まわりは次々と660CCワークスに乗り換える奴が増えていたが、俺は初代アルトワークスに拘った。
っていうより買いかえる金など無かったのだ。

排気量が110CC小さい550CCエンジンは
トルクでは劣ったが、高回転域の伸びとパンチは明らかに550CCワークスに分があった事も俺がCA72Vに拘る理由の1つでもあった。

91年にはトラストのタービンキットにアップデートされた俺のCA72Vはまさに『リトルダイナマイト』地でいくクルマで、信号ダッシュでも登録車を置き去りにできる速さを手に入れたのだ。

しかし幾らCA72Vといえど
所詮は軽ボンバン、3年間ほぼ毎晩峠を攻めるうちに金属疲労の症状が出てきて、あちこちミシミシ音を立てる様になってきたのだ。

ビッグタービンによる恩恵で
直線は痛快なまでに速かったのだが、それを受け止めるだけのボディ剛性が当時のCA72Vには無く、コーナー立ちあがりでアクセル踏んでも思うようにトラクションが得られなくなってしまったのだ。
いわゆる直線番長ってやつだ。

そんなもんだから
コーナーはひたすら我慢を強いられる走りになり、ブーストアップ時代はアクセル全開で抜けれたコーナーも踏めなくなってしまい、結果的に峠のトータルタイムは少し遅くなってしまったのだ。

若干20歳にして
パワーがあってもそれを生かせるシャシー性能とトラクション能力がないと駄目だという事を俺は理解したのであった。