2023年、ワールドシリーズ。 それをテレビで見つめる男がいた。18歳で将来を嘱望されファイターズへ入団した、大谷翔平さんだ。
「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する大谷翔平は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。ワールドシリーズで、俺が完封する夢を」
大谷さんは23歳の時にエンゼルスと契約し日米で話題をさらったものの、6月上旬に肘を故障、以降は出場することなく4年後エンゼルスから戦力外通告を受けた。
今はゲイバーを営む傍ら、地元の少年野球のコーチを勤めている。暖簾の屋号の文字は元日本ハム栗山監督の手によるものだ。
「いらっしゃい」。盛岡駅東口から歩いて3分。『ゲイバー♂♀二刀流』のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると白いメイクの大谷さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『二刀流』という文字は栗山さんに書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙でも取り上げてもらった。おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
大谷さんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。かつてのライバルで現ドジャース所属の菊池雄星について尋ねると…
「知ってます?NPB時代は僕の方が注目されてたんですよ?」と、おどけ
「俺も怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度はこのゲイバーで日本一になれるよう、がんばるだけです!」

(写真)シャンパンを手に持つ大谷さん