母から目覚ましで殴られた日、学校から帰宅したら、また500円札が置いてあった。
500円札を持って外に出ると、俺は無意識に、ふらふらと夕暮れの中を徘徊した。
とんかつを売ってる肉屋の前を通り過ぎ、ふと気づくと、H君の家の塀の前にいた。

H君は1〜4年生まで同じクラスの仲良かった子で、
H君のお母さんは凄く家庭的で優しい人だった。
お勝手から美味しそうな匂いがする。

じっと見てたら「俺君?」と呼びかけられた。
目の前にH君のお母さんがいた。
「どうしたの?」
と心配そうに尋ねてくれる。
何も言えず黙っていると、
「ご飯食べていく?」と聞いてくれた。
その言葉を聞いてたまらなくなって、
涙がぽろぽろと出てきて、そのまま家に逃げ帰った。

その夜、夕食は食べず、布団の中で泣きはらした。
ご飯を作ってくれず、言う事聞かないと宝物を壊して笑うヤツ。
自分の本当の母親は、あんなヤツじゃない、他にいるんだ、そう思うようにした。
そうすると、少し気持ちが楽になった。