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【禁断】小狼×知世をひっそり語るスレ【村八分】
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0001CC名無したん2018/04/08(日) 23:03:53.53ID:gsYrtu+L0
小狼×さくらの公式カップルに萌える人が大多数の中、あえて小狼×知世のカップリングについて語りましょう。

一度このカップリングを語ろうものなら、しゃおさくのお姉さま方に絶対零度の視線を浴びることは必至。
変人っぷりを自覚して今まで内に秘めていたけれどツイッターなどでは語る余地もない…などとお嘆きのあなた!
溜まり溜まった小狼×知世への想い、妄想をお待ちしております。
0086CC名無したん2018/04/24(火) 13:37:17.43ID:0VuFPVjM0
さくら「知世ちゃんにホットケーキ食べさせてあげたいな〜♪」
0087CC名無したん2018/04/24(火) 18:00:20.32ID:Kd/f7uR80
>>9
Kanon知ってるのか
舞報われんなあ
0088CC名無したん2018/04/24(火) 18:21:32.46ID:eYKSIKoP0
さくら「小狼くんにも ごはん作って持って行ってあげよ〜♪」
0089CC名無したん2018/04/26(木) 17:57:33.81ID:DkdE3RXu0
さくら「エビフライ🍤食べたいな〜
0090CC名無したん2018/04/26(木) 23:11:17.87ID:jaYUEkt60
ヤンデレのさくらちゃんに死ぬほど愛されて眠れない小狼はよ

知世ちゃんは、仮に小狼のこと異性として意識することがあっても、別にそれで動揺したりすることはないイメージ。
さくらちゃんが一番って軸はブレないで、自分で感情の整理つけられるっていうか
0091CC名無したん2018/04/27(金) 09:27:48.87ID:UaeTmSGv0
さくら「小狼くん、違うクラスだけど 授業中でも会いたいよ」
0092CC名無したん2018/04/27(金) 10:03:09.51ID:RKNWCEOw0
>>90
さくらはLove、小狼はLike?Love?の狭間でどちらも叶わぬ想いを育む知世ちゃんを見たい(*´д`*)ハァハァ
0093CC名無したん2018/04/27(金) 13:09:33.65ID:bBBSCz5q0
さくら「お昼休み 終わっちゃったな〜」(小狼くんと離れたくないよ)

さくら「午後からもがんばる!今日 知世ちゃんにホットケーキ食べさせてあげよ〜♪」
0094CC名無したん2018/04/27(金) 20:49:26.86ID:pxD4AaXw0
さくら「小狼くん いま何してるかな〜電話してみよっと♪」
0095CC名無したん2018/04/29(日) 00:17:53.10ID:UAQWaEKQ0
「これ、苺鈴から預かって来た。貸してくれてありがとう」
小狼が差し出したのは、先日知世が苺鈴に渡した記録媒体だった。
小さな物体の中には、知世が厳選した映像が詰め込まれている。
「まぁ、返してくださらなくてもよろしかったのに」
「これは大道寺のものだし、それに、苺鈴は借りたものは必ず返さないと気が済まない性質だから」
義理堅いお二人ですわ。知世はニコリと微笑んで、そっと手を伸ばした。

受け取ろうとした知世の指に、渡そうとした小狼の指先が触れた。
「す、すまない!」
小狼は何か熱いものにでも触れたかの様に手を引っ込める。
知世の心もとくん、と跳ねる。
けれど、なんでもない風を装ってにこやかに尋ねた。
「お気になさらず。それよりもいかがでした?、さくらちゃんの最新映像。超絶可愛らしかったでしょう?」
「あ、ああ。あ、……いや、その、あの、なんというか」
続きをいい淀む小狼の顔は、少し、赤い。
それは、さくらちゃんのことを話題にしたから?それともーー。
「それにしても、残念ですわ。さくらちゃんさえ許可してくだされば、スカートの中の際どいところまで激写した、超秘蔵映像もお渡しいたしましたのに……!」
えぇぇぇっと仰け反る小狼に、知世はおほほほほほ、と笑ってみせる。
たじたじの小狼がなんとか言葉を紡ぎ出す。
「だ、大道寺はすごいな。あんなにたくさん、さくらの映像を」
「それが私の使命ですから」
「それに、歌もすごくよかった」
「歌、ですか?」
「ああ、入れてくれてただろう、フォルダの一番下に」
0096CC名無したん2018/04/29(日) 00:18:23.78ID:UAQWaEKQ0
知世はハッとした。苺鈴に頼まれてデータをコピーした時、同じフォルダに入っていた自分の歌までコピーしてしまったに違いない。
あれだけのデータを渡したというのに、律儀なことに、小狼はそれまで聞いたというのだ。
「申し訳ありません。入れるつもりはなかったんですが、間違えて一緒にお渡ししてしまったみたいですわ。お聞き苦しいものをお聞かせしてしまいましたわね」
肩をすくめて知世が謝ると、小狼は驚いたような顔をした。
「いや、そんなことはない。あの時は、カードのせいで落ち着いて大道寺の歌を聴くことができなかったから残念だと思っていたんだ。だから」
こほん、と一つ咳払いをした。
「聴けて、本当に良かった」

彼の言葉は不思議だ。私を嬉しくしてくれる。端的で、飾り気のない言葉は、人によっては怒っているように聞こえるかもしれない。けれど、その奥には彼の優しさや実直さが溢れていて、それが私の心を動かして、私の中の「何か」が形を変える。
知世は、映像を見て振り返ってみようと思うほどに自分の歌に価値を見出したことはなかった。しかし、小狼の一言で、知世は初めて思った。
たまには、自分の歌を聞いてみるのも悪くないかもしれませんわねーー。

さくらちゃんへの好きとは違う彼への気持ち。
彼を想う自分は、好きな自分が増えていく。
知世の心は一瞬触れた小狼の指先みたいに暖かかった。

なかなか返事を返さない知世の様子に、小狼は何か勘違いをしたらしい。「あ、いや、もちろんこの間音楽室で歌ってくれた歌もすごく良かったんだ!ただ、あの時は俺がピアノを弾いていたし……詩之本も一緒に歌っていたから…!」
しどろもどろでフォローしようとする小狼があまりに一生懸命で、知世はなんだかおかしくなってしまった。
「李君、そんなに慌てなくても大丈夫ですわ」
くすくすと笑い出した知世に、小狼はあっけにとられている。
「でも、そうですわね、私の歌を良かったと思ってくださるのでしたら……」
緊張した面持ちで小狼が息を飲む。
「また、ピアノで伴奏をしてくださいな」
知世の言葉に小狼の顔に穏やかな笑みが広がった。
「俺でよければ」
0097CC名無したん2018/04/29(日) 00:24:08.85ID:UAQWaEKQ0
>>31の設定をいただきました。感謝
小狼に俺でよければと言わせたかっただけです
皆様のも是非読ませてくださいね
スレ&スペースだいぶ使わせていただき、ありがとうございました
0098CC名無したん2018/04/29(日) 02:41:30.69ID:9FGAz2yN0
素晴らしいですわ!
0099CC名無したん2018/04/29(日) 04:06:48.82ID:tQflKI+e0
さくら「💤小狼くん………」
0100CC名無したん2018/04/29(日) 04:47:52.87ID:tQflKI+e0
さくら「目が覚めちゃったけど まだ眠いや…寝よっと♪」(小狼くんの夢 みれるといいな\\\♥)
0102CC名無したん2018/04/29(日) 09:29:14.44ID:N2n7SfEc0
>>97
読んでいてニヤニヤしました、使ってもらってあざます!
小狼にそんな俗世の欲望があるのかイマイチ謎だけどw

