながら、笑顔で言った。
「こんな美味しいマンコ舐めたの、初めてだ」

メイファンは一瞬だけ、不快な感覚に目を覚ましていた。
「敵か?」と思い、優太の舌を斬り落とそうとした。
しかし優太に殺気がなく、代わりにピンク色の色気をムンムンさせていたのを見ると、バカらしくなってやめた。
ララと感覚を切り離し、殺気を関知するアンテナだけしっかり立てて、今はスヤスヤ眠っていた。

「そんじゃ、今度はこっちだよ」
優太はララにベッドに手をつかせると、そのお尻を持ち上げ、こちらを向かせる。
ビンビンに尖っている自分のモノを握り、そこへ当てがった。
ララの秘貝は既にびしょびしょに濡れている。
ララが抵抗しようと思うほどに濃厚なフェロモンが発射され、甘い匂いが優太を包み込んだ。

「ハァハァ……! 入れるぜ!?」

「イヤーーーっ!」
2020/04/17(金) 15:06:51.33ID:83tzwoT/
「……ってわけには行かねーか」
そう言うと、優太はララの腰から手を離した。
「約束だもんな。『黒色悪夢』より先に俺がマルコムって奴倒したら、そん時にヤらせて貰うって」

優太はララをベッドに座らせた。
そしてはち切れそうな自分のモノを差し出す。

「?」
ララは涙と涎で濡れた顔で優太を見上げる。

「口でしゃぶってくれや」
優太は自分の指を口に出し入れしながら、風呂上がりでリップもつけていないのに桃色のララの唇を、反対側の親指でぷにぷにした。

ララは大きな瞳から涙をこぼし、ふるふると首を横に振った。
2020/04/17(金) 18:27:05.83ID:OdXAQu+V
扉をノックする音がした。
返事も待たずに扉が開き、キンバリーが顔を覗かせる。

「ララちゃん……あっ! ……お邪魔さま〜」

キンバリーは口に手を当てて笑いながら、すぐに出て行こうとした。

「まままま待って! 助けて!」

ララが叫んだのでキンバリーはまた顔を覗かせた。

「あら?」

「キンバリーさん助けて!」

「……合意じゃないみたいね」
2020/04/17(金) 18:29:51.17ID:OdXAQu+V
途中中断された優太は不満顔だ。

「キンバリーさぁんあんあんあんあん!」

キンバリーにしがみついて泣いているララを横目に、優太は言った。

「俺……これ、収まんねーんだけど、どうしてくれる?」
優太はキンバリーにギンギンちんぽを突きつけた。
「キンバリーさんでもいいから、やらせてくんない?」
2020/04/17(金) 18:33:40.29ID:OdXAQu+V
キンバリーは電話をかけた。
すぐに扉をノックする音がし、ケバケバしい化粧で顔を塗り固めた40代ぐらいのおばさんが入って来た。

おばさんはカタコトの日本語で言った。

「日本人好キヨ。若イワネ! さーびすスルヨ!」

優太は急激に萎びてしまったチンポを触りながら言った。

「チェンジ」
2020/04/17(金) 18:45:52.55ID:OdXAQu+V
ララは優太を睨み、喚いた。
「レイプされた! 訴える!」

キンバリーがそれを訳すと、優太はキレた。

「ああ??!! テメー、めっちゃ気持ちよがってたじゃねーか!!! 気持ちいいことされて訴えるってどーゆーことよ???!! 女ってわかんねー!!」
2020/04/17(金) 19:35:14.20ID:I2LUuoA7
(ララ、ふせろ!)
唐突にメイの声がしたのでサッとその場に座り込んだ。

「かっ・・・かぺ?」
優太は白目をむいて、泡を吹きながら膝を突きうつ伏せに倒れた。

「こ、これは・・・ジェイコブ・・・!?」
キンバリーも突然苦しみだした。

「キンバリーさん!?」
動揺するララにどこからともなく声が聞こえた。

「外したか。」
それはサムソンの声だった。彼は縄を解き天井に張り付いていたのだ
2020/04/17(金) 20:32:38.83ID:fum5Xed9
「よくやったサムソン」
声の方を向くとそこには笑みを浮かべるヴェントゥスがいた。
「ヴェントゥス!?」
意外な人物の登場にララは驚愕した。
「…なぜここにいる、と言う顔をしているね。それは簡単さ」
ヴェントスは壁にかけられた絵画を持ち上げると裏側にハッチが現れた。

「このホテル、実は俺たちの所有物でもあってね。このように隠し扉や隠し部屋がたくさんあるんだ。なぜって?趣味さ」
2020/04/17(金) 20:55:59.98ID:KoNgez27
ララの周りをサムソンやいつの間にかいるジェイコブが取り囲み拘束した。

ララ「離せ、ヴェントゥスっ!私をどうするつもりだ。」

ヴェントゥス「私は君を保護するために来た。君にはこの血生臭い世界は似合わない。」

ララ「信用できるか!」

ハリー・キャラハン「君はこの危険な所から逃げ出したくないの?中国に帰りたくないの?」

ララ「私は…中国に帰れるの?」

ヴェントゥス「帰れるとも!」
2020/04/17(金) 23:55:36.21ID:OdXAQu+V
「ララを舐めるなよ」と、ララの口が言った。

そう、メイファンの言う通り、ララこそがこの物語の真の主人公なのだ。

これはララが様々な災難に出くわしパニックになるための、みんなでララを弄んで遊ぶ物語なのである。
2020/04/17(金) 23:57:21.76ID:OdXAQu+V
「真の主人公であるところのララさんが尻尾を巻いて国に帰るわけがねーだろうが!!!」メイファンは牙をむいて叫んだ。
2020/04/18(土) 02:30:03.70ID:VrHdMGlo
タオ・パイパイ「四男の奴、遅いのぅ……。キンバリーの尻尾を掴めと言っただけじゃのに……」

ヒーミートゥ「私の占いでは、私の夫は死ぬと出ている」

タオ・パイパイ「まさかあの阿呆、1人で敵地に乗り込んで戦ったりしておらんじゃろうな……」
568創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/18(土) 08:49:19.47ID:9qQrRgz6
不意にドアが開いた。
「飛島ぁ、カシラが・・・、なんだてめえら、うちのモンに何してやがる!」
ヤクザの男は拳銃を抜いた。騒ぎを聞いた見回りの者たちも野次馬のように集まりだした。

「ヴェントゥス、ここは俺に任せて先に行ってくれ。奴らを止められるのは俺しかいない」
サムソンが前に出た。
「・・・サムソン・・・武運を祈る。」
ヴェントゥスはうなずいた。


「えっ私誘拐されるの?」
2020/04/18(土) 09:10:02.91ID:swK8Cd3H
「うおー、中国神話だーっ」
ララは棒を振り回した。
「こら、暴れるな」
ジェイコブはララを押さえるのがやっとだ。
そこへハリー・キャラハンは飛び上がると、ララの顔面に勢いよく屁を吹きかけた。

「くさっ、目…に…染み…る」
ハリー・キャラハンはララを担ぐと、ヴェントゥスたちと共に隠し通路に入っていった。

殿のサムソンを残して。
2020/04/18(土) 09:11:33.63ID:VrHdMGlo
集中モニター室で、兵藤直樹は全てを見ていた。

「逃がすと思いますか?」
兵藤は穏やかな細面に極道特有の無慈悲な殺気を浮かべた。
「台湾資本のホテルを私どもが使うわけがないでしょう。ここは日本資本の、しかも我が花山組の所有物だ」

そしてカメラが執拗に捉え続けるヴェントゥスとハリーを目で追いながら、無線で指示した。

「外へ出すな。殺せ。ララさんは保護しろ」
2020/04/18(土) 09:22:36.09ID:VrHdMGlo
「さて」
侵入者の排除は精鋭の部下達とセキュリティーシステムに任せ、兵藤は皆を集めた会議室で話しはじめた。
「私達はタオ一家を絶滅させに台湾へやって来た。そろそろ行動を起こしましょう」

「敵の屋敷はわかってんだろ?」
飛島優太が貧乏揺すりをしながら言った。
「さっさと本拠地に乗り込めばいいじゃねーか」

「バカですか、君は」

「むぐっ!?」

「敵の巣に乗り込むのは相手に地の利があります。おまけに向こうには有名な『暴れ牛』がいる。そんな所へ無謀に突っ込めばどうなるか?」
兵藤は指を鳴らした。
「こうなります」

体つきのごついヤクザが二人、四男サムソンを連れて入って来た。
2020/04/18(土) 09:33:45.00ID:VrHdMGlo
「いらっしゃい。タオ一家四男、サムソンくん」

部屋に連れ込まれたサムソンは、そこにキンバリーの姿を見つける。
「キム姉!」
非難するようにではなく、ただ信じられないといったように悲しげな声を上げた。

キンバリーは目を逸らす。

「やっぱりキム姉、僕らを裏切ってたの? なんだよ、僕らのこと『大好き』って言ってたのは芝居かよ?」

「臭い家族ドラマはやめてもらいましょう」
兵藤は言った。
「彼は『カメレオン・デブ』と呼ばれ、姿を消すのが得意らしい。もし逃がせば、このホテルに易々と潜入して来たように、
 今度は易々と逃げ、タオ・パイパイにキンバリーさんのことを報告するでしょう。ゆえに……」

出入口をヤクザ達が固めた。

「この場で処刑します」
2020/04/18(土) 09:40:58.98ID:VrHdMGlo
「はい! はい!」
優太が張り切って手を挙げた。
「やる、やる! 俺にやらせて?」

「茨木さん」
兵藤は優太を無視して茨木敬のほうを向いた。
「あなたの武勇伝はよく耳にしています。しかし何故か誰もあなたの喧嘩を見たことのある人間はいない」

茨木は顔色を変えることなく兵藤と目を合わせた。

「あなたが『ステゴロの鬼』だというのは私にとって『情報』でしかない。私はこの目で見たい、あなたの喧嘩の腕を」
兵藤は言った。
「今、この場で、サムソン・タオを殺して見せて貰えませんか」
2020/04/18(土) 09:50:14.99ID:VrHdMGlo
キンバリーが急いで会議室を出て行こうとした。

「お待ちなさい」
兵藤が呼び止める。
「最期に弟さんと何かお話をしてあげてください」

「キム姉ちゃん……」
サムソンは情けない顔で姉に助けを求めた。
「……助けて」

「ブーちゃん」
キンバリーはサムソンに優しく微笑みかけた。
「あなたは実は私のほんとうの弟じゃないのよ」

「えっ?」

「あなたはタオ・パイパイがよそのデブ熟女に産ませた子。私とは血の繋がりはまったくないの」

「……嘘だ」

「実は死んだモーリンも、ね。彼女はタオ・パイパイが某女優さんに産ませたのよ」

「だからって……」

「私のほんとうの兄弟……オリビアママの子供は、ムーリンだけなの」
キンバリーは狂気を帯びた笑顔で言った。
「ママを苦しめたお前達は、苦しんで死ぬがいい」
2020/04/18(土) 09:54:20.85ID:VrHdMGlo
「これまた臭い家族ドラマでしたね」
兵藤がカタコトの中国語で言った。
「さぁ、出て行くのならご自由に」

キンバリーはサムソンから顔を背けると、辛そうな表情を手で隠しながら走り出て行った。

「さぁ、茨木さん、お願いします」
兵藤は拍手をしながら茨木に立つよう促した。
「銃は使わないでください。素手で、彼を殺して見せて頂きたい」
2020/04/18(土) 10:16:29.11ID:swK8Cd3H
茨木は立ち上がり、サムソンを見てたじろいた。
(な、何がおかしい…?)
茨木と目が合ったサムソンは微笑んでいた。

「茨木さん、どうしました?」
兵藤が言った。
「いえ、何でもありません。」
茨木が微笑むサムソンに近づく。
(コイツ、今から殺される奴の目じゃねえ。気が狂ったのかそれとも…?)
2020/04/18(土) 10:30:16.93ID:9qQrRgz6
そのころ、ひでぞうはハリーやヴェントゥスを追跡していた。
「このホテルにこんな地下があったなんて」
ひでぞうの声が地下通路に響く。彼がたどり着いたのはホテル地下に広がる地下道だった。

「そんなことはどうでもいい、奴らを追うのが優先だろう」
そう言ったのは、ひでぞうの兄弟分、鶴見だった。
2020/04/18(土) 10:43:23.48ID:VrHdMGlo
刹那、会議室を揺るがすように、大地震のような音が響いた。
その部屋にいた誰もが驚き、仰け反り声を上げた。

会議テーブルの上には、仁王のように筋肉の隆々とした、初老の男が舞い降りていた。
地響きを立てて舞い降りたにも関わらず、会議テーブルは無傷のまま、震動すらしていなかった。

「……我が子を……返して貰おう」

タオ・パイパイは口から白い煙を吐きながら、地響きのような声で言った。
2020/04/18(土) 10:58:09.11ID:8SNHJz41
煙と炎に包まれた部屋で1人の男が起き上がった。
「なんだってんた、畜生…」
優太は体に走る痛みを堪え、よろよろと立とうとてをついた。

「あっ、なんだこれ」
それは人の足だった。優太はすこし落ち着くと周囲を見渡した。
「兵藤のカシラ…茨木のオッサン…誰か、返事をしてくれ」

先ほどまで彼がいた部屋は、肉塊と瓦礫が散らばり、うめき声が聞こえる地獄絵図と化していた。


「優…太、大丈夫か?、あ、あの野郎マジイかれてや…がる」
茨木の声がした。
2020/04/18(土) 11:00:35.30ID:VrHdMGlo
【主な登場人物まとめ】

─ タオ一家 ─
◎タオ・パイパイ……タオ一家の父であり、伝説の殺し屋と呼ばれる台湾1の悪党。既に殺し屋を引退し、子供達の管理と育成に身を注いでいるが、その実力はまだ最強レベルだと思われる。

◎ジェイコブ・タオ……タオ一家長男。前妻エレナの子。31歳。小柄で陰気な顔つきの毒殺のプロ。どこからでもあらゆる手段で敵の体内に毒を注入できる。身体能力はウサギ以下。

◎バーバラ・タオ……長女。29歳。エレナの子。美人でナイスバディ。お金と自分にしか興味がない。暗器とハニートラップを得意とする。

◎マルコム・タオ……三男。27歳。エレナの子。長身でイケメン。お洒落。愛靴スーパージェット・リーガルを武器とし、一撃必殺を得意とする。キンバリーを愛している。

◎キンバリー・タオ……次女。25歳。オリビアと前夫の子。長身で長髪。太陽のように明るく、バーバラ以外の家族皆から愛されている。

◎サムソン・タオ……四男。19歳。タオ・パイパイとオリビアの子。デブ。影が非常に薄く、助手席に乗っていても運転手に気付かれない能力の持ち主。最近結婚した。

◎タオ・ムーリン……四女。17歳。タオ・パイパイとオリビアの子。金髪でぶさいく。普段は殺し屋でもない普通の女の子だが、キレると一家1の攻撃力を無差別に爆発させてしまう。

◎ヒーミートゥ……四男サムソンが結婚した原住民パイワン族の娘。現代人らしからぬ呪術のようなものを使う。

─ 死亡 ─
◎タオ・ガンリー……次男。

◎タオ・モーリン……三女。
2020/04/18(土) 11:07:52.00ID:VrHdMGlo
─ 中国日本連合勢力 ─

◎メイファン……中国からやって来た最強の殺し屋。通り名は黒色悪夢。まだ16歳の少女だが、『気』を操り何でも武器に変えてしまう能力を持つ。

◎ララ……19歳の色白の少女。メイファンと身体を共有しているメイファンの姉。強力な治癒能力を持つが、戦闘能力はウサギ並み。この物語の真の主人公?

◎ジャン・ウー……ララの手伝いをする白ヒゲの老人。ジャッキー・チェンの「酔拳」に出て来る蘇化子にそっくり。

◎兵藤直樹……日本のヤクザ『花山組』の幹部。見た目は穏やかだが残忍。

◎飛島優太……18歳の高校生だが既に48人の同業者を殺害している殺し屋。スケベ。

◎茨木敬……『ステゴロの鬼』と呼ばれる喧嘩師のヤクザだが、誰もその喧嘩を見たことがない。警察の犬?

◎ことぶき ひでぞう……運転手。
2020/04/18(土) 11:13:19.26ID:VrHdMGlo
─ その他 ─

◎ヴェントゥス……世界に7人いる『光の守護者』の1人。その中でもNo.2の実力を持つと言われているが、意外と弱い。金髪の七三分け。中立的立場?

◎ハリー・キャラハン……ヴェントゥスの舎弟の白人。

◎ヤーヤ……ムーリンが友達になった17歳の女子高生。

◎ユージェ……ヤーヤが思いを寄せる年上のロック・アーティストを目指す青年。
2020/04/18(土) 12:14:46.19ID:8SNHJz41
先ほどの轟音を聞き付けた、兵藤の部下たちが部屋に飛び込んできた。
「兵藤のカシラ!」
爆発で扉が吹き飛んだ部屋の入口から中へ次々
入り込むと部下たち。

「こりゃひでえ、爆弾が仕掛けられてたのか!?」
「カシラはどこだ!?」
「あいつらなめやがって」
2020/04/18(土) 20:19:23.88ID:9qQrRgz6
「中国神話だーッ」
地下迷宮で目を覚ましたララはハリーの背中から飛び降りると
飛び上がって両足でハリーとヴェントゥスの金的を蹴り上げた。
2020/04/18(土) 20:42:23.32ID:8SNHJz41
しかし、彼女に逃げ場はなかった。
そこはこの地下迷宮を移動するモノレールの中だったのだ。

「おいお前!」
ジェイコブはララのおしりを摘まんだ。
「ぎゃあ!」
ララは悲鳴を上げ、振りほどこうとしたが、
ジェイコブの指はがっしりオケツに食い込んで離れない。
「手荒な真似をしたのは申し訳ないと思うよ、でも、タマタマを蹴り上げるのはあんまりだろう!」
光の守護者の従者となったジェイコブはララの行動が許せなかった。もう殺し屋だった彼はいない。

「…ごめんなさい。」
その謎の神々しさに、ララは気圧され謝罪をした。
「分かればよろしい」
ジェイコブは手を離した。
2020/04/18(土) 23:47:41.45ID:rBOnsbse
そこへひでぞう達が追いついて来た。
「お、追いついたぞっ!」

ヴェントゥス達の目の前で行く手を塞ぐシャッターが降りた。

「も、もう逃げ場はないぞっ!」
ひでぞうの声は震えていた。
彼はピストルを取り出すと、ララに当たっても構わないとばかりに発砲した。
「し、死ね〜っ! かっ、カイカン!」
2020/04/19(日) 05:31:09.24ID:mkALMmRV
しかし、ひでぞうは拳銃使用の経験は浅い。
放たれた弾丸はララたちが乗るモノレールにはロクな有効打を与えることが出来なかった。

ひでぞうは知らなかった、拳銃は5mも離れるとろくに当たらないことに。
2020/04/19(日) 05:49:03.35ID:W/1WA9JX
ヴェントゥスの乗る、モノレールはシャッターの脇を通り過ぎる。
ひでぞうの作動させたシャッターは人間用でモノレール用ではなかったのだ。


「こなくそ〜っ」
ひでぞうは助走をつけて飛び上がると、ハエのようにモノレール後面にへばりついた。
2020/04/19(日) 08:33:36.12ID:NIL9T95o
しかし掴まるところがなかったので、
そのままズルズルと落ち、
2020/04/19(日) 10:49:16.10ID:rn+V8OLZ
奈落の底へ落ちていった。このモノレールは懸垂式だったのだ。
2020/04/19(日) 13:37:00.89ID:qCHJHK+U
「うおお〜っ! ぼっ、僕は主人公だぞ!」

ひでぞうは神に向かって手を伸ばした。
2020/04/19(日) 14:27:19.17ID:qCHJHK+U
「ふぅっ。無茶をした! 寿命が10年……いや20年縮んだかもしらん」
タオ・パイパイは自転車に乗って逃げながら言った。

「ごめんね、パパ」
並んで走るサムソンはしかし笑顔だ。

「キンバリーが裏切っておるという確たる証拠を掴んで来いとだけ言うたのに、何故余計なことをした?」

「ごめんね、パパ」

「……それで、掴んだのか?」

サムソンの笑顔が消えた。
2020/04/19(日) 14:40:24.61ID:qCHJHK+U
タオ・パイパイが現れた時、そのすぐ近くにいた兵藤直樹はバラバラになって死んでいた。

会議室にいながら助かった少数の者達と、警備に当たっていた花山組の者達は悲嘆に暮れた。

「うっ……うっ……オヤジぃ……」
「頭ぁ……」
「兵藤さん〜……」

「警備隊は何をしていた!」
阿久津 恭三という名の年配のヤクザが怒り狂っている。
「モニター室にいた奴らは俺がブチ殺す!」
2020/04/19(日) 14:44:01.71ID:qCHJHK+U
「何が起こったのか……さっぱりわからなかった」
茨木は呟いた。

「あれが敵のボスかよ。超能力者か?」
優太はピストルの手入れをしながら言った。
「ところでオッサン。アンタ、兵藤さんが死んで、なんか嬉しそうじゃね?」

「馬鹿を言うな」
茨木は無表情で言った。
2020/04/19(日) 18:42:57.51ID:W/1WA9JX
「ヴォエッ!」
サムソンは立ち止まると耳・鼻、そして口から謎の物体を取り出した。
それはカメラ・盗聴・再生機器材だ。かれはそれらを組み合わせスイッチを押した。

