羽生結弦、負傷を乗り越え滑り切った「ファンタジー・オン・アイス2024」 アダム・シャオ・イム・ファは革新的な演技を披露
沢田聡子2024年5月27日 11:40
スポナビ

切れ味鋭いステップをみせた羽生 【写真:松尾/アフロスポーツ】

羽生の新プログラムはセルフコレオ

 5月24日に開幕した「ファンタジー・オン・アイス2024」幕張公演のオープニング、大歓声の中をいつものように全力で滑り出てきた羽生結弦の額には、絆創膏が貼られていた。21日、プログラムの練習中に氷に額をぶつけるアクシデントがあり、約2.5センチ縫ったという。

 事情を知るファンが心配しながら見守る中、羽生は不安を払拭する滑りを展開する。第1部では、3月に行われた「notte stellata 2024」で初披露した『Danny Boy』(デイビッド・ウィルソン振付)を再演。羽生の真骨頂といえる美しいピアノ曲を、白い衣装をなびかせて優雅に滑った。「notte stellata 2024」初回公演後に「コンセプトは、“希望”です」と説明していた通り、今公演でも観る者に希望を届けた。

 第2部では、T.M.Revolution/西川貴教が歌うTVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』の挿入歌『ミーティア』に乗り、セルフコレオによる新プログラムを披露した。アーティストとスケーターのコラボレーションは、「ファンタジー・オン・アイス」ならではの見どころだといえる。公式プログラムのインタビューで「ぼくはやっぱり西川さんの歌声に合わせた滑り方をしたい」と語っている羽生は、鋭角的な動きで力強いボーカルを表現。切なさが漂う歌詞を伸びやかな滑りで体現し、トリプルアクセルも決めてみせた。羽生が新たなプログラムを披露する度に彼に合った選曲だと感じさせるのは、どんな曲も深く理解し表現する力を持っていることの証明なのだろう。

 続くフィナーレで、T.M.Revolution/西川貴教の代表曲『HIGH PRESSURE』に合わせて羽生がみせた切れ味鋭いステップは、プロ転向後に積んできた、陸のダンスを氷上で再現する努力の結晶にみえた。常に全力で練習に取り組みつつ、たくさんのアイスショーで演技を披露し続けるというプロならではの厳しい道程を、羽生は敢然と歩み続ける。