実は自分のが前に出ることにコンプレックスがあった知世の設定に先週は驚いたけど、それを生かして小狼の言葉に癒されるところは相変わらずお上手!
俺で良ければ、と承諾したのが次のお話のカギでしょうか(ニヤリッ
0103CC名無したん2018/04/29(日) 12:42:58.91ID:UAQWaEKQ0
そんな次々アイディアは浮かんでこないですw
先に投稿していただいて、それをすごく楽しませてもらったので
じゃあ自分も少し貢献してみようかと書き始めただけなので

需要があって(ここ重要)、自分の書きたいものがあったら、その時はまた書いてみます
0104CC名無したん2018/04/29(日) 12:54:47.63ID:Z5oEVNUo0
さくら「小狼くん………」
0105CC名無したん2018/04/29(日) 15:18:53.89ID:N2n7SfEc0
>>103
自分は表現したいシーンは割りと浮かぶんだけど、肉付けする技量がないのですよね
豊かな語彙と表現力を持つ人には憧れますね
こんなの読みたい!で投稿してみたんだけど、触発してくれた職人さんが一人でもいらっしゃって感無量ですw

需要はあるので(確実)いつでも!
お話に限らず、絵師さんなども来てくれると嬉しいですね
0106CC名無したん2018/04/29(日) 18:58:51.58ID:ubxkreVp0
さくら「知世ちゃんとお出かけ 楽しかったな〜♪知世ちゃんとごはん食べて帰ろ」

さくら(知世ちゃん、何か思いつめた感じだったけど 大丈夫かな……)
0108CC名無したん2018/04/30(月) 13:32:20.23ID:LC3X/fwm0
>>96
さくら(小狼くん ずっと私のこと好きでいてね……不安だよ…)
0109CC名無したん2018/05/01(火) 00:09:19.20ID:j+VOB94R0
>>96
ヤバいなしゃおともに堕ちそうw
0110CC名無したん2018/05/01(火) 00:26:57.71ID:YqVVbR+Q0
知世ちゃんは少し変わったと思う。
最近特に綺麗だし(前から綺麗だったんだけど)、とても楽しそうだ。
それに、これを言っていいのかわからないけど、時々自分の歌を撮るためにカメラを用意していることがある。
「珍しいね、知世ちゃんが自分の撮影のためにカメラを用意するなんて」
「はい。後で見返すと修正点がよくわかりますので。おかげさまで先生にも進歩が早いと褒めていいただけるようになりましたわ。」
知世ちゃんの歌本当に素敵だもんね!と喜ぶさくらちゃんに、
「あとで李君の伴奏姿、コピーしてお渡ししますわね」
と、耳打ちするのは相変わらずだ。ゆでダコみたいになって、ほえぇぇぇぇ!と叫ぶさくらちゃんも相変わらずだし。
あと。そう、李君も。中学生になって戻ってきた李君は、物腰が柔らかくなって、よく笑うようになった。まぁ、小学生のころの李君を知っている自分としては、なんだか変な感じなんだけど。
最近は率先してピアノを弾いてくれる。昼休みにもよく音楽室で練習をしているみたいだ。一緒にお弁当が食べられなくてさくらちゃんはちょっと寂しそうだけど、知世ちゃんのコンクールが近いんだもん、仕方ないよね、と笑っていた。
「なんかちょっと、心配なんだよね」
誰にともなく呟いた言葉に
「二人はちゃんとわかっていると思うよ」
と、わかったようなわからないような顔をして山崎くんが返した。
0111CC名無したん2018/05/01(火) 00:27:22.56ID:YqVVbR+Q0
今日も、知世ちゃんの歌を見学させてもらった。もちろん伴奏は李君だ。
曲のテンポやタイミングを打ち合わせるため、知世ちゃんがピアノの前に座る李君に話しかけている。それに真剣な眼差しで答える李君。
黒髪がさらさらと揺れて抜けるように白い肌が眩しい知世ちゃんと、少し気の強そうなところもあるけど紳士的な振る舞いの李君は、お世辞抜きに絵になっている。二人とも落ち着いていて、まさに良家のお嬢様、御坊ちゃまの図。
実際、知世ちゃんは大きな会社のお嬢様だし、李君も香港ではものすごいいいとこの御曹司なんだっけ。山崎君情報も時には侮れない。
そっとさくらちゃんの方を見てみる。さくらちゃんは楽しそうに奈緒子ちゃんと秋穂ちゃんとおしゃべりをしていて、その笑顔は幸せそのものだ。

私たちが着席して曲が始まる。他の人は目を瞑ったりして(山崎君の目が元から開いているのか閉じているのかよくわからないってことは置いておいて)聞こえてくる音に耳を澄ましている。けど、私は二人を見ていた。
歌い出しのタイミングを見計らって李君が知世ちゃんををちらりと見る。
伴奏の複雑なところで、知世ちゃんが李君の方をさりげなく気にする。
当たり前のことなんだろうけど、お互いをちらりちらりと伺う様子はなんだかこそばゆい。
二人の目があって、思わず微笑みあっている姿は見ているこちらがドキドキしてしまう。
世界にはまるで二人しかいないみたいで、少し、羨ましいーー。
魔法みたいな時間が終わって知世ちゃんが礼をした。一斉に拍手が湧き上がって、私の隣に座っていたさくらちゃんが駆け寄る。
「知世ちゃん、すっごく素敵だったよ!小狼君もすごいね!」
口々に感想を言い合う友達たちを遠巻きに眺めている私に山崎君がぽつりと言った。
「僕たちにできることは、彼らがどんな未来を選んだとしても、幸せであるように願うことだけじゃないかな」
そうだね、山崎君。さくらちゃんも知世ちゃんも李君も、みんな大切な友達だもの。
……って、山崎君、嘘を振り撒きに行かないの !!
0112CC名無したん2018/05/01(火) 00:29:40.35ID:YqVVbR+Q0
うん。アイディア湧いてきた

>>109
お待ちしていますw
0114CC名無したん2018/05/01(火) 10:04:14.08ID:cgFbbsqm0
千春ちゃん視点!いいぞーこれ!
0115CC名無したん2018/05/01(火) 20:18:06.16ID:h8C63yur0
す、すごい…
千春ちゃんまでもがドキドキしていることで美しい絵画のような情景が浮かびます
良き作品をありがとう…ありがとう……
0116CC名無したん2018/05/02(水) 00:21:15.89ID:Ipr1Ekni0
さくら「知世ちゃん、おやすみ💤」
0117CC名無したん2018/05/02(水) 00:21:38.06ID:gSQ86fzY0
カツカツと黒板に数式を書き付ける彼の瞳は真剣そのものだ。
「よし、正解だ。李、よく勉強しているな」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げて自分の席に戻る李君に、さりげなくピースサインを送る。李君は、はにかむような笑みを返してきた。