『キム姉・・・!・・・・・彼は『カメレオン・デブ』と呼ばれ姿を消すのが得意らしい・・・ママを苦しめたお前たちは苦しんで死ぬがいい・・・。』
器材の画面にはヤクザたちといるキンバリーが映っていた。
2020/04/19(日) 19:03:15.79ID:qCHJHK+U
「なんと、キンバリー……」
タオ・パイパイは呟いた。
「知っておったか……!」

「パパ……」
サムソンは泣きそうな声で聞いた。
「僕のママは……誰なの?」

しかしパイパイはそれには答えず、さらに呟いた。
「まさかあのことまで……? どこまで知っておるんじゃ!?」

「ねぇ、パパ……?」

「しかしワシの次の妻はキンバリーと決めていたが、これであり得なくなった」
タオ・パイパイは四男の質問には頑なに答えず、言った。
「ヒーミートゥと言ったか、お前の嫁。あれ気に入った。ワシに譲れ」
2020/04/19(日) 19:04:36.74ID:rn+V8OLZ
その頃ララはモノレールから降り、ヴェントゥスらに連れられ、再び地下通路を歩かされていた。20分くらいだろうか、細い通路が巨大な空間に変わった。
「さあ、着いたぞ」
ハリーがいった。
「えっ、なにここ…?」
ララの目の前には灯りが輝く地下街が広がっていた。

「ここは奴らでも手出しは出来ない。」
ヴェントゥスは笑顔を浮かべ、ララの方を向いた。
2020/04/19(日) 19:06:43.07ID:qCHJHK+U
帰ると早速タオ・パイパイは四男を黙らせ、ヒーミートゥにプロポーズをした。

「お前なかなか妖しくてワシ好みじゃ。妻になれ」

「原住民の掟がある」
ヒーミートゥは答えた。
「一度結婚したら、たとえ夫が死んでも一年は再婚できない」

「そうか」
タオ・パイパイは言った。
「じゃあ殺す。死ね」
2020/04/19(日) 20:52:04.60ID:Nppy9DZc
「ダメーーっ!」
サムソンはヒーミートゥの前に立ち塞がった。
「彼女を殺さないで!」

「そいつはワシのプロポーズを断りよった」
タオ・パイパイは暗殺拳の構えをとった。
「ムカつくので殺す」

「この娘を失ったら、僕、一生結婚できないかもしれないんだよ!?」

「一生童貞でおれぃ!」
2020/04/19(日) 21:01:29.54ID:Nppy9DZc
タオ・パイパイが攻撃しようとした時、ヒーミートゥは長い睫毛をバサバサ動かしながら言った。
「私に殺意を向けたお前には呪いがかかった。もう逃げられない」

「何じゃと?」
パイパイの動きが止まる。

「予言しよう。黒い悪魔がお前を殺しに来る。3日後だ」

「僕のパパに何言ってんだーっ!」
サムソンは振り向き、ヒーミートゥを叱った。

「フフ……。面白い」
タオ・パイパイから殺気が消えた。
「既にお前の占いは外れておる。四男はこうして生きておる。ワシが運命を変えたのじゃ!」

「今回は変わらない」
ヒーミートゥは睫毛を上げ、黒い瞳でタオ・パイパイをまっすぐ見た。
「お前、太陽神を怒らせた。太陽神が黒い悪魔をお前に差し向ける」
2020/04/20(月) 05:30:16.85ID:Epx3/A2w
(・・・ここはどんな場所なんだ?)
ララたちが訪れた地下街、そこはとても奇妙な場所だった。
足を踏み入れるとまず、緑色の服を着た奴らが走り回ってるのが目に付いた。
どうやら遊んでいる子供のような印象を受けたが、よく見ると子供だけでなく
中年男性や老婆も混じっており、彼らは緑の服は着ていなかったものの、どちらかと言えば子供向けの服装で
子供のような仕草で遊んでいるのが不気味だ。

まばらだが白い防護服と防護マスクで身を包んだ人々が歩き回っている。

「何かの研究所?」
2020/04/20(月) 05:45:41.62ID:4+kFXYbg
そこは町と言うより何かの研究施設に思えた。
階段を登り、橋ような通路に通りかかった時、ララはもじもじしながらヴェントゥスに尋ねた。
「あの、私いつ服を着させて貰えるんでしょうか?」


「」
2020/04/20(月) 06:07:57.40ID:PK9yyp0k
メイファンでいる時はいつも全裸だ。が、ララはやはり服を着ていないと恥ずかしかった。
ララは緑色の服を貸してもらうと、いそいそと身に着けた。
まるで妖精が着るような、なかなか可愛い服だったので頭の上に♪マークがついた。

「ところで」
ララはヴェントゥスを心配するように、泣きそうな目で見つめながら言った。
「もうすぐ夜になったら、『黒い私』が目覚めます。妙な技をかけた張本人を見たら絶対に殺そうとすると思いますよ」
そして提案した。
「私を縛ったほうがいいと思います。檻の中とかはたぶん、簡単に脱出する……」
2020/04/20(月) 07:08:52.32ID:0WYI2rAL
「うむ、心配無用。」
ヴェントゥスは自信満々だ。
(大丈夫じゃないのに…。)
ララは心配そうにヴェントスを見つめる。

ララはふと、橋の下を見た。橋の下にも施設はあり、今度はオレンジ色の服を着ている者達が、ラジオ体操をしていた。囚人だろうか?
(あれ、なんか違和感が)
オレンジ色服の男たちの顔をよく見ると、
体格差や年齢差も見受けられるが皆同じ顔だ。それもどこかで見たことがある。
「…タオ・パイパイ…たくさんいる?」

橋の下をチラチラと眺めるララに対し、ハリーがその疑問に答えた。
「…ん、タオ・パイパイがいっぱい? ああ彼はここで生まれたんだよ。この区画は最強の兵士やモルモットを作り出す研究施設なんだ。」

ララは混乱してきた。
2020/04/20(月) 08:27:42.74ID:PK9yyp0k
メイファンは目覚めた。

「ん……? ここ、どこだ?」

「おはよう、ラン・メイファンさん」
ヴェントゥスは言った。

「あ。おはよー」

メイファンはそういうのと同時に、まるで目をこするように、殺気ゼロの手刀でヴェントゥスの首を斬りに行った。
2020/04/20(月) 08:32:23.02ID:PK9yyp0k
ヒーミートゥは殺されずに済んだ。

サムソンは自分の部屋に彼女を初めて入れた。

部屋は発明器具で散らかっており、色気も何もなかった。

「あなたは発明家なの?」

「そうさ。マルコムのスーパージェット・リーガルも僕が作ったんだよ」
サムソンは自慢気に言ったが、すぐに恥ずかしくなった。
「ごめんね。とても女の子を入れる部屋じゃないや。モーリンの部屋に行こう」

「いいえ。ここでいいわ」
そう言うとヒーミートゥはサムソンの汚いベッドに腰掛けた。
2020/04/20(月) 08:35:40.94ID:PK9yyp0k
二人は並んで座った。
暫くは会話もなかったが、やがてサムソンが聞いた。
「……なんで、僕なんかを選んでくれたの?」

ヒーミートゥは不思議そうにサムソンのほうを見た。

「ミーちゃん」
サムソンはヒーミートゥを愛称で呼んだ。
「そんなに綺麗だし、まだ17歳だし……僕みたいな地味デブなんかとは釣り合わないでしょ」

「あなたの上に」
ヒーミートゥは言った。
「英雄の『火』が見える」
2020/04/20(月) 12:23:26.18ID:PK9yyp0k
「私があなたを選んだのではない」
ヒーミートゥはさらに言った。
「太陽神が私にあなたを選べと告げた」

「なんか嬉しいような」
サムソンは頭を掻いた。
「嬉しくないような」

「メヴレヴ」
ヒーミートゥはサムソンをパイワン族名で呼んだ。
「要するにあなたは私の運命の相手ということだ」

「そっかぁ」
サムソンは笑顔を見せた。

「メヴレヴ」
ヒーミートゥの黒く長い睫毛が濡れていた。
「あなたの子が欲しい。私の中に子種を注いでくれ」
2020/04/20(月) 12:49:24.00ID:PK9yyp0k
マルコムはビデオを見せられても直ちには信じられなかった。

──ママを苦しめたお前達は、苦しんで死ぬがいい

「つまり、お前も殺すということじゃ」
隣に並んだタオ・パイパイが言った。

「嘘だ。キム……」
マルコムは震える声で言った。
「君は僕を愛していたんじゃないのか……?」

「芝居じゃ」
パイパイは言った。
「恐らくお前を油断させ、その靴を盗む気だったんじゃろう」

「しかし……僕は……」
マルコムは呟いた。
「どうしようもないほどに……キムを愛している」

「バカか!?」
パイパイは吐き捨て、やはり改造すべきだコイツと確信した。

「世界で僕が唯一殺せない人間がいるとしたら……」
マルコムは強い語調で言った。
「君だけだ! キム!」
2020/04/20(月) 12:52:43.38ID:PK9yyp0k
部屋に戻るとマルコムは考えた。

『なぜ……彼女が僕達を殺そうとする?』

マルコムにはあまりにも心当たりがなかった。

『そしてなぜ……ムーリンだけは別なんだ?』

その答えはすぐに出た。
ムーリンだけが、キンバリーと血の繋がりのある本当の妹だったのだ。
その上ムーリンは『暴れ牛』が発動しない限り、心の優しい普通の女の子だ。
2020/04/20(月) 12:56:31.13ID:PK9yyp0k
『そうか……』

マルコムは推測を完成させた。

『彼女は父さんの……タオ・パイパイの血を根絶やしにしようとしているのだ』

マルコムの脳裏に、オリビアを発狂するまでに至らせた父の所業が蘇った。
それは彼の知る限りの一部分であり、キンバリーはもっとたくさんのことを知っているのではないかと思われた。

『では……オレが消すべき相手はキムではなく……』
マルコムは考えた。
『タオ・パイパイではないのか?』
2020/04/20(月) 12:59:24.77ID:PK9yyp0k
『彼女が憎んでいるのがタオ・パイパイだけなのだとしたら……』
マルコムはとりあえずの結論のようなものを出した。
『オレがタオ・パイパイを殺せば、キムはオレの元に戻って来てくれる!』
2020/04/20(月) 16:30:35.17ID:PK9yyp0k
「フフン、マルコムよ」
タオ・パイパイがいつの間にか背後に立っていた。
「お前の考えていることなど手に取るようにわかるわ」

「父さん!?」
マルコムは急いで振り返る。
「ノックもなしに……」

「ふざけるな。ノックなどするか」
タオ・パイパイは最強の拳を構えた。
「これ以上家族から裏切り者は出さん! お前を今、一度殺し、改造してくれる」
2020/04/20(月) 16:37:01.09ID:PK9yyp0k
タオ・パイパイは相手の『気』を読むことで、相手の数秒後まで動きを読むことが出来る。
かわすことは不可能であった。相手がかわしたところにパイパイの拳は飛んで来るのだ。

「生まれ変われぃ、マルコム」

そう言うとパイパイは拳を突き出した。マルコムは避けない。そのまま突けば、喉元を拳は捕らえる……筈だった。

「おろっ?」

パイパイは声を上げた。
捕らえた筈のマルコムが1メートル横に瞬間移動している。

「フ! ワシとしたことが……。次はない!」

そう言って再び繰り出した攻撃も空を切った。
2020/04/20(月) 16:42:41.17ID:PK9yyp0k
「ワーーッ! お前、その靴を脱げぃっ!」

メイファンにとってマルコムが天敵であるのと同様に、マルコムはタオ・パイパイにとっても天敵であった。
『気』の動きを先読みしても靴からのジェット噴射で読みをことごとく外されてしまう。

マルコムはベッド下の予備のスーパージェット・リーガルも取ると、最大出力でジェットを噴射させ、開いていた窓から飛んだ。

満月をバックにマルコムの身体はロケットのように夜空の彼方へ飛び去った。
2020/04/20(月) 19:40:38.67ID:4hjqo6hA
「オジキ亡き後はこの俺が指揮を取る!」
大勢を集めた広間で、花山組の阿久津恭三が大声で言った。
「必ずや兵藤のオジキのカタキを取るぞ!」

「なんか勘違いしてね? アイツ」
飛島優太が呆れた口調で言った。

「ウム」
茨木敬は腕組みしながら頷いた。
2020/04/20(月) 19:46:42.00ID:4hjqo6hA
「しつもーん」
優太は阿久津に向かって手を挙げ、発言した。
「俺らの目的って、兵藤さんのカタキとることでしたっけ?」

「あ??!!」
阿久津は殺気を込めた目で優太のほうを見る。
「タオ一家を滅ぼすことだよ、勿論よ」

「何のために滅ぼすんでしたっけ〜?」

「そ、そりゃ……」
阿久津は一瞬言葉に詰まったが、すぐに言った。
「……カネのためだ」

「そう。我々は中国との取引を今まで通り、あるいは今まで以上に続けるために、タオ一家が邪魔なんだ」
優太は弁舌をふるった。
「ぶっちゃけ上質で安価なヤクを絶やしたくないのだ」
2020/04/20(月) 19:53:56.11ID:4hjqo6hA
「しかも台湾独立なんてふざけた動きが本格化している」
優太は続けた。
「そんなことをされたら我々のぶっとい取引相手である中国さんが非常に困る。何しろ中国さんが台湾をゲット出来れば日本への最短距離の軍事基地が作れるというのに!」

ヤクザ達は黙って聞いた。

「我々は困っておられる我らがビジネスパートナーのために一肌脱いだ! ……んですよね?」

「おう? ……おお!」
阿久津は頷いた。

「そんなら」
優太はにっこり笑って言った。
「カタキ打ちとかはとりあえず置いときましょうよ? それが士気を高めるものならいいけど、そのために焦って突っ込んで全滅したんじゃしょーがないっしょ」
2020/04/20(月) 19:56:08.81ID:4hjqo6hA
「皮肉だな」
茨木が言った。
「台湾は親日だが日本との国交がない。中国は反日だが国交がある。中国のために俺達が台湾独立を潰さねはならんとは……」
2020/04/20(月) 20:01:25.27ID:4hjqo6hA
「わかっとるわ!!!」
阿久津が優太に向かって声を荒らげた。
「こんなは!!! ガキのくせに何を偉そうに言うちょるんじゃ!!! 大人舐めとんのかゴルァ!!!」

「ガキだと……?」
優太の目が据わる。
「飛島組の次男坊の俺に向かってガキと言ったか? オヤジに言いつけてもいいんだぜ?」

「う……!」
阿久津は黙るしかなかった。
2020/04/20(月) 20:03:36.18ID:4hjqo6hA
「ハハ……阿久津は知らないんだな」
茨木が小声で優太に言う。

「言うなよ、オッサン」
優太も小声で言った。
「俺がほぼ勘当息子同然だなんでよ」
2020/04/20(月) 20:12:05.24ID:4hjqo6hA
「チッ。兵藤のオジキ殺られて黙ってられんじゃろが……!」
阿久津は花山組の者だけを集めると、ひそひそと計画を打ち明けた。
「これからタオ一家の屋敷へ討ち入りかけるぞ。ついて来い」

「へい!」
「わしらも同じ気持ちですじゃ! 兵藤さんのカタキを……!」

「よし、ついて来い」
阿久津は立ち上がった。
「タオ一家なんぞワシらだけで充分潰したれるわ!」
2020/04/20(月) 20:16:52.86ID:4hjqo6hA
夜のタオ家は静まりかえった森の中にあった。
阿久津率いる25人のヤクザ達は易々とその敷地内に侵入し、タオ・パイパイのいる本屋敷をその目に捉えた。

「フン。見ろ、こがぁに簡単じゃなかか!」
阿久津はそう言うと、殺気の満ちた笑みを浮かべ、部下達に命令した。
「誰か見つけたら躊躇なく殺せ! 弔い合戦じゃ! 一方的に殺して、殺して、殺しまくるぞ!」
2020/04/20(月) 20:18:40.46ID:4hjqo6hA
その時、がさりと大きな葉擦れの音がした。

「誰じゃい!?」

阿久津が叫んで懐中電灯を向けると、金髪の痩せた少女がパジャマ姿で驚いてこちらを見ているのを照らした。
2020/04/20(月) 20:21:37.10ID:4hjqo6hA
「女の子ですぜ?」
部下が言ったが、阿久津は容赦しなかった。

「ここにおるゆうことはタオ一家じゃ! 殺せ! 撃て!」

チンピラ達が一斉に銃を構え、発砲した。

「どぅあっ!?」
金髪の少女は瞬時にパニックに陥る。
「じ、じ、じぇじぇじぇーーーっ!」
2020/04/20(月) 20:23:04.13ID:4hjqo6hA
25人の肉塊がミキサーにかけられたように飛び散り、月に血の虹がかかった。
2020/04/20(月) 20:53:26.29ID:eqFag+3E
メイファンはヴェントゥスの首をあっさりはねると、あくびをした。
身体は頭から爪先までとっくに真っ黒になっている。

「ふぅあ、よく寝た。ところでララ、ここどこだ?」

「あ〜あ……。だから縛れって言ったのに……」
ララは残念そうに言った。

「あ。コイツ殺したから変な技の眠気、解けるかな?」
メイファンは明るく笑った。すぐに真顔になってララにまた聞く。
「ところでここどこ? って2度同じ質問さすな」
2020/04/20(月) 22:13:59.61ID:8IQiScU6
タオ・パイパイは焦っていた。

最悪のタイミングで敵が攻めて来たのだ。

今、この屋敷にはムーリンと四男しかいない。
四男は現在子作りの真っ最中なので、ムーリンを出すしかなかった。

しかし別動隊の12人が裏から迫っていた。
そちらへ向ける戦力がない。

「仕方ない」
タオ・パイパイは呟いた。
「デヴィッドとアーリンを出すか」
2020/04/20(月) 22:16:56.54ID:8IQiScU6
「おい? 阿久津さんと連絡がつかないぞ」
「まさかやられたのでは?」
「まさか……」

別動隊の12人がざわついているところへ2体の人影が現れた。

「誰だ!?」
「阿久津さん?」

月が2体の人影を照らし出した。
かろうじて肉の残っている男女のゾンビだった。
2020/04/20(月) 22:18:49.71ID:8IQiScU6
「久しぶりじゃのう、お前ら2人を操作するのは」
タオ・パイパイは箱にスティックのついたコントローラーを2つ同時に操作しながら言った。

「そりゃ! デヴィッドは殺せ! アーリンは食え!」
2020/04/20(月) 22:22:03.78ID:8IQiScU6
ヤクザ達は一斉に発砲した。
銃弾はゾンビの身体に何発も命中したが、ゾンビ達は倒れなかった。
ゆっくり歩いていたかと思うと急に素早い動きで襲いかかり、男のほうのゾンビの拳はヤクザの頭部を飛ばした。
女のほうは次々に抱きつくと頭蓋を齧りとり、脳味噌を食べた。
脳味噌を食べられたヤクザもゾンビ化した。
2020/04/20(月) 22:22:52.60ID:8IQiScU6
「いや、そいつらは操作できんから要らん」
タオ・パイパイはそう言うとデヴィッドに殺させた。
2020/04/20(月) 22:30:18.49ID:8IQiScU6
「しかし1日でだいぶん戦力減らされたな」
ホテルのレストランで茨木と向かい合って食事をしながら優太が言った。
今さらに阿久津をはじめ37人を失ったことはまだ知らない。
「黒色悪夢は何してんだ」

「ビビって隠れてるんじゃないか?」
茨木はバカにするように言った。
「大体、ふざけている。日本からこれだけの人数を出させておいて、中国からはたったの3人とかな」

「しかも1人は酔っぱらいのジジイ」
優太が言った。
「もう1人は俺の恋人」

「ふざけている」
茨木は再びそう言うと、魯肉飯を口に掻き込んだ。
2020/04/20(月) 22:37:34.52ID:8IQiScU6
「あっ、そうだ」
ララは思いつくなり電話をした。

習近平はまたすぐに電話に出た。
『メイファンか』

「あたしです。ララ……あっ! 切らないでお願い!」

『一体何なんだ』

「メイファンもいますよ。替わりましょうか?」

『そうしてくれ』

「あいう」
メイファンは適当に声を出した。

『任務の経過はどうだ。順調か』

「知らん。今、なんだか任務と全然関係のないところにいる」

『信頼しているぞ』

「ああ。すぐにここを出る。任せろ、習近平」

『頼もしい』

「それでですね、習近平」
ララが唐突に声を出した。

『呼び捨てにすな!』
2020/04/20(月) 22:53:45.60ID:8IQiScU6
「習近平さん。あなた、今、すごく不安なんじゃないですか?」

『何の話だ、切るぞ?』

「だってメイファンはあなたのボディーガードでもあるのよ。メイファンが側にいない今……」

『代わりに50名の精鋭SPがいる。それで?』

「でも……」

『50名の精鋭SPとメイファン1人はほぼ等価だ。それでもメイファン1人のほうが心強いぐらいだが、問題はない。そ・れ・で!?』

「……それ、換えっこしましょ?」

『50人送るより1人送ったほうが効率がいいから1人を送った。また50人のうち何人か死ぬだろうが、メイファンなら死なん』

「……中国、帰りたいんですぅ」

『足手纏いが!』
習近平は下賎の者をなじる口調で吐き捨てた。
『まさしくお前はメイファン唯一の弱点だ! 消えてくれ!』
2020/04/20(月) 22:57:53.55ID:8IQiScU6
習近平に一方的に電話を切られ、ララは俯いた。

