前頭松鳳山の地元・築上町にほど近く、松鳳山も「行橋は自転車でよく来ていた」と懐かしみ、巡業当日は、ファンからサインを求められれば気さくに応じていた。
そんな中、朝稽古でひときわ大歓声を受けていたのが、地元の松鳳山ではなく、初場所で関脇に返り咲く玉鷲だった。
玉鷲が土俵に上がると、2階席に陣取った地元の幼稚園児から「頑張れ〜」の大合唱が起きた。
玉鷲はモンゴル出身。
何の縁もゆかりもないと思っていたが、稽古後の玉鷲に話を聞くと、実は「もう何年も前から、ここには来ているからね」と得意満面だった。
勧進元を務めた、一般社団法人行橋未来塾代表理事の江本満氏が、7年ほど前から片男波親方と交流があった縁で、その弟子の玉鷲も5年ほど前から毎年、行橋市の幼稚園などを訪れていた。
江本氏は、25年前の巡業で力士らと交流した経験を、うれしそうに話す地元住民の話を聞くたびに「いつかまた、行橋で巡業を開きたい」と思い続けていた。
今年の開催に向けて、数年前から準備し、玉鷲らを招いて巡業招致への機運を高めた。
そして、満を持して相撲協会に巡業を申し込んだ。
日本相撲協会の巡業部からは、集客などを心配されたが、江本氏は「家を売ってでも実現します」と成功を約束。
当日は実際に満席で、札止めの大盛況だった。
近隣の市町から20軒を超える出店が並び、250人を超える親方衆や力士、行司、呼び出しら巡業参加者全員に、それぞれ500円分の食事券が配られた。
江本氏は「食事券があることで、お相撲さんが出店に買いに来てくれたら、それだけ市民と触れ合う機会が増える。触れ合えば『またお相撲さんに会いたい』と思う子どもたちも増える。
それが、次にまた行橋に巡業が来てほしいという思いにつながれば。自腹ですが、そのためなら食事券ぐらい安いものですよ」と笑った。
勧進元あいさつでも、江本氏は夢を実現させて、声を震わせていた。
その姿を見て、多くのスタッフは涙を流して喜んだ。
これこそが巡業のあるべき姿だと思いました。
強い思いがあれば、多くの人が力になりたいと助けてくれる。感動しました」と話し、江本氏やスタッフらとがっちりと握手を交わしていた。
玉鷲も「お客さんもいっぱい入って、みんな盛り上がってくれて本当によかった」と喜んだ。
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