家から出た時には、もう既に遅刻を覚悟していた。
たまにはこういうのもいいのかもしれない。元から何をやっても普通の俺にとっては、遅刻するもしないも大した影響はないだろう。
やけに空が綺麗に見えたんだ。何ていうか……自分が普段抱え込んだものが、全部吹き飛んで、なんにも無くなったみたいな。パラグライダーをやったら、こんな気分になるのかもしれない。ともかく、いつもより心が晴れ晴れとしていたことは、間違いない。
開かずの信号を待っていたのは、いつもの1時間も後だった。なんか、笑っちまうよな。
その時、俺は不思議なものを見たんだよ。
開かずの信号、おそらくそれは壊れている。
この世界での信号は赤、黄、青のランプがそれぞれ点灯して知らせる仕組みである。確かに昨日まではその筈だった。ところが今、自分の目の前にあるこの信号には、瞼だろうかまるで目のようになっているではないか?そして、やはり開いていない。
いつもの俺なら信号なんか無視していくのに1時間もの大遅刻にそんな気にもならず、ひたすら信号が変わるのを待った。
そしたらさ、信号が喋ったんだよ
最初は誰の声だろうと気にせず、いや面倒だし、面倒に巻き込まれるのも嫌だし聞こえないふりしてたんだ
頭の上の方から声がしてさ
あまりの暑さにオレ逝っちまったのかって、
遅刻ってのがこんなにも人生変わるものなんだって、その時は思いもしなかったよ
何言ってるんだって思うよな、オレだってそう思ったよ
ただ、何を喋っているかは分からなかったからそれが言葉であると認識するまで多少時間が掛かったんだ
危ない!
それは女性の声だった
ハッキリと聞き取れたこの言葉に、ハッとして顔を上げたんだ
目の前には紺色のスカートが飛び込んできた
訳も分からすそのまま顔で受けたよ
もちろん、気がついた時には道路だったさ
頭に感じるアスファルトと顔面に感じるスカート越しのふくよかさにしばし悦に入ろうとしたのもつかの間、女は起き上がり信号に向かい身構える。
オレに一瞥したので、マジぃ何か言われっかな、と思ったがスルーされた。
その手には青白く輝きを放つ映画のライトセーバーのような物が握られていた。
@.a65バンam@:.xj+
彼女が、いや信号が?何やら叫びだしたがよく聞き取れない
次の瞬間、信号機の目、そう赤
や青のランプの部分が大きく見開いて、柱がぐにゃりと曲がり彼女の前に立ちふさがった。
よけて!
彼女はかなり強い力でオレを押しのけた
勢い余ってオレはまたもやアスファルトを舐める事になった。
彼女も反動で反対に飛んだその時、オレらがいた場所はドロドロの底無し沼のようになっていた。
そう、信号機の「目」から何かこの世界には無い光が発射されたのだった。
オレはその光景を目の当たりにしても、まだ何が起こっているのか解らなかった。
いや解ろうとしなかったのかも知れない。
だってそうだろ?昨日までは普通の信号機で、たった1時間遅刻して信号待ちしてただけだぜ?
何やってもソツなくこなし、目立ちもせずに普通に過ごしてきたはずなのに、今朝の澄み切った青空と晴れ晴れとした気持ち良さが、たった数時間前とは思えないように脳裏によぎる。
あぁこれって死ぬ間際のかなって、ね。
ここで終わるのも有りかって思ったよ。
道路に座ってボーっと地面を見てたんだ、このまま死ぬこのまま死ぬって思った。
立てるか?
置いてくぞ
さっきの彼女の声にオレは顔を上げてみた。
そこには屑鉄と化した信号機が血みどろになり横たわっていた。
彼女の手にあった筈のライトセーバーはいつしか無くなっていた。代わりに彼女の肩に同じ様な素材の鳥が止まっている。
歩く彼女の後ろ姿を見ると、とても穏やかで戦闘後だなんて思えなかった。
遠ざかる彼女を空気のように見ていたオレはふと我に返り、慌てて後を追いかけた。
街へと続く一本道、いくらオレでもこの異変には気がつくよ
さっきからすれ違う車も人もない。
いくら田舎とはいっても朝から一台も遭わないなんて事はない。
信号待ちの時から?いや朝家を出た時からだったのかな
そんな不安げなオレの心を見透かしたように彼女が話しだした。
おい、戦場はこっちか?
えっ?何?戦場って
何だかよく分からないが、彼女の格好はまるでギリシャ神話にでも出てくるような感じの服を今風にしたような着こなしで、まぁ何というか、良いかなって。
それが戦場ときたよ。
あまりの可笑しさにさっきまでの不安な気持ちは少しばかり和らいだ。
あと少し歩けば街だし、きっと普通に人が居るはずだよな。
彼女は周りを気にしながら結局街まではその後一言も発せず居た。
大都会って訳じゃない、かと言ってすっごい田舎って訳でもない。
そこそこ人はいるし駅前にはカラオケやネカフェだってあるし、コンビニに大手のバーガーチェーンも。
商店街にはパチンコのけたたましい音が昨日まではしていたし、人も居た。そう昨日までは。
そんな所で、静かな駅前の通りに立ち竦むオレと、下を向いている彼女。
変な鳥さえ居なきゃいい感じかなって思うんだけど、さてどうしょうかと、何か言おうとしたが何も浮かばない。
と、急に彼女が鳥に対して暴れだした!