「何をしたいんだ、お前は」
メイファンは呆れた口調で言った。

「……だって、怖いんだもん。いつもと違うんだもん」
ララは弱々しい声を出す。

「それでも『黒色悪夢』の半身か?」
メイファンが溜め息を吐く。
「今、私が帰ったら、笑い者だ。私達の名前に傷をつけたいのか?」
637創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/20(月) 23:01:48.02ID:9/TUJGkd
楳図かずお (83)
北島三郎 (83)
野沢雅子 (83)
さいとう・たかを (83)
里見浩太朗 (83)
山崎努 (83)
柳生博 (83)
瑳川哲朗 (83)
笑福亭仁鶴 (83)
雪村いづみ (83)
2020/04/20(月) 23:05:13.79ID:8IQiScU6
「12年前、私が4歳にして殺し屋になった時……」
メイファンは言った。
「お前は殺し屋の相棒として生きる宿命を負ったんだ。そんなことわかっていると思っていたが……」

ララは何も言えず、ただ俯いていた。

「足手纏いだとか、黒色悪夢唯一の弱点だとか、言わせといていいのか?」
メイファンはさらに言った。
「習近平はわかってないんだ、お前が私にとって、どれだけ必要かを」

ララはさらに俯いた。

「見返してやれよ。お前は必要な人間なんだって、習近平に思い知らせてやれ。そして習近平のバカに舌出して可愛い服でもねだれるようになれ」

ララは地面に頭を着けてしまった。

「確かに今回の仕事はかつてなかったほどに困難だ。しかし覚悟を決めろ。タオ・パイパイを仕留めるまで故郷へは帰らん!」
2020/04/20(月) 23:22:11.26ID:8IQiScU6
「うん、わかった」
ララは顔を上げた。
「もう、中国帰りたいなんて言わない!」

「それでこそ私の姉ちゃんだ」
メイファンは嬉しそうに言った。
「じゃ、こんなとこ早く脱出すんぞ」

「オー!」
ララは張り切って片手を高く上げた。

ヴェントゥスが死んだ今、メイファンが完全復活したものと信じ、安心していたのだ。
2020/04/20(月) 23:29:12.44ID:8IQiScU6
「あっ。メイ」
ララは思い出して、言った。
「ジェイコブさん、ここにいるよ」

「何だと?」
メイファンは怒ったような声を出した。
「先手必勝、見つけたら即殺せと言ったろう?」

「だって……いい人になってるんだもん」

「バカか!? 見つけた時に殺しとかないと後悔すんぞ! アイツはお前でも殺せると言ったろう?」

「だって……」

「キンタマ蹴っただけで死ぬぞ、アレは」

「……蹴ったけど」

「まさか両足で蹴ったりしてねーだろうな?」

「……ダメなの?」

「当たり前だ! いいか? 蹴りってのは軸足を踏ん張ってねーと……」

メイファンのキンタマ蹴り上げ講座が始まった。
2020/04/20(月) 23:31:35.50ID:8IQiScU6
ふと、こんなことをしている場合じゃないと気づき、メイファンはジェイコブの『気』を探った。

近くにはいないようだ。あの異質な『陰気』は見当たらない。

「よし、移動すんぞ」

「お、オー!」

メイファンは邪魔な緑色の服を脱ぎ捨てると、全裸で施設の中を音もなく歩き出した。
2020/04/20(月) 23:34:23.83ID:8IQiScU6
バーバラは西瓜を入れた赤いビニールの手提げ袋を持って病室を訪れた。

「あら?」

しかしジェイコブの病室のベッドに兄の姿はなかった。

「どこへ行ったのかしら。これを見せれば記憶が戻ると思って持って来たのに」

もちろん赤いビニールの中身は西瓜ではなく、ガンリーの生首だった。
2020/04/20(月) 23:47:45.91ID:RdOI8g7O
ムーリンからすぐにLINEのメッセージが返って来た。
キンバリーは逸る気持ちでそれを読んだ。

□ デブ兄から聞いた。モー姉を殺させたのはキム姉だったんだね。絶っっっ対にキム姉を許さない!!!

キンバリーはすぐに返信した。

◯ ムーちゃん。違うの。

しかしムーリンは続けてメッセージを打っていたらしく、被るように文章が現れた。

□ 裏切り者! よくも騙したな! キレそう!
2020/04/20(月) 23:51:49.12ID:RdOI8g7O
キンバリーは悲嘆に暮れた。
もうすぐ戦場となるであろう場所からムーリンを遠ざけ、ヤクザや黒色悪夢をも『暴れ牛』の危険から遠ざけておきたかった。
何よりムーリンに怨恨を持たれてしまった。自業自得とはいえ、そのことが一番悲しかった。

またLINEにメッセージが入って来た。
キンバリーは急いで顔を上げ、それを見た。

差出人はムーリンではなく、マルコムだった。
2020/04/21(火) 05:18:57.76ID:9T1MnY52
「だーれだ?」
ヴェントゥスの声と共に、メイの視界が両手で塞がれた。
「…!」
メイは少し驚きつつも、″気″を込めた手刀を振り返りながら再びその太い首筋に打ち込んだ。
「…メイ君、あの服気に入らなかった?」
ヴェントゥスは生首の状態で馬鹿にしたように言った。
「なんだあ、てめえ?」
メイファンは興味深く思いつつも距離を取った。
646創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/04/21(火) 05:49:36.76ID:LFgQWWXR
アホだろコイツ
2020/04/21(火) 05:56:09.85ID:92GVNxNS
ヴェントゥスは切断された首ごと、煙のように消えた。
「私は夢でも見ているのか!?」
動揺するメイファンにたいし、煙のように姿を出現したヴェントゥスがその脇腹に正拳突きをお見舞いした。

「おう゛っ!?」
打込まれた拳は、気の鎧を打ち砕きながら脇腹に深くめり込んだ。、メイファンは胃液をはきながら大きくよろめき、膝をついた。

「残念だけど、俺はそう簡単には死なないし、君のチンケな気の鎧では俺の攻撃は防げないよ」
ヴェントゥスはメイファンを見下ろすように言うと、にこりと笑った。

「言っただろう?俺はリウより強いって」
2020/04/21(火) 06:08:47.96ID:5XFLEdxP
メイファンの脳裏には、あの日のトラウマが蘇りつつあった。
リウ・パイロンから受けたあの仕打ちを。
2020/04/21(火) 07:48:26.11ID:U/6xeA6W
「ひっ、ヒィィィィ〜……!」

メイファンは恐怖し、普通の少女のように弱々しい声を出した。

自分が絶対に勝てない男の顔を、なぜか丸太ん棒とともに思い出してしまった。

その男、リウ。
それよりも目の前のヴェントゥスは確実に強い。メイファンにはありありとわかった。

大船に乗ったつもりでいたララも、メイファンの弱気に縮み上が……りはしなかった。

「リウより強い?」
メイファンは唐突に白くなった。
「キャハハハ! じゃあテメー殺したらリウも殺せんな?」

そして信じられないほどのスピードでヴェントゥスの股間を蹴り上げた。
全裸のアソコを隠そうともしないで。
2020/04/21(火) 10:09:19.42ID:5XFLEdxP
しかし、手応えがなかった。まるで煙を蹴るような感覚だった。

「もう通用しないよ。何とかの顔も三度までつぎやったら怒るからね。」

ヴェントゥスは腰に手を当て、呆れたように言った。

「うるせーっ、こうなったら」
2020/04/21(火) 10:27:23.54ID:Sf4FBIb1
ララは窓から飛び降り、逃げ出した。
対処法の分からない相手にはこの手に限る。
メイファンの仕事は彼を殺すことではない。

ララは後ろを振り返った。ヴ
2020/04/21(火) 10:50:55.35ID:lkNmT0wg
キンバリーはマルコムからのメッセージを読んだ。

▲ 会いたい。僕は君を信じている!

軽く目を伏せると、キンバリーはすぐに返信した。

◯ 私、あなたを騙していたのよ

マルコムからのメッセージはすぐに返って来た。

▲ 父が憎いんだろう? 僕も父の所業には腹を据えかねている

▲ 実は父に殺されかけた。それで家を飛び出した。どこかで会えないか? 僕は君に協力する

キンバリーは無表情にスマートフォンを操作した。

◯ じゃあ、22時にカフェ「海辺のカフカ」で──
2020/04/21(火) 10:57:05.26ID:lkNmT0wg
「海辺のカフカ」では小清新のミュージシャンによるアコースティック・ライブが行われていた。
それがちょうど終演に差し掛かる時間になってキンバリーは入店した。
モスコミュールを注文し、立ち見も出ている客を眺めながらカウンターに座ると、すぐに入口にマルコムの姿が現れた。

「キム!」

近づいて来たマルコムに、キンバリーはいつものように微笑みはせず、言った。

「私を殺しに来たんでしょう、マル」

「違う」
マルコムは真剣な顔で言った。
「僕に君は殺せない。タオ・パイパイを一緒に倒そう」
2020/04/21(火) 11:01:01.99ID:lkNmT0wg
キンバリーが泊まっているというホテルの一室で、マルコムは彼女を抱いた。

「僕は君なしでは生きては行けないんだ」

「嬉しいわ、マル」

キンバリーはマルコムの首の後ろに手を回し、優しく口づけながら、その腰の動きを受け入れた。

「キム! キムーーっ!」

「ああっ! マル!」
キンバリーは高まり、叫ぶように言った。
「愛してる! 愛してるの!」
2020/04/21(火) 11:04:43.32ID:lkNmT0wg
行為が終わり、マルコムは幸せそうにキンバリーを抱き締めて眠った。

どれだけ時間が経ったのだろう。
ふとマルコムが目を覚ますと、隣にキンバリーがいない。

玄関の外に誰かの気配がする。
明らかにキンバリーではなかった。

ドアが開き、男の影が現れるなり日本語で言った。
「嬉しいなぁ。アンタ殺したらララちゃんがヤらしてくれるんだわ」
2020/04/21(火) 11:09:27.16ID:lkNmT0wg
マルコムは全裸のまま、急いで靴を履いた。

すぐにわかった。まったく同じリーガルの靴だが、自分のスーパージェットバージョンではなかった。
自分がいつも履いている靴をよく知る人間によって普通のリーガルシューズにすり替えられたのだ。

「キム……!」
マルコムは絶望的したように目を覆った。

「まぁ、卑怯な真似はしねーよ」
明かりが点き、飛島優太の顔を照らし出した。
「タイマンで殺し合い、しよーぜ」
2020/04/21(火) 12:18:18.41ID:lkNmT0wg
「ウォー・シー・フェイダオ・ヨウタイ(私は飛島優太です)」
優太はキンバリーから習った中国語で言いながら、ステップを踏んだ。
「チンドードー・ジージャオ(どうぞよろしくお願いします)」

発音が悪すぎてマルコムにはまったく伝わらなかった。
憎むような目を優太に向けると、マルコムも構える。
「見たところ、まだ子供のようだが、容赦はせんぞ」

「なんか見た目で甘く見られてっかな」
相手の言葉はわからないが、なんとなく察して優太は笑いながら言った。
「こう見えて俺、日本一の殺し屋なんだぜ? なめんな」
2020/04/21(火) 12:23:25.89ID:lkNmT0wg
その頃、茨木敬は1人で夜の街にいた。
病院の側にある屋台で買った烤肉(台湾式バーベキュー)をつまみに台湾ビールの金杯を飲みながら、病院の様子を伺っている。
バーバラ・タオがここに現れるかもしれないとの情報をキンバリーから得ていたのだ。
そして話を聞く限り、バーバラに相性がいいのは自分であるとのことだった。
2020/04/21(火) 12:26:56.99ID:lkNmT0wg
提案したのは茨木だった。
兵隊を1日でごっそり減らされ、作戦会議の途中でトップの兵藤直樹を殺られた。
こうなったらうかつにタオ家の屋敷には攻め込まず、外で待ち伏せてタイマン勝負で殺ろう、と。

それにはタオ一家のメンバーの動きをよく知るキンバリーの存在がとても心強かった。
2020/04/21(火) 12:28:41.31ID:lkNmT0wg
バーバラ・タオは姿を現さない。

ビールをちびちび飲みながら、茨木は呟いた。

「現れんでいいぞ」

そして串に刺した豚肉を歯でひきちぎった。

「現れてくれるな、畜生め」
2020/04/21(火) 14:03:36.60ID:lkNmT0wg
茨木は追加でソーセージ、猪血湯(豚の血を固めたもの)、揚げ豆腐の3串と台湾フルーツビールのマンゴーとグレープを買って来た。

「フルーツビール……イケるな」

石のベンチで一人宴会をしているとバイクの音が聞こえた。
2ストロークのスクーターの音があちらこちらから聞こえる中、ドゥカティのLツインエンジンの音は目立っていた。

「捕まらんかったか……」

バーバラのドゥカティが去って行く音を聞きながら、茨木はほっとしたように一人宴会を続けた。
2020/04/21(火) 14:37:17.15ID:lkNmT0wg
「クソ兄、どこ行ったのよ」

バーバラはバイクを走らせながら呟いた。

「もし裏切ってたりしたら殺してやる」

そして裏切りという言葉からキンバリーの顔を思い出し、ニヤリと笑った。

「それにしてもキンバリー……見直したわ」
2020/04/21(火) 14:43:10.11ID:lkNmT0wg
マルコムは吹っ飛び、壁に激突した。
自分から飛び、ダメージを軽減したのだ。
それでなければアバラを折られ、重大なダメージを受けていた。

「おいおい」
優太は余裕の表情で言った。
「もうちっと楽しませてくれよ」

その姿にマルコムは実兄ガンリーの姿を重ね見た。
優太の戦闘スタイルはそれによく似ていた。
パワーはガンリーほどではないが、スピードは優太のほうが優っている。

マルコムは口元の血を拭った。
模擬戦で兄ガンリーには一度も勝てたことがなかった。
2020/04/21(火) 14:48:11.99ID:lkNmT0wg
並の者相手ならマルコムは普通の靴でも負ける気はしなかった。
しかし目の前の敵はガードを固め、顎を引き、凄まじいスピードで拳を放って来る。
マルコムの最も苦手なタイプだった。
隙がない。攻撃が速い。
その上マルコムは精神的にも重大なダメージを受けていた。
もし、ここで勝ったとしても、どこへ帰れというのか。
最も帰りたい場所──キンバリーの胸は開かれていなかった。
2020/04/21(火) 14:53:45.64ID:lkNmT0wg
「へへ……。弱いぜ」
優太は余裕綽々だった。
「てめー殺せばララちゃんとヤれて、俺が主人公になれるな」

しかし、優太にはさっきから目障りになっているものがあった。
マルコムがハイキックを放つたびに、見たくもない長いものが目の前を横切るのだ。

「へい!」
優太はマルコムにジェスチャーでパンツを穿くよう求めた。
「時間やる。待っててやるから、パンツ穿いてくれ」

マルコムは優太の言っていることの意味を理解した。
パンツはベッド側の床の上に落ちていた。
2020/04/21(火) 14:54:37.10ID:lkNmT0wg
マルコムはパンツを拾う。

それとともにベッドの下を見た。

キンバリーは気づかなかったようだ。

持って来ていた予備のスーパージェット・リーガルはそこにあった。
2020/04/21(火) 18:49:18.45ID:lkNmT0wg
しかしパンツを穿かせてもらう暇はあっても、靴を履き替えさせてもらえる暇はなかった。
どこかにカメラの気配も感じる。
どうせキンバリーが靴の秘密はバラしているだろうが、実際に見られて対策を練られることをマルコムは嫌った。
何より超小型ジェットを噴射する『条件』を知られるわけには行かない。
マルコムは予備のシューズを素早く手に取ると、窓ガラスを割って飛び降りた。

「あーーっ!?」
優太は思わず声を上げた。
「お前……! ここ、48階……!」
2020/04/21(火) 18:51:22.10ID:lkNmT0wg
マルコムは落下しながら予備のスーパージェット・リーガルシューズを履くと、ジェットを点火させた。

パンツ一丁に革靴姿のイケメンが、鉄腕アトムのように、月夜を飛んで行った。
2020/04/21(火) 18:56:56.96ID:lkNmT0wg
「なんだありゃ……」

優太は呆然と窓の外に足の裏から火を噴いて遠ざかるマルコムを見送った。

「クソッ! これでララちゃんとヤれると思ったのに!」

「飛島くん」
キンバリーの声が天井のスピーカーから聞こえた。
「逃がしたのね」

「うるせー!」

「よかった」
キンバリーの声は言った。
「あなたが死ななくて」
2020/04/21(火) 19:01:09.91ID:lkNmT0wg
優太は部屋を出ると、まっすぐにララの部屋へ向かった。
「ムカついてしょうがねぇ。ララちゃんのおっぱい吸ってからじゃねーと寝らんねーわ!」

そしていつものようにノックもせずにララの部屋の扉を開けた。
しかしそこにララの姿はなく、初めて見る肌の黒い少女が、全裸でベッドの上に胡座をかいて缶ビールをごくごく飲んでいた。

「……誰?」

「よう」
メイファンはスチャッと手を挙げて挨拶した。
2020/04/21(火) 19:06:04.37ID:lkNmT0wg
「ビール」
優太は日本語で言った。
「俺も貰っていいか?」

「ダメだ」
メイファンは中国語で答えた。
「お前に飲ませる酒は一滴もねぇ。欲しけりゃ自分で持って来い」

「あぁ、じゃ、ルームサービス呼ぶわ」
優太は受話器を取ると、キンバリーに習った中国語で「ピージョウ(ビール)、ピージョウ」と言った。
「あれ?」
受話器を置くと優太は言った。
「なんで俺達会話できるんだ?」
2020/04/21(火) 19:12:00.55ID:lkNmT0wg
「お前、ララに気持ち悪いことしてた奴だよな」
メイファンは中国語で言った。

「あ。ああ、ララちゃんどこよ?」

「ララは寝た」

「水餃子食べてんのか。そうか」

「ああ。ところでお前、名前は?」

「ミンチは好きだぜ。ハンバーグとかよ」

「そうか。よくわからん」

「はっ?」
優太は急に閃いた。
「お前、もしかして『黒色悪夢』か?」

「うんうん」
メイファンはよくわからないけど頷いた。
2020/04/21(火) 19:21:24.45ID:lkNmT0wg
「そっか〜。まさかこんな女の子だとはなぁ」

「こう見えて酒は強いんだぞ」

「お前、何歳なの?」

「まだこれ6杯目だ」
そう言いながらメイファンは拳でグーを作り、親指と小指を開いて中国式の『6』を作ってみせた。

「は? 何、その手つき?」

「ああそうか。日本式はコレか」
メイファンは改めて右手のパーに左手の人差し指を一本重ねた。

「60歳!?」
優太は驚き、考え直した。
「……なわけないよな。6歳? ……なわけもないから、16歳か?」

「ソウダヨ」
ララよりは日本語を知っているメイファンは日本語で答えた。

「それにしちゃ見事に性的魅力ないなぁ、お前」
優太は褒めるように言った。

「6杯ぐらいまだ序の口だ」
メイファンは得意げに笑った。
「飲み比べすんぞ。ほらお前のが来た」

ホテルの従業員が瓶ビールを10本持って入って来ると、全裸のメイファンを見て慌てたように出て行った。
2020/04/21(火) 19:32:39.82ID:lkNmT0wg
「お前、おっぱい結構大きいし、乳首も綺麗なピンク色なのにな」
優太はビールを飲みながら不思議そうに言った。
「ちっとも襲う気にならん」

「それはそうと、さっきマルコムが来ていたな?」

「気づいてたか? さすが黒色悪夢だな」

「お前が戦ったのか?」

「俺、勝てそうだったんだけど、逃げられちったよ〜」
優太は悔しそうに言った。

「気にするな。アレにはお前じゃ勝てん」

「そうなんだよ。パンツ穿かせてしまったばっかりに……」

「そうそう。パンパン!ってピストルで撃ったところでアイツには通用せん」

「パンパン? 俺とセックスしたいのか? 残念だけどお前じゃその気になんねー」

「残念だったな。まぁ、飲め」

「おう……って、俺の酒、自分にも注いでんじゃねーよ」
2020/04/21(火) 19:39:49.78ID:lkNmT0wg
「お前、いくつだ?」
メイファンが聞いた。