「李君、今帰り?」
「あぁ、山崎はクラブ活動か」
「うん、最近暑くなってきたから、嫌になっちゃうよ。やっぱり落語研究会があればよかったんだけど」
二人の間に歌声が流れてくる。音楽室のコーラス部だ。
「大道寺さんの声だね」
「そうだな」
頷く李君の表情は優しい。
「すごく上手くなってる。李君が練習に付き合ってるおかげだね」
「役に立てているのかはわからないけど」
「助かってるんじゃない、きっと。コーラス部の他の子も、ぜひ李君に伴奏をお願いしたいって言ってたしね。そうそう、伴奏って言えばね……」
おっと、いけないいけない。つい余計な癖が出てしまいそうになる。あはははは、と笑って誤魔化してみるけど、期待で満ちた李君の視線が辛い。
「それより、李君はまだクラブ活動やらないの?いっそコーラス部に入っちゃえばいいのに。コーラス部の人、喜ぶんじゃない?」
「いや、やらなければならないことがあるから。それに、俺が伴奏を引き受けるのは、大道寺だけだ」
「大道寺だけ」と言う言葉に不意を突かれる。「あれ、李君て……」と言いたくなるのを慌ててつぐむ。大丈夫、僕は野暮なことは言わない主義だから。それに、多分、李君にもいろいろあるんだと思うし。
0118CC名無したん2018/05/02(水) 00:21:57.63ID:gSQ86fzY0
「ところで、山崎」
「なにかな、李君」
「落語って、なんだ?」
・・・・・・え?
「いや、後で調べようと思っていたんだが、すっかり忘れてしまっていて。誰も質問しなかったから、多分、みんなは知っているんだよな。それは、何か、研究に値するものなんだろうか」
数学ができて英語も喋れて運動も万能。最近じゃピアノも弾けるスーパーヒーローだっていうのに、李君、君って人は……。
「落語っていうのはね……」
ぴこん、と頭の中で何かが閃く。
「そうだ、今度、みんなで観に行こうか!」
「観に、行けるのか!」
「うん。僕、調べておくから。僕は千春ちゃんと木之本さんに声をかけておくから、李君は大道寺さんを誘っておいてくれる?」
「えっ。な、なんで、俺が、大道寺を……!」
「だって、僕はこの後クラブが終わったら、チアリーディング部の終わった千春ちゃんたちと合流するし、李君はどうせ歌の練習で大道寺さんと会うでしょ?だから。よろしくね、李君」
カチコチになってしまった李君にさよならを告げて、僕はクラブ活動に向かう。
数式に向かう君、ピアノに向かう君。どんな時も李君はいつも真剣だね。
それは誰か対してもおんなじで、一生懸命に、誠実にあろうとしている。
でもね、李君。迷うことは間違いじゃないよ。今正解だと思ったことが、将来、正解かどうかはわからないんだ。いっぱい迷って、悩んで、見つけた答えなら、きっとそれが正しいんだ。
僕らはまだまだ中学生で。きっといろんなことが待っているよ。
僕の嘘に騙されたり、落語を知らなかったり。
でも僕は、そんな李君と友達になれてよかったと思う。
だから、一緒に、迷って、悩んで、答えを見つけていけたらいいね。
数学も、恋も。
ね、李君?
0119CC名無したん2018/05/02(水) 00:26:43.98ID:Ipr1Ekni0
さくら「もう これ以上みていられないよ!」
0120CC名無したん2018/05/02(水) 00:39:36.20ID:gSQ86fzY0
>>119
大丈夫次で一旦話は収束するから
0121CC名無したん2018/05/02(水) 02:03:13.48ID:BLxi9hyo0
素晴らしいですわ!!!
0123CC名無したん2018/05/02(水) 08:16:50.00ID:lJGNI+Ew0
さくら「いえいえ……続けても いいよ〜 もう!小狼くんなんか!!」
0124CC名無したん2018/05/02(水) 20:13:12.14ID:eBVkXaci0
ちゃんと小狼を尊重してくれてる山崎君よすぎる。。
0125CC名無したん2018/05/02(水) 21:30:38.52ID:gSQ86fzY0
落語を見に行こうと言い出したのは山崎君で、でも千春ちゃんが断固拒否したからお流れになってしまった。多分、前に山崎君と二人で見に行って
、その後山崎君が落語家さん風になってしまって大変だったからだと思う。
結局、私が持っていた落語のDVDを貸すことで話がついたんだけど、落語を生で見られなくなった李君と秋穂ちゃんはとても残念そうだった。
「でも、なんで奈緒子ちゃんは落語のDVDなんか持っていたの?」
「落語も一人芝居の一種だから、脚本の勉強になると思って」
「へー、そうなんだ。奈緒子ちゃん、色々勉強してるんだね!」
さくらちゃんが褒めてくれて、少し、嬉しい。さくらちゃんと李君には私の脚本で劇をしてもらったから、なんだか思い入れがある二人だ。
だから、脚本の参考にさせてもらおうと思っていたけど、なかなか難しくてうまくいかない。代わりにといってはなんだけど、先日とてもいい題材を見つけてしまった。
「この間の知世ちゃんと李君、本当に素敵だったよねー」
千春ちゃんが言っているのはみんなで見学した知世ちゃんの歌の練習のことだ。私もうんうんと頷いて同意する。
そう。これが私が見つけた新しい題材だ。この間、二人の練習をみてから、ずっと新しい脚本が頭を離れない。

ある国に二人の男女がいる。
二人は密かに想いあっているんだけど、
男の人には許嫁がいて結ばれない。

あらすじ的にはこんな感じ。
配役としては、男女の役を李君と知世ちゃん、許嫁役をさくらちゃんに。それから、千春ちゃんには三人の仲をを心配するお友達役をお願いするといいかも。あと、二人の中をかき回す役なんてあったら面白そうだなって思っているんだけど……。
0126CC名無したん2018/05/02(水) 21:30:58.43ID:gSQ86fzY0
『大道寺』
『はい、なんでしょう、李君』
『その、今度の休みは、何か予定はあるか?』
『今度のお休み、ですか?いえ、特には』
『よかったら、落語を観に行かないか?』
『落語を、ですか?』
『ああ、実はこの間から気になっていて。山崎に聞いたら、観に行けるものだというから』
『まぁ、そうでしたの。私でよ……』
『李君、大道寺さん、おはよう!』
『うわぁぁぁぁっ』
『どうしたの?李君。そんなにびっくりして』
『な、なんでもない……』
『おはようございます、山崎君』
「落語の件なんだけどね、頑張って説得してみたんだけど、千春ちゃんが絶対嫌だっていうんだ。奈緒子ちゃんがDVDを持っているそうだから、それで勘弁してもらえないかって。あ、大道寺さんは聞いた?みんなで落語を観に行く話』
「今、ちょうど伺っていたところですわ』
「でね、どうせなら、このあいだ行けなかった動物園に行かないかってことになったんだ。どうかな?』
「それは楽しそうですわね。ぜひ参加させていただきますわ』
「そうこなくっちゃ。で、李君はどう?忙しい?』
「……俺も行く』
「よかったー。じゃ、また詳しい時間なんかは後で決めよう。大道寺さん、練習頑張ってね』
「ありがとうございます』
「李君もしっかりね。また後で!』
「ああ……』

