重光由美氏の状態は、「現代型うつ病」の@からHのほとんどに当てはまるが、その中のいくつかを具体的に示す。
「B早期に受診」、平成12年12月頃「こころのほっとステーション」へ電話相談をし、
そこでの指示の結果と思われるが、12月13日にHクリニックを受診している。
当日のカルテには「頭痛とか不眠が続いている。寝つきが悪く朝も早く目がさめる。
仕事の途中で車酔いしたような感じが出たりする。」と簡単な記載があるだけで、本人が受診動機について、
こころの電話相談によって受診したとか、仕事のストレスについて訴えた様子は伺えない。
投薬内容も、デパス0.5mg1錠を眠前に14日分の処方である。デパスの用量は、
「神経症・うつ病:1日3mg、3回分服」となっているので、主治医はおそらく非常に軽症ととられていたと思われる。
「C症状が出揃わない」。ことが、平成13年4月の医師たちの診断の不一致を作ったのではないだろうか。
「E趣味を持つ。」趣味は、スキー、エアロビックス、テニス、パラグライダー、ウィンドサーフィンと多彩で、
休んでいる最中でも、日曜日にはエアロビックスに行っていた。
「Gインクルデンツを回避;几帳面、律儀ではない」、自分の性格は大ざっぱだと見ていて、友人からはどちらか
と言えばずぼらと言われているという。
「Hレマネンツ恐怖;締め切りに弱い」、発病前後の重光氏の業務に対する受け止め方は、まさにこのような感じ
ではなかったか。
一方、メランコリー親和型うつ病は自責的であることが特徴の一つとされるが、重光氏にはそのようなところは
見受けられない。むしろディスチミア親和型うつ病あるいは外罰型うつ病の特徴である他責的な面が色濃く
見受けられる。これらのうつ病の他の特徴として、抗うつ薬の効果は部分的にとどまり、休養の効果も期待できず
しばしば慢性化し、外罰型うつ病では休養により慢性的には悪化すると言う。
以上重光由美氏の病態は、新しいタイプのうつ病であったと思われ、平成13年4月頃の発症とするのが妥当
と考えられる。