貴様がこんなとこに連れてくるから!
鳥はそのアクリルの様な翼を広げ、彼女の上層へ舞った。
オレはあ然とした。何故って、鳥が喋ったんだよ。
鳥は上空から厳かに威厳ある声で呟いた。
位相がズレたかのお
彼女は必死の形相で鳥を見つめ
何が位相だ!早く元の場所に戻せ
どうやらこの2人?は仲間じゃないのか?
そんな思いで見ていると鳥がオレに
少年ここらで人が一カ所に集まる場はどこか?
と聴いてきた。
鳥の背に乗り彼女の肩に掴まって高校の校庭に降り立ったのは五分後くらいだった。
彼女の肩に乗っていた時にはまさか2人を載せる程大きな鳥だとは気付かなかったが、この鳥は形を自由に変えられるらしい。
時にはサ一ベルになったり、彼女を包み込んだりと言うことだ。
校庭には人は誰一人居なかった。
1時間遅刻、いや色々あったけどまだ昼前だしどこかのクラスは体育で出ててもいいのに、いや校内からさえ人の気配は無かった。
ま、こんな状態を見られたらとんでもない事になるから居ない方がいいんだけど
うむ、確かに人の気配だ
鳥はそう言うとオレの前に立ち、そしてオレは気を失った。
気を失う途中、サッカーボールが目の前に転げ落ちる気がしたが、目覚めた場所は保健室のベッドだった。
0026創る名無しに見る名無し2017/09/06(水) 08:42:07.35ID:Q7q9BY+w
うっすらと赤ジャージが目に入った。
あ、気がついた!
聞き覚えある彼女の声に同学年の赤ジャージ、あぁ同じクラスの、確かサッカー部のマネージャーしてる、えっと名前何だっけかなぁ
彼女は立ち上がって保険の先生を呼びに行った。
壁の時計は午後4時を回っていた。
保健の綾ちゃんと2人きりの放課後の保健室。
これはこれで校内男子の羨望の的になるなぁと妙に重たい頭の中で考える。
あ、氷嚢だった。
綾ちゃんの話によると、サッカーの紅白戦をしてた時に急にオレが現れてソコにシュートのボールが当たったと言うことで、サッカー部とマネージャーが運んで着たらしい。
さてと、私はそろそろ帰るけど、その調子じゃ、しょうがない車で送ってくか。
お昼ご飯も食べずに居たらそりゃ倒れるわよね!
えっ?
帰りの車の中で鞄を確認したら確かに弁当はそのまま、というかオレ今日ってまだ昼前じゃね?
と混乱しているとこに、信号のとこにさしかかった。
今朝の事故、凄いね、信号機粉々だわ、巻き込まれなくて良かったよ
事故?
何でも大型トラックが脇見運転で信号機をなぎ倒したと言うことだ。
オレ、夢でも見てるのか?
今夜は早く寝るか。
そう思いながら車から降りた。
翌日はいつも通りに遅刻もせずに学校へ着いた。
信号機のとこはやはり事故の跡のようで、ドロドロに溶けた地面も血みどろの跡も無かった。
教室に入ると案の定、綾ちゃんととの車の事でからかわれた。
あ、めんどくさっと思いながら適当に相槌をうってごまかしてると、いつもより少し早めに担当が登場し朝のホームルールが始まった。
えっとな急だが転校生を紹介する
オレはその子を見て愕然とした。
セーラー服に身を包んではいるが
、どうみても昨日信号機と闘っていた彼女だった。
やっべー美人きたっ!
ラッキー!
周りは浮かれているが、幸いというか彼女の席はオレとは反対の窓際だったので、そのまま1限になり顔を合わせる事も無かった。
顔を合わせた所でオレの勘違いだろうし、そんな事で話し掛けたらわざとらしいと噂に成りかねない。
兎にも角にも、この転校生のお陰で綾ちゃんとの事が皆の頭から消えたことには感謝だ。
0033創る名無しに見る名無し2017/09/15(金) 11:33:30.10ID:r3iTIAt+
気づくとそこは横断歩道の手前だった。
白黒色の横断歩道を渡り、黒色のところに右足が乗った時、落ちそうになった。左足を白色に
乗せると、そこは森の崖から森の崖へと渡す吊り橋に立っていた。
下から渓谷の深い谷風が吹き上がり、くるぶしが寒かった。
吊り橋のロープに蔦がからまって、蔦の葉が雨後の滴が朝日の光で宝石のように瞬いていた。
宝石のように虹めいた蔦の葉をしばし眺めていた。
そう言えばと想い返し、庭に咲いているチューリップの花の中に朝日の光が慈悲の光のように、
その花は温かい光に包まれていたことを思い出していた。
うわ、朝のホームルームからいきなりの展開
後は>>33に任せた! 0035創る名無しに見る名無し2017/09/23(土) 11:57:42.20ID:HMa5sNZA
交差点の信号機が赤から青になり、横断歩道信号機は、赤になっていた。
交差点で待っていた車のクラクションの連打の音に、つり吊り橋から現実
の交差点の横断歩道に立っている現実に戻り、外車の運転席から強面の
男が、「どけー」と怒鳴り声にビックリし、もとの歩道に戻った。
>>32からの続き
一限目が終わり、案の定男子が転校生の周りに集まってきた。
それを見て一応の安堵感と少しの嫉妬感を覚えるも、次の教科書に目を通す。何せ次の数Uは小テストな筈だ。苦手な教科であり期末も近いし、ここで少しは点を取っておかないと落第しかねない。
おい行くぞ、戦場が見つかった
見上げると彼女だった。 えっ?