うーん、お邪魔虫役は、山崎君がぴったりかも。
0127CC名無したん2018/05/02(水) 21:40:32.11ID:gSQ86fzY0
カギ括弧大ミスしてしまったので脳内変換お願いいたします
もう一つネタが温まっておりますがGWなのでお休みです
みなさま、よい休日を!
0128CC名無したん2018/05/02(水) 23:36:37.85ID:NNkg7Er20
素晴らしいですわ〜
0129CC名無したん2018/05/02(水) 23:49:50.36ID:Ot4OV84N0
SS書いてる人たちありがとう…!
正直、しゃおさくスレより居心地良くて困ってるw
0130CC名無したん2018/05/03(木) 04:53:36.39ID:RhjYqj/O0
毎度素晴らしいですわ!!
0132CC名無したん2018/05/03(木) 09:32:32.43ID:IrTCg2Vc0
さくら「もう!小狼くんなんて だいっきらい!」シクシク……ポタッ シクシク
0134CC名無したん2018/05/09(水) 00:52:58.34ID:KloL9oK20
一杯の紅茶を楽しむ時間は忙しい日々の中で貴重なひと時だ。熱々に淹れられた紅茶を飲み干すと、大道寺園美はカタン、とカップを置いた。

『まぁ、明日はさくらちゃんが遊びにくるの?』
『はい、お母様』
『それじゃ予定を調整しなくっちゃ。んもー、知世。もっと早く言ってくれればよかったのに。』
『申し訳ありません。急遽香港からお友達がいらして、それで、遊びに来てくださるようお願いしたものですから』
『それじゃしかたないわね』

方々に連絡をしてようやく明日の都合をつけた。大道寺コーポレーションを背負う者としてできるだけスケジュールは予定通りに消化したい。けれど、彼女が遊びに来るとなればなれば話は別だ。
さくらちゃん。大切な従姉妹の娘。
大好きだった従姉妹を彷彿させる「木之本桜」は、園美にとって大切な宝物の一つだ。彼女のことを想うと自然と心が弾んで来る。
なんとか予定もやりくりできたし、そうだ、ちょっと台所へ行って明日のおもてなしについてメイドたちと相談して来よう。
園美はウキウキ気分で台所へ向かった。
0135CC名無したん2018/05/09(水) 00:53:19.94ID:KloL9oK20
台所では一人のメイドが作業をしていた。
「ね、知世は明日のことについて何か言ってた?」
「はい。お客様にお出しするお茶菓子のことなど、ご指示いただいております」
メイドは礼儀正しく答えた。
抜かりなく準備しているところが知世らしい。園美は知世の用意周到さに舌を巻く。私がいなくてもあの子はちゃんと大人になっていく。それが嬉しいような寂しいような…。
複雑な気持ちで、知世が用意したというリストを手に取った。
シアターで飲むドリンク。ああ、なるほど、みんなで何か映像をみるつもりなのね。
それから、お茶菓子。知世の好きなチーズケーキに、さくらちゃんへの桜ロールケーキ、フルーツタルトは私のかしら?それから……
「ねぇ」
離れた場所から園美の様子を伺っていたメイドに声をかけた。
「この、チョコレートケーキね。私、チョコレートは嫌いじゃないけど、ケーキとしては地味な気がするのよ。もっと派手で綺麗なケーキを用意してもらえるかしら。そうだ、なんなら私が用意しましょうか?素敵なアフタヌーンティー!みんなでいただいたらきっと楽しいわ」
一人楽しげにアフタヌーンティーの計画を立て始めた園美に、メイドは冷静に返答する。
「奥様、それは出来かねます」
「どうして?」
「さくら様がお越しになるときは、必ずチョコレート系のお菓子を準備するように知世様から固く言付かっておりますので」
「知世から……?」
「はい。ただ、実際にそれをお出しすることはほとんどないのですが……」
0136CC名無したん2018/05/09(水) 00:54:05.64ID:KloL9oK20
珍しいこともあるものだと思った。知世はさくらへの衣装などたとえ一度しか着ないものであっても必要だと思ったものには潤沢に資金を費やす。
一方で、誰も食べない嗜好品を購入するような、そういう無駄になるようなことにいたずらに出費するような子ではないのだ。
考え込んでいる園美に先ほどのメイドが思い出したように言う。
「そういえば、先日一度チョコレートケーキをお出し致しましたわ」
「それはいつ? 誰に出したか覚えてる!?」
「いえ、私はご用意しただけで、実際に給仕したわけではないので」
園美の勢いにあわあわしているところに、別のメイドが入って来た。
「あ、ねぇ、あなた、この間さくら様がお越しになった時、お茶をお出ししたわよね?どなたにチョコレートケーキをお出ししたか覚えてる?」
「ええ、知世様と同じ年頃の、男の子でしたわ」
「名前、わかるかしら」
「たしか……。あ、李君、とかお呼びになっていたような……」
李……?
園美は記憶の糸を手繰り寄せる。そういえば以前うちへ泊まりに来た子達が李といっていたっけ。
男の子と女の子で、そう、なでしこ祭の頃。でも、それが初めてではなくて、二人とも2回目だったわ。
女の子は知世と女の子同士の話をしに来て、男の子に初めて会ったのはもっと前。ええと、たしか、知世の声が出なくなった時ーー。
お茶を淹れる手伝をするさくらをじっと見ていた李少年の瞳を思い出す。
あら?でも、あの子、その時にはもう……。
はぁぁぁ、とため息をついて、苦笑いのままふるふると頭を振る。

「もう、報われない子ね……」
0137CC名無したん2018/05/09(水) 00:54:28.67ID:KloL9oK20
思わず漏れた園美の言葉に二人のメイドは顔を見合わせる。
「ね、悪いんだけれど、明日のこのお茶の予定は全部キャンセルして頂戴」
「けれど、奥様…」
「大丈夫よ。私がアフタヌーンティーを作るって言い張ったっていえば、きっと知世も笑って許してくれから。ね? さ、そうと決まったら、色々準備しなくっちゃ!よーし、やるわよー!」

昔の自分と知世の姿が重なる。
自分の気持ちを持て余したまま、一人ただ待っていて、そのうちその人は誰かのものになってしまった。
報われない気持ちを誰よりも知っている私は、チョコレート菓子を用意してただ待っているあの子の気持ちがよくわかる。
親としての私はどれだけあの子を支えてやれているかはわからないけど、こんなときくらい、役に立ちたいじゃない。
知世、さくらちゃんが来るときは絶対、絶対、教えてね。お母さん、お手製のアフタヌーンティー用意するから。