「ビール? 25本目だ。トゥエンティ・ファイヴ」
優太はヘロヘロになりながら笑顔で答えた。

「結構いってんだな、見た目のわりに」

「おい、お前、今までに何人殺した? 俺はなー、こんだけ」
優太は右手で4を作った後、両手で8を作って見せた。

「48本も飲んでねーよ」
メイファンは据わった目で言った。
「数えてねーけどな。まぁ、でも、かなり飲んだ……」

メイファンはぱたりと倒れると寝息を立てはじめた。
2020/04/21(火) 21:07:17.36ID:92GVNxNS
そしてまた日が昇り、カーテンの隙間から差し込む日光でララは目を覚ました。
「・・・酒臭い」
彼女は換気ををするため窓を開けた。開いた窓から入るそよ風が心地よい。
「昨日は見ちゃいけない物を見ちゃったなあ」
ララの脳裏には、あの地下世界の光景が焼き付いて離れなかった。
同じ顔の人々が生活している、まるで映画のような話だ。
しかも、その顔が殺しのターゲットであるタオ・パイパイ何だから結構印象に残る。
2020/04/21(火) 21:54:41.60ID:Sf4FBIb1
物思いに耽っていたララだったが、あくびが聞こえたので振り返った。
「あれ、ララちゃんいつの間に帰ってきたの?」
日本人の「ゆーた」だ。部屋に漂う酒の臭いは奴の仕業のようである。

「あっ」
ララは自分が裸と言うことに気が付いた。急に恥ずかしくなり、シーツを慌てて羽織る。
(また見られた…ッッ!)
2020/04/21(火) 22:11:51.86ID:ONrLU5s5
「オッスおはよう。」
優太は大きな声で挨拶した。
しかし、ララは黙っている。

「ひぇっ」
「おう、無視すんじゃねーよ」
優太はシーツの隙間から手を入れくすぐり始めた。
2020/04/21(火) 22:17:32.38ID:92GVNxNS
「うひゃひゃひゃっ」
ララは我慢出来ず笑い声を上げた。
「あ〜、おっぱい柔らけー」
優太はララの乳房を堪能し始める。
2020/04/21(火) 23:08:37.12ID:ONrLU5s5
優太のセクハラは更にエスカレート、
ララの股間にまで手を伸ばした。
「うっ」
ララは肩を震わし、その刺激から逃れようと足を閉じようとしたが、優太は無理矢理広げる。
「おっきもちええんか?、ここがええんか」
優太はララの耳元で囁いた。
奴の右手が、クリトリスを指を転がし、左での指が、肉の溝を往復するたびに快感の並みに襲われる。

ララはまた優太の手で何度も達してしまった。
2020/04/21(火) 23:17:58.18ID:p7HxSJSK
「…ああ、最悪。」
ララは自己嫌悪に陥った。
2020/04/22(水) 02:27:24.40ID:5qXXaik4
しかしララは触られる前から濡れていた。
また舌で舐めてほしいという期待もあり、されるがままになっていた。

「ところで」
優太はエッチなことを続けながら、ララの耳元で聞いた。
「黒色悪夢、どこ行ったの?」

「く……クコショク? アクム?」
ララは聞こえた通りに繰り返した。

「ブラック・ナイトメアよ。ところでアイツの名前聞くの忘れてた。アイツの本名、何? ワッツ・ハー・ネーム?」

「メ、メイヨー(あ、あの子に名前はないわ)」

「メイよ?」
優太は奇跡的に正しい情報を得た。
「そうか。メイって言うのか」

そして乳首を舌先でツンツンしながらトロトロになった秘部をかき回しているうちに、ララはまたしても痙攣しはじめた。
2020/04/22(水) 02:40:57.90ID:5qXXaik4
「あ、そうだ」

優太は急にララから手を離し、立ち上がった。

「早くマルコムの野郎ぶっ殺さねぇと、ララちゃんに俺のこれ、ブチ込めねぇ」

そう言うなり急ぎ足で部屋を出て行った。
2020/04/22(水) 05:26:16.82ID:SUMDyHx8
優太「おろろろろろっ」

廊下に出たところで優太は嘔吐した。
2020/04/22(水) 06:01:39.61ID:J0H2mQPI
ララ「ジェイコブおじさん、地下世界においてきたけどまあいいや」
2020/04/22(水) 06:55:57.12ID:SUMDyHx8
ジェイコブおじさん「この(地下)世界こそわしの世界、故郷のことはもう何も思うまい!」
2020/04/22(水) 08:53:58.18ID:5qXXaik4
優太はキンバリーに誘われて彼女の部屋にいた。
もちろんセクシーなお誘いではない。
しかしズボンの前をギンギンに膨張させた優太は、薄着の彼女を今にも押し倒しそうだ。

「優太くん」
それを制するようにキンバリーが言った。
「マルコムのこと、弱いって思ってる?」

「いやぁ、アイツは強いよ」
優太は誤魔化すように笑いながら言った。
「俺が強すぎるだけ」

キンバリーは口元に意味ありげな笑いを浮かべると、一揃いの革靴を出し、テーブルの上に置いた。
2020/04/22(水) 08:56:49.41ID:5qXXaik4
「これがスーパージェット・リーガルシューズよ」

「ははぁ」
優太はそんなことよりまず抱かせて欲しかった。
「キムさん、まず一発……!」

キンバリーは人差し指で優太の胸を止めると、その指で革靴を差した。

「この靴を履きこなして見せたら、どうぞ?」
2020/04/22(水) 09:01:49.01ID:5qXXaik4
「うひょーっ! こんなもん!」

優太は急ぎ足で革靴を履いた。サイズは少し大きかったが、足を動かすと抜けるほどではなかった。

「ほら! 履いたぜ? やろう!」

「履くのと履きこなすのとは違うわよ」
キンバリーはバカにするように言った。
「そんな日本語の違い、台湾人の私でもわかるけど?」

「え〜。かっこよく履けてりゃいいんだろ?」

「その靴に限っては意味が違うわ」
キンバリーは命令した。
「優太、その靴をジェット噴射させてみなさい」
2020/04/22(水) 09:06:08.19ID:5qXXaik4
優太は一旦革靴を脱ぎ、手に取ってまじまじと見た。
普通の革靴だ。特別重いわけでもない。
よくよく見るとアウトソールとヒールの部分、そして靴底に小さな穴が開いており、黒い部分なのでわかり辛いが、少し焦げたようになっている。

「わかった! ここから火ィ噴くんだ!」

「どうやって?」

「どうやって? ……って?」

「どうやってそれを操作するの?」
2020/04/22(水) 10:48:50.94ID:5qXXaik4
「そりゃリモートコントロールだろ」
優太は投げ槍に言った。
「で、コントローラーがねぇから動かせねぇ、終わり。ヤらせろ!」

「逃げるのね」
キンバリーは見下すように嘲笑った。

「逃げてねーだろ!」

「履きこなせないのなら話は終わりよ。大体あなた、格好よくという意味でもちっとも履きこなせていないわ」

「んだと!? ゴチャゴチャいいから早くヤらせろや、オバサン!」

「オバサンだと?」
穏和なキンバリーの顔が鬼のように変わった。
「25歳のうら若きレディーに向かってオバサンだと!?」

「うるせぇ! 爆発しそうなんだよ!」
優太はズボンの前を膨らませる攻撃的なテントを見せつけながら叫んだ。

そこへドアが開き、肌の黒い少女が全裸で入って来た。
2020/04/22(水) 11:07:42.64ID:5qXXaik4
「あ。メイ、オッス」
優太は急に大人しくなって言った。

「見せろ」
メイファンは優太を無視して革靴のほうをまじまじと見た。

「だ、誰? あなた……」
キンバリーは目を丸くして中国語で聞いた。
2020/04/22(水) 13:00:55.56ID:5qXXaik4
メイファンはキンバリーにも答えず、スーパージェット・リーガルシューズを手に取ると、様々な角度から観察した。

「ウーン凄い。見た目は普通の靴だ……。中にも仕掛けはない。と、すると……」

「誰?」
キンバリーが優太にそっと聞いた。

「は? 知らねーのかよ!?」
優太は目を丸くした。
「あれが黒色悪夢だろ? アンタが中国から呼んどいて……」

「あの子が?」

「……リモートコントロールだな」
メイファンは中国語で呟いた。

「だろ?」
優太は日本語で言った。
「コントローラーはたぶんマルコムが持ってる。だから……」

「いや」
メイファンは中国語で言った。
「アイツはあの時、コントローラーらしきものは持っていなかったし、手を動かしてはいなかった」
2020/04/22(水) 13:04:33.10ID:5qXXaik4
メイファンは靴を履いてみた。
かなりサイズが大きく、子供が大人の靴を履いたようになった。
しかし『気』で足を大きくすると、ぴったりと足にフィットした。

「なんかスゲーことしたな、今?」
優太が声を出す。

「手品だ」
メイファンは手から紙吹雪を出して見せた。
2020/04/22(水) 13:08:37.44ID:5qXXaik4
「靴の中の爪先に何か隠しボタンでもあるかと思ったが、何もないな」
メイファンは呟いた。
「ならばどこかで操作している。手でもない、口の中でもないとすると、あとコントローラーを操作できる部位って……」

キンバリーは優太に通訳した。

「どこかないか?」
メイファンは二人に聞いた。

「あ、そうよ。マルコムには……その……」
「あ、そう言えばアイツ……」
キンバリーと優太が同時に言った。
「尻尾があるのよ」
「尻尾があったぞ」
2020/04/22(水) 15:03:04.41ID:5qXXaik4
その頃マルコムは、ブリーフパンツ一丁に革靴というスタイルで、隠れるように街の裏通りを縫って歩いていた。

「服が欲しい……。ただしお洒落な服でなければ駄目だ!」

公園で遊ぶ子供達がマルコムのほうを指差して笑った。

「スーツでなくてもいい! しかしお洒落な服でなければ駄目だ!」
2020/04/22(水) 15:06:50.82ID:5qXXaik4
子供達の話し声がうっかり耳に入ってしまった。

「あれぇ? あのお兄ちゃん、前も後ろももっこりしてるよ〜?」

うわあぁあぁあ! と、マルコムは耳を塞いで走り出した。
2020/04/22(水) 15:17:41.36ID:5qXXaik4
「マル!」

仏像の前でうずくまって頭を抱えていたマルコムは、名前を呼ばれて身を起こした。
見るとOLルックのバーバラがこちらへ向かって駆けて来る。

「姉さん!」
マルコムは涙を流して喜んだ。

「半裸に革靴を履いた男がウロウロしていると聞いたから、探していたのよ」
バーバラは憐れみを込めた声で言った。
「しかも前も後ろももっこりしてるっていうから……あなただと確信したわ」
2020/04/22(水) 17:27:22.61ID:5qXXaik4
紳士服店でマルコムはバーバラに服を買ってもらった。
カジュアルな服だが、シャツとズボンとベルトで締めて1万4千TWD(約5万円)だった。

「お洒落だ」
マルコムは満足そうに言った。
「これで尻尾も隠せる」
2020/04/22(水) 17:28:43.67ID:5qXXaik4
「ありがとう、姉さん」

振り向くとバーバラは優しい笑顔を浮かべていた。
2020/04/22(水) 17:33:29.07ID:5qXXaik4
「あなた、タオ・パイパイに逆らったのね」

ステーキハウスで向かい合って食事をしながら、バーバラが言った。

「と言うか、殺されかけたんだ、父さんに」

ニュアンスをなるべく軽くしようとマルコムは肩をすくめて悪戯っ子のように笑って見せた。

「私が面倒見てあげる」
バーバラは母親のように言った。
「あなたは可愛い弟だもの」
2020/04/22(水) 17:37:49.19ID:5qXXaik4
「ところで」
バーバラは話題を変えた。
「あなた、キンバリーに会ったわね?」

マルコムは思い出し、顔を暗くした。

「それにしてもあの子、見直したわ」
バーバラはキンバリーを褒めた。
「何も出来ないお嬢ちゃんかと思っていたら……やるじゃない。この私達を騙して陥れようとするなんて」

「姉さん……」
マルコムはバーバラの顔を見た。

「認めるわ、あの子は立派に強かな女」
バーバラは肉を噛むと、楽しそうに引きちぎった。
「このあたしが直々に蜂の巣にして殺してあげる」
2020/04/22(水) 17:47:31.13ID:5qXXaik4
【主な登場人物まとめ】

─ タオ一家 ─
◎タオ・パイパイ……タオ一家の父であり、伝説の殺し屋と呼ばれる台湾1の悪党。
既に殺し屋を引退し、子供達の管理と育成に身を注いでいるが、その実力はまだ最強レベルだと思われる。

◎ジェイコブ・タオ……タオ一家長男。前妻エレナの子。31歳。
小柄で陰気な顔つきの毒殺のプロ。どこからでもあらゆる手段で敵の体内に毒を注入できる。身体能力はウサギ以下。
現在、記憶をなくしており、ヴェントゥスと行動を共にしている。愛車は黒いホンダロゴ。

◎バーバラ・タオ……長女。29歳。エレナの子。美人でナイスバディ。お金と自分にしか興味がない。
暗器とハニートラップを得意とする。超短気であり、標的を見つけたらすぐに銃を乱射する。愛車はドゥカティの1000ccバイク。

◎マルコム・タオ……三男。27歳。エレナの子。長身でイケメン。お洒落。愛靴スーパージェット・リーガルを武器とし、一撃必殺を得意とする。
キンバリーを愛しているが、その想いは虚しく裏切られた。尻尾があり、そのことをとても気にしている。愛車は白いテスラ。

◎キンバリー・タオ……次女。25歳。オリビアと前夫の子。長身で長髪。太陽のように明るく、バーバラ以外の家族皆から愛されている。
一家を裏切り、ムーリンを除く全員を殺そうと、日本のヤクザと中国の殺し屋と手を組んでいる。

◎サムソン・タオ……四男。19歳。タオ・パイパイがどこかのデブ女に産ませた子。デブ。
影が非常に薄く、助手席に乗っていても運転手に気付かれない能力の持ち主。最近結婚した。
発明が得意であり、マルコムのスーパージェット・リーガルシューズも彼の発明品。

◎タオ・ムーリン……四女。17歳。タオ・パイパイとオリビアの子。金髪でぶさいく。
普段は殺し屋でもない普通の女の子だが、キレると一家1の攻撃力を無差別に爆発させてしまう。

◎ヒーミートゥ……四男サムソンが結婚した原住民パイワン族の娘。現代人らしからぬ呪術のようなものを使う。

─ 死亡 ─
◎タオ・ガンリー……次男。

◎タオ・モーリン……三女。
2020/04/22(水) 17:52:55.01ID:5qXXaik4
─ 中国日本連合勢力 ─

◎メイファン……中国からやって来た最強の殺し屋。通り名は黒色悪夢。まだ16歳の少女だが、『気』を操り何でも武器に変えてしまう能力を持つ。

◎ララ……19歳の色白の少女。メイファンと身体を共有しているメイファンの姉。強力な治癒能力を持つが、戦闘能力はウサギ並み。この物語の真の主人公?

◎ジャン・ウー……ララの手伝いをする白ヒゲの老人。ジャッキー・チェンの「酔拳」に出て来る蘇化子にそっくり。

◎飛島優太……18歳の高校生だが既に48人の同業者を殺害している殺し屋。スケベ。暴力団体飛島組組長の次男。

◎茨木敬……『ステゴロの鬼』と呼ばれる喧嘩師のヤクザだが、誰もその喧嘩を見たことがない。警察の犬?

◎ことぶき ひでぞう……運転手。死亡した?

◎鶴見……ひでぞうの兄弟分。

─ 死亡 ─

◎兵藤直樹……日本のヤクザ『花山組』の幹部。

◎阿久津恭三……花山組のヤクザ。

─ その他 ─

◎ヴェントゥス……世界に7人いる『光の守護者』の1人。その中でもNo.2の実力を持つと言われている。金髪の七三分け。中立的立場?

◎ハリー・キャラハン……ヴェントゥスの舎弟の白人。

◎ヤーヤ……ムーリンが友達になった17歳の女子高生。

◎ユージェ……ヤーヤが思いを寄せる年上のロック・アーティストを目指す青年。
2020/04/22(水) 18:04:29.70ID:5qXXaik4
「しかし、あの日本人の子供……」

マルコムは自分と戦った飛島優太のことを思い出しながら、呟いた。

「オレの尻尾を見て、驚かなかったな。それどころか、パンツを穿けと言ってくれた……」
2020/04/22(水) 18:05:15.97ID:5qXXaik4
「実は……」

キンバリーとメイファンに向かい、優太は告白した。

「俺もあんねん、尻尾」
2020/04/23(木) 05:46:12.99ID:3Hp0pw0S
優太は下半身を露出した。
2020/04/23(木) 07:35:09.73ID:zWx87IOn
優太はメイとキムに臀部を突き出した。
臀部は女性のように大きかったが、お尻の谷間から陰毛がモッサリと飛び出ており、
どこか不潔な印象を受けた。

だがメイとキンバリーが注目していたのはそこではなく、谷間の上からブラ下がった、立派な尻尾であった。

「ほらあるだろ」
2020/04/23(木) 08:15:46.72ID:1mcbwhsn
「きたなっ!」

メイファンは日本刀を振り上げ、斬り落とそうとした
2020/04/23(木) 10:41:04.85ID:b1tIWKDU
その時、不思議なことがおきた
2020/04/23(木) 11:09:15.58ID:RF8QJdsx
優太が日本刀を避けようと尻尾を動かすと、
メイファンの履いている靴の左側から火が吹き出し、
飛ばされたメイファンは壁に叩きつけられた。
2020/04/23(木) 12:23:06.15ID:/uv3O7oU
メイファン「何すんだ!」

優太「とぅっ、とぅいまっとぇーん!」
2020/04/23(木) 12:38:31.55ID:1mcbwhsn
メイファンは日本語「とぅっ、とぅいまっとぇーん!」を覚えた!
2020/04/23(木) 15:12:25.94ID:7ZUi/GAE
不思議なことに優太が尻尾を動かすとジェット靴は反応した。

優太は靴を履くと、左に少しだけ尻尾を動かしてみる。
右側のジェットが点火し、優太は右へ転んだ。

「俺、これを操作できるようになりてぇ!」
優太は言った。
「それには靴がちと大きい。ブカブカだ!」

「いい靴職人がちょうど身近にいるわ」
キンバリーはその名を呼んだ。
「ひでぞうさん」
2020/04/23(木) 19:08:46.05ID:7ZUi/GAE
茨木は昨日の失敗をキンバリーに責められ、完全装備でバーバラを探しに街へ出て来た。
バーバラのバイクを追えるよう、陳氏からバイクを借りて来たのだが……。

「1000ccのスポーツバイクをこれで追えってのかい……」
茨木は白いキムコの125ccスクーターを押して歩きながら、呟いた。
頭に被ったヘルメットはキンバリーから借りたピンク色のジェット型だ。

バーバラの動向が掴め次第キンバリーからやって来る連絡を待つため、歩道にバイクを停めた。
2020/04/23(木) 19:11:32.03ID:7ZUi/GAE
この前優太と牛肉麺を食った店でまた飯を食った。
食事をしながらチラチラとタピオカミルクティーの店のほうを気にしている。

店の前に出来た短い行列の中に、今日はあの丸顔の女の子の姿はなかった。
2020/04/23(木) 19:14:47.82ID:7ZUi/GAE
ムーリンはスマートフォンの待ち受け画面を見る。

今日はヤーヤからのメッセージが一通も届いていなかった。

これでいい、とムーリンは思う。

「自分を信じるなんて、出来るわけないよ、ヤーヤ……」
2020/04/23(木) 19:21:15.44ID:7ZUi/GAE
ヤーヤは学校を終え、私服で一人、街を歩いていた。

2人で遊んだ場所を次々巡る。
どこにもムーリンの姿はなかった。

『これだけすべてのメッセージが未読のままってことは……』
ヤーヤは考えた。
『何かあったかと思ったけど……』

1通だけ、最近送ったメッセージが既読スルーになっていた。

『あたし……理由はわからないけど、嫌われたんだよね?』

『もう、探すのはやめよう……』

そう考えながら、ばったりムーリンに出逢えそうな場所を巡り歩いた。
2020/04/23(木) 19:24:49.95ID:7ZUi/GAE
「あっ」
茨木は思わず小さく声を上げた。

タピオカミルクティー店の前に、丸顔ショートカットの健康的な肌色の女の子が並んでいたのだ。

「あの娘だ」
茨木はストーカーに変身した。
2020/04/23(木) 19:27:46.73ID:7ZUi/GAE
ヤーヤは自分の原付スクーターに乗り、これで最後と思いながら、ある場所へ向かっていた。

この間、ムーリンのママを見た、あの場所だ。
すぐ向こうに公園か何かの森林が見える、人通りのない場所だった。

ここでムーリンに会えなかったら、諦めようと決めていた。
2020/04/23(木) 19:31:51.35ID:7ZUi/GAE
茨木は白いキムコの125ccスクーターで、赤い原付スクーターの女の子を距離をとって追いかけていた。

キンバリーに知れたらまた小言を言われるどころではないだろう。
任務そっちのけで、意味のわからないことをしている。

しかし彼は止められなかった。

異国の地で美少女のあとを尾けるのは、得も言われぬ甘美な味わいがあった。
2020/04/23(木) 19:34:08.19ID:7ZUi/GAE
ふと、気づいた。

『この方向は……』

前方にタオ家の敷地、黒い森林が見えはじめる。

赤い原付スクーターの少女はバイクを道脇に停めると、歩いて森のほうへと歩き出した。
2020/04/23(木) 19:39:08.05ID:7ZUi/GAE
ヤーヤは歩きながら、スマートフォンでメッセージを送った。

