「刑事裁判の真実」・・・内容の具体性及び迫真性から、恐らくは実体験に
基づくノンフィクションであろうと思う。
一般市民が漠然と思い描く、密室における取り調べの
怖さと不合理さについて、「やはりそういうものだったのか。」
と首肯させ得る内容であり、これが事実であれば、
検察のやり方に憤りを覚えるとともに、もし自分が著者の
ような立場になったらと考えると、背筋が寒くなる思いがする。

しかし一面、著者が検察捜査の全面的被害者として、全く落ち度のない、
無辜の民の視点から記述しているという印象を受けることは否めず、
検察や共犯者(とされる)人達の言い分も聞かなければ、
本書のみからは公正・正確な判断は出来ないとも思う。
著者の受けた法的・社会的制裁、精神的苦痛などには同情するより他ないが、
裁判員制度も含め、公正な法の適用のためには、今さらではあるが、
一方の主張を鵜呑みにすることなく、多角的な視野を持ち、
双方の主張を自己の知見に基づいて慎重に吟味することが必要である。
悲惨な経験をされた著者に対し、無慈悲、無神経な感想であろうか。