美味しいアフタヌーンティーを作ろう。
チョコレートの君が来なくても、知世が寂しくないように。
0138CC名無したん2018/05/09(水) 01:01:16.35ID:KloL9oK20
いつも寝る前に書いているのでちょいちょい推敲が甘くてすみません
第7話で小狼に給仕されたケーキがちゃんとチョコレートケーキだったところから思いついたssでした
0139CC名無したん2018/05/09(水) 02:50:01.33ID:2TDBXAPr0
チョコレートケーキ!毎度題材が素晴らしい!
カップリングのキャラ本人が不在なのにここまで萌えさせられるものなのだと感嘆の極み
園→藤風味も素晴らしい
0140CC名無したん2018/05/09(水) 14:06:21.51ID:RGtdGGKa0
チョコレートケーキでここまで膨らませることができるとは神
好きな男の子が他の女の子を見ていても、大好物のケーキを用意して待ってる健気さよ
ファンタジーの中のファンタジーなのは分かっているけれども萌える!
0141CC名無したん2018/05/09(水) 19:11:55.79ID:6iM5SnZ90
素晴らしいですわ
0143CC名無したん2018/05/10(木) 19:26:38.28ID:sgqcORzf0
小狼「大道寺…これっていけないことなのかヌギっ
0144CC名無したん2018/05/15(火) 00:30:25.37ID:n4tTKvRE0
知世ちゃんが、小狼に体許すとは思えないなあ
たまたま2人きりの時に、からかい半分で体触らせたりとかはあるかもけど、
キス・エッチとか、愛情表現的なことしてくるのは拒否する気が
0145CC名無したん2018/05/15(火) 05:51:49.11ID:ooHt7ZJw0
小狼「大道寺…\\」
知世「\\\\\李くん お洋服を着てください!」
0146CC名無したん2018/05/15(火) 16:50:53.84ID:dsQzmLTo0
小狼もその辺の欲求は少なそうだからなあ
付き合っ!じゃない女の子に手を出すとは思えん
その上で色々思い悩む小狼の頭を、ふいに自分の胸の中に抱き寄せる母性本能全開の知世とか見てみたいハァハァ
0149CC名無したん2018/05/17(木) 00:17:39.70ID:AjrSMevP0
さくらが正体不明の何かを追いかけていく。
それを追いかけて小狼も走り出した。

この庭は迷路になっているのか。少し厄介だな。
広大な敷地の一角は、大きな迷路になっていた。小狼の気持ちとは裏腹に、迷路はさくらの向かった方向になかなか行かせてはくれない。
どうすれば最短でさくらの元へ行けるのか。意識が走ることから逸れたとき、小狼は後ろから追いかけて来る足音にはたと気がついた。知世の足音だ。スマホを構えたまま、後ろから追いかけて来る。
知世はスキーもできるしスケートも得意だ。だから、ものすごく運動が苦手というわけではないだろう。ただ、走るという訓練が足りていないだけで。
そんな彼女が必死になってついて来る。小狼は息が上がって苦しそうな知世の方を振り返った。その間にも魔法を使って移動するさくらとの距離はどんどん開いていく。
でも、だから、どうしろっていうんだ。
走れと言われればもっと早く走ることはできる。けれど、あんなに必死で走ってくる大道寺を置いて一人だけ先に行くなんてこと、できるか?
ああ、くそっ。
小狼の走るペースは上がらない。
これが苺鈴なら、日頃の鍛錬を信じて置いてゆける。
けれど、彼女は?
焦る小狼は逡巡した。そして、決めた。さくらのことは見失うかもしれない。けれど、ペースは上げない。
このまま大道寺がついてこれるかどうかの線で追いかける。
こんな決断をさせた知世のことを、人は足手まといと呼ぶかもしれない。しかし、小狼は不思議と嫌な気持ちはしなかった。
0150CC名無したん2018/05/17(木) 00:18:21.79ID:AjrSMevP0
ヘロヘロになった知世がお茶を飲んで一息つくと、早速新しいカードのお披露目となった。
「フライト!」
無事捕獲されたカードを使ってさくらが空へ舞い上がる。ケルベロスもそのあとを追い、一人と一匹、そして知世のドローンも加えて三者は楽しそうに空を飛び回っている。
地上には知世と小狼二人だけになった。
楽しげに空を飛び回るさくらを見上げたまま、知世が小狼に話しかけた。
「李君、先ほどはありがとうございました」
「なんのことだ?」
「私に気がついて、走るペースを加減してくださったでしょう?」
「!」
小狼は驚きを隠せなかった。知世の方は一度振り返ったきりで、知世に気づいたあとも大幅にペースを変更していない。
なのに、あんなギリギリの状態で、俺が加減して走っていたことに気がついたというのか。
「どうして……」
「わかりますわ。運動の得意な李君が私と変わらないペースでさくらちゃんに追いつくなんてこと、ありえないですもの」
小狼の心を見透かしたかのような言葉が返って来る。知世は続ける。
「でも、これからは遠慮なさらないでください。私がこのドローンを導入したのは、さくらちゃんをありとあらゆる角度から撮り逃しなく撮影するためではありますが……」
さくらのあとをついて回る小型撮影機が、太陽の光を受けてキラリと光るのが見えた。
「同時に、李君やさくらちゃんに、全力で走って行っていただきたいからですわ。私は、何かに一生懸命になっているお二人が大好きなんです。今日は間に合いませんでしたが、必ず、次は不具合を修正して完璧な装置にしてみせます。
だから…。だから、李君は自分の思う通りに、駆けて行ってくださいな」
0151CC名無したん2018/05/17(木) 00:19:19.71ID:AjrSMevP0
小狼は、知世を置いて行かないと決めたとき、嫌な気持ちがしなかった理由がわかった気がした。
知世は魔法を使う自分たちと付き合っていて、自分にできないことがあっても嫌な顔一つしない。
むしろ、応援したり励ましたり、果ては新しい機材を開発して、魔法が使えないなりに自分たちと共にあろうと試行錯誤している。
今日はたまたまその努力が間に合わなかっただけで、こうして日々人知れず努力している彼女をどうして責める事ができるだろう。
「…俺にも、魔法が使えたらいいのにな」
「え?」
驚いた知世は小狼の方を振り返った。
「大道寺を空へ連れていってやる魔法が」
小狼は心底そう思った。
自由に飛べたら何をするんだろう。大道寺のことだ。きっと、さくらの撮影に一生懸命になって、また、息を切らすんだろうな。
幸せそうに空を飛び回る知世の姿が思い浮かぶ。
「いつか必ず連れていく。大道寺を空へ。あんな風に自由に」
まっすぐな瞳で空を見つめて、小狼は約束した。
大きく見開いた知世の目から、思いがけずはらはらっといくつぶかの涙がこぼれ落ちる。
「おい、どうした! 目にゴミでもはいったのか!」
「いえ、これは……」
言葉を継ごうとしても、涙が後から後から溢れてくる。
本当は、一緒に飛びたいと思っていた。さくらちゃんと一緒に行けたらどんなにいいだろう。でも、私には魔法は使えないから。
ずっとそうやって自分を納得させようとして、ドローンやケロちゃんカメラの開発に血道を上げてきた。
だから、嬉しい。そんな風に言ってもらえるだけで、嬉しい−−−。
「きっと、空へ、連れて行ってくださいね」
大丈夫、というようにとびきりの笑顔で笑ってみせた知世の心は、もうすでに何かから自由になって、思い切り高く羽ばたいていた。
0152CC名無したん2018/05/17(木) 00:19:36.51ID:AjrSMevP0
「知世ちゃん!」
「さくらちゃん」
空から降りてきたさくらが知世の様子を見て駆け寄ってきた。
「知世ちゃん、どうしたの?どこか痛いところとかあるの?!」
「いえ、違いますわ」
「でも、泣いてるよ?」
「これは、試作機の飛行がうまくいったからですわ。色々苦労した機能が、きちんと動作したものですから」
涙を拭いて、代わる代わる質問を繰り出すさくらとケルベロスに答える。小狼は少し離れたところからそんな二人と一匹を暖かく見守っている。