『今、この間ムーリンのママと出会ったあたりにいるよ。森に向かって歩いてる。もし……嫌われたんじゃないのなら……会えないかな(´・c_・`)』

メッセージを送信し終えると、空を見た。

鉛の雨でも降って来そうな空の色がなんだか不吉だった。
2020/04/23(木) 19:43:28.69ID:7ZUi/GAE
突然、後ろから肩を掴まれた。

ムーリンの手ではありえない、ごっつい男の太い手に、恐怖の表情でヤーヤは振り向いた。
そしてすぐに悲鳴を上げた。

顔中傷だらけの、この間タピオカミルクティー店の前で見たおじさんが、意味のわからない言葉を発している。
その両腕が自分を掴み、どこかへ連れて行こうとしていた。
2020/04/23(木) 19:47:39.71ID:7ZUi/GAE
「そっちへ行くな!」
茨木は放っておくことが出来ずに少女を引き止めた。
「知ってるのか? その先は殺し屋の巣窟だぞ。危険なんだ。さぁ、戻るんだ」

少女は明らかに自分の傷だらけの顔を見て怯え、パニックを起こしていたが、知ったことではなかった。

あんな危険な場所にこんな可憐な女の子が向かおうとするのを止めないわけには行かない。
2020/04/23(木) 19:49:41.96ID:7ZUi/GAE
ヤーヤは叫んだ。

「誰か! 誰かー! 殺される!」

森のほうへ向かって走って逃げようとすると、男の手はさらに強引に腕を掴んで来た。

「ひあああ! ムーリン! 助けて!」

ちょうどそこへ森のほうからムーリンの姿が現れた。
2020/04/23(木) 19:54:46.20ID:7ZUi/GAE
「ヤーヤ!」
ムーリンはその光景を見て大声で叫んだ。

「ムーリン!」
ヤーヤは気づき、叫んだ。
「来ちゃダメ! 誰か人を呼んでーーッ!」

茨木は森のほうから現れた少女の姿を睨んだ。
金髪、ニキビだらけの顔の少女、森のほうから……
確信した。

「『暴れ牛』だ!」
茨木は力ずくでヤーヤを抱き締めると、抱え上げた。
「逃げるぞ!」

その様子がムーリンには、人さらいにヤーヤが連れ去られようとしているように見えた。
2020/04/23(木) 19:59:04.87ID:7ZUi/GAE
「や、ヤーヤッ!」
ムーリンは叫んだ。

「ムーリン!」
ヤーヤは恐怖に泣き叫んだ。
「ああひとををを呼んでぇぇ!」

「ヤヤヤヤーヤッ! アアッ!」

「ムーリーーンッ! アアアーー!」

「どぅどぅどぅ……」
ムーリンの顔が割れ、中から笑顔の仮面のようなものが現れる。
「どぅばごくあらダーーーッ!!!」
2020/04/23(木) 20:02:06.79ID:7ZUi/GAE
ヤーヤは、見た。

ムーリンの身体から無数の触手のようなものが現れた。

それは空気を斬り裂くように飛んで来て、ムチのような音を立てた。

顔中傷だらけの男が自分を庇うように抱くと、何も見えなくなった。
2020/04/23(木) 20:05:56.10ID:7ZUi/GAE
ムーリンは気を失って倒れていた。

ヤーヤは震えながら、傷ひとつなく、しかし動けずにいた。

茨木はヤーヤを抱いてアルマジロのように丸くなり、その背中にすべての暴走の刃を受け止めていた。

「ふぅ……」
茨木は顔を上げた。
「大丈夫か?」

覗き込んだ少女は目を見開き、茨木の顔越しに、道に倒れた金髪の少女のほうを震えながら凝視していた。
2020/04/23(木) 20:15:26.34ID:7ZUi/GAE
「くっ……!」
茨木は立ち上がると、痛みに顔を歪めた。
着ているスーツはズタズタに裂かれ、中に着ている防弾チョッキも、意味を為さなかったかのようにバラバラになっていた。
元々傷だらけの背中には血が滲んでいた。しかし深刻なほどの新たな傷は刻まれていなかった。

茨木敬の背中はまるで角質化したように硬い。
その上に防弾チョッキを着ていれば、マシンガンの連射でさえも防いでしまう。
それでも『暴れ牛』の攻撃を受け止めた後では、そのダメージに身体を動かすのもきつかった。
2020/04/23(木) 20:17:56.53ID:7ZUi/GAE
「……ッ。化け物め」

そう言うと茨木は懐から大きなピストルを取り出した。

ゆっくりと、それを道に倒れている金髪の少女へ向ける。

ヤーヤはただ茫然としていた。
男がムーリンを殺そうとしているのに気づくと、ようやく「啊」と口を開けた。
2020/04/23(木) 20:18:25.45ID:7ZUi/GAE
不吉な色の空に、一発の銃弾の音が響いた。
2020/04/24(金) 00:53:40.33ID:5m3blNn2
「……な……ッ!?」
茨木は驚きの声を上げた。

銃弾は大きく外れ、アスファルトの地面で弾け、道脇の木に穴を開けていた。

保護したショートカットの少女が後ろから自分に体当たりをかまして来たのだ。
岩のような茨木の身体が猫のような少女のタックルを受け、揺れた。

少女は、茨木と倒れている『暴れ牛』の間に急いで立ち塞がると、顔をひきつらせて何か叫んだ。

「朋友!(ポンヨゥ)」
2020/04/24(金) 01:00:03.89ID:5m3blNn2
そこへキンバリーから電話がかかって来た。

茨木は二人の少女から目を離さずに電話に出た。

「こちら茨木……」
『バーバラが現れたわ。今、どこにいますか?』
「『暴れ牛』を発見したので追って来た。今から射殺するところだ」
『ハァ!?』キンバリーは電話の向こうで激怒した。『ムーちゃんは標的の中に入ってないでしょーが!!! ムーちゃん殺したらテメーも殺すぞボケ!』
2020/04/24(金) 07:15:09.96ID:5m3blNn2
朝、ララは目を覚ました。
部屋の入口には鍵をかけてある。
ベッドの上で枕を抱いて猫のように伸びをすると、きょろきょろと辺りを窺った。

メイファンは眠っている。

誰もいない。

静かだ。

ララは腰をもじもじと動かすと、半身を起こした。

『今日は……来ないのかな』

自分の股間に伸びかけた手を慌てたように引っ込める。
2020/04/24(金) 07:51:23.07ID:5m3blNn2
優太は朝早くから靴を履きこなすための特訓を再開していた。

操作方法はもう頭ではわかっていた。

「右に動かすと……」
軽く尻尾を右に動かすと、左からジェットが噴射された。
一歩だけ左へ飛び、着地する。

「左に動かすと……」
今度は右へ飛び、着地した。

「……尻尾を縮める」
靴先からナイフが出た。

「……で、尻尾を後ろぉ……お、お、お!」
靴の後ろから勢いよくジェットが噴射され、優太はまた派手にスケート靴で滑るようにこけた。
2020/04/24(金) 07:52:55.79ID:5m3blNn2
「クソが!!!!」

優太はスーパージェット・リーガルシューズを脱ぐと、思い切り床に叩きつけようとし、また思い止まった。

「履きこなしたら……キンバリーさんとエッチ……」

そう呟くとまた靴を履き、特訓を続けた。
2020/04/24(金) 07:57:59.38ID:5m3blNn2
ムーリンはまだ眠っていた。

『暴れ牛』の発動で気を失ってからもう12時間以上が経っていた。

キンバリーはその額を撫でると、部屋を出ようとした。

「キム姉……?」

振り向くと、ムーリンが目を開けていた。
責めたがっているような、甘えたがっているような複雑な表情で、目を逸らすとムーリンは言った。

「……お腹空いた」
2020/04/24(金) 08:01:56.75ID:5m3blNn2
「大丈夫なのか?」
茨木が聞いた。

「何がかしら?」
キンバリーは答えた。

食堂で思春期の食欲を見せつけるムーリンを眺めながら、二人も少なめの朝食を取る手を動かした。

「危険だ」
茨木が言った。

「ムーちゃんは普通の子よ」
キンバリーは答えた。
「タオ・パイパイに殺人兵器に改造されてしまっているだけ。なんとかこの子の中の『暴れ牛』を取り除くわ」
2020/04/24(金) 08:02:45.66ID:5m3blNn2
キンバリーは知らなかったのだ、ムーリンの『暴れ牛』はタオ・パイパイによって埋め込まれたものではなく、
彼女が産まれ持ったものだということを。
2020/04/24(金) 08:09:38.66ID:5m3blNn2
ムーリンはキンバリーが自分を殺そうとはしていないことはわかった。
しかしその手が自分に触れようとするたびに、身を強張らせて振り解き、威嚇するように言った。
「触るな、腐れ外道」

姉モーリンをヤクザに殺させたキンバリーのことがどうしても許せなかった。許せる筈もなかった。

そんなムーリンを悲しそうに見守るキンバリーの姿を、ムーリンの目に仕掛けたカメラを通してタオ・パイパイは見ていた。
2020/04/24(金) 08:11:22.08ID:5m3blNn2
「ふっふっふ」

暗い自室でタオ・パイパイは呟いた。

「丸見えじゃぞぃ、キンバリーよ」

そしてコントローラーを握り、動かしかけたが、止めた。

「まだじゃ。もう少し……」
2020/04/24(金) 08:21:51.74ID:5m3blNn2
ララが食堂にやって来た。

やたら暗い顔で物凄い食欲を披露している見慣れぬ金髪の少女を見て、キンバリーに聞いた。

「あれ、誰ですか?」

「ムーリンよ」

「ムーミン?」

「『暴れ牛』……と言えばわかるかしら?」

ララは思わず「げっ」と小さく叫び、腰を浮かせた。
2020/04/24(金) 08:24:03.70ID:5m3blNn2
「あの子、天使なのよ」
キンバリーは苦い微笑みを浮かべ、言った。
「天使の中に悪魔が棲んでいるの」

「ははは」
怯えた表情でララは、口から呑気な笑い声を出した。
「私達と正反対だな」
2020/04/24(金) 12:02:14.81ID:5m3blNn2
優太が風呂上がりの格好で食堂に現れた。

「おはよーッス」

茨木の隣の席に座ろうとしながら、ララを見つけて笑顔を見せた。

「あ、ララちゃん、おはよ〜」

入口に現れた時から優太をずっと見ていたララは、ぷいっと顔を背けた。
2020/04/24(金) 12:04:35.54ID:5m3blNn2
「オッサン、何しょぼくれてんの?」
優太は茨木に聞いた。

「しょぼくれてなんかいない!」
茨木は不機嫌そうに答えた。

「この人、ムーちゃんを殺しかけたから、私がたっぷり叱ってあげたのよ」
キンバリーが横から言った。

「ムーちゃん……って誰?」
2020/04/24(金) 12:08:32.15ID:5m3blNn2
「ふぅん」
話を聞き終わった優太は言った。
「そりゃ俺がオッサンだったとしても始末しようとすると思うぜ」

「だろ!?」
茨木は優太に握手を求めた。

「何を言うのよ」
キンバリーはわなわなと震えはじめた。
「私の妹なのよ。そんなことは絶対にさせないわ」

「あのさぁ」
優太は前から言いたかったことをキンバリーにぶちまけた。
「他の家族は殺して欲しくて、妹だけは殺しちゃダメって、アンタ都合よすぎないか?」
2020/04/24(金) 12:14:16.56ID:5m3blNn2
「この物語には腐れ外道が2人いる」
優太はポケットに手を突っ込んで言った。
「1人は勿論タオ・パイパイ。もう1人はアンタだ、キンバリーさん」

「……!」
キンバリーは顔を強張らせたが、何も言わなかった。

「そりゃ俺達とアンタは利害関係が一致してる。でも俺達にとってタオ一家は単なる敵、でもアンタにとっては……」

「最長21年を共にした家族よ」
キンバリーは優太に先を言わせなかった。
「それが何か?」
2020/04/24(金) 12:18:00.81ID:5m3blNn2
「別に興味はないんだけどさぁ……」
優太は頭を掻きながら、言った。
「話してくんないかなぁ、アンタが自分の家族を殺して欲しい理由を。モヤモヤするから」

「あと、その危険なガキを殺しちゃいけねぇ理由もな」
茨木が言った。

日本語のわからないムーリンは黙々と食事を続けている。

「……」
キンバリーは暫く目を閉じていたが、意を決したように言った。
「いいわ」
2020/04/24(金) 12:27:43.95ID:5m3blNn2
キンバリーは思い出す。

あれは自分がタオ家にやって来て8年目の夏のことだった。

敷地内の森で12歳のキンバリーがクローバーで髪飾りを作っていると、背後から誰かが近づいて来た。

「キム」

その声に怯えた顔で振り向いた。
思った通り、バーバラがそこに立っていて、意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「なっ……なぁに? お、お姉ちゃん……」

3人の兄達は最初から自分をとても可愛がってくれたが、4つ上の姉となったバーバラだけにはいじめられていた。
そのたびに庇ってくれるお兄ちゃん達は今、父とともに台中のほうへ出掛けていた。
キンバリーが怯えた声で無理矢理親しげに「お姉ちゃん」と呼ぶと、バーバラは残酷な笑いを浮かべた。

「ちょっとおいでなさいよ。見せたいものがあるの」

「今……これを作っているところだから……」

「逆らう気?」
バーバラは牙を剥いた。
2020/04/24(金) 12:33:43.74ID:5m3blNn2
母は既に発狂していた。

自分達を眺めているのかいないのか、遠くの窓に姿を見せてケタケタと笑っている母の姿が見えた。

「見せたいものって」
キンバリーは後をついて歩きながら、恐る恐る聞いた。
「……何?」

「面白いものを見つけたの」
バーバラは意味ありげな笑いを浮かべ、言った。
「あなたにとってはもっと面白いと思うわ」
2020/04/24(金) 13:57:45.34ID:5m3blNn2
高名な科学者のタオ・パイパイと母が再婚し、幸せだと思っていた。
母はああなってしまったが、優しい兄が3人も出来、皮肉なことには母も以前より優しくなった。
新しい父の本当の職業が殺し屋だなんてことはまだ知らなかった。
母がなぜ発狂したのかも知らず、無邪気にもその理由を知ろうともしなかった。

この日までは。
2020/04/24(金) 14:03:09.49ID:5m3blNn2
「ここよ」
そう言ってバーバラは立ち止まり、振り返った。

森の中でも暗く湿った場所だった。
辺り一面苔生して、名前の知らない細いキノコがたくさん地面から顔を出していた。
何もない場所だった。大きな岩がある以外は。

しかしバーバラが岩の下に隠れたボタンを押すと、岩がひとりでに移動した。

岩が退いた後には四角い穴があり、暗い地下へ通じる階段があった。
2020/04/24(金) 14:08:24.43ID:5m3blNn2
地下室は騒々しかった。

じめじめとした空間には無数の鉄の檻が設けられ、その中には見たことのない動物達がいた。

飛び出た眼がレンズのようになっている猫、
魚の頭をした猿、
人間の腕のようなものが生えたイタチ。

そしてその部屋の中心に特別大きな檻が2つあり、その中にそれはいた。

「懐かしいでしょう、キム?」
バーバラは優しい笑顔を浮かべて紹介した。
「デヴィッドとアーリン。あなたの実の兄妹よ」
2020/04/24(金) 14:16:23.83ID:5m3blNn2
檻の中を恐る恐る覗き込んだキンバリーはその場で膝をつき、動けなくなった。

なぜ忘れていたのだろう。
この家に来た時、自分達は4人いた。
4歳の自分がひとつ年下の弟と手を繋ぎ、母は幼い妹を抱いていた。

蘇った記憶の中の弟と妹の面影は、しかし目の前の2人には微塵もなかった。
2人とも身体中に何か機械のようなものを埋め込まれ、顔の肉は腐って蛆にたかられていた。

「オエーちゃん」
妹のアーリンが鉄格子を掴み、激しく臭い唾液を飛ばした。
「クァせて!」

デヴィッドはずっと鉄格子に拳を打ち付け、無言で破壊しようとしていた。
2020/04/24(金) 14:20:31.13ID:5m3blNn2
「なんでそっちばっかり見てるの?」
ララはムーリンと仲良くなろうと隣に座り、色々と話し掛けていた。
「日本語のお話、長いねぇ。退屈だねぇ」

「わかんない」
ムーリンはララの最初の質問に遅れて答えた。
「なんか頭が勝手にあっち向いちゃう」
そう言うなり、ぐりんとララのほうを向き、手を動かしかけた。

その手を黒くなったララの手が止めた。

「ララ」
メイファンは言った。
「気になってんだろ? 取ってやれ」
2020/04/24(金) 14:29:52.10ID:5m3blNn2
「……フン。黒色悪夢め」

タオ・パイパイは入力した攻撃コマンドをキャンセルされ、歯軋りした。

「先読みしよったか。さすがにやりおるわ」

そしてまた再びコントローラーを操作し、ムーリンにキンバリーのほうを向かせた。

「しかしキンバリー……そこまで知っておったか。バーバラの奴め、何を考えてあんなものを見せた?」

キンバリーはまだ話し続けていた。
話はなぜ自分が他の兄弟をも憎むようになったかに及んでいた。

「そんなことで……たかがそんなことで家族を裏切り、殺そうというのか、キンバリー」

パイパイはコントローラーを握る手に力を入れた。

「やはりお前は今、殺す! 地獄に落ちろ、この腐れ外道が」
2020/04/25(土) 08:44:27.23ID:Orajsr9j
地下室を出た後、ショックで12歳のキンバリーは暫く部屋に閉じ籠った。
誰が弟と妹をあんな所に閉じ込め、あんな姿にしてしまったのか。
なぜ母は発狂したのか。
様々なことを頭の中で考えた。
そしてなぜ自分はあの地下室に2人を置いて来てしまったのか。

キンバリーは内側から掛けていたドアの鍵を開けると、急いで部屋を出た。
母と話がしたかった。

しかし母のいるタオ・パイパイの部屋には厳重なセキュリティによってロックがされ、
たとえ会えたところで母は発狂によってすべてを忘れていた。
2020/04/25(土) 08:52:01.50ID:Orajsr9j
2日後、父と3人の兄が帰って来た。

キンバリーは何も食べず、部屋に引きこもっていた。

様子のおかしい義妹を心配した三男のマルコムに執拗にドアをノックされ、キンバリーは鍵を開けた。

その頃のマルコムは太っており、締め付けられるのが嫌だからと尻尾を短パンから外に出していた。

どんくさそうで動物っぽいマルコムはいつも優しくて、キンバリーに癒しをくれる存在だった。

しかしドアの隙間から見えたマルコムの顔にキンバリーは恐怖を覚えた。

彼もあのことを知っていて、自分をずっと騙していたのではないか、
そんな疑心暗鬼がマルコムに打ち明けることをさせなかった。
2020/04/25(土) 08:53:24.28ID:Orajsr9j
それでもキンバリーは微笑んだ。

「大丈夫よ、ちょっとお腹の調子が悪いだけなの」

その日から、キンバリーの笑顔はただ自分を守るための仮面となった。
2020/04/25(土) 08:58:02.11ID:Orajsr9j
「よくも13年間ワシらを騙しておったな!」

タオ・パイパイは憎しみを抑えられずに必殺技のコマンドを入力した。

「科学に犠牲はつきものじゃ。そんなこともわからんのか!」

「遂に『暴れ牛』を強制発動させるコマンドを発見したのじゃ。今、その部屋におる貴様らが最初の犠牲者となれぃっ!」
2020/04/25(土) 10:40:31.03ID:Orajsr9j
「取れたか? ララ」
メイファンが聞いた。

「うん。なんか3つぐらい入ってた」

ララは『白い手』を当て、ムーリンの両目に仕掛けられたカメラと、脳に埋め込まれたコントローラー受信部を除去してしまっていた。

ムーリンはきょとんとした顔で手術を受けていた。
2020/04/25(土) 22:03:18.89ID:Orajsr9j
「しまった! コマンドが難しすぎたか!?」

タオ・パイパイは何度も←↙↓↘→↙↘↑+ABのコマンドを入力したが、なぜか『暴れ牛』は発動しない。
2020/04/25(土) 22:04:58.52ID:Orajsr9j
「いや……。そもそも操作してもムーリン動いとらんし……」

タオ・パイパイはようやく気づいた。

「こんな時に故障か!」
2020/04/25(土) 22:14:58.15ID:Orajsr9j
「まぁ、つまり、地獄にママが嫁いじゃったってことか」
優太はキンバリーの話を聞き終わると、言った。
「許せねぇな。腐れ外道オヤジ」

「しかし俺達には関係ない」
茨木が言った。
「あの厄介な金髪娘を葬ってはいけないというのも、関係ない」

3人がムーリンのほうを見ると、笑顔でララと会話をしていた。

そうしていると本当に普通の女の子だった。

「あの子が悪いんじゃないの」
キンバリーがまた言った。
「悪いのはあの子の中の『暴れ牛』なの」
2020/04/26(日) 08:15:45.13ID:BQTT3jES
ムーリンは部屋に隔離されていた。

キレることのないよう、穏やかで優しいアニメのDVDを観せられていた。

『……つまんない』

ムーリンは唇を尖らせて、それでも退屈な画面を眺めていた。

「ロックが聴きたい」

そう思っていると、ヤーヤからLINEのメッセージが入った。
2020/04/26(日) 08:24:46.42ID:BQTT3jES
「あ。ヤーヤだ」

ムーリンにはヤーヤともども茨木を殺そうとした記憶などなかった。
自分の中に恐ろしいものがいることは知っているが、あの時はヤクザにヤーヤが連れ去られようとしているショックで自分が気を失ったものと思っていた。
そして茨木が実は人さらいではなく、キンバリーの部下だということを知り、それで納得していた。

── ハイ

── ハイ、ヤーヤ。昨日はお疲れ様。

── ( - _ - )

── ?

