燃料投入;修造の目:

 なんであんなにふわふわしちゃってたのか。もったいない。
勝てた試合だった。それがもの凄く圭の心にもあるはず。
ドローを考えれば、決勝まで行くチャンスは十分あった。

 確かにティエムは世界1位になれる選手。
しかし浮き沈みが激しく、プレーの選択もまだまだ。
大事なポイントで勝手にミスもしてくれる。
圭も口にはしないが、今日のティエムがとんでもなく強かったとは感じていないだろう。
だからこそ悔しい。

 3回戦のプレーが素晴らしかったので、おそらく圭は同じように
「打てば入る」という“ゾーン”の感覚でプレーしようとした。
本当に調子が良くて、感覚も戻ってきたからこそ、ドンドンいこうと。
相手の弾むボールも一生懸命打ち返そうとするのでなく、タイミングで返そうとした。

 ただし、それにしては全然足が動いていなかった。
ティエムの球は激しく弾む。それを手だけで合わせて返そうとすればするほど、どんどんおかしくなる。
ストロークのタイミングは全て早くなり、打点が前にズレていた。
普通は押されると後ろになるが、そうじゃない。
だから圭に押し込まれている感覚はない。だが前にズレた分だけ球は軽く、コースは内側に入って甘くなった。
バックのストレートを何度も打つけど、内側に入ってくればティエムのフォアの格好の餌食。
最悪のパターンだった。

 前向きに捉えるなら、それだけ圭が戻ってきたということでもある。
4大大会優勝のチャンスだという思いがなかったはずがない。
ハングリーで自分への期待感を高めていた。その分だけショックな敗戦だった。