小狼との会話を誰にも聞かれたくなくて、とっさに三脚カメラの録画を止めたのは内緒の話。
0153CC名無したん2018/05/17(木) 00:22:33.89ID:AjrSMevP0
ご希望の感じのものじゃなくて、ごめんね
0155李小狼2018/05/17(木) 04:16:15.49ID:HxZQ2F4C0
おれもあの時の大道寺と話したことは誰にも知られたくない

さくらにはすまないが…
0156CC名無したん2018/05/17(木) 06:35:16.90ID:+lrWTMiW0
なんて穢れのない二人なんだ
刹那的な美しさ
永遠じゃなくていいから一緒に空を飛んでほしい
0157CC名無したん2018/05/18(金) 05:59:09.86ID:NC7J+rP/0
相変わらず素晴らしい
0158木之本桜2018/05/19(土) 07:10:50.52ID:jrx1VIRV0
知世ちゃんとは取り合いたくないよ〜(´・ω・`)
0161CC名無したん2018/05/21(月) 05:50:24.36ID:H2+XiMsI0
朗読会のとき、知世ちゃんの隣に小狼がいてニヤニヤした
さらに小狼から知世ちゃんに話し掛けていたのが新鮮だった
なかなかに珍しい気がする
0163CC名無したん2018/05/22(火) 00:50:39.90ID:olIpuDq/0
日直だった小狼は、職員室に日誌を提出して教室に戻る途中足元がふらつくのに気がついた。
『あれ』を使うのにはずいぶん慣れたが、場合によっては翌日に少し響くことがある。
そういう時はなるべく安静にしてやり過ごすようにしているが、今日はたまたまうまくいかなかった。
まず、昨夜少し遅かったこともあり、少し睡眠が足りていなかった。加えて体育の授業があったため、うだるような暑さの中校庭を走り回る羽目になった。さらに、日直の仕事まで重なって、こんな他の生徒が帰宅してしまったような時間まで学校に残ることになってしまった。
さすがに体力の限界を感じた小狼は、早く帰ろう、と速度を速めて教室を目指した。

ロマネスク様式の校舎は少し複雑な形をしている。瀟洒な校内はみる者の目を楽しませてくれるが、入り組んだ校舎内を歩く余裕は今の小狼にはなかった。なるべく人気の少ない場所を歩こう、そう思った小狼は、最寄りの階段を上り始めた。

息が上がる。頭がクラクラして壁に手をつきながらでないと体が支えきれない。
一歩、一歩と歩を進め、もう少しだ、そう思った時、目の前が真っ暗になって小狼は崩れ落ちた。
遠のく意識の中、誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
0164CC名無したん2018/05/22(火) 00:50:59.28ID:olIpuDq/0
なにか、温かいものに包まれている。不思議だ。俺は階段に倒れこんだはずなのに−−−−。

気がついた小狼が身じろぐと、聞き慣れた声が語りかけて来た。
「お加減いかがですか、李君」
「だい……どう…じ?」
その高く柔らかな声は、まぎれもない大道寺知世のものだ。
「なんで、ここに…」
「忘れ物を取りに行こうと思いましたら、李君が真っ青な顔で階段を上がっていらっしゃるのが見えまして。それで」
駆けつけてくれたというのか。すまない、ありがとう−−− 
一人ではないという事実に小狼はまず安堵した。
そして次に、自分の置かれている状況を認識した。
頭に血が上りそうになる。小狼は知世の腕の中にいたのだ。

おそらく、倒れこむところを抱きとめてくれたのだろう。ずるずると滑り落ちそうになる小狼の躰を、しゃがみこんだ知世の細腕が必死で支えている。
「す、すまない……!」
まだ小柄な方とはいえ、それなりに筋肉もある小狼の体重を支えるのは知世にとって容易ではないはずだ。力を振り絞って知世から離れようとするが、体にうまく力が入らない。
必死でもがく小狼の背中を、何も言わずに知世がとん、とんと叩いた。
それはまるで、大丈夫、と言っているようだった。
とん、とん−−−。とん、とん−−−。
それは優しく、緩やかに続けられた。
母親が子供にするような優しさで−−−。
0165CC名無したん2018/05/22(火) 00:51:24.14ID:olIpuDq/0
鼓動のような一定のリズムに、小狼の体の強張りが解けていく。
先ほどまで感じていためまいも幾分和らいだような気がした。
小狼の冷たく冷えた体に、体温が戻って来た。
大きく深呼吸をして、今度こそ小狼は自分の体を起こすことができた。
「もう、大丈夫だ。本当にありがとう」
小狼を見つめる知世の紫色の瞳には、心配の色が浮かんでいる。
これ以上心配をかけまい、と小狼は立ち上がろうとする。が、体が大きくふらついた。
「李君!」
知世がそれを慌てて支える。
「まだ無理ですわ。そんな状態では」
ずるり、と膝をついた小狼は、日頃の彼からは想像もできないほど緩慢な動作で壁に寄りかかった。
「心配をかけてすまない。まだ、歩けるほど体調が回復していないみたいだ。俺は少し休んでからいく。遅くなるといけないから、大道寺は先に帰った方がいい」
知世を安心させようと、無理に笑顔を作って見せたが、ズキンと痛む頭に思わず眉間にシワがよる。
「李君、横になられた方がいいのでは」
知世が何気ない動作でハンカチを膝の上に広げる。
「よろしければ」
「…………!いや、それは……!」
知世は力なく抵抗する小狼を引き寄せ、頭をそっと膝の上に乗せた。そしてさっきのように小狼の体を優しくトン、トン、と優しく叩き始めた。
優しいリズムと知世の暖かな体温に、小狼は例えようのない心地よさを感じた。リラックスした体と脳に、甘い眠気が襲ってくる。
ああ、眠い。眠くてたまらない−−−
「……すまない、10分だけ、膝を貸してくれないか」
いつになく素直な申し出に、知世は笑顔で答えた。
「……はい」

とん、とん−−−。とん、とん−−−。

なんて、あたたかいんだ−−−

今だけは、全部忘れて眠ろう。
小狼は小さな子供みたいに眠りに落ちた。
知世はそんな彼を、黙って見守っている。
0166李小狼2018/05/22(火) 01:50:22.27ID:w4MO4lXp0
そして、おれは眠った。