──ムーリン

──何?

── これから天燈飛ばしに行かない?
2020/04/26(日) 08:29:42.13ID:BQTT3jES
鉄道車に乗って一時間ほど走った駅で降りた。
鉄道車はそのまま商店街の中を走って行った。
ヤーヤは台北駅で会ってからほとんど何も喋らなかった。
ムーリンが話しかけても生返事ばかりで、電車から鉄道車に乗り換える時にもさっさと前を歩いた。
2020/04/26(日) 08:32:46.55ID:BQTT3jES
天燈を飛ばせる場所までもヤーヤは背中を見せて前を歩いた。
その後ろ姿に向かってムーリンは言った。

「LINE無視してたこと、怒ってる?」

「……」

「ごめんね。へこんでたの。それで……」

「……」

「ヤーヤのこと嫌いになったとか、そんなんじゃないから……」

「着いたよ」

そう言うと、ヤーヤは振り向き、優しく笑った。
2020/04/26(日) 08:45:22.09ID:BQTT3jES
色とりどりの紙の中からヤーヤはムーリンに白を選ばせた。

紙の4つの面すべてに願い事を書き、空へ飛ばすのだ。

「素直な願いを書くんだよ」
そう言うヤーヤはいつもの元気にはしゃぐ彼女とは違っていた。
何か人生の辛酸を舐め尽くしたような、落ち着きと諦観が漂い、まるで年上のようだった。
「真面目に、ね」

そう言われ、ムーリンは素直な思いを書いた。
(前を向いて生きられますように)
(自分の中のバケモノに打ち克てますように)
(泣き虫でなくなれますように)
(好きな人とずっといられますように)
2020/04/26(日) 08:47:29.78ID:BQTT3jES
書き終えると、二人はお互いの願い事を見せ合った。

ヤーヤはピンク色の紙を選び、4面すべてに同じことを書いていた。

(ムーリンが幸せになれますように)
2020/04/26(日) 08:52:50.05ID:BQTT3jES
それぞれの紙を店のお兄さんに渡すと、中に火を灯してくれた。
熱で膨らませて行灯となった紙をお兄さんから返されると、ムーリンは空へ向け放った。
遅れてヤーヤも放った。

白い天燈を追うように、ピンク色の天燈が空へと昇って行った。
暗い藍色の空へ、二人の願い事を乗せた天燈が、オレンジ色の炎とともに飛んで行った。
2020/04/26(日) 08:59:32.08ID:BQTT3jES
キンバリーは大きなマスクを着け、結わえた長い髪をジャンパーの中に隠し、街を歩いていた。
名高い精神科の医者にムーリンの相談に行ったのだが無駄だった。

『誰か、ムーリンの病気を治してくれるお医者さんはいないの?』

そう考えながらハイヒールを鳴らして歩いていると、突然腕を掴まれた。

「見ィ〜つけた」

バーバラの意地悪な顔が至近距離で笑った。
2020/04/26(日) 09:03:38.84ID:BQTT3jES
「ちょっと付き合いなさいよ、キム」

そう言いながらバーバラは物凄い力でキンバリーの腕を引いて歩き出した。

キンバリーは大きな悲鳴を上げ、周囲に助けを求める。
道行く人達は振り返ったが、誰も助けてくれる人はいない。

「アンタ! 何よ!」
バーバラは大声で叫んだ。
「あんなことしといて逃げるつもり!? お姉ちゃんの言うことが聞けないの!?」
2020/04/26(日) 09:11:01.82ID:BQTT3jES
バーバラはコンクリートに囲まれた何もない一室にキンバリーを押し込んだ。

「あたしの隠れ家よ」
バーバラはそう言うと、嬉しそうに笑った。
「何もない、いい所でしょう?」

キンバリーは追い詰められた猫のように髪を乱して威嚇した。

「これからあなたの血で真っ赤に染まるわ」
バーバラは舌なめずりをした。
「……長かった! ようやくアンタをズタズタに出来る」
2020/04/26(日) 09:17:12.41ID:BQTT3jES
「武器は使わないわ」
バーバラは戦闘の構えをとる。
「一瞬で殺したら勿体ないもの」

「お姉ちゃん……。あたしも殺し屋一家の一員なのよ」
キンバリーはハッタリをかます。
「迂闊に近づかないほうがいいわよ。あたしにも実は……」

バーバラは鋭い前進でキンバリーの頭頂の髪をひっ掴むと、壁に叩きつけた。

「何も出来ない可愛がられキャラのくせに!」
バーバラは歯を剥き出した。
「アンタがのほほんと皆から可愛がられている間、あたしは血の滲むような苦労で殺人術を身につけて来たのよ!」
2020/04/26(日) 09:18:39.42ID:BQTT3jES
「アンタがずっっっと! 憎かった!」
バーバラはキンバリーの顔に唾を飛ばした。
「アンタが来るまでは女兄弟はあたしだけだった! 可愛がられキャラはこのあたしだったのよ!」
2020/04/26(日) 09:21:39.04ID:BQTT3jES
バーバラの拳がキンバリーの腹部にめり込んだ。

「ゲホ……ッ!」

苦しがるその表情を見てバーバラは至福の表情を浮かべる。

「さぁ。目玉をくりぬいてやろうかしら」

キンバリーはバーバラを睨みつける。

「その前にその綺麗な長い髪を全部引っこ抜いてやろうか」
2020/04/26(日) 09:25:25.60ID:BQTT3jES
キンバリーはスタンガンを背中に隠していた。
次、バーバラが前進して来たら、これをどこでもいいから当ててやる。

しかしバーバラはそんなことはとっくに見抜いている。
普通の女の子として生きて来たキンバリーと殺し屋として修練を重ねて来たバーバラ、
その戦闘力の差は歴然だった。
2020/04/26(日) 10:06:06.77ID:BQTT3jES
「ぐあっ!」

茨木敬は思わず声を上げた。
コンビニで買った緑茶が予想外の甘さだったのだ。

「なぜ緑茶を甘くするんだ。しかもモロ人口甘味料の甘さじゃないか」

スクーターに跨がると、スマートフォンを取り出し、見た。
バーバラが現れたらキンバリーから連絡が入っている筈だ。
しかしキンバリーからは何のメッセージも入っていない。

「今日は平和だな」
そう言うと茨木はセルを回してエンジンを始動させた。
「台湾野良猫でも探訪してみるかな」
2020/04/26(日) 11:03:10.44ID:t0zlUCH6
スタンガンが床に転がった。

バーバラが爪を立て、キンバリーの額から血が流れ落ちる。

声も出せずにいるキンバリーの苦しそうな顔を堪能しながら、バーバラは言った。

「お姉ちゃんにこれから殺される気分はどう?」

キンバリーは歯を食い縛り、充血した目で睨みつけながら答えた。

「一度もアンタを姉だと思ったことはないわよ!」

「それは光栄だわ。でもあたしはアンタを妹だと思ってたわよ?」
そう言うや否や、バーバラは素早い動きで両手をキンバリーの首に絡めた。
「タオ・パイパイに妹だと思えって言われてたから殺せなかったの!」
2020/04/26(日) 11:12:07.77ID:t0zlUCH6
キンバリーの顔が苦痛に歪む。
目玉が飛び出て、口が無様に歪んだ。

「でも、ありがとう。あなたがヤクザを雇ってあたし達を滅ぼそうなんて立派な計画を立ててくれたから……」
バーバラは首を締める手に力を入れた。
「タオ・パイパイが許してくれたのよ、アンタを殺せって」

悔しそうにキンバリーの手が宙を掻きむしる。
赤かった顔にだんだんと青が混じりはじめる。
足はバーバラに踏みつけられ、身動きが出来ない。
しかし断末魔の叫びを上げたのはバーバラだった。
2020/04/26(日) 11:18:36.33ID:t0zlUCH6
バーバラは口をすぼめ、喉を掻きむしると、もんどり打って床に倒れた。
みるみる顔色を紫にして床を転げ回る女の姿を眺めながら、入口に立つ背の低い男の影があった。

「いかんなぁ、そんな美しい人を殺めようとしたら」

男はそう言うと部屋に入って来た。

腰につけていた解毒剤を飲んだが、すぐには毒は分解されず、バーバラはさらに床を転げ回る。
転げ回りながら、男を睨みつけ、地獄から振り絞るような声で言った。

「ク……ソ……兄!?」
2020/04/26(日) 11:23:56.89ID:t0zlUCH6
キンバリーは護身用にナイフを持たされていた。
それをバッグから取り出すと、バーバラめがけて振り下ろす。
しかし毒に冒されていても、キンバリーの攻撃にやられるバーバラではなかった。
足でナイフを蹴り飛ばすと、身を起こし、呼吸を整える。

「美しいお嬢さん」
男はキンバリーに向かって言った。
「貴女もやめなさい。貴女にそんなものは似合わない」

「ジェイコブ兄さん!?」
キンバリーは何か調子の狂っているジェイコブを見て、声を上げた。
「……何!?」
2020/04/26(日) 13:37:23.39ID:qP2lW9pi
解毒剤を飲むと後が辛い。腹の痛みが二日間続き、便意が止まらなくなるのだ。
バーバラは舌打ちをした。
2020/04/26(日) 14:07:12.76ID:RTbHqKfI
すべての毒に効くようムチャクチャな調合をされているので、当たり前だ。
しかしバーバラは不思議がった。ジェイコブが姿を消してから3日は経っている。
それだけあれば、彼ならこの薬の効かない新しい毒を作り出せた筈だ。
しかも解毒剤で回復しはじめている自分を余裕で放置している。
『バカになったの? ジェイ兄!?』
2020/04/26(日) 14:08:36.50ID:RTbHqKfI
『キムがジェイコブを殺し、あたしがキムを殺したとタオ・パイパイには報告しておくわ』

バーバラは立ち上がると、床に落ちているキンバリーのナイフを手に取った。

『なるべく素人が刺したように刺さなきゃね』
2020/04/26(日) 14:12:28.17ID:RTbHqKfI
「申し遅れた、私の名前は──」
ジェイコブは二人に自己紹介をした。
「ベルダード=シュバルツバルトと申します」

「はあ!?」
バーバラとキンバリーは声を揃えた。

「光の守護者の末席にして、神の忠実なる子供」
ジェイコブは続けた。
「『ベル』と、お呼びください」

そうしてニッコリと笑ったジェイコブめがけてバーバラが突進した。
「キモい! 死ねやクソ兄!」
2020/04/27(月) 06:17:15.97ID:Mnuvz+bl
「時間に追われるのはきらいだ」

ジェイコブは胸をメッタ刺しにしながら、純真な目で呟いた。

「いつまでもまったりしていたい」
2020/04/27(月) 06:51:35.39ID:OLjuv1ku
だが、メッタ刺しにしたナイフからは何の抵抗もなく、煙を切っているような感覚だった。
異変に気がついたバーバラはジェイコブから離れた。

「まさか・・・幽霊!?」
2020/04/27(月) 10:24:59.92ID:MV30mUAH
ジェイコブおじさんは、自慢のスキンヘッドを煌めかせながら
滑るようにバーバラとの距離を詰めた。
「…うっ!」
バーバラはたじろき後退る。目の前の男は本当に自分の兄なのか?
そう疑わざるを得ないほど、目の前の彼からは異様な雰囲気が漂っていた。
2020/04/27(月) 12:27:11.46ID:mlf+Ny6L
「過去の自分のことは覚えていません。私は産まれ変わったのです」
ジェイコブはキラキラ輝きながら言った。
「ヴェントゥス=ハルク=ディオニソス様の元でね」

「うわーーーっ!! キモいキモいキモい!!」
そう叫ぶとバーバラは背中に手を回した。
手を前に戻した時にはマシンガンを抱えていた。

「くだらないイリュージョンだ……」

気だるい表情でそう呟くジェイコブに向け、バーバラは叫びながら乱射を開始した。

「跡形もなく消えろ! クソ兄!!」
2020/04/27(月) 16:45:08.06ID:ddejJR3e
「待って! お姉ちゃん!」
キンバリーがバーバラを止めた。
「ジェイコブ兄さんがキモいのは元々よ! 間違いなくこれはジェイコブ兄さんだわ!」

「だから殺すのよ、クソ妹」
バーバラは撃ち尽くしたマシンガンを捨てると、髪の中からバズーカ砲を取り出した。
「ずっとこのアホを殺したかったのよーオッホッホ!」

ドカンと一発大きいのが飛んで行った。
2020/04/27(月) 17:04:02.10ID:U09hdHF3
「可愛さは……」
ララは鏡に向かって口紅を塗りながら、言った。
「武器!」

そして髪型をツインテールにし、日本の女子高生風のセーラー服を着ると、部屋を出た。

「どこ行くんだ、ララ?」
メイファンが聞いた。

ララは答えた。
「台北うまいもん巡り!」

「それになんでその格好なんだ?」

「こんな可愛い娘、襲える殺し屋などいないからよっ!」
ララは胸を張って言った。
「ずっと部屋にいたら死にたくなっちゃうのよぅ! 危険を省みず遊びに行かなくてはぁ!」

「……」
メイファンは眠たいのに寝られなくなった。
2020/04/27(月) 17:11:59.10ID:U09hdHF3
「なぁ……ララ」
メイファンは眠そうな声で言った。
「頼むから昼間はずっと寝ていてくれ」

「断る!」
ララは歩きながら串に刺したイチゴ飴をコリコリ噛りながら言った。
「美味しい? 美味しいねぇ、メイ」
2020/04/27(月) 17:13:43.62ID:U09hdHF3
「わかった」
メイファンはとても眠そうな声で言った。
「仕事がすべて片付いたら、お前の遊びに付き合ってやるから……」

「待てん!」
ララは特大餃子を箸で割りながら、言った。
「見て見てメイ! 肉汁がジュッワァ〜!♪」
2020/04/27(月) 17:52:58.40ID:ddejJR3e
そこへジャン・ウーから電話がかかって来た。

『こちら福山(酒鬼)雅治』

「こちら黒色悪夢」
メイファンが電話に出た。
「どうした? 酒鬼」

『黒色悪夢よ、今、チャンスじゃぞい』

「何?」

『今、タオ邸にはタオ・パイパイ1人じゃ。今なら攻め込める』

「酒鬼、今どこにいる? 1人で侵入するな」

『いやいや簡単に侵入できたぞい。ワシ1人でも殺れるかもしれん。やってええか?』

「バカ! ジャン爺! 罠だ!」
2020/04/27(月) 17:59:52.08ID:ddejJR3e
「ほっ?」

ジャン・ウーが気配に気づいて振り返ると、拳法着姿の小柄な初老の男がそこに立っていた。

「『黒色悪夢』の仲間じゃな?」
タオ・パイパイは低い声で言った。

「うんにゃ。ワシが黒色悪夢じゃよ」
ジャン・ウーは気丈夫に答えた。
「お主がタオ・パイパイじゃな?」

パイパイは鼻で嗤うと、背を向けた。
「帰れ、ワシにはジジイを殺す趣味はない。助けてやる」

「ほほう」
ジャン・ウーの額に血管が浮き上がった。
「たかがワシより10歳ぐらい若いぐらいで他人をジジイ呼ばわりするでない」
2020/04/27(月) 18:07:39.03ID:ddejJR3e
ジャン・ウーは腰につけていた瓢箪の栓を開けると、中の酒をぐいぐいと飲んだ。

「プハー!」
いきなり酔っ払いモードに入ると、酔拳の型をとった。
「飲めば飲むほど強くなるぞいっ!」

「映画のような戯言を」
背中を向けたまま、タオ・パイパイは言った。
「酔八仙拳とはそのようなものではない」

「試してみるかの?」
ジャン・ウーは真っ赤な顔をしてニヤリと笑った。
「闘いの最中に敵に背を向けるとは何事かーーッ!」

ジャン・ウーは一歩で瞬時に間合いを詰めると、掌打をタオ・パイパイの脊髄に打ち込んだ。
2020/04/27(月) 18:14:55.45ID:ddejJR3e
手応えはあった。
タオ・パイパイの背骨は砕け、身体を支えられなくなって膝をつく……筈だった。

「……雑魚が!」

そう吐き捨てたタオ・パイパイの身体が急速に膨らみはじめる。
筋肉の山が隆起するように、地響きのような音とともにその身体はあっという間に2倍に膨れ上がった。

「ひょっ?」

天を仰いだジャン・ウーを巨大な影が包んだ。
巨大な二本の腕が降って来て、蚊を叩き潰すようにパチンという轟音を立てた。

「汚いのぅ」
タオ・パイパイは言った。
「ジジイの血で汚れてしもうたわ」
2020/04/27(月) 18:20:08.52ID:ddejJR3e
タオ・パイパイはジャン・ウーのスマートフォンを拾い上げると、まだ回線の繋がっている電話口に向かって言った。

「黒色悪夢か」

『……』

「ここへやって来い。ワシとお前とで一騎討ちと行こうではないか」
2020/04/27(月) 18:36:44.90ID:ddejJR3e
「……ララ」
電話を切ると、メイファンは言った。
「私の身体から出ろ」

「は?」
ララは甲高い声を出した。

「今回の敵は強大だ。死ぬかもしれん。出られるもんなら出て、ムーリンの身体にでも入っておけ」

「何言ってんの」
ララは笑いながら言った。
「私がいなかったら、あんたが傷ついた時、誰が治すのよ?」

「おいおい」
メイファンは真剣な口調で言った。
「死ぬかもしれんのだぞ」

「そんな弱気なこと言うメイ、ほっとけないでしょ」
ララはくすっと笑った。
「ずっと中にいて見守っててあげる」

「よーし」
メイファンは頼もしそうに笑った。
「生きるも死ぬも一緒だ」

「オー!」
ララは強い声で言った。
2020/04/28(火) 07:01:41.57ID:4sPwrlNC
ジェイコブは1人の女を抱きかかえていた。
「ヴヴ・・・ッ」
バーバラは至近距離でバズーカを撃った結果、全身にその破片を浴びることとなった。
破片は彼女の右目を潰し、前頭が削げ、髪が焦げていた。

キンバリーもまた無事では済まなかった。爆発の衝撃で壁に頭を強打、頭部に損傷を受け意識不明の状態だ
2020/04/28(火) 08:04:51.03ID:bQLo4M86
「あ……あたしとしたことが……」
バーバラはうめいた。
「……短気なマネをしてしまった……わ」

「お姉ちゃんが短気なのは昔からでしょう」
意識がない筈のキンバリーが譫言のように言った。

「さぁ、あなたは私と一緒に来なさい」
ジェイコブは頭に天使の輪を浮かべながら、言った。
「あなたも光の子として生まれ変わるのです」
2020/04/28(火) 08:06:52.94ID:bQLo4M86
「そしてあなたは……」

ジェイコブは子供のように純真な目を倒れているキンバリーへ向けた。
そして頬をほんのりと赤くすると、嬉しそうに言った。

「私の妻としましょう」
2020/04/28(火) 08:11:30.46ID:bQLo4M86
マルコムは街をさまよっていた。

自分がどうすべきなのか、わからなかった。
キンバリーに協力し、父を倒すと一度は胸に誓った。
しかし愛するキンバリーには嵌められ、父を殺すという背徳行為に時間が経つほど躊躇いが生まれていた。

「オレは……どうするべきなのだ」

マルコムはコンクリートの壁を拳で叩きながら、言った。

「教えてくれ……神よ! もしもお前がいるのならば……!」
2020/04/28(火) 08:18:58.85ID:bQLo4M86
「黒色悪夢が……来る!」

タオ・パイパイは昂る気持ちを抑えられず、四男サムソンの部屋へ向かった。

「興奮が収まらんわい!」

サムソンの部屋の扉をぶち破ると、嫁のヒーミートゥが1人でいた。
彼女は夫のために立派な原住民衣裳を作っていたところだったが、突然のことに身構えた。

「デブとの子作り、ご苦労。気持ち良かったかね?」

タオ・パイパイが聞くと、ヒーミートゥは無言で槍を手に取った。

「今時そんな原住民はおらん!」
タオ・パイパイが喝を入れるような大声で言うと、槍は粉々に砕け散った。
「ビビアン・スーもアーメイも原住民なんじゃぞ!」
2020/04/28(火) 08:27:18.35ID:bQLo4M86
「ア、アアッ!」

ヒーミートゥは後ろから激しく突かれ、尻を波立たせながら悔しそうに泣いた。

「どうじゃ、まだまだワシの暴れん坊は使えるじゃろう」
タオ・パイパイは息子の嫁の髪をひっ掴み、容赦なく攻撃を続けた。

「ヴ……ヴヴッ!」
ヒーミートゥは唇を噛み、涙を流しながらも強い目で壁の写真を見た。
写真には自分とサムソンが仲良く並んで写っている。

「感じないようにしておるな?」
タオ・パイパイが『気』を送ると、入り込んでいる肉棒が2倍の太さになり、ヒーミートゥの子宮口を攻め立てた。
「これでどうじゃ!」

「アア……アアアーー!!」
長い睫毛に縁取られた目が白く変わり、ヒーミートゥは逝かされてしまった。
2020/04/28(火) 08:32:44.93ID:bQLo4M86
「やはり17歳はたまらんわい」
行為を終えたタオ・パイパイはタオルで汗を拭くと、殺人拳の構えをとった。

