特許事務所で偽装請負が起こってしまうもう一つの原因は、経営者に順法精神に対する
認識と理解が希薄であることが挙げられましょう。実は私は特許事務所で偽装請負を体験
してからかなり後になって、やっと「偽装請負」という言葉の存在を知ったのです。
しかも偽装請負の違法性を民法から読むという原理はさらに後になってからようやく理解
したのです。それくらいですから、特許事務所の経営者が偽装請負の違法性について十分な
認識を持っているかどうかは疑わしい。

しかも、たいていの特許事務所は、大きくてもせいぜい所員数20人から30人程度の小規模
事業体であり、その内部では、人事、総務、法令コンプライアンス等に責任を持つ人事総務専任
マネージャーを雇うだけの資力は無く、所長経営者が外部の「会計事務所」などに業務の一部を
アウトソーシングしながら、かろうじてやりくりしているというのが現状のようです。このため、
民法、労働法、年金、社会保険その他の業務に関連する法令コンプライアンスについて勉強不足
になり、手薄になるのです。

私の推察では、様々な特許事務所でひそかに偽装請負は行われており、これからも行われ続ける
ような予感がしています。