石じじいの話です。

海の話をしましょう。

じじいの友人が島嶼部にいた事は以前お話しました。
じじいは、友人と二人で昼に無人島に行きました。
まあまあ大きな島でしたが水はなかったと。
砂浜があったので、たまに近くの人たちが舟で海水浴に訪れることもあったそうです。
夕方近くになって帰ろうとしたら舟のエンジンの調子が悪い。
友人は、非常に不愉快そうで苛立って早く帰ろうとしていましたが夕暮れが近づき暗くなってきたので修理が終わりませんでした。
そのため、無理をしないで島に一泊しようということになったそうです。
食料も水も、ほどほどに残っていたので、じじいはむしろその一泊の経験を楽しいと思いました。
しかし友人は違ったと。
友人は、焚き火(木がはえていて、枯れ木がたくさん海岸で拾えたそうです)を前にして言いました。
「ええか、今日の夜は、寝たら、なにも考えんようにせんといけんで。考え事せんとさっさと眠るんよ。そうよ、いちばん大事なんは、死んだ人のことを考えたらいけん。いや、死んだ人やのうても生きとる人でもいけん。考えたらなあ。」
じじいは、おかしなことを言うもんだと思い、どうしてか尋ねました。
友人は明言を避けて、この島では(ここらの海では?:メモに両方の記述あり)そうしないといけないのだ、と言いました。
じじいは、友人の助言を聞いて、努めてなにも考えないようにして寝入ろうとしましたが、かえって目がさえてなかなか眠れませんでした。
そして、いろいろと考えをめぐらせてしまったたそうです。
眠れないでいると、砂浜の砂利を踏みしめて人が近づいて来る気配がしました。
(つづく)