ヒーミートゥは床に突っ伏し、泣いている。
心が折れていた。

「お前は占いなど、非科学的なことをやるから気に食わん。死ね」

そう言って繰り出したタオ・パイパイの腕が伸びながら膨らむ。

「アナ……タ!」
サムソンに助けを求めるヒーミートゥの後頭部が巨大な拳によって潰され、肉の混じった血が飛び散った。
2020/04/28(火) 08:44:34.06ID:bQLo4M86
「ん?」
茨木敬はスクーターを走らせながらようやく違和感の正体に気づいた。
「なんか重いと思ったら……」

「気づくのが遅いよ」
サムソンが凶悪な笑顔を浮かべながら言った。

いつの間にか茨木のスクーターのタンデムシートに乗っていたサムソンは、既に茨木の首筋に注射器を突き刺していた。

「パパに命令されたんだ。お前ら全員殺して来いって」

「中国語はわからん」
茨木は言った。
「ただ、そんな細い針は、俺の皮膚は通らん」
2020/04/28(火) 08:47:51.82ID:bQLo4M86
茨木が言った通り、突き刺したと思った注射器の針は折れていた。
中の毒薬がこぼれ、風に乗ってサムソンの口の中に入って来た。

「ぎゃああああ!」
サムソンは急いで転げ落ちると、解毒剤を取り出し、飲んだ。

「俺、医者に嫌われるんだ」
茨木はスクーターを止めると、言った。
「『アンタの皮膚、メスも入りませんがな』って、な」
2020/04/28(火) 08:56:14.13ID:bQLo4M86
マルコムは過去を色々と思い出していた。
いつの頃にもすぐ側にはキンバリーの笑顔があった。

「やはり……オレは……」

デブメガネだった自分の素質を見抜き、格好いいファッションを見繕ってくれたキム。
尻尾があることを笑わず、それどころか可愛いと言ってくれ、尻尾の隠れるファッションも見繕ってくれたキム。

「オレはキムのことを愛している!」

そしてふと、バーバラが言った言葉が脳裏に甦った。

──(このあたしが直々に蜂の巣にして殺してあげる)

「まさか……姉さん?」

マルコムは行き先もわからず駆け出した。

「キムを守らなければ……!」
2020/04/28(火) 09:12:22.91ID:bQLo4M86
「ダン、イーシャ」

そう言いながらマルコムの行く手を塞ぐ者があった。

「ダン、イーシャ(ちょっと待て)。伝わったかな?」

飛島優太がブカブカの白いスーツに着られながらニヤリと笑った。
足元にはマルコムのスーパージェット・リーガルシューズを履いている。

しかし優太の中国語は発音が悪すぎてまったく伝わっておらず、マルコムはただブチ切れただけだった。
2020/04/28(火) 09:16:24.98ID:bQLo4M86
「ヒーミートゥが……ミーちゃんが僕を待ってるんだ」

サムソンは口元を拭いながら、茨木を睨みつけた。

「こう見えても僕は妻帯者なんだ! もうすぐ子供だって産まれるんたぞ! こんなところで殺られるわけにはいかない!」

「ターゲット……。四男サムソン・タオ、か」
茨木は両拳を顔の前で構えながら、言った。
「恨みはないが、仕事なんでな。死んでくれや」
2020/04/28(火) 13:53:35.24ID:JIqM748l
闇から姿を現した黒豹のように、黒い工作員服に身を包んだ黒い少女が森を抜け、タオ家の門の前に立った。

「フン」
メイファンは言った。
「貴様がタオ・パイパイとやらか」

「いかにも」
いつの間にか門の向こうに現れたタオ・パイパイが言った。
「会えて嬉しいぞぃ、黒色悪夢」

背の低い初老の男がメイファンには巨人に見えた。
『気』で物を見るメイファンにとって、これほど巨大な人間は見たことがなかった。

「ちっちゃ!」
ララが思わず声を出した。
「こんなジジイ、サクッと片付けて中国帰ろう、メイ♪」
2020/04/29(水) 07:00:39.88ID:9J4QmAys
「あ?」
先に膝を突いたのは、サムソンだった。勝負はほぼ一瞬で付いた。
2020/04/29(水) 07:51:01.88ID:ghMvFKbu
サムソンは何が起きたのか理解出来なかった。
分かっているのは茨木に触れた瞬間、
体中がズタズタに引き裂かれるような痛みと熱さを感じたということだった。

(…ああ、死ぬのか)
地面にキスをした時、サムソンは死というものを理解したが、不思議と恐怖はなかった。
2020/04/29(水) 11:21:42.45ID:DRKYNWdO
しかしヒーミートゥを残して逝くのが心残りだった。
また、てっきり自分が物語の主人公となって、子を増やし、父パイパイの後を継ぐものだと思っていたのに……。

『ごめんね……ミーちゃん』

サムソンは薄れて行く意識の中で思った。

『最期に君に出会えて……よかった』
2020/04/29(水) 11:27:04.16ID:DRKYNWdO
(あれっ?)

サムソンは驚いて声を上げた。

(なんでミーちゃんがこんなところに?)

そこは天国なのか地獄なのかわからないが、そこへの入口には間違いなかった。
そこへ渡る橋のたもとで、ヒーミートゥが真っ白な着物に身を包んでサムソンを待っていた。

(一緒に……逝けると思ってたから)

(そっかぁ。お腹の子はどう? もう動く?)

(きっと……いい未来に辿り着く)

(占いに? そう出てるの?)

(いいえ。会えたから。いいの。さぁ、一緒に……)

(うん! 一緒に逝こう)

二人は手を繋いで歩き出した。
2020/04/29(水) 20:32:02.50ID:vCku0PR5
小雨が降りはじめた。
マルコムはバーバラに買って貰ったお洒落な服が濡れるのが嫌そうな顔をした。

優太は何も気にせずに笑っている。

この間は中国語の挨拶が伝わらなかったので、改めてキンバリーの習って来た自己紹介を優太は披露した。

「ニーハオ」

優太がそう言うと、マルコムはぴくりと身体を動かし、眉間に皺を寄せた。
2020/04/29(水) 20:37:59.58ID:vCku0PR5
「ウォー、ジャオ、フェイダォ、ヨウタイ(私は飛島優太といいます)」

「何だと……?」
マルコムは歯を剥いて優太を睨んだ。

「チンドォドォ、ジージャォ!(よろしくお願いします)」

「貴っ様ァー! 許さん!」

激怒したマルコムの靴が後ろから火を噴いた。

バック転しながら高速で放ったキックが顎下から優太を突き刺し、ナイフが脳天まで突き抜ける……筈だった。
2020/04/29(水) 20:43:31.91ID:vCku0PR5
しかし優太は超反応で左に避けていた。
カウンターは繰り出さず、マルコムが着地するとすぐに喋り出した。

「おっかしいなぁ。キンバリーさんに手取り足取りチンコも取りながら教えて貰った中国語なのになぁ。なんで伝わらんかなぁ」

マルコムは優太の足下を見た。
自分でなければ履きこなせない筈のスーパージェット・リーガルシューズが、他人の命令を聞き、ジェットを噴き、自分の攻撃を避けた。

「まさか……お前も……」
マルコムは言った。
「尻尾があるのか?」
2020/04/29(水) 20:47:39.80ID:vCku0PR5
優太は答えた。
「メイとは日本語と中国語で見事なまでに会話できるのに……お前の言ってることさっぱりわからん」

マルコムは言った。
「何を言っているのかさっぱりわからん。中国語で喋ってくれ」

優太は答えた。
「お前が日本語で喋れや」

マルコムは答えた。
「わからん。わからんが、スーパージェットの秘密を知ったお前は殺す」
2020/04/29(水) 20:52:57.08ID:vCku0PR5
マルコムは靴底からのジェット噴射で飛んだ。
優太もそれを追いかけて飛ぶ。
二人はビルの屋上に着地すると、向かい合い、殺人術の構えに入った。
小雨に加えて風も吹きはじめた。

「避けてみろ!」
そう言うなりマルコムは連続技を繰り出した。
突進から急激に右へ飛び、ローキック、ミドルキック、ハイキックをジェット噴射の超高速で叩き込む。
しかし優太もジェット噴射を駆使してそれらをすべて避けると、得意の接近戦に持ち込んだ。
2020/04/29(水) 20:56:11.31ID:vCku0PR5
マルコムの脳裏にまた兄ガンリーとの模擬戦の記憶が甦る。
まだスーパージェット・リーガルのない頃だった。
彼は一度も兄に勝てたことがなかった。
優太の戦闘スタイルはその兄にとてもよく似ていた。
間合いを詰め、素早い手技でこちらのリーチある足技を潰しに来る。
パワーは兄ほどではないが、スピードは兄以上だ。
しかも優太は自分と同じスーパージェット・リーガルを履いていた。
2020/04/29(水) 21:02:45.03ID:vCku0PR5
たまらず後ろへ飛び退いたマルコムに優太は余裕を見せつけた。

「へへ。アンタみたいなアクロバットは出来ねーけど……」
優太はトントンと靴を地面に打ち付け、鳴らした。
「幸いにも俺の得意は手技。靴はただ素早い移動手段に特化させた」

マルコムは相手の言葉の意味がわからないぶん、余計におちょくられている気がして腹が立った。

「どうだい? 俺、アンタの靴を履きこなせてっかな?」
優太は物凄い笑顔で言った。
「これ履きこなせて、アンタ殺せたら、キンバリーさんとララちゃんが同時にヤらせてくれるんだわ」

優太の頭にピンク色の妄想がモワモワと浮き上がった。
左手にキンバリー、右手にララを抱き、尖った彼のちんちんは既にどちらかに突き刺さっていた。
2020/04/29(水) 21:06:21.73ID:vCku0PR5
「見事だ」
マルコムは優太を認めた。
「最期に名前を聞いておこう」

「キンバリーさんだよ」
優太は答えた。
「わかるだろ? お前の好きなキンバリーさん。あの人が俺の女になるんだよ」

しかし優太の「キンバリー」の発音があまりにも日本語すぎてマルコムには伝わらなかった。
マルコムは言った。

「きん ばりー、か。変わった名前だが……」
マルコムは飛んだ。
「覚えておこう」
2020/04/29(水) 21:10:57.96ID:vCku0PR5
優太は思いがけなく慌てた。
マルコムの姿が目の前から完全に消えたのだ。

「あっ……」

後の言葉を口にする暇はなかった。

マルコムの足先がいつの間にかこめかみにあった。
スローモーションのように、ナイフはそこから入って来て、脳を貫いた。

「ララ……」
優太は夢見るように呟きながら、倒れた。
「……ちゃん……」

こめかみから血を流し、優太はコンクリートの地面に倒れ、すぐに息を引き取った。
2020/04/29(水) 21:13:57.20ID:vCku0PR5
マルコムは右のジェットを噴射するとすぐに消し、左を噴射させたのであった。
このフェイントについて来られた者は今まで1人もいない。
目の前から消えたように見せ、あとは硬直した敵のこめかみに一撃を入れるだけである。

「オレに先に攻撃をさせたこと」
マルコムは優太を見送りながら、踵を返した。
「それがアンタの敗因だ」
2020/04/29(水) 21:15:54.49ID:vCku0PR5
忘れずに優太の足から自分の靴は取り返した。

「この靴を履きこなせるのは……」
マルコムは死んだ優太に言い聞かせた。
「やはり世界でオレだけなのさ」
2020/04/29(水) 21:38:27.35ID:vCku0PR5
雨が本格的に降り出した。
マルコムは雨を避けて歩きながら、行く先もわからずただ進んだ。

『同じ尻尾を持ち、オレほどじゃないが、いかした靴の履きこなし方をする奴だった……』

マルコムは思った。

『普通に出会い、言葉が通じ合えば、仲間になれたかもしれないな……』

そしてキンバリーを探してあてもなく歩いて行った。

『オレ達殺し屋の絆……。それはただ殺し合うことだけなのか』
2020/04/30(木) 06:21:13.82ID:6oUdq/GH
「雨が強くなって来たのぅ」
 タオ・パイパイは夜空を悠々と見上げた。
「場所を変えるか?」

「構わん」
メイファンは身動き一つせず構えたまま、言った。

「今、隙だらけじゃん」
ララが小声で言った。
「空なんか見てるよ! ぶち込んじゃえ!」
2020/04/30(木) 08:15:12.44ID:V8WaYh0Q
町を彷徨う内にマルコムは、知らない間に裏通りに迷い込んでいた。
「ああ、雨か」
マルコムは立ち止まり空を見上げた。
視線を前に戻し、再び歩き始めると人集りが見えた。

「爆発事件だってよ」
「銃声がしたからテロじゃないの」
野次馬の誰がそう話すのが聞こえた。
2020/04/30(木) 10:13:40.94ID:7RKpwpUD
マルコムは目撃した人から話を聞き、何があったのかを推理し、頭の中でまとめた。

『綺麗な20歳代の女の人同士が争い合っていた?』

『ハゲ頭の光輝いているくせに陰気そうな小柄な男が2人をさらって行った?』

『……ジェイコブだ!』

マルコムはジェイコブの記憶喪失のこともヴェントゥスのことも何も知らなかった。
タオ邸へ連れて行かれたものと思い込み、タクシーを拾うと急いだ。
タオ・パイパイと黒色悪夢が対峙しているタオ邸へ──
2020/05/01(金) 04:51:05.58ID:YEAzOvs+
「あはん」
メイファンは欲情していた。
「たまんない」

目の前の男が放つ『気』の大きさは、信じられないほどだった、
メイファンは強いものを見ると激しく欲情するのだ。
弱い者をいたぶる時も欲情するが、相手が強い時の興奮はその比ではなかった。
既に彼女の太腿には白く泡立った汁が伝い、自分の小指を舐めながらビクンビクンと小刻みに痙攣している。

「そのぶっとい拳、真っ二つに割りたぁぁ〜い……!」

メイファンは性行為に興味がないぶん殺戮行為で興奮する変態であった。
2020/05/01(金) 18:27:43.47ID:roUrZCRr
「…道が違うじゃないか、あんた何処にいく気だ?」
マルコムはタクシー運転手に怒鳴った。
「もういいっ、ここで降りる!」

しかし、タクシー運転手は無視するように運転を続けている。しびれを切らしたマルコムはドアを開けようとしたがドアが開かない。
2020/05/01(金) 21:18:22.98ID:z1OxAeoC
2mもある太い腕に吹き飛ばされ、メイファンは雨に濡れた地面に叩きつけられた。
自慢の棒術は出させてすら貰えなかった。

「ククク」
タオ・パイパイは見下して嗤った。
「その程度じゃったか、黒色悪夢」

「ごめん、メイ」
ララが言った。
「もう……治療の白い『気』……使い果たしちゃった」

「すまん、ララ」
メイファンが言った。
「力及ばなかったようだ。だってメイはまだ16だから」

「メイ……」
ララが涙声で言った。
「生まれ変わっても、また一緒になろうね」

「散れぃ」

『気』で膨らませたタオ・パイパイの巨大な腕が降って来て、二人を砕いた。
一つの身体に住む二人の姉妹は、同時にその命を終わらせた。
2020/05/01(金) 21:23:04.00ID:z1OxAeoC
「つまらぬ」
タオ・パイパイは言葉とは裏腹に愉快そうに言った。
「引退してもやはりワシが世界最強の殺し屋ということか……」

おもむろにスマートフォンを取り出すと、画面を見た。

「マルコムがこちらへ来ようとしておったようじゃが……方向を変えよったな」

そして微妙に眉間に皺を寄せる。

「アイツがここに来ておったら、果たしてどちらの加勢をしておったか……」

「ワシと黒色悪夢、どちらにとっても天敵と言える奴じゃ。アイツがもし黒色悪夢に加勢しておったら……」

「さすがのワシも『気』を乱され、黒色悪夢に攻撃の暇を与えておったかもしれん……」
2020/05/01(金) 21:28:02.53ID:z1OxAeoC
「いや……。まさかな」
タオ・パイパイは自信たっぷりに笑った。
「子は父親を裏切れぬ」

そう言うと地面に潰れた黒色悪夢の死体を蹴っ飛ばし、死体分解装置の中へ放った。
二人の身体はその中でミンチにされ、川へと流れて行った。

「さて……。あとはマルコムとジェイコブか。裏切り者は始末せねばの」

「マルコムもキンバリーを人質に取れば大人しく殺されてくれるじゃろう」

そしてマルコムとジェイコブの目に仕込んであるカメラの映像を分割画面でチェックした。

「奴らの居場所はわかっておる」
2020/05/01(金) 21:30:15.23ID:z1OxAeoC
「バーバラも何やら脳をいじられてワシを裏切るようじゃな。コイツも殺そう」

「何やら金色の奴もおるが、コイツにはムーリンを差し向けるか」

「ワシには最高傑作のムーリンさえおればよい。たわけた友達とやらも殺して、ムーリンを改造し直す」
2020/05/01(金) 21:32:01.06ID:z1OxAeoC
「ハハハ! 老後もゆっくりとはしておれんな!」

そう言うとタオ・パイパイは雨降る夜空へ飛んだ。

「老衰で死ぬまでワシの天下じゃ!」
2020/05/01(金) 21:32:16.04ID:z1OxAeoC
       (完)
2020/05/01(金) 23:25:10.69ID:QuvQZTwI
生まれ変わってみるとメイファンはアブラムシ、ララはその細胞内で生息するブフネラ菌になっていた。

メイファン「また一緒になれたな!」

ララ「いやぁぁあ!!」
2020/05/02(土) 04:05:13.25ID:7mdpd1/m
「あたしね、ムーリンをお嫁さんにしたかったんだ」
ヤーヤは涙でぐしゃぐしゃになった顔を笑わせて、言った。
「でも……叶わなかったね」

「言いたいことはそれだけか」
タオ・パイパイは言った。
「最期の言葉言わせてやるワシの優しさ、素敵じゃろ? 死ね」

ヤーヤの身体がレゴブロックのようにバラバラにされ、頭部が地面に転がった。
ムーリンは泣きながら呆然とそれを見ているしか出来なかった。
2020/05/02(土) 04:10:03.37ID:7mdpd1/m
「さぁ、くだらんお友達とやらも殺した。ワシと一緒に世界征服するぞぃ。来い、ムーリン」

「どぅ、どぅあ……」

「……フン。これしきでキレるでない。未熟者が」

「じぇ……! じぇじぇじぇ……!」

タオ・パイパイはコントローラーのダイヤルを回した。
ムーリンの顔がどんどんと穏やかになって行く。

「とっくにお前は改良済みじゃ。言うことを聞けぃ」

改良により、タオ・パイパイはムーリンの感情さえもコントロール出来るようになっていた。
2020/05/02(土) 04:12:41.32ID:7mdpd1/m
「おまけに遂に『暴れ牛』の発動もワシがコントロール出来るようになった。ムーリン完成、じゃ」

「ハイ、パパ」
ムーリンは足下に転がるヤーヤの首から視線を上げ、にっこりと笑った。

「さぁ、行くぞ。裏切り者をすべて始末するのじゃ」
2020/05/02(土) 04:16:05.54ID:7mdpd1/m
マルコムは父にキンバリーを殺すと脅されると、阿呆のように大人しくスーパージェット・リーガルシューズを脱いだ。
タオ・パイパイはキンバリーの目の前でマルコムの首をはねた。

地下施設に乗り込むと、即ムーリンの『暴れ牛』を発動された。
何をさせて貰うことも出来ず、ヴェントゥスとハリーは赤い肉塊と化した。
2020/05/02(土) 04:19:46.67ID:7mdpd1/m
ジェイコブは脳を改造され、タオ・パイパイの操り人形となった。

地下施設にいた人間達は皆殺しにされたが、唯一殺されなかった者達もいた。

タオ・パイパイはそこにいた自分のクローン達を見ると、ほくそえんだ。

「これだけの数のワシがいれば、世界をワシのものにするのも容易いことじゃわい」
2020/05/02(土) 04:24:56.79ID:7mdpd1/m
夜、タオ・パイパイはもよおして布団から起き上がった。

「うう〜……。したくて敵わんわい」

トイレ室に入ると、天井からキンバリーが吊るしてあった。
両足を根本から切断し、用が足しやすいように改良してあった。

「み、水を下さい……」
キンバリーはタオ・パイパイの顔を見ると懇願した。

タオ・パイパイはキンバリーの性器にローションをたっぷり塗ると、後ろから肉棒を挿入した。
2020/05/02(土) 04:28:56.49ID:7mdpd1/m
「うぅむ。やはり蒼井そらはええ女じゃのぅ……」

モニターで日本のアダルトビデオを観ながら、タオ・パイパイは腰を動かした。

「そしてトイレはやはりボットン便所じゃ……!」

そう言いながらキンバリーの中にたっぷりとザーメンをふちまけた。
2020/05/02(土) 04:38:17.72ID:7mdpd1/m
「水を……」
キンバリーはぐったりしながら、また懇願した。