(大道寺の膝の上は心地よく暖かな体温がリラックスさせてくれるようで ずっとこうしていたいと思う 自分がいた)

(さくら…すまない…この状況を見たさくらはおれのことを心配してくれるのだろう…)

(だけど、誰にも知られたくない このまま大道寺の温もりを感じながら眠っていたい)
0167CC名無したん2018/05/22(火) 07:16:13.15ID:dzoyliaq0

2828すぎる
0168CC名無したん2018/05/22(火) 07:42:31.59ID:viKq7O7q0
聖母知世キタ━!
誰も見ていない校舎の片隅で、これまた絵になる二人よ
小狼は知世には自分の弱さをさらけ出せる、そんな関係な気がする
0171CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:19.40ID:ZNkvNww70
小狼がすっかり寝入ってしまったのを確認して、知世はとんとんと叩き続けていた手を止めた。
規則正しい寝息をたてる小狼の表情は、日頃の凛と張り詰めたものから一転して、無防備な幼子のようだ。
初夏というには暑すぎる気温が日暮れの校舎に温もりを与え、落ち切らない太陽の光が、ゆらゆらと二人を包んでいる。
知世は小狼と出会った頃によく歌っていた歌の歌詞を思い出した。

『母が愛し子を腕に抱いて
 陽だまりの中で子守唄を歌う』

知世はくすりと笑った。
(本当に、あの歌のようですわ)
数ヶ月とはいえ自分より先に生まれた少年のことを「幼子」に例えるのはいかがなものかとは思ったが、小狼の寝顔は穏やかで、安心しきっている様は近頃の大人びた様子からは格段と幼かった。

『夢路に遊ぶ幼児の頬に
 妖精がつくる幸せのえくぼ』
0172CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:37.62ID:ZNkvNww70
知世は小さくハミングしてみた。
子供にするように小狼の頭をそっと頭を撫でてみる。陽に透けた小狼の髪はほとんど金色といってもいいくらい輝いている。
美しい色と絹のように滑らかな質感に、知世はその髪に顔を埋めてみたい衝動に駆られた。…が、代わりに、一筋の髪をそっと指先に絡めた。

脳裏に小狼が時折見せる厳しい表情が浮かび上がった。
それから、彼を送っていった際に見た真っ暗なマンションも。
きっと李君は今回の事件について何か知っていることがあるのだろう。
そして、それを一人抱えたままあの誰もいないマンションで耐えているに違いない。
偉さんや苺鈴ちゃんたちと過ごした賑やかな思い出が詰まったあの部屋で。

『淋しいときには ぬくもりを探し
 遥かにたどるよ 懐かしい記憶を』

それはどれだけ辛いことだろう。でも、彼だからこそできること。
だから、だから私はーーー。

『夢から覚めても笑みを残してく
 そんなやさしさの種子が心にある』

『張り詰めた心 ほどいてあげたら
 やさしさの種子をひとつ撒いておこう』
0173CC名無したん2018/05/26(土) 00:38:58.71ID:ZNkvNww70
送っていく、という小狼の申し出を丁重に断って、知世は一人自宅へと帰ってきた。
(李君も、もうおうちへ戻られたでしょうか。お一人ですから、お夕飯の準備をなさっていらっしゃるかもしれませんわね)
知世は一人キビキビと家事をこなす小狼の姿を思い浮かべた。ごく短い仮眠だったにも関わらず、帰り際の小狼の顔色はずいぶん良くなっていた。
お膝を貸して差し上げた甲斐がありましたわ、と知世はひとりごちた。
ふと思いついて、カバンの中かから大切にしまったハンカチを取り出した。
洗濯しなければ。

(でも、その前に、一度だけ)

一度だけ、ですからーーー。
知世はゆっくりとハンカチに頬を寄せた。
まだ、小狼の体温が残されているような気がする。
小狼の息づかいと美しい髪の色が蘇ってきて、知世は心が震えた。
愛しい人を膝に頂いた喜び。つかの間の安らぎを与えた誇らしさ。
たとえ短い間とはいえ、小狼が自分の庇護のもとにあったという事実が知世を歓喜させた。
言いようのない幸福感があとからあとから溢れ出してきて、知世はそれを噛み締めるようにじっと、ただじっとハンカチに頬を寄せていた。
0174CC名無したん2018/05/26(土) 00:39:13.11ID:ZNkvNww70
「コンコン」
突然のノックの音に知世はハッとした。
「はい」
「知世様、夕食の準備ができております」
「……すぐ参りますわ」
お待ちしております、という声と離れていく足音に知世はホッと胸をなでおろすと同時に、自分がハンカチから頬を離してしまったことに気がついた。
一度だけと、決めたのですもの……。
正直、名残惜しかった。しかし、約束は約束だ。意を決してハンカチを机に置いて部屋出ようとした時、何かがキラリとハンカチの上で光るのが見えた。
それは、薄い茶色をした一本の短い髪の毛だった。
知世は一瞬迷ったのちそっとそれをつまみ上げた。
そして裁縫箱から美しい緑の絹布を探し出すと、その髪を優しく包みあげ、そしてーーー、ひとつ、口付けを落とした。

