小狼は己の行動に動揺を隠せなかった。
「なぜ、大道寺をかばってしまったのだろう」

クラス対抗の競技大会でのことだった。
小狼がバドミントンの試合をしていると、突然季節外れの雹が降り始めた。球技大会は一旦中断し、カードの仕業を疑った小狼たちが人気のない場所で対応策を練っていると、大粒の雹に襲いかかられたのだ。
危ない、そう思った時、小狼がかばっていたのはさくらではなく大導寺知世だった。

羽のように、軽かった。もともと白く華奢だとは思っていたが、未発達の自分の力でさえやすやすと抱えることができた。
折れそうなほど、か弱かった。触れた肩は細く、がっちりとしてきた自分の肩とは全然違っていた。「たくましくなった」といった知世の言葉の意味が今ならよくわかる。

大道寺には魔力がない。誰かが彼女を守らねばならないが、さくらはカードを封印しなければならないし、封印の獣ケルベロスはさくらのサポートをしている。となれば彼女を守ることができるのは必然的に俺一人。

そう、自分に言い聞かせてはみるが、友人の方を抱いてまで庇う必要があったのか。だいたい、クロウカードに襲われた時でさえ知世をかばったことはなかったというのに。
戸惑う小狼の鼻の奥に、知世を庇った時、長い髪からほのかに香った芳香が今も残る。

「大道寺……」

ふうわりとした知世の笑顔が浮かんでは消えた。