>>337
真凜は昨年、グランプリシリーズのカナダ大会の直前、現地で交通事故に遭ってけがをした。しかし棄権をせずに滑り切った。
今回のアクシデントは、フリー本番での音源ミス。かかった音楽は、フリーの「ラ・ラ・ランド」ではなく、エキシビション用の曲、レディー・ガガの「アイル・ネバー・ラブ・アゲイン」だった。演技をいったん中断したが、気持ちを切り替えてエキシビション用の曲でフリーを滑り始めた。1分以内に演技を再開しないと失格となるからだ。
3月に滑ったきり、振り付けも忘れていたという曲に合わせて、ジャンプやスピンを即興で入れ、フリーの演技として滑り終えた。演技後のインタビューで真凜は「まだドキドキしている。ほとんどアドリブで滑りました」と振り返った。
まさに「氷上の即興劇」。ファンの間では、その対応力を絶賛する声が上がったが、米・ラスベガス在住でフィギュアスケートの振付師(コリオグラファー)の村主章枝さんは、フリーの演技を映像で見た上で、こう話した。
「普通に考えて、考えられないミス。でも、エキシビ用の音源がフリーの時間とあっていたのが幸運だったと思います。通常エキシビ用の曲は3分15秒とか3分半ぐらいと短いですから。最後のステップシークエンスに競技用の要素も入っていました。フリーとして若干練習していたのではないかと思いますね」
「真凜選手は、華やかさと滑りの質の高さが非常にある選手。滑りが滑らかで美しくて、流れがある。そこに『力強さ』が加わればさらに良いと思います。他の選手の中に入っても消えない個性の強さみたいなものが出てきたら、もっと彼女は伸びていくと思います」
演技構成点の中の『スケートの技術』や『トランジション(つなぎ)』には確かな伸びを感じさせる、と村主さんは言う。次のステップに踏み出すときがきているようだ。
「あえていえば今は『キレイでとってもいいですね』で終わってしまうような魅力です。今後は曲の解釈を掘り下げたり、音楽の理解を深めたりして、
プログラムを自分にしかできない一つの作品として仕上げることができれば、さらなる高みに行けるのではないかと。そうなれば唯一無二の存在になれるというか、彼女らしさがもっと出せると思います」
それにしても、アクシデントにも動じずフリーを滑りきった対応力は評価されていいだろう。氷上のアクトレス(女優)」といわれた村主さんは、真凜の可能性をどう見るのか。