戸惑うオレの手を取り、引っ張って行かれるオレ。後ろからはヒューヒューと揶揄する声がする。
ん?声?教室内は騒がしかったが、一歩廊下に出た途端、全く声が聞こえなくなった。
ちゃんと位相をズラしたな
え?
走れ
オレは彼女の後を追った。
隣の教室、廊下、階段。
一限目と二限目の中休み時間、普通なら廊下に出て騒いでる連中も、誰も居ない。昨日と同じ様に彼女とオレだけの世界の中、昨日と同じ様に彼女の後を追っている。
そしてオレ達は屋上に出た。
屋上につくと、上空からあの鳥がゆっくりと降りてきた。
彼女は手を伸ばし、鳥はその手にすっぽりと入りライトセイバーに変わった。
よし、準備はいい
えっちょ、チョット
何か分からないが、剣を持って準備いいなんてこっちには何もないんだけだ、焦っていると、
まずは私の後ろを離れるな!
そう言うと、足下の、校舎の屋上に居た筈のオレ達は小高い丘の上に居た。
まるでギリシャ神話にでも出てくるような甲冑に剣を携えた物体が押し寄せてくる。
物体?人の型をしてはいるが、それは人じゃない、なんだこいつら?死人か?
見る見るうちに、周りにはそいつらが倒れていく。
何体だ?後何体?
彼女が叫ぶ。
おい、お前も剣を取って戦え!
オレは恐る恐る倒れた物体から剣を取った。
ズシリと重い感覚が上腕に掛かる。まさに剣。ゲームやアニメのようにサクサクと振り回すなんて簡単には行かない、と両手でしっかり握って思った。
てかこんなので斬られたらオレ死ぬんじゃね?
てか、相手も死んで…ん?
剣を奪うと、そのギリシャ神話のような鎧を着た物体はサラサラと砂のごとく溶け出し、跡形も亡くなった。
これは?
そいつらは生物じゃない、人工物だ!
彼女が叫ぶ。
後何体だよ、くそっ
彼女の声はまるで男みたいたった
ピロリロリン♪
剣を構えるとどこからともなく軽快な音が聞こえだ。こんな戦場には似てもにつかないが、そんなことはどうでもいい、音と一緒に空には、カウンターが表示された。
63、64、どうやら彼女が倒す度にカウントアップされるようだ。
さしづめ武双系のゲームかな、と思った。
時間切れだ
突然彼女の剣が鳥に変身したかと思うと、周囲の物体達は消滅した。
またやり直しか
彼女はオレに向かって何やら恨めしそうな視線を投げてきたが、そこで気を失ってしまった。
遠くで鐘が聞こえる。
夢かと思い目を開けると、校舎の屋上だった。
さて、今の鐘は果たして、青い空に太陽の位置と空気の良さ。間違いない、朝礼の鐘だ。
確か、一時限目を終えて……あ、昨日のようにズレたのか?
ゲームやアニメで慣れてはいるが、まさか二回も自分にそんな状況が降り注ぐなんて、テストで全教科満点とるより有り得ない。
そう思いつつ、オレは教室に向かった。
ガラガラっと戸を開けるといつもより早く担任が居た。そしてその隣には彼女が立っている。
やり直し?
どうやらまた同じ、いや微妙に違う日常がやってきたみたいだ。
その証拠に、彼女は何故か空いていた僕の隣の席になった。
彼女が隣の席でにこやかに笑った
までは覚えているが、気付いた時にはまた屋上にいた。
黒板に書いてあった彼女の名前が思い出せずに、どう呼ぼうか考えあぐねていると
「始まるぞ、今度はクリアするよ」
足元の校舎は消え、丘が出現した。
0049創る名無しに見る名無し2017/12/27(水) 09:44:21.86ID:C1Z7QFDy
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参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。
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背中同士に構えると、何故か安心感が沸いた。これも今までとは違う感覚だった。
「今回は行ける気がする」
お互いがそんな意識を共有した。
身体は軽く舞い上がり、あっという間に天空のスコアが0を表示した、クリアだ。
0051創る名無しに見る名無し2018/05/21(月) 06:39:04.68ID:tRZnwP6O
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参考までに書いておきます
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0052創る名無しに見る名無し2018/07/03(火) 21:11:33.92ID:f1dClnnX
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0053創る名無しに見る名無し2018/10/17(水) 16:11:56.53ID:ZU7x6aHX
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