知世は照れ臭そうに笑うと、絹に包まれた髪を小箱にしまい、小声で歌を口ずさみながらダイニングへと駆けていった。


『やがて芽を出し 蕾はほころぶ
 美しい場所を心に持つなら

 いつかは誰もが澄んだ青空を
 思い切り高く自由に羽ばたける

 自由に羽ばたける その胸に花を咲かせて…』
0176CC名無したん2018/05/26(土) 09:08:14.76ID:8IP9rOan0
小狼と知世ならではの安心し合える関係を描いた創作小説をずっと読みたいと思っていた
その完成形に出会えた気がする
素晴らしいです、本当にありがとう
0179CC名無したん2018/06/05(火) 08:47:26.13ID:Mf564FkR0
知世ちゃんが小狼も撮りたがってたり園美さんが小狼にも興味もってるのは萌える
0180CC名無したん2018/06/14(木) 14:13:09.70ID:wNEFKr+e0
朗読会前にピアノなら大道寺のほうがと言ってたけど、知世ちゃんがピアノを弾いているor弾けるという設定って明らかにされてたっけ?
0181CC名無したん2018/06/23(土) 05:44:56.99ID:CsUP11C90
こんなスレがあったとは
0182CC名無したん2018/07/13(金) 22:53:05.79ID:4TBkk9+Z0
小狼は寝間着姿のままガランとしたリビングのテーブルの前に座っていた。
テーブルの上には羅針盤とグレーのクマのぬいぐるみが置かれている。
小狼は難しい顔をしていた。
これが本来の目的からは逸脱していることはわかっている。
しかし、もし今この魔法を使うことができたなら、本来の持ち主もそうしただろうことは確信があった。
意を決した小狼はぎゅっと握りしめていた右手を羅針盤の上にかざした。
念を込めて小さくを唱える。羅針盤が光を放ち、小さな光の粒が生まれた。
額に汗が浮かぶのもかまわず、さらに念を込めるとその光の粒が次々と形を変え、丸い珠となったところで小狼は唱えた。
「彼の者に極上の夢を届けよ」
小狼の言葉に珠が振動する。
「ドリーム!」
最後の言葉を受けて強い光が発現し、魔法が発動したことを知らせた。
どさっ、と小狼は背もたれに身を預けた。これでおそらく彼女は、今日は嫌な夢を見ずに済むだろう。
ひどく疲れてはいるが、嫌な疲れではない。小狼は安堵の息をついた。そして、額の汗を拭うと、静かにリビングを後にした。
0183CC名無したん2018/07/13(金) 22:53:29.51ID:4TBkk9+Z0
「知世ちゃん、なんだか顔色悪いよ。どうかしたの?」
「さくらちゃん……。実は最近、夢見が悪いんです」
「夢?怖い夢を見るの?」
「よく覚えてはいないんですが、でも、とてもうなされて、夜中に何度も目がさめてしまうんです。それで、少し寝不足で」
「大変だね。私に何かできることがあればいんだけど」
「さくらカードが使えたら、ドリームのカードで知世にええ夢見せられるんやけどなぁ。しかし、今カードは透明になってしもてるさかい…」
「まぁ、ドリームのカードではそんなことも出来るんですの?」
「せやで。クロウもたまーにドリームつこて夢の中で遊んどったわ」
「へぇ〜。カードが使えるようになったら私もドリームでいい夢見てみようっと!」
「そらあかん。さくらがドリームつこてええ夢見てしもたら、毎朝遅刻決定や!」
「なんですって〜!?」

ベッドの上で知世は今朝のことを思い返していた。愛らしい親友と黄色いぬいぐるみのような守護者のやり取りを思い出すと自然と笑みが溢れる。
しかし、これから眠りにつかねばならないことを思うと気分が沈んだ。
また、夢を見るかもしれない。重苦しくて、何かが迫ってくるような、暗い夢。
神様、どうか今日は夢を見ずに済みますように。
見るなら、どうか、幸せな夢を。
0184CC名無したん2018/07/13(金) 22:54:14.31ID:4TBkk9+Z0
『何か面白い記事はありました?』
テーブルの上に紅茶を置くと、知世は尋ねた。新聞を読んでいた小狼が顔をあげて答える。
『ありがとう。別に面白いというほどのことではないんだが、国際情勢のことで少し、読んでおきたい記事があったから』
『そうでしたか。李くんはいつも勉強熱心ですわね』
『これからは李家と大道寺家の両方を引っ張って行かなくてはならないからな。そのためには、いろいろ勉強しておかないと』
そう言って紅茶に口をつける小狼の眼差しは真剣で、奥に秘めた情熱が溢れている。知世はそんな小狼のことを好ましく見つめていた。
親が決めた結婚相手ではあったが、実直で、努力家な彼のことを知世は心から愛していた。
紅茶を飲み干した小狼が知世の方を見た。ぱちっ、と視線がぶつかって、二人は思わず微笑みあった。暖かな空気が二人の間を満たす。
『ところで』
『はい』
『いつになったら名前で呼んでくれるのか』
突然の問いかけに知世はさっとほおを染めた。
『……まだ、慣れませんわ』
リンゴのように赤くなって恥じらう乙女の姿に、小狼は言いようのないくすぐったさを感じた。
最初は、なぜ海を越えて妻をめとらねばならないのかと不満があった。
しかし、知世の持つするどい洞察力と並外れた包容力に触れるにつけ、小狼はこの人ならば、との思いを強めていた。
豊かな黒髪のかかる肩を抱き寄せ耳元に口を寄せてささやいた。
『いつか名前で呼んでくれると嬉しい。知世−−−−−−』
0185CC名無したん2018/07/13(金) 22:55:04.04ID:4TBkk9+Z0
ジリジリと朝を知らせるベルが鳴る。
目を開けると見慣れた天井。
朝だ。今日は一度も目が醒めることなく眠れたらしい。
なんだろう。もう、覚えてはいないけれど、とても、とても幸せな夢を見ていた。
胸の中が暖かくて仕方がない。でも……思い出せない。
忘れてしまった甘やかな夢の名残に、知世の目から一筋の涙がこぼれた。

いつものように朝食の目玉焼きを焼く。
昨夜例の魔法を使ったにも関わらず、不思議とよく眠れた。
そのせいだろうか。なんだか心も穏やかだ。
準備のできた朝食をテーブルに運ぶと、小狼は紅茶を淹れた。
「……?」
なんだろう。この香りを知っている気がする。
その時、俺はとても幸せだった。
0186CC名無したん2018/07/13(金) 22:55:32.48ID:4TBkk9+Z0
昼休みになるといつものように馴染みのメンバーが集まった。
皆で和気藹々と昼食をとり、雑談が始まった頃に奈緒子があるものを取り出した。
小さな、家の模型である。今度の演劇部の舞台を大道具用にジオラマ化したものだという。
「私……、私、今朝このジオラマの夢を見たような気がしますわ」
「このジオラマの?これ、昨日完成したばかりで、演劇部以外の人ではみんなが初めて見るんだよ」
「変ですわね。でも、確かにこのリビングに見覚えがあるんです。確か男の方と女の方がいましたわ。二人はとても信頼しあっていて……。とても幸せな夢でしたわ」
「すごーい、今度の劇、1組の恋人の話なんだよ。それで、物語はこのリビングで展開するの!」
「ねね、それって予知夢っていうやつなんじゃない?」
「予知夢……。夢十夜の時に習ったあれですね!」
「そうそう、予知夢といえばね!!」
「山崎くんは黙ってて!」
興奮気味に予知夢の話に盛り上がる友人たちを横目に、さくらはカバンの中の守護者にそっと声をかけた。
「知世ちゃん、昨日は怖い夢見なくて済んだんだね」
「おぅ。ゆっくり眠れたみたいでほんまよかったわ。せやけど、なんや妙やな」
「妙?」
「知世はジオラマの夢を見たんやろ?しかも、夢の内容と劇の内容が大体一致しとる。それやったら千春のいう通り予知夢やないか。けど、知世は魔力を持ってへん。誰かが予知夢を見るような力をつこて、知世に夢を見させたとしか…」
「でも、誰が?私はカード使えないし、ケロちゃんも何もしてないんでしょう?」
「わいはなんもしてへんで。だいたい、人に予知夢を見させるような魔法は高度な魔法や。そんな簡単に出来るもんやない。小僧やったらできるかもしれへんけど、でも…」
ケルベロスはそっと小狼の方を見た。小狼はジオラマを見て何か困惑したような表情を浮かべている。
「小僧でもないみたいや」
「小狼くん、どっちかというと夢でジオラマを見ちゃったみたいな顔をしてるよ」
「うーん。一体どういうことなんやろうなー」
「どういうことなんだろうなぁって、ケロちゃんが言い出したんでしょ?」
「せやけど、よおわからんしー。わいの考えすぎやったりして。あはははは!」
「考え過ぎって、もう、無責任なんだから!!」
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