嫁と付き合いだしたのは20代半ばだけど、高校は一緒で、1年の時は同じクラスだった
当時はまともに話した記憶もなく、お互いその頃の印象は薄い
でも夢に出てきた女の子は間違いなく当時の嫁で、不思議に俺の覚えている記憶以上に鮮明だった

謎が判明すると、俺はなんだか嬉しくなってきた
もう会えないなんてとんでもない、俺はその女の子と結婚までしたんだ、と
そして恋する彼女に会いに、ウキウキと一階のリビングに降りた

嫁はキッチンにいた
俺がおはようと言うと、嫁は何か作業をしながら俺の顔を見ずに、
おはよう、あ、今日から便座暖めてるから、蓋は必ず閉めるように
とピシャリと言った
うん、分かったと言って、改めて嫁をよく見てみると、そこにいたのは当たり前だけど小柄で可憐な少女ではなく、小振りな中年女性だった
家の中であり得ないくらい厚着をしていて、もこもこ熊を狙う猟師みたいな格好をしていた
その姿を見て、ようやく本当に目が覚めた
ウキウキした気持ちも、起きた瞬間の哀しい気持ちもさっぱりなくなっていた

この前の三連休、嫁実家に行ったときに、嫁母が10歳になるうちの娘を、どんどん嫁が子供の頃そっくりになっていくねー、って言ってたんだよね
妙に印象に残っていて、それで無意識に、俺の持ってる一番古い嫁の記憶にアクセスしたのかな