今思うと嫁の事は子供の頃からずっと好きだったんだと思います。ずーっと一緒だった事と思春期特有の照れがそれを邪魔していたのかと思ってます。
高校を卒業して嫁と疎遠になった時に、なんとも言えない寂しさを感じたのは嫁が原因です、ただそれに気づくには随分と回り道をしましたが。

その気持ちに気づくきっかけとなったのは、何が理由なのかわかりませんが嫁が、実家より姿を消したことです。
「昼間までは部屋に居たはずなのに」そう言う義母さんからの連絡を受けて考えられる限りの場所を探しました。が、見つけることも出来ず立ち寄った様子もない。最悪の事も考えました。
その頃は割と症状も安定しており、まさかこんな事をするとは・・・
諦めて深夜のアパートに戻ると、私の部屋の前に人影が。コートを着て体育座りの嫁。
動揺を抑え、冷静に「どうした?待っててくれたのかい、それなら連絡くれたらよかったのに」
すると嫁は大粒の涙をボロボロとこぼしながら、私に抱きついてきました。身体はすっかり冷え切っていたので取り敢えず部屋の中に招き入れ、座らせ、ストーブを灯し、そしてインスタントですがコーヒーを入れて嫁の前に置きました。
「なんか俺に話したい事あった?それとも家て嫌なことあった?」冷え切って少し震えている嫁を毛布で包み込みながらそう聞いてみました。
「もう家に迷惑かけられない。でも頼る人もいないし、気がついたらここに来ていた」
「そうか、そうか」嫁の頭を撫でながら「つまり俺の事を頼ってくれたんだ」コクリとうなづく嫁。
あー俺こいつの事好きだわ、なんで今まで気づかなかったんだよ
取り敢えず嫁の実家には嫁が見つかった事、今は俺のアパートに居る事を伝えた。「もう夜も遅いので、嫁はここに泊めますので、迎えは明日にでもお願いします。」ご両親は安心し、納得してくれました。