慰謝料は間男と元嫁あわせて1000万とは書いたが、大半は間男が用意したカネだ。
そして元嫁が逃げ出せないように速効で子供をこさえたって訳。
間男にとって誤算だったのは、元嫁を俺に会わせたくないがために娘と俺の面会を妨害したことで
俺が娘に対する愛情を次第に喪失していき、養育費を払わなくなったこと、
それと俺が元嫁に対する態度を変え、ハメ撮りをばらまくようなことができるようになったことだ。
ワンマン社長でいきがってた間男の会社だが、俺が徹底的にやり返したことも手伝い不況の波を乗り切れず潰れてしまった。
借金にまみれた挙げ句に無理心中を図り、土壇場でとうとう元嫁と娘と息子に逃げられ、
厳格な元嫁実家も流石に時限つきで避難することを許し、それを苦にして間男は自殺した。
こんな経緯だ。間男が描いた筋書きに気付いたのは自殺後の話で、
ハメ撮りを送り付け自分から不倫をバラした意味に当時は気づくことができなかった。
そんなもんだから、娘に対する負い目と元嫁への同情で呼び寄せたときは再構築も真剣に考えた時期があったんだよ。
だけどどうしても許せない存在がいた。それが間男との間に生まれた息子。
いくら本人に罪はないとはいっても、俺からすれば間男の悪行の結晶だ。
こいつさえいなければやり直すこともできたかもしれない。
だけど、悪気なく俺の金で育つこいつを見ているうちに、それを生んだ元嫁へも憎しみが募っていった。
もともと俺の他は嫁と娘しかいなかった家庭に、異物が、男が、それもまだ生きていたら
この手で殺してやりたい奴の血を引いたクソガキに愛情を振り撒く元嫁がどうしても許せなかった。
どれだけ元嫁が俺に甲斐甲斐しく尽くしてくれても、クソガキにたいしてもよい父親であろうと
精一杯仮面を被り続けた俺には次第に元嫁の血族そのものが重荷になっていったんだよ。
そんな時に今嫁と出会ったんだ。それが現実逃避なのは分かっていたが
そんな俺を今嫁は受け入れてくれた。
だから上の娘を送り出し、下の娘が一人立ちするその日までずっと仮面を被り続けていられた。