「お前はボットン便所じゃ。水洗なんぞ必要ない」

そう言いながらタオ・パイパイはキンバリーの膣内を点検する。

「大分溜まったのぅ。ぼちぼち汲み取りが必要じゃの」

トイレ室に呼ばれ、バーバラが入って来た。
口が掃除機のようになったバキューム人間に改造されていた。

「吸え」

タオ・パイパイが命令すると、バーバラはキンバリーの膣内を吸った。
ズビズビズババと汚いものを吸い出す音が暗い室内に響き渡った。
2020/05/02(土) 04:46:43.28ID:otBhvPGx
「こちら茨木。作戦は失敗だ」

俺は上への報告を終えると、荷物をまとめた。
俺1人であの化け物に敵うわけがない。退散だ。

優太が生前、言っていたっけな。
『この物語は誰が主人公になるかの争いの物語だ』ってな。
結局、主人公はタオ・パイパイさんだったってわけだ。
俺は主人公なんてガラじゃない、大人しく退場するとするか。
2020/05/02(土) 04:51:31.11ID:otBhvPGx
しかし中国も日本も、このまま黙っているわけはないだろう。
次々と刺客を投入するだろうな。
兵藤さんや内情に詳しいキンバリーさん、黒色悪夢、優太、そして俺……。これより強力な兵隊が他にいるとは思えない。
多くの血が流れることだろう。
今回、敵の内部分裂もあったというのに作戦失敗は残念だ。
2020/05/02(土) 04:52:11.39ID:otBhvPGx
まぁ、なってしまったことは仕方がない。
最後に旨いタピオカミルクティーでも飲むとしよう。
2020/05/02(土) 04:53:47.37ID:otBhvPGx
ヤン・ヤーヤって名前だったな、あの娘。
あれからタピオカミルクティーの店の前に並んでいるのを一度も見ない。
帰国する前にもう一度、姿を見たかったな。
2020/05/02(土) 04:59:41.00ID:otBhvPGx
まぁ、こんなオッサンが彼女のいい人になれるわけはない。
甘いもの好きやロリコンもいい加減にしないとだな。
さて、そろそろ空港へ向かわないと飛行機に間に合わない。

さらばだ、台湾。

日本の友人である君達が中国から独立するのを、俺達は邪魔しようとしていた。
こういうのはもちろん悔しいが、
こういう結果になって良かったのかもしれない。
2020/05/02(土) 13:28:50.30ID:v3L7wOYX
「ううっ」
暗い廊下にうめき声が響き渡る。
声の主、タオ・パイパイは溶けかけた肉体を引きずっていた。

「くっ、苦しい…わわしの体になにがおこっ取るんじゃ…!?」

タオ・パイパイは体の異変の正体が分からず、
ただ苦しみ、呻くしか出来なかった。

「か、体が熱い。だ…だれか…、ジェイ…コブ…ムーリリン…」

タオ・パイパイにはまだやりたいことがあったのだ
2020/05/02(土) 13:44:48.76ID:5gZJb1KM
体の異常とともにまだ、茨木を殺してないのを思い出したのだ。
「うぬぅ・・・、まだじゃまだわしは」
タオ・パイパイは玄関に向かう。
2020/05/02(土) 14:46:37.28ID:v3L7wOYX
這いずる彼の背後に影が忍び寄る。
タオ・パイパイは気配に気が付いた
「誰じゃ、ジェイ…か…!?」
残念ながら、その人影の正体はジェイコブではなかった。数時間前だったら彼の正体を見極める事が出来たかも知れないが、死にかけのタオ・パイパイには無理な話だ。

人影はこの老人が振り向くより早く、注射器を彼の首筋に刺し、中の液体を注入した。
2020/05/02(土) 16:43:46.03ID:5gZJb1KM
「ジ・エンド・・・ってね」
ひでぞうは、タオ・パイパイだった肉塊を見下ろしながら呟いた。
ひでぞうが打ったもの、それはこの実験体を始末するための薬物だった。

(しかしまあ、黒色悪夢どころか自分のファミリーまで潰してくれるなんて、バカな奴だぜ)
ひでぞうは、タオ邸をあとにした。

「さて、本国からの迎えが来る時間まで、間があるな。どこで時間潰そうか」
2020/05/02(土) 17:01:34.45ID:v3L7wOYX
「はい、グリーンスネーク。」
ひでぞうは無線機を取った。

「被検体の戦闘データの回収及び『黒色悪夢』の抹殺を完了しました。はい分かりました…はい、直ちに。」

全ては合衆国の手のひらの上で踊っているに過ぎなかったのだ。
863創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/05/03(日) 10:32:14.52ID:e7zW5jDi
めでたしめでたし
864創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/05/03(日) 11:53:20.90ID:SCWe1lVP
さて、きょうものんびりですね。一応8月に台北、12月に香港を予定
しています台北は3カ月後、香港は7カ月後ですね。これはこれで
楽しみです。尤もバンコクにするかのうせいもありますが^^;。。
まあ、今の経験をコピーライティングの仕事に活かせればいいですね。
やはり街の景色など日本ではないものがありますし、人々の暮らしぶりも
異国情緒あふれます。そういった経験を仕事にいかせればまずまずと
言った感じでしょう。社民党の方も楽しみですね。やはり交流を持つこと
は大切です。私は社会主義者ではないのですが、リベラルですし、今の
弱肉強食の行き過ぎた資本主義には懐疑的です。そういった意味社会主義
の良い所を取り入れればいいと思います。しかし、そうは言っても苛烈な競争
社会ですからね。この動きはなかなか止まりません。そこで福祉の充実など
セーフティネットの拡充が必要ですね。まあ、企業社会で戦える人は戦って
もらうという感じでしょうかね。。
2020/05/03(日) 15:52:54.68ID:t6KoI2s4
アメリカ大統領ドナルド・トラ○プは報告を受けると、呟いた。
「あのタオ・パイパイは駄目だったな。才能は最もあったが私欲が強すぎた」

「次のタオ・パイパイを起動させますか?」
CIAの工作員、グリーン・スネークが姿勢を正しながら尋ねる。

「もちろんだ」
トラ○プは立ち上がると、愉快そうに言った。
「忌々しい黒色悪夢が死んだのは非常に嬉しいが、中国にはまだまだ厄介な輩がいる。台湾を守るために新たなタオ・パイパイが必要だ!」

「日本への配慮は?」

「どうせ死んだのはヤクザどもだろう?」
トラ○プはくだらんことを言うなという態度で答えた。
「放っておけ。どうせ日本にとっても社会のゴミクズが消えて良いことだったろうさ」
2020/05/03(日) 15:58:56.26ID:t6KoI2s4
「我ら合衆国こそが世界正義なのだ!」

トラ○プは声を大にして言った。

「ネット社会になって弱くなった我が国民の優越意識を取り戻さねばならん!
 中国や韓国、日本のごとき田舎国家はアメリカに比べれば発展途上国なのだと思い知らせるのだ!」
2020/05/03(日) 16:02:52.08ID:t6KoI2s4
「そのために台湾を中国から守り、その上台湾を操作し、我らアメリカの正義を守らせるのだ!」
2020/05/03(日) 16:03:58.39ID:t6KoI2s4
台湾は沖縄の米軍基地まで僅か300kmほどの距離にある。
ここに中国の基地を作られては非常に厄介なのである。
2020/05/03(日) 16:07:24.20ID:t6KoI2s4
厳密な定義に基づけば、台湾という国家は存在しない。
台湾にある国民党政府は旧中国の中華民国政府なのであり、
現在国連に加盟している中国の正統な政府は中華人民共和国なのだから、
台湾は南に浮かぶ中国の領土の島に過ぎないということになってしまう。
2020/05/03(日) 16:14:07.11ID:t6KoI2s4
しかし現状としては、社会主義の中華人民共和国に対して、台湾にある中華民国は民主主義的資本主義であり、
海に隔てられていることに加え、中華民国政府がクーデターによって乗っ取られた元々の正統な中国政府であるぶん、
香港やマカオと違って、中国が台湾を奪うことは容易ではない。
国力、軍事力をもって力ずくで奪うことは可能なようには思えるが、
アメリカと日本がそこに抑止力として存在している。
台湾に何かあったらこの両国は、黙ってはいないと約束している。
2020/05/03(日) 16:30:23.63ID:t6KoI2s4
しかし、少なくとも日本は、中国と国交はあるものの、台湾とは国交がない。
中国との関係でうまい汁を吸っているものにとって、最も理想的なのは、現状維持であろう。
台湾が中国に奪われることなく、独立もしないこと。
そしてアメリカにとってもそれは同じであった。
2020/05/03(日) 16:42:11.23ID:t6KoI2s4
「胸糞悪ィ結末だな」
飛行機の座席で茨木敬は思わず呟いた。

少なくとも台湾独立を心から願うマルコム・タオは死ぬ必要はなかった。
台湾独立に尽力しすぎていた上に残虐非道が過ぎたタオ・パイパイさえ始末すればよかった。
しかしタオ・パイパイはあまりに強大すぎるがゆえ、1人の力で勝つことは不可能であった。
(何故だかひでぞう1人に殺されてしまったが(笑))

もしも殺し屋同士に絆が生まれ、協力してタオ・パイパイを倒せていたなら……

結果としては、アメリカと日本がうまい汁を吸い続け、
アメリカにとって脅威だった黒色悪夢の始末が出来、現状維持を望むものにとっては最高ということになった。
しかし、多くの血が流れ、世界を変えうる力を持つ者達が命を落とした。
2020/05/03(日) 16:45:28.45ID:t6KoI2s4
「コロシテ……」

ムーリンは雨降る台北の町をさまよっていた。

「誰カ、アタシヲ……コロシ……テ」

家族も友人も失い、タオ・パイパイの改造により自発的行動も出来なくなったムーリンは、ただひたすらに死ぬことを願っている。
しかし、その脳に埋め込まれた自動制御の自殺防止装置により、死ぬことは出来なかった。
2020/05/03(日) 16:50:48.85ID:t6KoI2s4
茨木敬は日本に帰ると、まっすぐ孤児院に向かった。

「兄ちゃん!」

子供達が嬉しそうに出迎える。
傷だらけの顔を綻ばせ、茨木は小さな子を抱き締めた。

「おかえり、敬くん」
彼がここで育てられた頃よりもすっかり老けてしまった『お母さん先生』も出迎えた。
2020/05/03(日) 16:52:15.57ID:t6KoI2s4
茨木は先生にぺこりと頭を下げた。
「すまん。仕事に失敗して、金を持って帰れなかった」

「いいのよ」
先生は優しく笑った。
「敬くんが無事なら。それが私達にとって一番のお土産よ」
2020/05/04(月) 05:51:00.13ID:Jac4fbxp
茨木が家族との再会果たしていた頃、
台湾の首都、台北では怪獣と化した『暴れ牛』が破壊と殺戮を開始していた。

「グオーッ、ワタシハシュジンコウダーッ」

『暴れ牛』は失った心の隙間を満たすため此度の戦いで殺された家族や友人、その他の残骸を喰らい取り込んでいたのだ。
2020/05/04(月) 06:44:18.57ID:YqgDdLmC
後にTPパニックと呼ばれる大破壊の始まりである。
878創る名無しに見る名無し
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2020/05/04(月) 13:48:13.31ID:zAH7sqow
民衆「ウルトラマンは台湾には飛んで来ないのか!?」
2020/05/04(月) 21:01:26.62ID:LuTG+V9P
怪獣『暴れ牛』は、どんな致命傷を負っても再生する驚異的な治癒能力と
巨大な体にもかかわらず、幽霊のように存在を消せるステルス能力、気を読むことで相手の動きを予知・探知する能力を備えた脅威のモンスターだった。
880創る名無しに見る名無し
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2020/05/05(火) 05:56:51.58ID:lo3hV+BL
アブラムシ「うわっ。そんなの絶対敵わねーよな」

ブフネラ菌「私達が戦いを挑もうとか思うところからして間違いよ」
2020/05/05(火) 11:01:59.85ID:erxB1j1F
新しいスレ→半獣半人ハローキティ、東京いくだ。
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1588643522/
2020/05/05(火) 22:00:03.32ID:lo3hV+BL
アメリカが起動した新しいタオ・パイパイは無能だった。

「私の娘とかいう人が巨大化して暴れてるんですけど、どうしたらいいですか?」
と、お悩み相談ホットラインに電話したのだ。
2020/05/06(水) 09:10:50.23ID:MNllQuU/
電話のお姉さん「あれあなたの娘さんなんですか? あなたが何とかしてください!」
2020/05/06(水) 11:30:43.79ID:71TaaVxA
タオ・パイパイは雷に打たれたようなショックを覚えた。
「そうか! ボクが何とかしないといけないのか!」
2020/05/06(水) 20:19:45.90ID:ZFXr5+6N
『暴れ牛』は市街地に侵入すると、大虐殺を始めた。
”悪い奴”を皆殺しにするためだ。
2020/05/06(水) 20:25:03.81ID:f1BmXrMm
怪獣暴れ牛の意識は、それまで喰らってきた家族や知り合い、友人の精神が入り交じっている。
2020/05/06(水) 21:24:09.98ID:71TaaVxA
「と、とまれー」

タオ・パイパイ2号は暴れ牛の前に立ち塞がった。
2020/05/07(木) 05:45:43.14ID:X/q2Lh+u
しかし、目が見えない
2020/05/07(木) 06:42:53.25ID:0zkwLSBH
善良な台北市民は絶叫を上げながら逃げ惑った。
890創る名無しに見る名無し
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2020/05/08(金) 03:02:52.97ID:NYxPrbmw
おもしろい
2020/05/08(金) 03:30:49.67ID:xu983k7f
つまらない
2020/05/10(日) 23:17:37.02ID:cVWnyhix
タオ・パイパイ2号はあっさり踏み潰された。
2020/05/10(日) 23:22:07.20ID:cVWnyhix
タオ・パイパイの屍の向こうから土煙を上げて戦車が現れる。
空からはジェット戦闘機が3機、やって来た。
中華民国国軍が『暴れ牛』を倒すため、女性総統の命令を受けて登場したのだ。
2020/05/13(水) 18:09:07.53ID:TcGmOF9z
「ところでレス番がヤクザで止まっているのは何か意味があるんですかね?」

花山組若頭の武田伊蔵は少し笑ってしまいながら、言った。

花山組組長 山本聖也はムスッと口を結んで答えた。
「動いちゃったろ」

「は?」

「てめーが今、894にしちまったろ」

「すすすいません! 戻しましょうか」

「時は戻らねぇよ」
2020/05/13(水) 18:17:27.38ID:TcGmOF9z
「ところでこのままでは台湾が壊滅してしまいますが、どうします?」
武田は話題を変えようとして、言った。

「台湾の政府も国民も優秀だ。しかし援助はせにゃあなんめぇな」
組長はしかし困った風ではなく、余裕の表情で答えた。
「我々は中国との取引を続けるため、建前としてタオ一家と闘いさえすりゃぁよかった。それがこんなことになるたぁな」

「兵藤はじめ、兵隊をいくらか失っちまいましたしね」

「まぁ、タオ一家を舐めてたわな」
2020/05/13(水) 18:22:43.67ID:TcGmOF9z
組長は続けて言った。
「しかし実はもう手を打ってあんだ」

「おお。さすが組長だ。……して、どのような?」

「茨木いるだろ。ステゴロの鬼な」

「あぁ、はい」
武田はその顔を思い浮かべて少し嫌そうな顔をした。

「アイツに今、別の世界で主人公の修行をさせてっとこだ」

「しかしアイツは……!」

「まぁ、ちと怪しげなとこはあっけどな」
組長は立ち上がると、足元にすり寄って来たペットの黒豹の頭を撫でた。
「アイツに任せっぺ。アイツが帰って来たら、何とかしてくれる」
2020/05/14(木) 06:30:29.10ID:FmbpAm6q
三日後、台北は壊滅した
2020/05/14(木) 18:42:58.30ID:mc4CDdNO
その後、怪獣『暴れ牛』は三体に分裂し、
それぞれ、アメリカ・日本・中国に現れそれらの地域に災厄をもたらしたのだ。

その影響でアメリカでは隕石が落ち、謎の疫病が流行した。
日本では大量の人間が姿を消し、東半分の地域の秩序が崩壊した。

そして中国では上海をはじめとする都市部一帯が、長期的な大停電に見舞われることとなる。
2020/05/17(日) 08:03:43.72ID:cV/GYcE4
台湾は無政府状態になった
2020/06/16(火) 08:00:59.83ID:OE1X2ITO
そして900をゲット
901創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/09/19(土) 06:06:13.38ID:hp7qr5ai
光の守護者たちの手により怪獣は捕獲され 
台湾に平和が訪れた。
902創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/09/20(日) 05:49:19.26ID:0gbHeTF9
はい、ここまですべてプーチンの計画です
空白地帯となった台湾に宗教団体に扮した極秘組織を送り込み支配してしまったとさ
2020/09/21(月) 14:44:13.40ID:FzIxs2af
茨木敬「俺が行く! 俺が行くから待っ……てろ台湾」
2020/09/21(月) 20:01:01.19ID:FzIxs2af
台湾国民「8+9(ヤクザ)はもう台湾に来ないでくれ」
2020/09/25(金) 13:56:27.54ID:cSnUwYr9
チュンチュンちゃん「もう少しだヨ! みんな頑張って!」
2020/10/01(木) 10:37:45.25ID:BnLkqtfR
こうして台湾に平穏が訪れましたとさ
2020/10/03(土) 17:09:53.02ID:QSZGW6Ew
いえ〜い
2020/11/20(金) 09:34:24.27ID:xESOFI7w
「何ザマスか、その口調は?」
「それが人の上に立つ者の言うことですか?」
2020/11/27(金) 04:35:44.22ID:rkVV4LYh
「ザマスザマスってうるせーんだよ!この糞ババア!」
2020/11/29(日) 04:21:48.79ID:gSwBeJ9/
「クチゴタエハユルサンザンス!」
メイドの目が真っ赤に染まり爪と歯が伸びる。
「コ、ロ、ス!」
2020/12/04(金) 20:40:06.93ID:MVU0vx2/
いぇ〜い!
2020/12/05(土) 01:10:30.31ID:lTJa1hzi
トカトントン…
2020/12/05(土) 08:38:34.26ID:t18zfLwv
もうドカベンは見れないのであるか?のう狸吉や
914創る名無しに見る名無し
垢版 |
2021/10/22(金) 10:54:47.00ID:znlbSwfT
狸吉「ドカベンは死んだ、ジジイお前が殺したのだっ!」
915創る名無しに見る名無し
垢版 |
2022/05/17(火) 10:36:44.53ID:dbBRz4mu
https://i.imgur.com/TU46yZ8.jpg
https://i.imgur.com/wwqsL79.jpg
https://i.imgur.com/0MzOt94.jpg
https://i.imgur.com/Uv1A0Cs.jpg
https://i.imgur.com/Uv1A0Cs.jpg
https://i.imgur.com/xprhla4.jpg
https://i.imgur.com/1dzvmA9.jpg
2022/07/17(日) 14:57:07.28ID:3yg1WwnP
突然、地面から野太い手が生えてきた。手は更に突き出て本体を現した。
他でもない山田太郎である。
「そんなに簡単に殺されちゃあ困るな」
山田太郎の顔には斜めによぎった継ぎがあった。噂によるととある天才外科医が彼を修復したらしい。
2022/07/26(火) 11:28:17.24ID:9rZmF7zU
「僕を蘇生させるのには一億円かかったんだ。普通に働いていてはとてもそんなお金は稼げないんだ」
というわけで、ツギハギの山田太郎は傭兵、ではなく漫画家を目指すことにした。
2022/08/02(火) 15:50:11.64ID:3rYiukJS
山田太郎は漫画を描く技術がないので、漫画家スクールに入学した。
担任の先生は美人だった。
(高い金を払って入学したかいがあった。こんな美人に教えてもらえるなんて)
先生の名は舞田麻衣子だった。
まいっちんぐ!
2022/08/15(月) 09:03:54.62ID:HpnnLp6V
舞田麻衣子はスーツ姿だった。タイトスカートの丈は短く、大胆な美脚が生徒たちの目を釘付けにした。
この件について彼女は、とある場所でそうした方が生徒たちの画欲が高まると言っていた。
2022/08/16(火) 13:44:55.04ID:W8oJo7sr
だが山田太郎の高まったのは性欲だった。
2023/03/18(土) 07:39:06.01ID:aRJZg+4m
山田太郎はその性欲を漫画にぶつけた。
山田太郎が初めて描いたエロリ漫画、
『ピーさん丸裸』が世界中で読まれる事になる未来を、
その時点で想像できた者は一人もいなかった。
922創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/06/16(金) 08:08:35.05ID:xvFf7DkG
https://i.imgur.com/kgwyCGr.jpg
https://i.imgur.com/BhR4aXJ.jpg
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https://i.imgur.com/5j7wHtB.jpg
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https://i.imgur.com/PMd80ci.jpg
https://i.imgur.com/NsnX5gq.jpg
2023/07/01(土) 15:50:00.67ID:dflTTvyF
山田太郎はその性欲をすべて漫画に注ぎ込んだ!
かつてないエロ漫画が誕生した!
2023/07/07(金) 12:42:05.81ID:SM+x09KF
エロ漫画はこの世界で必要とされている
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